(最新の放送記録より;ブッフビンダーの協奏曲第27番&21番、K.595&467)
17-8-1、ルドルフ・ブッフビンダーとシュターツカペレ・ドレスデンによるピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595及び第21番ハ長調K.467、
2015年6月、フォルクスワーゲン「ガラスの工房」、ドレスデン、

−ブッフビンダーの指揮をしながら独奏ピアノを弾くスタイルは、実に落ち着いた雰囲気で行われ、観客は安心して音楽に浸れるムードを持っていた。始めのピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595では、独奏ピアノがよく響いて、木管楽器と独奏ピアノとのやり取りが美しく、この曲の持ち味を発揮していた。一方のピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467では、全楽章を通じて、スピード感あるソロピアノの刻印を押すような響きがクリアに捉えられており、充実感のある演奏であった−


 (最新の放送記録より;ブッフビンダーの協奏曲第27番&21番、K.595&467、)
17-8-1、ルドルフ・ブッフビンダーとシュターツカペレ・ドレスデンによるピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595及び第21番ハ長調K.467、
2015年6月、フォルクスワーゲン「ガラスの工房」、ドレスデン、
 (2017/06/21、クラシカ・ジャパンの放送をHD-2に収録)

       8月号の第1曲目は、ルドルフ・ブッフビンダーとシュターツカペレ・ドレスデンによるピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595、第21番ハ長調K.461、および第20番ニ短調K.466の3曲の映像で、2015年6月に、ドレスデンのフォルクスワーゲン「ガラスの工房」という場所で収録された影像であった。彼は、2006年の生誕250年記念時に、ウイーンの楽友協会ホールで、二日間で6曲のピアノ協奏曲を録音(7-12-1)しており、このHPにも掲載されているが、今回も前回同様の弾き振りであった。8月号では、演奏の順に27番と21番の2曲を取り上げることにしたが、いずれも新録音の曲であった。





       フォルクスワーゲンの広い車のショウルームのようなところを通って、ブッフビンダーが会場に向かう姿が見え、画面が切り替わってピアノの前に着席していた。やがてブッフビンダーの右手が振られて、おもむろに弦の合奏が始まり、木管がこれにこたえて合奏してピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595が始まった。第一主題は、ゆっくりと歌うように進むが、木管がキラキラと輝くように鳴っており、澄んだ清楚な第一主題に続いて、弦とフルートとが対話するように始まる第二主題も美しく響いていた。





        ドレスデン・シュターツカペレは、コントラバスが2台の中規模なオーケストラで、宙づりになった部品が見えるショウルームの一室のように見えるところで、折り畳み椅子に座った観客と向かい合っていた。やがてチッチッチと弦が鳴る第三の主題が流れるように現れて、この長いオーケストラによる美しい提示部が終了し、きめ細かく丁寧に両手を挙げて楽し気に指揮するブッフビンダーの姿が写されていた。








        やがてブッフビンダーの独奏ピアノが第一主題を変奏しながら登場してオーケストラと対話するように進行する。ブッフビンダーのピアノの音は小さいが、弾かれるパッセージは粒立つように揃っており、音の輪郭が明確に聞こえていた。ピアノは呟くようにパッセージを連ねていき、新たな甘美な副主題が現れ、次第に独奏ピアノがオーケストラと対話しながら走り出していた。やがて独奏ピアノで始まる第二主題が勢いよく続いてチッチッチとピアノが響く第三主題も登場し、独奏ピアノの自由なパッセージとなって提示部が見事に盛り上がり、展開部へと突入していた。





        展開部では冒頭の第一主題をソリストのピアノが弾き始め、オーケストラが答えると、再び独奏ピアノが弾き始め、これにフルートやオーボエやファゴットが競い合うように答え始めて、ピアノの自由なパッセージを繰り広げる中で、弦や管のアンサンブルの良い響きが美しく印象的であった。再現部ではオーケストラで第一主題を奏でてから独奏ピアノが途中から参加し、第二主題、第三主題とほぼ定式通り進行して、独奏ピアノがオーケストラを従えながら独壇場のようにパッセージを重ねていた。カデンツアは新全集に掲載されたモーツァルトの耳慣れしたものを用いていた。終わってみれば、終始、ブッフビンダーの指揮と軽快な独奏ピアノが中心で進行しており、この楽章が終わると、ブッフビンダーは満足げに辺りを見渡して、笑顔を見せていた。





            第二楽章は、ラルゲットのA-B-A’の単純な三部形式であるが、ブッフビンダーがさりげなく弾き出す独奏ピアノの静かな音が素晴らしく、続いてオーケストラがくり返したあとに弾くピアノがもの寂しく響き、淡々と弾く透明感溢れる独奏ピアノが一人舞台になって美しく進行していた。中間部のリズミカルな主題もブッフビンダーのピアノが弾むように弾かれ、その流麗なピアノの響きが美しく、良く聴くと音の粒だちや間の取り方にも独特なブッフビンダー流の持ち味があり、オーケストラの動きと良く調和して、悲しげで極上のピアノの世界を繰り広げていた。再び、最初の主題が再現されて、独奏ピアノがもっぱら管楽器を相手にパッセージを繰り広げていたが、途中から弦楽器も参加して、見事なアンサンブルの世界を築き上げていた。ブッフビンダーは、長年にわたり室内楽でも有名で、このようなアンサンブルが得意な方で、素晴らしい効果を挙げていた。






           フィナーレは、アレグロと記されたお馴染みのロンド風の愛らしい主題が独奏ピアノで開始されるが、どうやらロンド形式に似た変則的な展開部を有するソナタ形式と考えるべきだろうか。この「春への憧れ」と歌われた華やいだ軽快なロンド風の主題を、ブッフビンダーは淀みなく、オーケストラと一体になって、軽やかなテンポで淡々と弾き進んでいた。続いて新しい主題が2つほど独奏ピアノが提示しながら軽快に進行しるが、アルペッジョ風なパッセージの後にフェルマータで一呼吸してから、再び冒頭の明るいロンド主題が独奏ピアノで再開されていた。これが2回行われてから、再びロンド主題が再開されて、これからは提示部の順序に従って主題が順次再現されていた。カデンツアの前でもアルペッジョ風なパッセージが現れていた。ブッフビンダーは新全集の自作のカデンツアを弾いていたが、これはこのロンド主題を中心にした40小節もある長い回想風のものであった。ブッフビンダーは、この楽章も常に独奏ピアノが一歩リードする形でこの澄みきった透明な曲調を見事に再現していたが、とても物静かな後味の良い期待以上の演奏であった。

       ブッフビンダーの指揮とピアノで、じつにゆったりとしたピアノとオーケストラの世界にはまり込んでいたが、この独奏ピアノがよく響き、木管楽器と独奏ピアノのやり取りが美しい協奏曲の演奏を聴きながら、ブッフビンダーはさすが老練な実力者だと感心していた。素晴らしい拍手に迎えられて、ブッフビンダーはとても満足そうな嬉しそうな笑顔で応えていた。そしてオーケストラを起立させて、観衆の拍手にこたえさせていた。




          続いてブッフビンダーが登場した時には、次のピアノ協奏曲ハ長調K.467への準備ができている様子であった。拍手が静まるのを待って、ブッフビンダーはオーケストラに向かい、両手を広げて左手の親指を立てて動かすと、早速、ハ長調協奏曲のアレグロの行進曲風のオーケストラが開始されていた。弦のユニゾンで始まる行進曲風の第一主題が明るくリズミックに始まって、弦と管の応答が続いてから、トウッテイによる経過部がリズミックに進行していた。そして途中からオーボエやフルートが明るい響きを見せ始め、明るく進行していた。提示部では第二主題は現れないまま、終始明るい響きの中でトウッテイで行進曲が堂々と進行し、提示部を短く終了していた。




           続いてファゴットとフルートに導かれるように独奏ピアノがアインガングにより明るく登場し、トリルを繰り返しているうちに、オーケストラによる第一主題が始まって、ブッフビンダーの独奏ピアノは力強くこれを引き継いで、華やかなパッセージで威勢がよく進行し始めた。ブッフビンダーは第一主題後半の早いパッセージを、一指乱れず明確に弾きこなし、やがて独奏ピアノがト短調交響曲の冒頭を思わせる副主題を繰りかえして明るく印象づけてから、軽快な第二主題が独奏ピアノで歌うように現れた。そしてブッフビンダーのピアノがオーケストラと競い合うように素晴らしいパッセージを見せながら急速に進行し、次第に高揚しながらオーケストラとともに提示部を締めくくる盛り上がりを盛大に見せて展開部へと突入して行った。

        展開部ではブッフビンダーの独奏ピアノがひときわ目立つ新しい主題を奏で、まさに絢爛たる独奏ピアノによる技巧が示されていたが、ブッフビンダーはオーケストラとも対等に向き合い、しっかりと力強くピアノを弾きこなしていた。再現部では提示部とは主題の順序が異なっており、オーケストラで第一主題が呈示された後、ブッフビンダーの独奏ピアノがこれを引き継いでから、直ぐに第二主題がピアノで再現されたり、後半で第一主題のトウッテイによる提示の後、オーボエやフルートが明るい響きを見せる印象深い副主題が現れたりしていた。最後のカデンツアでは、ブッフビンダーはどこかで聴いたことのある緩急自在なものを流暢に弾きこなしていた。




        第二楽章は弦楽合奏で始まる美しい静かなアンダンテ楽章で、コントラバスのピッチカートと第二ヴァイオリンとヴィオラの三連符による豊かな伴奏に乗って、第一ヴァイオリンが美しいテーマを歌い出し、その甘い美しい調べには、つい引き込まれてうっとりしてしまう。やがて木管も加わって、静かな美しいオーケストラの世界が築き上げられてから、ブッフビンダーの独奏ピアノが自ら左手で三連符を弾きながら登場した。弦楽合奏の美しいピッチカートによる豊かな伴奏に乗って、ブッフビンダーは右手でこの主題を明快に弾きだした。独奏ピアノは、一音一音を明確に弾き、右手と左手を交差させたりしてひとしきり美しく歌ってから華やかなトリルにより終結していた。中間部に入って新しい主題がピアノによって示されるが、この中間部のピアノは、矢張り三連符に乗って、例えようもないほど美しく、ブッフビンダーはここでも一音一音ゆっくりと刻印を押すかのようにしっかりと丁寧に弾いており、ここでピアノとオーケストラで交わす対話には夢を見るような美しさがあった。再び冒頭の静かな主題に戻るが、ここでは始めから独奏ピアノとオーケストラで始められ、幾分変奏風に現れて進行するが、独奏ピアノの方も幾分装飾を交えて弾かれており、ごく短いコーダの後にひっそりと静かに終息していた。カデンツアはないが、ブッフビンダーの装飾風のピアノが加わって、落ち着いた爽やかな雰囲気を持った美しい楽章であった。




         第三楽章は、アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイの華やかな主題で始まる展開部を欠いたソナタ形式。オーケストラでロンド主題に似たな明るく軽やかな第一主題がトウッテイで始まり繰り返されてから、弦と木管の対話があってフェルマータの後に、ブッフビンダーの独奏ピアノが短いアインガングで登場し、改めてこのロンド風な主題を軽快に弾きだした。再びオーケストラに主題を渡してから、独奏ピアノによる流れるような16分音符の副主題が走り出し、ブッフビンダーは勢いよく軽快にパッセージを弾き進めていた。オーボエに続いてフルートも加わった木管合奏で示された第二主題が提示されると、直ぐに独奏ピアノに引き継がれ、続いてブッフビンダーがお得意のスピード感のあるピアノの走句が続いて、快調なピアノのペースとなり、オーケストラと対話したり従えながら進行していた。再びフェルマータの後に再現部に突入して、独奏ピアノがロンド風な冒頭主題を弾き出すが、今度は順序を変えてソロ、トウッテイの順で第一主題が再現されていた。再び独奏ピアノが走り出し、第一主題・第二主題と独奏ピアノが鍵盤上を走り回るように駆けめぐって頂点に達し一気にカデンツアとなっていた。最後のブッフビンダーのカデンツアは、冒頭のロンド主題の短いあっさりとした回想風のものであり、最後は独奏ピアノの輝くような音階の上昇で華やかにこのフィナーレを終結していた。

         ブッフビンダーの指揮をしながら独奏ピアノを弾くスタイルは、実に落ち着いた雰囲気で行われ、観客は安心して音楽に浸れるムードを持っていた。ブッフビンダーの指揮は、両腕だけであるがこの曲をしっかりと捉えており、各楽章ともテンポも良く安心して聞くことが出来た。ブッフビンダーのピアノは、スタインウェイであり、とても良く響いており、全楽章を通じてスピード感あるソロピアノの刻印を押すような響きが、クリアに捉えられていた。第一楽章では行進曲風なピアノの運びが実に軽快に堂々として、第二楽章ではピッチカートに支えられた優美なピアノが印象深く、フィナーレでは早いパッセージを見事に弾きまくり、ブッフビンダーは今や現役最高のピアニストの第一人者を思わせる力強いタッチを見せて、華やかに曲を盛り上げていた。映像は変化がなく単調なものであったが、演奏はなかなか楽しめるものであった。盛大な拍手が続いて、ブッフビンダーの丁寧なあいさつが行われていたが、画面が切り替わり、すぐに次の曲のタイトルが表れていたが、長くなるので、本稿はこれで終了とし、次の曲のピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466は、9月号に取り上げたい。


(以上)(2017/8/11)



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