(古い懐かしのVHSより;フェスティバル・ソリイスツのK.406&K.581、)
17-6-2、フェスティバル・ソリイスツ演奏会より、オーボエ五重奏曲ハ短調K.406(K.406/516bからの編曲)Ob;若尾圭介、およびクラリネット五重奏曲イ長調K.581、
Cl;ジェームス・キャンベル、1998年6月12日、サントリーホール、(出演者)Vn;竹澤恭子、Vn;篠崎史紀、Vla;豊嶋泰嗣、Cel;堤 剛、

−始めのオーボエ五重奏曲K.406は、モーツァルトが管楽セレナードハ短調K.388を弦楽五重奏曲K.406に編曲したものの第一ヴァイオリンの声部をオーボエが受け持ったもので、初めて聴く演奏であったが、若尾圭介のオーボエの華やかさと厚みのある弦楽合奏がよくマッチして、まずまずの五重奏曲に聞えていた。一方のクラリネット五重奏曲イ長調K.581は、ジェームス・キャンベルの柔らかく透明なクラリネットを得て、フェスティバル・ソリイスツとのアンサンブルが素晴らしく、非常に豊かなイメージを持った五重奏曲に仕立てられていた−


(古い懐かしのVHSより;フェスティバル・ソリイスツのK.406&K.581、)
17-6-2、フェスティバル・ソリイスツ演奏会より、オーボエ五重奏曲ハ短調K.406(K.406/516bからの編曲)Ob;若尾圭介、およびクラリネット五重奏曲イ長調K.581、
Cl;ジェームス・キャンベル、1998年6月12日、サントリーホール、(出演者)Vn;竹澤恭子、Vn;篠崎史紀、Vla;豊嶋泰嗣、Cel;堤 剛、
(1998/11/29放送のN響アワーをVHS-279.2に収録)

         6月分の第二曲目を古い懐かしのVHSよりと探していたら、フェスティバル・ソリイスツのK.406&K.581という演奏会記録が見つかった。フェスティバル・ソリイスツとは、何とVn;竹澤恭子、Vn;篠崎史紀、Vla;豊嶋泰嗣、Cel;堤 剛のソリストたちによる若き四重奏団であり、何と初めて聴くオーボエ五重奏曲K.406とクラリネット五重奏曲K.581を弾いていた。このオーボエ五重奏曲K.406は、旧作の管楽八重奏のためのセレナーデハ短調K.388を、自身で弦楽五重奏曲K.406(516b)に編曲しているが、それをベースにオーボエ五重奏曲に編曲したものであり、オーボエのソリストは若尾圭介であった。一方のクラリネット五重奏曲のクラリネットは来日中のジェームス・キャンベルであり、演奏会は1998年6月12日で満席のサントリーホールで行なわれていた。こういう有名人たちの若い頃の演奏を取り上げることは、このHPのように古い懐かしのVHSであるから出来ることであり、極めて興味深いものがあった。





  スコアがないので弦楽五重奏曲の楽譜を参照していたが、五声の弦楽の声部のうち、オーボエが第一ヴァイオリンの声部を受け持ってメロデイラインをリードしており、第一ヴァイオリンの竹澤さんが第二ヴァイオリンの声部を、また第二ヴァイオリンの篠崎さんが第二ヴィオラの声部を受け持っていた。編曲者は不明であり、細部で多少の変化があるのかも知れないが、弦楽部がしっかりしていたので、まずまずのオーボエ五重奏曲に聞えていた。この曲は原曲がK.388の木管八重奏のデイヴェルテイメントの素晴らしい曲であるが、原曲のメロデイラインは頭に残っているが、二つの編曲を通じてイメージがかなり変化しており、まるで初めて聴く曲のような様変わり方であった。





         この曲の第一楽章の始まりは、ハ短調でユニゾンで奏される暗いイメージで第一主題が奏されるが、その後半は独奏オーボエが華やかに提示しており、続いて力強い推移部を合奏で経過していた。画面では独奏オーボエが第1ヴァイオリンの席に座り、全体をリードするとともに、篠崎さんが席を変えて第二ビオラを担当していた。やがて第二主題を明るい独奏オーボエが第一ヴァイオリンの伴奏で明るく歌い出して暗いイメージから抜け出そうとしていた。途中からは各声部がそれぞれが明るいメロデイラインや伴奏型を歌い出して盛り上がり、最後はトゥッテイで勢いよく提示部が結ばれていた。ここで提示部の繰り返しは丁寧に行われていたが、やはりこの曲の構成はしっかりして厚みがあり、まるでデイヴェルテイメントというよりしっかりした五重奏曲として、オーボエの華やかさと弦楽器の厚みを持った重々しい感じさえしていた。
          展開部では、第一主題の後半の音型を使った独特の展開部で、独奏オーボエが中心になって、短いがハッとさせる迫力があり、展開部の最後は全休止で一息つき、再現部の入りを強調していた。再現部では、冒頭主題がユニゾンでしっかりと再現されていたが、第二主題は独奏オーボエと第1ヴァイオリンとが合奏で提示しており、それからも変奏形の形で美しく歌うように提示しており、変化を付けながら演奏していた。そして最後の後半部では、威勢の良い素晴らしい五重奏となってこの楽章がしっかりと見事に結ばれていた。オーボエ五重奏曲としては初めての演奏であったが、良く知り抜いた曲なので、オーボエの活躍ぶりがよく目だった新鮮な曲に聞えていた。



           第二楽章は、前楽章の重々しい緊張を取り除くような、独奏オー ボエで始まるのどかな牧歌的な感じのアンダンテで始まっており、ヴィオラとチェロに引き継がれていた。続く第二主題もオーボエの独奏で始まるが、今度はオーボエで華やかに反復されるように、終始、穏やかにゆっくりと進んでいた。形だけの短い接続句のような展開部に続いて、再現部では、再び独奏オーボエによって始まり、第1ヴァイオリンとオーボエとが第一主題を合奏し、やがて第二主題もオーボエにより明るく提示され、それぞれの楽器が顔を出し存在感を示しながら、静かにこのアンダンテ楽章が結ばれていた。



         第三楽章は、「カノン風メヌエット」と譜面に表示されており、メヌエット主題がオーボエで始まり、チェロが一小節遅れて進行し、ヴァイオリンとヴィオラが合奏して加わって元気よく進行していたが、中間部ではオーボエを除きこの組合せが変更されており、元のオーボエが元気なメヌエット主題に戻っていた。トリオは表示通り反行カノンの形を取っており、第二ビオラは休んで、ヴァイオリンとオーボエが中心で奏され、第一ビオラとチェロがこれを追いかけており、明るく澄んだ感じのするこのトリオは、重厚なメヌエットと、好対照をなしていた。そして、再び元気よくメヌエット部に戻っていた。



         フィナーレのアレグロ楽章は、二部リート形式の16小節の主題と7つの変奏曲から成り立っており、独奏オーボエがメロデイラインで、全員合奏で主題提示を早いテンポで行なっていた。第一変奏は、明るく軽快に進むアレグロの主題が独奏オーボエと第1ヴァイオリンで示され、その他が伴奏をユニゾンで力強く合奏する変奏から始まった。第二変奏は独奏オーボエが三連符で主題を変奏するもので、残りは合奏により伴奏するものであった。第三変奏は第1ヴァイオリンと第二ビオラがメロデイラインを奏するもので、他の楽器はスタッカートで伴奏するものであった。
第四変奏の前半は全楽器が八分音符で主題を奏し、後半はオーボエがトリル、チェロが16分音符の音階、他の楽器は和音提供で変奏されており、反復記号なしに繰り返されていた。第五変奏では前半が第一・第二ビオラが主役であり、その明るい和音が特徴であったが、後半では全楽器が揃って合奏しながら変奏されていた。第六変奏では独奏オーボエと第一ビオラの合奏のスタイルの早いテンポの変奏に戻り、後半は全員合奏のスタイルで明るく変奏していた。ピアニッシモで始まる最後の変奏では、全員合奏での変奏であり、終わりはフェルマータで休止していた。そして最後の終結部では、この曲の仕上げのスピード感あるコーダとなっており、全員合奏で主題が激しく一気に力強く奏され、堂々と盛り上がりを見せて終結していた。

           この楽章はまるでシンフォニーのフィナーレのような輝きを持っており、変化に富んだ原曲を生かした素晴らしい五重奏曲になっていた。すべての楽章を通じて、終始、独奏オーボエの活躍とそれを補佐する第1ヴァイオリンが目立っており、ヴィオラやチェロが底辺を充実させるしっかりしたクインテットになっていた。この五重奏団のメンバーは、どうやら年齢が近い仲良しグループの現役たちなので顔なじみであり、お互いに親しみを覚えながら楽しく演奏している姿が目についた。





         映像では、続いてドビッシーの弦楽四重奏曲が演奏されていたが、小生には余り聞き慣れない難しい曲のように感じており、拍手の多さから名演だったにチィがいないと思われる。続いて、休憩の後に、クラリネット五重奏曲イ長調K.581の順番となり、クラリネットのジェームズ・キャンベルが登場しており、クラリネットは5人の中央に陣取って、実に荘重な感じのコラール風の柔らかい弦楽合奏で、第1楽章のアレグロが開始されていた。直ぐに軽快なクラリネットが低音から上昇する美しい分散和音で応答して、再び全体が繰り返され、クラリネットを中心に華やかに進行していたが、キャンベルのやや早めのテンポのスタートであった。クラリネットのソロによる輝くような経過部に聞き惚れているうちに、やがてピッチカートの伴奏でヴァイオリンに続いてクラリネットが美しい第二主題を提示し始めていた。キャンベルのクラリネットは柔らかく透明であり、低音も高音も滑らかに良く響き、さらに発展的に進行してヴァイオリンに続きクラリネットがドルチェで吹かれる結びの主題が続いて提示部を終えていた。ここでもう一度振り返るように全体が再び再現されていたが、クラリネットの装飾音が目立つとともに哀愁的なクラリネットの響きが提示部全体を覆っていた。





            展開部では冒頭主題の前半をクラリネットが美しく提示してから、後半部の主題を、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの順に執拗に激しく展開しながら提示されるもので、クラリネットは後半から顔を出して分散和音で応答していたが、低音から高音にいたるクラリネットの響きは力強く、実に魅力的に響いていた。再現部では第一主題は、クラリネットと弦の役割を変更して再現され、第二主題はクラリネットにより見事に変奏されて哀調に富む独自の雰囲気を醸し出していた。キャンベルのクラリネットはしっかりとした美しい音調であり、全くまろやかに美しい音色をちりばめており、この曲の魅力をより一層高めているように思われた。







            第二楽章はラルゲットの楽章であり、主題が展開される珍しい中間部を持つ三つの部分からなる三部形式か。クラリネットの美しい穏やかなラルゲットの主題で始まり、弦の伴奏でひとしきり歌われた後に、ドルチェの第一ヴァイオリンの下降する音形に対し、上昇するクラリネットの音形が答える美しい応答が繰り返され、実に和やかな雰囲気が続いていた。やがて中間部に入ると、クラリネットの下降音形に対し第一ヴァイオリンの上昇音形が展開風に繰り返し答えて行き、後半はクラリネットの独壇場のようであった。キャンベルのクラリネットは実にしっかりしており、再現された第一部においても見事に主導的な役割を果たしており、後半でもドルチェの第一ヴァイオリンとクラリネットとの対話が実に美しく、素晴らしい幻想的なラルゲットになっていた。



            続く第三楽章は、二つのトリオを持つ壮大なメヌエットであり、全5声が一体となって合奏する堂々たるメヌエットが繰り広げられていた。メヌエット主題はクラリネットと第一ヴァイオリンで導かれる活発で晴れやかなものであり、堂々とリズムを刻んで進んでいた。第一トリオでは、弦楽器だけで優しく綿々と歌われるもので、ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いで進められていた。再びメヌエット主題の後に始まる第二トリオでは、クラリネットに導かれる民族舞踊的な音調で、クラリネットが明るく高らかに美しいメロデイを奏でてから、再び、朗々とメヌエットが繰り返されていた。実に規模の大きい堂々たるメヌエット楽章であった。



                フィナーレはアレグレットの主題と四つの変奏に加えて、アダージョとアレグロの二つの自由な変奏部分から構成されている。クラリネットと弦の合奏で明るく踊るように活発に主題提示が行なわれてから、第4変奏までは、繰返し記号を有する8小節*2の構成で作曲されており、各変奏でキチッと繰り返しが行われていた。第一の変奏は弦による主題提示をクラリネットが明るく変奏しながら彩りを添えるもので、装飾音符やトリルなどが目立っていた。第二変奏は前半が弦楽器だけの付点リズムによる変奏であり、後半はそれにクラリネットが彩りを付けていた。第三変奏も弦楽器による変奏で第一ヴァイオリンのオクターヴ跳躍とヴィオラの分散和音により終始リードする変奏であったが、第四変奏はクラリネットの速いテンポによる分散和音で変奏され、十分な技巧が発揮されていた。続いては一転してアダージョの変奏となり、クラリネットがゆっくりと低音を響かせながら憂いのこもった素晴らしい響きを見せてひと休止していた。そして最後に、再びアレグロになってヴァイオリンに始まりクラリネットがトリルを響かせながら変奏を始め、やがて自然にコーダに入り主題の前半を五声で変奏しながら、この魅力的な五重奏曲を終結させていた。

            このクラリネット五重奏曲は、クラリネットの明るい魅力に溢れた第一楽章や、異常に美しい第二楽章に加えて、後半の二つのトリオを持ったメヌエットや、フィナーレの楽しい主題と充実した変奏によって、非常に豊かなイメージを持った五重奏曲に仕立てられている。このキャンベルとフェスティバル・ソリイスツの優れた面々の重厚な演奏は、この曲の性格や特徴を良く捉えた力のこもった充実した演奏を聴かせてくれた。この曲の演奏には、マイヤーとハーゲン四重奏団の演奏が優れたものであると考えていたが、この国産の四重奏団による演奏も息のあった見事なアンサンブルを聴かせてくれており、前半のオーボエ五重奏曲を含めて、立派な演奏を聴かせてくれた。


(以上)(2017/06/05)



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