(最新のHDD録画より、バボラークによるホルン協K.514/K.417/K.412、)
17-5-2、ラデク・バボラークとバボラーク・アンサンブルによるホルン協奏曲集より、ロンドK.514、ホルン協奏曲第2番変ホ長調K.417、およびアレグロニ長調K.412、
2016年11月26日、第一生命ホール、東京、

−このバボラーク・アンサンブルのホルン協奏曲のニ長調のアレグロ楽章K.412やロンド楽章K.514の演奏を聴いて、改めて新全集の譜面や記述を見直ししたところであるが、このK.412のアレグロ楽章を聴くたびに、最晩年のモーツァルトの姿を思い起こすのは私だけだろうか。映像でこの曲の演奏を見ると、彼らの演奏はとても室内楽的であるが、なかなか楽しい明るい演奏になっている。こうした思いを深めるのには、新しいCD全集のCD98やCD87を併せて聴くと、都合が良いと思われる−


(最新のHDD録画より、バボラークによるホルン協K.514/K.417/K.412、)
17-5-2、ラデク・バボラークとバボラーク・アンサンブルによるホルン協奏曲集より、ロンドK.514、ホルン協奏曲第2番変ホ長調K.417、およびアレグロニ長調K.412、
2016年11月26日、第一生命ホール、東京、
(2017/03/09、NHKクラシック倶楽部の放送をHDD-5に収録、)

             5月号の第2曲目は、日本で良く活躍しているチェコのホルン奏者ラデク・バボラークと彼の仲間たちのアンサンブルで、珍しくホルン協奏曲を収録したので,早速、アップしたい。恐らく、全曲とホルン五重奏曲とを演奏したコンサートであったろうが、NHKのクラシック倶楽部では、その半分のK.514、K.417、およびK.412の3曲しか含まれていなかった。しかし、ホルンのソロは素晴らしく、なかなか気持ちの良い優れたアンサンブルであったので、早めにアップロードすることにしたものである。バボラークはバレンボイムの指揮で06年にベルリンフイルとホルン協奏曲第1番K.412/K.514をDVDに残していた(6-11-1)が、この時はまだこの曲は第1番とされて大らかに演奏されており、まだレクイエムと並ぶ最後の遺作であるとは考えられてはいなかったかも知れない。今回、もう一度良く調べ、良く聴いて確かめてから、この辺の事情を改めてご報告したいと考えている。



              私が持っている赤本の1987年のギーグリングが校訂した新全集では、ホルン協奏曲は、K.417(1783/05/27)、K.447(1787)、K.495(1786)、K.412(1791)の順に記載されており、K.412は1791年の作として第1楽章のみとされていた。そして付録の断片として、K.370b、K.371、K.494a、K.412のロンドの4編が収録されていた。さらに付録には、これまでの版としてK.412+514(ジュスマイヤーによるロンド)が掲載されており、K.412のロンド楽章は、断片の自筆譜と弟子の補作によるK.514とを仕分けされていた。今回の、バボラークの演奏は、この新全集の解釈通りに演奏されており、第1曲がK.514のロンド楽章(ジュスマイヤー編)であり、第2曲がK.417の協奏曲、 第3曲がK.412のアレグロ楽章、の順に演奏されていた。



            最初に演奏されたK.514のロンド(ジュスマイヤー編)のオーケストラには、2オーボエとホルンが含まれているが、今回のアンサンブルは弦5部の伴奏により行なわれていた。この曲は、従来のホルン協奏曲第1番K.412/514の第2楽章とされてきたが、ここでは、この第2楽章の断片をジュスマイヤーが補作した独立した曲として扱っている。このロンドはA-B-A-C-A-D-Aの形式を取る標準的なロンド形式となっているが、このロンド主題のAの部分が、およそモーツァルトが断片で残した部分となっていた。この曲は弦楽合奏で勢いよくアレグロで狩のロンド主題で始まり、独奏ホルンが朗々とこの主題を繰り返して行くが、Bの部分は冒頭主題から転じた副主題になっており、軽快に進んでから再びロンド主題が再現されていた。そして新しいエピソードが独奏ホルンで現われてオーケスタラに渡されてから、独奏ホルンが第一ヴァイオリンと一緒になって伸びやかな美しいエレジーが現われていた。この部分は「エレミアの哀歌」が引用されていると言われており、ジュスマイヤーが尊敬する師モーツアルトの死を悼んで挿入したとされている。曲は再びロンド主題に突入し、さらに新しいエピソードが現われて進行するが、再びロンド主題が登場して、独奏ホルンの威勢の良さを見せながら、最後まで軽快さを保ちながら終息していた。



         バボラークの独奏ホルンは、実に安定しており、緩急・強弱が自在で安心して聴いていれる演奏であったが、弦五部の弦楽合奏がホルンと一体になったり、独立したオーケストラとなったりして実に柔軟な演奏を見せ、ホルンと見事なアンサンブルを見せていた。弦楽器の5人とホルンは一体であり、ホルンは合図するだけで指揮のそぶりを見せるまでもなく、その名の通りのバボラーク・アンサンブルであった。

         バボラークのホルンとアンサンブルの第2曲目は、従来、ホルン協奏曲第2番とされてきた変ホ長調のホルン協奏曲K.417であり、アレグロ・アンダンテ・ロンドの3楽章で構成されていた。この曲はこのHPで初出であり、1783年5月27日の日付けを持ち、友人のホルンの名手ロイトゲープのために作曲された。この曲は、2オーボエ、2ホルンと弦4部のオーケストレーションであるが、今回は弦5部で演奏されていた。



         第1楽章はアレグロ・マエストーソの協奏的ソナタ形式で出来ており、第1提示部では、第一主題は第一ヴァイオリンが弱奏する余り特徴のない旋律の主題で弦五部により威勢良く進行した後に、第二主題が第一ヴァイオリンで提示され、その主題がリズムを刻むように進行してオーケストラによる主題提示部を終えていた。そこで独奏ホルンが新たな主題を吹きながら登場するが、これは第一主題と関係が深く、ホルンがオーケストラと一体になって威勢良く進行し始めた。やがて第二主題が独奏ホルンにより開始され、ホルンが技巧的なパッセージを示しながら進んでいたが、ここはバボラークの腕の見せ所。続いて第一ヴァイオリンが第三の主題を提示して独奏ホルンも加わって繰り返され、盛り上がりながらオーケストラは一気にコーダへと進んでいた。
         展開部は、独奏ホルンが新しい美しい主提示して、弦の細かな動きの伴奏にホルンが転調を重ねながらこの主題を展開していた。再現部では、オーケストラで第一主題が提示されてから独奏ホルンが導入主題を吹き出して、それから第二主題・第三主題へと移行して、主題の順序を変えて再現されていた。カデンツアも省略されて、独奏ホルンは、余り華やかな出番がないアレグロ楽章であった。



         第2楽章はアンダンテ楽章であり、単純なA-B-A-B-Aの歌謡形式か。 第一主題は10小節の短い主題でオーケストラで開始されるが、独奏ホルンに引き継がれて ホルンがしっかりと深みのある味わいを見せていた。第二主題は独奏ホルンが提示して短い推移を見せていた。再び、始めに戻って今度は独奏ホルンが堂々と第一主題を提示して全体が大きく繰り返されていたが、第一主題だけがもう一度顔を出してから、静かに結ばれていた。



         フィナーレは狩のロンド形式で、いきなり独奏ホルンが調子の良い狩のロンド主題を吹き出してから、その主題がオーケストラに渡され繰り返されていた。ホルンの独奏が経過部を推移してからオーケストラが第1のエピソードに入ると、ホルンが直ちにギャロップのリズムに入り、オーケストラに渡されていた。ここでフェルマータの後に独奏ホルンが再びロンド主題を歌い始め、オーケストラが繰り返していくと、独奏ホルンがギャロップを繰り返してから第二のエピソードを奏でようとするが、ここで第1ヴァイオリンがからかうような音形でギャロップの合いの手を入れていた。ここで三度目のロンド主題が現われると、独奏ホルンが第1のエピソードを再現してからギャロップのリズムを繰返していた。四度目のロンド主題が再現されると、テンポがピゥ・アレグロになってテンポを速め、ふざけたように弦がギャロップのリズムになって一気に進行し、独奏ホルンもギャロップのリズムになって勢いよく終息していた。
        最後のフィナーレは、途中からふざけたようなギャロップのリズムがホルンを支配し始め、次第にそれが拡張されて、最後には弦もホルンもギャロップのリズムになって早いテンポで一気にふざけたように終わっていた。



           ホルンのバボラークによる第3曲目は、アレグロK.412であるが、これはかってホルン協奏曲第1番と言われた曲の第一楽章であった。この曲は、新全集では1791年、ウイーンでの作K.412+514と言うことになっており、レクイエムと同様に514部分が未完成の遺作という扱いになっている。しかし、ここではホルン協奏曲楽章のアレグロとして独立して演奏されていた。

         この曲は第1ヴァイオリンの実に素朴な牧歌的な旋律のアレグロの第一主題で開始される。これが繰り返されて勢いのある楽句がこの主題を断ち切ると、直ぐに嬉々としたエピソードが現われてフルオケにになって楽しげに終結する。簡潔な第1提示部であり、続いて独奏ホルンが登場して第一主題を提示すると、歯切れの良いオーケストラとホルンとが応答を繰返してから、独奏ホルンが軽やかに愛らしい第二主題を提示していた。そしてホルンとオーケストラとが楽しげに歌い交わしてホルンがトリルで終結し、トウッテイで賑やかに第2提示部が結ばれていた。



          再び第一ヴァイオリンにより第1主題が提示されると、これはもう展開部。独奏ホルンとオーケストラが歌い交わし、転調して独奏ホルンが第1主題を続け、これを受けてトウッテイがひとしきり強奏して輝かしく展開部を終了すると、独奏ホルンが再び第一主題を再現し始めた。独奏ホルンが協奏曲らしく技巧を示しながら進行してから、今度は第1ヴァイオリンが第二主題を提示して、ホルンと交互に応答しながらホルンはトリルで終息し、トウッテイのコーダでこの楽章はさらりと結ばれていた。

          用紙研究の結果、タイソンがこの楽章が1791年の最後の10ヶ月という結論を導き出したのは凄い慧眼であり、私はこの曲を聴くたびに、最後の年の作品とされるK.595やK.622の協奏曲の素朴な響きに、どこかしら近いものを感じざるを得ない。と思うのは、果たして私だけなのであろうか。



          以上の記述のように、この楽章は協奏的ソナタ形式の形を借りて、素朴な主題が実に淀みなく流れるように提示され、展開部そして再現部へと正しく流れて、形式を整えているのであるが、ロンド楽章に入って、元気の良いロンド主題が流れ始めてかなり進んでいたのに、どうして途中で中断してしまったのであろうか。新全集にはこのロンドK.412(386b)の中断した自筆稿と、そのファクシミリが掲載されており、何が残されているか見ることは出来るが、何故かを知ることは出来ない。そして謎めいた書き込みの言葉もあるようであるが、それは良く分らないままに残されている。

           このバボラーク・アンサンブルの演奏を聴いて、改めて新全集の譜面や記述を見直ししたところであるが、このK.412のアレグロ楽章を聴くたびに、最晩年のモーツァルトの謎を思い出す。映像で見ると、彼らの演奏は室内楽的であるが、なかなか楽しい演奏になっており、こうした思いを深めるのには都合が良いと思われる。なお、3月に入手したM225のCD200 全集では、ホルン協奏曲ニ長調K.412+514は、アバドとオーケストラ・モーツァルトの新盤CD98(2006)で、奇しくもK595 とK622とを同時に聴くことが出来る。また、もう1枚のホグウッドのCD87(1994)では、ロンド楽章をJ.ハンフリー版とジュスマイヤー版の2組で聴くことが出来、われわれの最晩年の謎を考える場を提供してくれている。


(以上)(2017/05/13)



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