(最新のDVDより;ラルス・フォークトのピアノ協奏曲第16番K.451など)
17-7-1、ラルス・フォークトのピアノとタカーチェ・ナギー指揮ヴェルビエ音楽祭室内楽団によるピアノ協奏曲第16番ニ長調K.451、2011年6月19日、ヴェルビエ音楽祭2011、およびニュウ・ニュウのピアノと佐渡裕指揮、スパーキッズ・オーケストラによるピアノ協奏曲ト長調K.107-2、
東京オペラシテイ・コンサートH、2014年5月11日、題名のない音楽会より、

−食わず嫌いということがあるが、この第16番ニ長調は、余り聴いてこなかったせいかそれほど魅力を感じない曲になっていたが、譜面を見ながらがっちりと丁寧に聴き込むと、やはりこの曲の持ち味が分かり、次第に楽しく聴けるようになって来た。やはりこの曲は、堂々と進むオーケストラとピアノとのやり取りや、各楽章で顔を出す木管三重奏とピアノとのアンサンブルが魅力となっているようであり、フォークトはこの曲の持ち味を知り尽くして、随所で華麗な響きを聴かせて、この曲の良さをPRし、教えてくれたように思われた。一方のニュウ・ニュウはまだ16歳。背丈も佐渡を超えて、どんなピアニストに成長していくかとても楽しみであるし、モダンピアノによるこの曲K.107-2と厚みのある弦楽合奏が良く調和して、これまでの演奏にない新たな響きを聴かせてくれていた−


 (最新のDVDより;ラルス・フォークトのピアノ協奏曲第16番K.451など)
17-7-1、ラルス・フォークトのピアノとタカーチェ・ナギー指揮ヴェルビエ音楽祭室内楽団によるピアノ協奏曲第16番ニ長調K.451、2011年6月19日、ヴェルビエ音楽祭2011、およびニュウ・ニュウのピアノと佐渡裕指揮、スパーキッズ・オーケストラによるピアノ協奏曲ト長調K.107-2、
東京オペラシテイ・コンサートH、2014年5月11日、題名のない音楽会より、
 (2017/04/28、銀座ヤマハでDVDを購入、および2014/5/11放送の題名のない音楽会をHD-2に収録)

         7月分の第一曲は、ラルス・フォークトのピアノ・リサイタルと協奏曲のDVDの映像であったが、これらのうちモーツァルトはただ1曲、ピアノ協奏曲第16番ニ長調K.451であり、タカーチェ・ナギイ指揮ヴェルビエ音楽祭室内楽団による演奏であった。前から気になっていたのであるが、このHPではこの第16番の協奏曲だけが映像がない曲となっていたが、遂にDVDを見つけてアップロードすることが出来ることになった。幸せなことである。ところが、この1曲では物足りないと考えて用意したもう1曲のピアノ協奏曲ト長調K.107-2も、どうやらこのHP初出の協奏曲であった。この演奏は、民放の「題名のない音楽会」でたまたま収録したもので、16歳の若き天才ピアニストのニュウ・ニュウ(牛・牛)による佐渡裕指揮スーパーキッズ・オーケストラによるものであり、活気のある若いグループによる新鮮な演奏であった。



        最初のピアノ協奏曲第16番ニ長調K.451は、第14番K.449から始まる自筆作品目録に記載された第3曲目の曲であり、ピアノ協奏曲が3曲一気に書かれたものが3曲並んでいる。この曲の特徴は、フルートが全楽章にわたって使われているほか、2本のトランペットとテインパニが含まれており、これまで書いてきたピアノ協奏曲の中ではオーケストラの規模が最大なことであろうか。そのため交響的な壮麗さが目立つ作品であり、管楽器の使い方がこの曲あたりから次第に目につくようになっており、その点を映像でハッキリと確かめることができる。独奏者のラルス・フォークトは、1970年のドイツ生まれの英才で、ベルリンフイルとの共演でよく知られており、このDVDは彼がヴェルビエ音楽祭2011に参加した記録でもあり、オーケストラはヴェルビエ音楽祭管弦楽団であった。彼の使用ピアノにもヴェルビエ音楽祭のマークがついていた。



       この曲の第一楽章は、アレグロ・アッサイで堂々と行進曲風にユニゾンで第一主題が開始される。付点音符のついたリズム動機の主題が堂々と進行し、フルートと弦楽器との会話が始まってから、オーボエにより第二主題が美しく始まって、フルオーケストラで盛り上がって堂々と主題提示部を終えていた。独奏ピアノは第一主題をパラフレーズしながら颯爽と登場しており、堂々とオーケストラを従えて進行し、いくつかのパッセージを経てここでもフルートとピアノが美しく対話してから、オーボエが第二主題を提示しピアノがこれを変奏しながら進行していた。それからはラルス・フォークトの独奏ピアノが早いパッセージを繰り返して力強く盛り上がり、元気の良い結尾主題が現われて堂々と提示部を終えていた。
       展開部は結尾主題の後半の動機を利用して始まり独奏ピアノも加わってから、独奏ピアノが早い細かなパッセージを繰り広げて進行していた。再現部はオーケストラと独奏ピアノが競い合いながら第一主題を再現しており、独奏ピアノがパッセージを披露し、木管とピアノが会話を繰り返してから,ここでもオーボエにより第二主題が提示されていた。カデンツアは、新全集に示された34小節のもの。ラルス・フォークトのピアノは堂々として威厳があるが、カデンツアでは細かな音符も大切に丁寧に弾いていた。





       第二楽章はトランペットとテインパニが休止するアンダンテ楽章で、ロンド形式か。第一ヴァイオリンがなよなよする親しみの込めたロンド主題を奏して繰り返してから、独奏ピアノがこの主題を引き継ぐと、木管群が語りかけ、独奏ピアノが第一クープレを語り出し、しきりに木管と対話を重ねていた。このフルート・オーボエ・ファゴットの三重唱は実に美しくよく響き、たびたび顔を出していた。二度目のロンド主題が独奏ピアノで現われ、オーケストラが繰り返してから、第二クープレが独奏ピアノと木管が明るく対話するように進行し、ファゴットやホルンも登場して独奏ピアノが明るく活躍してから、三度目にロンド主題がオーケストラで登場して、この楽章は静かに終結していたが、ここでも三重唱が顔を出して余韻を残していた。





        フィナーレは、RONDEAUと書かれたアレグロ・モルトの早い楽章で、オーケストラが軽快なロンド主題を提示してリフレインされて颯爽と進行する。続いて、独奏ピアノが変奏しながら進行して華麗な技巧を示しつつ進んでから、オーケストラが第一クープレに入り独奏ピアノがこれを受けて颯爽と走り出していた。再びロンド主題が独奏ピアノで開始されて、第二クープレに入りピアノが走り出してから、第一クープレも顔を出し、やがて独奏ピアノと木管群とがお互いに歌い交わしていた。独奏ピアノが一息つくと木管群がこれを受け、オーケストラとピアノが歌っていると木管群が相づちを打つなど賑やかに駆け抜けてから、カデンツアに入っていた。このカデンツアはとても繊細なもので、フォークトは丁寧に弾いていた。カデンツアのあとでも、独奏ピアノがオーケストラと交互に顔を出しており、木管三重奏も現われて華やかな幕切れとなっていた。

         もの凄い拍手に囲まれて、フォークトは一旦引き上げてから顔を出したときには、直ぐにピアノに向かい、アンコールとしてショパンのあの第20番の嬰ハ短調のノクターンを弾き出した。いつ聴いても心の底に響く曲で、アンコールに相応しい曲であった。
        食わず嫌いという言葉があるが、この第16番ニ長調は、私に取って余り聴いてこなかったので、いつの間にかそれほど魅力を感じない曲になっていた。しかし、こうして譜面を見ながらがっちりと聴き込むと、やはりこの曲の持ち味が出て、次第に楽しく聴けるようになって来た。やはりこの曲は、堂々と進むオーケストラとピアノとのやり取りや、各楽章で顔を出す木管三重奏とピアノとのアンサンブルが魅力となっているように聞えていた。フォークトは、この曲の持ち味を知り尽くして、随所に華麗な響きを聴かせており、この曲の良さを教えてくれたように思われた。モーツァルトは、続くK.452もK.453もピアノの薫り高い名品を作曲しており、フィガロハウスにおけるK.466やK.467に至る一連の連作には、頭の下がる思いがする。




          続く7月分の第二曲は、珍しく民放の「題名のない音楽会」よりの映像で、ピアニスト:ニュウ・ニュウの三度目の登場だそうで、ピアノ協奏曲ト長調K.107-2を、佐渡 裕指揮、スーパーキッズ・オーケストラによる演奏で、東京オペラシテイ・コンサートホールからのライブで、2014年5月11日に演奏したものであった。ニュウ・ニュウは16歳で背の高さは185センチの佐渡裕と同じくらいになっており、この日は初めにメンデルスゾーンの無言歌を1曲、次いでこの協奏曲を弾き、最後にベートーヴェンのピアノソナタ「ワルトシュタイン」の第一楽章を弾くという、大人並みの曲目であった。



        このピアノ協奏曲ト長調K.107-2は、このHPでは初出なので、一言触れておかなければならないが、この曲の草稿には日付がなく年代は明確ではないが、3曲ともクリスチャン・バッハの「6曲のクラヴサンまたはフォルテピアノのためのソナタ集、作品5」から第2、第3、第4曲が編曲されたもので、筆跡鑑定ではオーケストラパーツがヴォルフガング、ピアノパーツがレオポルドとされている。この楽譜の出版時期や筆跡および五線紙のスカシなどから恐らく1970年ころの作品とされており、ほぼニュウ・ニュウと同じ年代の曲とされている。
        この映像では、この作品の三つの謎として西原稔氏が解説しておられたが、その第一が初演された記録がないことから、協奏曲としての学習用のトレーニングの作品であろうこと、第二はメロデイ・メーカーの自作でなく、クリステイアン・バッハのソナタ作品を協奏曲に編曲して学習したものであること、何故ピアノ協奏曲を書かなかったかについては、ウイーンでチェンバロは普及していたが、フォルテピアノの導入は他国よりも遅く、新しい楽器が普及されるまで、鍵盤楽器の作曲を控えていたようであり、モーツァルト一家は、旅行を重ねていたのでこの辺の事情をよく知っていたことによるそうである。



                 この曲は第1番ニ長調K.107-1と異なって中間楽章がない2楽章制であり、第一楽章がアレグロで展開部のないソナタ形式となっているが、第2楽章は、2部リート形式で書かれた主題と4つの変奏曲の形式を取っていた。この演奏のオーケストラは弦5部の弦楽合奏であるが、スーパーキッズ・オーケストラはコントラバスは3台で40人規模の大合奏団で演奏していた。
         第一楽章はクリステイアン・バッハのよく知られたメロデイの第一主題が弦楽合奏で軽快に始まるが、続けて第二主題もオーケストラで現われて一旦休止してオーケストラによる呈示部を終えていた。続いて独奏ピアノがオーケストラ伴奏で第一主題をレフレインする形で進行し、軽快な主題を変奏しながら進んでいた。続けて第二主題は転調されて独奏ピアノが目立つように現われていたが,力強く勢いを増して呈示部が終了していた。ニュウニュウのピアノは粒立ちが良くクリアであり、この曲に良くあっていた。
         再現部は独奏ピアノがオーケストラ伴奏で転調して再現されており、提示部とほぼ同様に変奏しながら繰返し、繰返し進んでいた。第二主題も同様に再現されてコーダで結ばれていたが、カデンツアでは前半は第一主題を中心に取り上げていたが、後半は新たな技巧的なパッセージを加えており、ニュウニュウの大人振りを見せていた。



       続く第二楽章は、16小節のクリスチャン・バッハらしい可憐なアレグレットの主題が独奏ピアノとオーケストラによって提示されてから、室内楽的にまとまった4つの変奏が行なわれていた。第一変奏は独奏ピアノの和音が主体の変奏でオーケストラは伴奏に廻っていた。第二変奏も独奏ピアノが分散和音による変奏で終始リードし、オーケストラは伴奏であった。第三変奏は、独奏ピアノが早いテンポで舞曲風のアクセントのついたリズムを持った変奏でオーケストラはスタッカートで伴奏していた。第四変奏は第三変奏に続いて独奏ピアノとオーケストラとがトリルで装飾を付けてひときわ華麗にリズミックに変奏するもので、素晴らしい勢いで一気に駆け抜けるように終結していた。



        この日は、名曲100選のシリーズで、モーツァルトが16歳の時に作曲したピアノ協奏曲を取り上げると言うことで、16歳の天才ピアニストのニュウニュウとスーパーキッズたちが演奏していたが、このコンサートに立ち会った脳科学者の茂木健一郎氏に指揮者佐渡裕が「神童と言われる人の脳の構造はどうなっているのか」と尋ねていた。茂木さんは即座に、天才とは人の10倍も、100倍も努力できる人だとこたえて、これには皆が納得したようであった。茂木さんはさらに続けて、神童と言われる人が神童であり続けるのは大変なことであり、それにはなお一層の努力が積み重ねられなければならないと語っていたのが印象的であった。


(以上)(2017/07/09)



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