(最新のHDD録画より;シフのピアノ協奏曲変ホ長調K.482など)
17-6-1、アンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482、2015年1月、モーツアルテウム・大ホール、モーツァルト週間2015、およびイザベル・ファン・クーレンのヴァイオリンとスタインバーグ指揮N響によるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216、
1997年4月12日、N響定期、NHKホール、

−アンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482では、シフの指揮はテンポ感がゆったりとしてとても良く、彼の独奏ピアノもキラキラと良く輝いており、彼のオーケストラと、特に、フルート・クラリネット・バスーンなどと良く噛み合って、豊かなアンサンブルの優れた演奏であった。一方のイザベル・ヴァン・クーレンのヴァイオリンとスタインバーグ指揮、NHK交響楽団の演奏のヴァイオリン協奏曲第三番ト長調K.216の演奏では、しっかりしたスタインバーグの指揮のもとに、クーレンは落ち着いて素晴らしい安定した技巧を示しながら、明るくN響のオーケストラと対話しており、初めてのヴァイオリニストの方であったが、ゆとりのある楽しいモーツァルトの演奏のように思われた−


 (最新のHDD録画より;シフのピアノ協奏曲変ホ長調K.482など)
17-6-1、アンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482、2015年1月、モーツアルテウム・大ホール、モーツァルト週間2015、およびイザベル・ファン・クーレンのヴァイオリンとスタインバーグ指揮N響によるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216、
1997年4月12日、N響定期、NHKホール、
 (2017/04/12のクラシカジャパンの放送をHDD-1に収録、および1997/04/21放送のN響アワーをVHS-217.3に収録)

         6月号の第一曲目の17-6-1は、アンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482であり、2015年1月、モーツァルテウム・大ホールで収録されたモーツァルト週間2015の演奏であった。このDVDはタワー・レコードでも発売されていたが、HDDにクラシカ・ジャパンの放送で収録済みであった。この演奏は、郵船の「2015モーツァルト紀行」で現地旅行した際に、ウイーンのコンツェルトハウスで聴いており、旅行記に報告済みである。第22番とベートーヴェンの第1番のピアノ協奏曲を弾き振りしており、悠々としたおとなの演奏で満足した覚えがあり、アップロードするのが楽しみであった。1曲では寂しいので、古いVHSテープより、イザベル・ファン・クーレンのヴァイオリンとスタインバーグ指揮N響によるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216、を見つけ出したのでアップする。1997年4月12日のN響アワーで放送していたN響定期のNHKホールでの演奏である。この第3番K.216は、まだ未アップの演奏が2曲もあり、アップが急がれていたものである。



     舞台がモーツァルテウム大ホールとなって狭くなり、最初にシフの弾き振りでベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番が始まっていたが、シフはベヒシュタインのピアノを弾いており、オーケストラのカペラ・アンドレア・バルカはコントラバスが左右に分かれて2台いるのが特徴で、トランペットだけが古楽器というような編成であった。シフのあまり肩を張らない悠々とした穏やかなベートーヴェンが聞こえており、もう1曲、シュ−ベルトの交響曲を指揮してから、フィナーレとして、ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K482が始まろうとしていた。 第一楽章はトゥッテイで堂々と現れるアレグロの行進曲調の響きで第一主題が開始されたが、シフはピアノの前に直立して指揮を取り、やがてフルートが高らかに美しく鳴り響いてクラリネットに続いてファゴットへと明るく響き、再びトゥッテイで堂々と結ばれていた。続いて弦楽器のカンタービレが美しい第二主題が現れて、ひとしきり歌ってから提示部が結ばれていた。



    ここでシフの独奏ピアノが長いアインガングで存在感を示しながら登場してから、第一主題が堂々と始まってピアノが装飾しながら繰り返しを行い、続けて独奏ピアノが華やかにパッセージを繰り広げて走りだした。やがて独奏ピアノが第二主題とも言える新しい主題を登場させてから、独奏ピアノが走句のように走り出し、時には弦楽器を相手に、あるときは木管楽器を従えて、早いパッセージが繰り広げられていた。
      展開部ではこの新しい主題のリズムが用いられ、華やかに動き回る独奏ピアノの早いパッセージを軸に木管と弦が応答を続けていたが、まさにシフの出番のような独奏ピアノが主体性を持った展開部であった。再現部ではオクターブのユニゾンの流れるようなピアノの走句に彩られた第一主題が顔を出し、後半が華やかな独奏ピアノのパッセージで結ばれてから、本来の第二主題が木管の美しい響きとともに独奏ピアノで現れ、続いてピアノ提示部の新しい主題も顔を出していた。新全集では自作のカデンツアは示されていなかったが、シフはいつも聴いているような第一主題と第二主題の一部をイメージしたような華やかなカデンツアを弾いていた。
     この曲は木管部が一式揃っており、譜面を見ると木管だけで演奏している部分が多いのが特徴であり、弦楽器、独奏ピアノ、木管楽器の三者が一体となって、素晴らしい効果をあげていた。シフの指揮は、テンポ感がゆったりとしてとても良く、ピアノもキラキラと良く輝いており、オーケストラと、特に、フルート・クラリネット・バスーンとも良く噛み合って、アンサンブルの優れた演奏であった。



       第二楽章のアンダンテは、静かな弦4部だけで始まる深い情感を湛えたような美しい主題が一通り演奏されるが、この楽章はこの主題と5つの変奏を持つ変奏曲となっていた。この弦楽器による主題提示を受けてから、続いてシフの巧みな独奏ピアノが登場してピアノのみによりこの主題が繰り返されていくが、途中から早くも変奏が行われて、独奏ピアノによる第一変奏となっていた。続いて二つのクラリネットが主体になって、フルート、二つのファゴット、二つのホルンによる木管だけの7重奏による優雅な第二変奏が行われていた。第三変奏は独奏ピアノによる力強い和音による変奏が始まり、途中から弦の伴奏を加えて力感溢れる堂々たる独奏ピアノによる変奏になっていた。
       第四変奏は一転して、フルートとファゴットの二重奏の対話と弦楽器を加えた美しい変奏であり、まるでデイヴェルティメントのような錯覚さえ起こさせた。続いてフルオーケストラとピアノによる堂々たる第五変奏がフィナーレの形で力強く開始され、全体を盛り上げるとともに、ピアノがひとしきり技巧的なパッセージを続けた後に、結びの形でファゴットとピアノと弦楽合奏による夢のように美しい豊かなアンサンブルの世界が顔を出して楽章が結ばれた。シフの独奏ピアノは出るたびにキラキラと輝くように弾かれており、シフのピアノは協奏曲の中心として見事なアンサンブルの美しさを醸し出して、変奏曲と言いながらまるで幻想曲のような美しい楽章となっていた。



     フィナーレのアレグロは、ロンド形式で書かれており、軽やかにスキップを踏むようにピアノと弦楽合奏でロンド主題が始まり、実に生き生きと弾むように進行していた。続いてホルンや木管の合奏も加わって、まるで狩りの音楽のように軽快に進み出す。そして輝くような早いシフの独奏ピアノのパッセージが続き、早いピアノが木管と重なったり、弦楽器が伴奏しながら進行していた。やがて、独奏ピアノが第一のクープレに突入するが、この愛らしい主題もピアノから木管に渡され、技巧的なめまぐるしいピアノのパッセージが続けられてから、冒頭の輝くようなロンド主題が再現していた。
    続いてフェルマータの後に現れる第二のクープレは、クラリネットが中心となる木管の奏するゆっくりしたメヌエット風のアンダンテイーノ・カンタービレとなり、セレナードのような和やかな雰囲気になっていた。そしてシフの独奏ピアノと第一ヴァイオリン、クラリネットと木管アンサンブル、さらにピアノと弦楽器にピッチカートの参加という順番に穏やかなカンタービレが繰り広げられていた。 再びフェルマータの後、冒頭の軽快なロンド主題が再現され、いつの間にか第一クープレの愛らしい主題も再現されてから短いカデンツアがあって、最後は再びロンド主題が登場して、サービス満点の賑やかなフィナーレが終了していた。

       フィナーレのロンド楽章は、第2クープレでお化粧することが多いが、この曲では木管楽器がひときわ豊富なので、多様な組合せで独奏ピアノや弦楽器とからむことが多く、ロンド楽章の総仕上げのような多彩な彩りを見せていた。シフと手勢のカペラ・アンドレア・バルカの皆さんには、シフの奥さんの顔も見え、独奏ピアノとのアンサンブルを楽しんでいるかのような雰囲気で、弾むようにこのロンド楽章を仕上げていた。私のHPにあったウイーンのコンツェルト・ハウスのライブでは、アンコールがあり、それはバッハのピアノ協奏曲からピアノとピッチカート伴奏による素晴らしい楽章(恐らくヘ短調BWV1056の第二楽章)が楽しくアンコールされていたが、ザルツブルグのこの映像では、残念ながらアンコールの映像がなく、フィナーレが終わるとそのままお仕舞になっていた。




       続いては、イザベル・ヴァン・クーレンのヴァイオリンとスタインバーグ指揮NHK交響楽団の演奏でヴァイオリン協奏曲第三番ト長調K.216の演奏であり、1997年1月22日、NHKホールでの収録となっていた。N響アワーの池辺さんと檀ふみによる案内によると、ヴァイオリニストのクーレンは、若いオランダ出身の女流であり、ロストロポーヴィチのお弟子さんでヨーロッパで学んでおり、数々のコンクールで入賞歴のある方であった。スタインバーグと並んで入場してくると、クーレンは指揮者と変わらぬ背丈で大柄な印象であり、元気よく登場していた。
        曲はスタインバーグの一振りにより、いきなり全員のトゥッティで第一主題を開始していた。オーケストラの様子を良く見るとコントラバスが三台のしっかりした弦5部とオーボエ・ホルンからなるオーケストラであった。この長いアリア風の第一主題の合奏が威勢よく続いてから、直ぐにオーボエとホルンが導く第二主題が表れてオーケストラによる主題提示部が盛り上がりを見せながら、勢いよく進行していた。



           そこで大柄のクーレンの独奏ヴァイオリンが、1オクターブ高く、勢いよく第一主題を弾き始め、早速、明るく装飾音を加えながら実に丁寧に弾き始めていた。彼女のヴァイオリンは明るく晴れやかで威勢の良い印象。そして、短いトゥッティのオーケストラの後に、直ぐに第三の新しい美しい主題を華やかに弾き始め、それから早い技巧的なパッセージが続いてソリストの見せ場を作ってから、オーボエの重奏で第二主題が提示されて、再び独奏ヴァイオリンが元気よく活躍しながら提示部の後半を盛り上げていた。
          展開部はまずトゥッティで始まり短調の陰りを見せながら進行してから独奏ヴァイオリンが新しい主題を出して繰り返し、トゥッティ、独奏ヴァイオリン、オーボエなどの順に展開されて規模が大きくなっていた。そしてフェルマータの後一息ついて、再現部に突入していたが、ここではトゥッティに始まり独奏ヴァイオリンが続いて第一主題を提示した後に、第三の主題が独奏ヴァイオリンで弾かれ、続いて第二主題へと進み、ほぼ型通りにの進んで盛り上がってからカデンツアとなっていた。クーレンはオリジナルのカデンツアで、各主題の一部を回想するように表情豊かに技巧を散りばめながら仕上げていたが、華麗なヴァイオリンの音色が示されていた。スタインバーグの指揮のもとに、クーレンは落ち着いて素晴らしい安定した技巧を示しながら、明るくオーケストラと対話しており、初めての方ではあるがゆとりのあるしっかりした演奏のように思われた。



           第二楽章ではアダージョで、オーボエの代わりにフルートが用いられ、全楽章が穏やかなピッチカート伴奏で進行する美しい楽章である。始めにトゥッティで4小節の美しい主題がピッチカート伴奏で始まるが、直ぐクーレンの独奏ヴァイオリンがオクターブ高く繰り返して進行し、ピッチカートの伴奏で独奏ヴァイオリンがこの穏やかな美しい主題を明るく歌い、変奏を加えながら繰り返していた。続いてフルートとホルンの重奏と独奏ヴァイオリンが交互に第二主題を提示して繰り返されていた。
          続く短い展開部では、第一主題前半のモチーブによる独奏ヴァイオリンの一人舞台であり、続けて始まる再現部では、クーレンの独奏ヴァイオリンが中心になって再現され、第二主題も現れてフェルマータに導かれてカデンツアとなっていた。短いカデンツアは第二主題中心のものであったが、クーレンは素晴らしい技巧でカデンツアを仕上げていた。最後はコーダのあと独奏ヴァイオリンが第一主題を弾きだして終わるという変わった試みで、味わい深い静かな終わり方であった。



           第三楽章はフランス風にRONDEAUと書かれたアレグロ楽章であるが、モーツァルトはいつも、単なるロンド楽章ではなく、中間部にいろいろな工夫を試みている。まずオーケストラで耳慣れた楽しいロンド主題が軽やかに提示され、続いて独奏ヴァイオリンがロンド主題を繰り返していくが、クーレンはこの主題を実に軽快に進め、その後は新しい主題を独奏ヴァイオリンが提示する形でA-B-A-C-A-と、颯爽とロンド形式の形で進んでいた。
         ところがロンド主題を終えてフェルマータの後、曲は一転して短調風のアンダンテとなり、独奏ヴァイオリンが弦のピッチカートに乗って、軽やかに美しい新しい歌を歌い出し繰り返された。おやおやと驚く間に、続いて曲調はアレグレットに変わって、再び独奏ヴァイオリンが民謡調の別の主題を歌い出し、更に独奏ヴァイオリンの重音奏法の新しい主題が提示されて繰り返されていた。この新しいフランス風の気まぐれな飛び込みは、新鮮な印象を与えていたが、フェルマータの後に、再び始めのロンド主題に戻ってこの楽章は静かに終わっていた。モーツァルトが協奏曲の連作時に見せるロンド楽章のこうした思わぬ新しい変化は、この曲あたりから目立つようになり、先のピアノ協奏曲第22番のロンド楽章でも引き継がれており、何時も楽しみを持って迎えられていた。

       クーレンのヴァイオリンとN響は、実に持ちつ持たれつの温かみのある演奏に終始し、とても軽快で楽しい演奏であった。このK.216の第3番の協奏曲はとても人気のある協奏曲であり、私には第3番、4番、5番が拮抗した名曲が続いていると感じているのに、HPでの集まっている曲数を調べてみると、第3番が18演奏に対し、第4番が7演奏、第5番が10演奏と他を引き離しており、これは人気の程度を示していると思われる。この曲にはまだ未アップの古い演奏がまだ2組もあり、まだ「総括」の完成には、大幅に時間がかかるものと思われる。


(以上)(2017/06/02)



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