(最新のHDD録画より;バレンボイム&WEDOのK.297bなど)
17-5-1、バレンボイム指揮ウエスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラ(WEDO)による協奏交響曲変ホ長調K.297b、2016年12月10日、世界人権デー特別演奏会、ジュネーヴ国連事務局パレ・デ・ナシオン内ホール、および関西若手ソプラノによるオペラ・アリア集より3声のカノンK.562ほか、
2011年4月11日、NHK大阪放送局スタジオ、

−8ヶ国の人々からなるWEDOのオーケストラによるオーボエ、ファゴット、ホルン、クラリネットのための協奏交響曲K.297bは、バレンボイムの前向きな指揮とソリストたちの活力ある演奏によって、練習不足にもかかわらずまずまずの立派な演奏を聴かせてくれた。最後のバレンボイムのご挨拶が、この演奏会の意義を示してくれた。一方の関西若手ソプラノによるオペラ・アリア集でアップ出来るのは、3声のカノン「私の大好きな愛しい人よ」K.562の1曲だけであるが、この1曲の素晴らしい歌声で、カノンの存在を改めて気づかせてくれた−


(最新のHDD録画より;バレンボイム&WEDOのK.297bなど)
17-5-1、バレンボイム指揮ウエスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラ(WEDO)による協奏交響曲変ホ長調K.297b、2016年12月10日、世界人権デー特別演奏会、ジュネーヴ国連事務局パレ・デ・ナシオン内ホール、および関西若手ソプラノによるオペラ・アリア集より3声のカノンK.562ほか、
2011年4月11日、NHK大阪放送局スタジオ、
 (2017/03/20のクラシカジャパンの放送をHDD-5に収録、および2014/05/19のNHKクラシック倶楽部の放送をHDD-2に収録)

        5月号のトップは、クラシカ・ジャパンの放送を収録しているHD-2の最新の収録曲として、まずバレンボイムとWEDO(ウエスト=イースタン・デイヴァン・オーケストラ、以下WEDOと略称) の協奏交響曲変ホ長調K.297bの世界人権デ−特別演奏会2016での最新演奏を取り上げることにした。この演奏会は、国連本部のあるジュネーブで、2016年12月10日、ジュネーブ国連事務局パレ・デ・ナシオン内の人権理事会会議場で収録されたものであり、ハイドンのチェロ協奏曲との2曲が収録されていた。今回のこの協奏交響曲変ホ長調K.297bは管楽器の4人のソリストが必要で、演奏機会の少ない曲であるが、バレンボイムは前回も10年前に、このオーケストラでこの曲を演奏(9-11-4)しているところから、管楽器に優秀なソリストが多いオーケストラだから、今回もということになったのであろうと思われる。この1曲だけでは物足りないと考えて、この映像の後に、NHKのクラシック倶楽部の映像から、「三人の若手のミューズたち」による三声のカノン「私の大好きな愛しい人よ」K.562をこのファイルに追加してみた。この曲はカノンの数少ない逸品で、この演奏は関西の若手ソプラノ三人のアリア集からであり、冒頭にこのカノンが美しい映像で歌われたのでその声の美しさにしびれてしまったものである。HVの映像でとても美しかったのでご期待いただきたい。



       最初のコンサートの会場は、国連本部の大会議室か、中央の扇の形をした舞台を中心に、写真のような円形に机と椅子が広がる形状のホールであった。第1曲目はハイドンのチェロ協奏曲ハ長調であり、第二曲目がオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンのための協奏交響曲変ホ長調K.297bであった。大ホールの狭い舞台は楽団員で満席であり、4人のソリスト達は指揮者の周りを囲んでいるが、座っているので余り目立たない。指揮者を中心に、左からオーボエ、ファゴット、ホルンの三人が女性であり、右端がクラリネットの順であった。この曲はソリストが4人もいるので、映像で見ながら聴く方がCDよりも遥かに良く理解できる曲の一つであった。




     第一楽章は協奏曲風のソナタ形式で出来ており、まず弦楽器のユニゾンで特徴あるリズムを持った第一主題が力強く始まり、オーボエと第一ヴァイオリンによる掛け合いで副主題が提示されて、アレグロ・マエストーソの指示通りに堂々と進行していた。続いて第二主題が第一ヴァイオリンにより呈示されていたが、バレンボイムは余り体を動かさず、両手を広げて流れるように指揮をしていた。オーケストラも協奏交響曲と名付けられたように時には3本のコントラバスによる重奏低音を伴いながら行進曲調のリズムで主題提示部が終わっていた。そこで4つの独奏楽器がユニゾンで第一主題を合奏してソロ提示部に入り、オーケストラの伴奏で、オーボエから始まってクラリネットも歌い出し4つのソロ楽器のアンサンブルで進行し、実に美しく良く響く素晴らしい効果を挙げていた。再び冒頭主題がユニゾンで繰り返され、オーケストラに導かれて再び独奏楽器がホルンやクラリネットから始まり、組み合わせを変えて進行していた。そしてオーケストラに渡されてからやがて美しい素朴な第二主題がオーボエで現れ、クラリネットに受け継がれてさらに勢いを増し、堂々とした行進曲風のコーダに発展していた。独奏楽器はさすがにオーボエの出番が多く、クラリネットも良く活躍し、ファゴットとホルンも旋律的な出番がありながら、しっかりと低音を支えていた。




      展開部ではファゴットとホルンが先の主題の一部を繰り返して始まり、4つの独奏楽器群が組み合わせを変えながら、技巧的な特徴を見せながら、繰り返し力強い主題の展開を行っていた。再現部では独奏楽器中心に第一主題から第二主題へと提示部よりコンパクトに纏められて再現されて進んでいたが、最後の4人のソリスト達によるカデンツアは、オーボエのソロに始まりファゴットとホルンがこれを受け、クラリネットが発展させる長大であるが各楽器の出番が多い賑やかなものであったが、舞台では若い4人が顔を揃えて、堂々と存在感ある演奏を示していた。
       紹介が遅れたが、ソリストたちは、右から順にオーボエが、クリスティナ・ゴメス・ゴトイ、ファゴットが、ゼイネプ・コイリョグル、ホルンが、メウヴ・ゴールドマン、クラリネットがユセフ・エイサたちであった。




             この曲の第二楽章は4つのソロ楽器が実に良く歌い美しく絡み合って、まるで夢を見ているような美しいアダージョ楽章。初めは弦のユニゾンでゆっくりと第一主題が提示されるが、直ぐにファゴットが、そしてクラリネットが引き継いで歌い出し、オーボエに渡されると旋律的な動きになり、ホルン、クラリネットと歌い継がれて4つの独奏楽器の独壇場となり、互いに重なり合い絡み合いながら実に美しい情景を醸し出していた。バレンボイムは何もせず4人に任せているような素振りで浸りきっていた。やがてオーケストラが顔を出し一息入れてから、やがて第二主題がオーボエにより歌われ、クラリネットがこれを引き継いで、再び綿々とした4つの楽器の絡み合いが始まり、二つの主題が渾然一体となったような素晴らしい楽章となっていた。
            展開部ではファゴットが歌い出し、これにオーボエが第二主題の応答句で応えて穏やかに推移していた。再現部では楽器の組み替えがなされているほかは型通りに進められていたが、4本のソロ楽器がいろいろ顔を出し、賑やかに進められていた。




         フィナーレは、すっかり趣を変えた調子の良い主題と10の変奏曲であり、主題はピッチカートの伴奏に乗ってオーボエが陽気に主題を吹き出し、4つの独奏楽器の合奏で引き継がれたあと後半は、オーケストラが合奏で締めくくる面白い変奏テーマで、前半の4つの独奏楽器の部分がいろいろと楽器を変えリズムを変えて変化ある形に変奏されて進められる形式の面白い変奏曲になっていた。
  第一変奏はクラリネットで始まりホルンとファゴットがこれを受け、交互に繰り返されていた。第二変奏はファゴットで始まり、途中で4管の合奏となり、これが繰り返される変奏であった。第三変奏はクラリネットとそれにホルンとファゴットが活躍する変奏となり、他の2管は伴奏であった。第四変奏は、オーボエのソロとファゴットとホルンの伴奏で賑やかであった。第五変奏はオーボエとクラリネットが掛け合いで調子よく進むものであった。バレンボイムは、ソロの4人に任せてしまったような落ち着いた仕草で指揮をしていた。




       第6変奏はオーボエの早いテンポのパッセージが続く変奏で、クラリネットも続き、他の独奏楽器も組み合わせを変えて顔を出していた。第7変奏はホルンのどっしりしたソロで始まって、他の楽器が技巧的なフレーズを追加していた面白い変奏。第8変奏はピッチカートの早いリズムで展開され、オーボエとクラリネットがソロと合奏で、ピッチカートの伴奏で掛け合っていた。第9変奏はホルンとオーボエの掛け合いで進行し、これがクラリネットに引き継がれていた。最後の第10変奏ではオーボエのソロで軽快に始まった後、アダージョにテンポを落としてから、一息おいてオーケストラがアレグロに転じコーダ風に華やかに急速に終結していた。
   この楽章は実に伸び伸びとしたテーマに乗って、ピッチカート伴奏も軽快で、気持ちよく明るく弾むように進行するので、見ていて見応えのある楽しい変奏曲であり、ソリストたちもやり甲斐のある楽章となっていた。バレンボイムはリズムを取るだけで、ソリストもオーケストラも伸び伸びと楽しげに演奏して終息となっていた。




     大変な拍手で迎えられて、4人のソリストとバレンボイムは忙しく挨拶を繰り返していたが、ソリストたちに花束の贈呈もあって盛り上がっていた。それでも拍手が鳴り止まなず、それを見てバレンボイムが、一言ご挨拶すると言ってマイクを手にした。「今日の5人のソリストたちは、イランの人、イスラエルの人、パレスチナの人、トルコの人、そしてスペインの人です。ここで拍手の後、これらの国の出身者が一堂に会することはないでしょう。そこで質問です。何故、音楽の場ならそれは可能なのか。それは、このオーケストラなら実社会では得られないものが得られるからです。それは平等です。平等が土台になければ、対話は語れません。力の差があったり、権利の差があったりしたら、対話について語れません。これを強く思ったのは、本日に向けてここ数日リハーサルをしていた時です。国連の皆さんにわれわれを向かえていただき、世界人権デーに演奏が出来、大変光栄に思っております。」と語っていた。

     しかし、拍手が鳴り止まず、さらに常に心にあることをもう少しお話ししたいと語り出した。シリアの危機は、中東の危機、難民問題を抱えた欧州の危機、そして今や世界の危機になっていることを述べ、このオーケストラには、上記の5国の他にシリア人、レバノン人、エジプト人もいるが、われわれWEDOは多くを共有いている。政治的見解は共有出来ないが,音楽については100%合意している。やれば出来る。だから世界でも難民の援助に協力して欲しい。中南米にシリア人、パレスチナ人、レバノン人のコミュニテイがあり、アルゼンチン、チリ、ブラジルにもあります。だから欧州でも、世界でも、もっともっと難民を受け入れることが出来るはずです。」と熱心に語っていた。




        前回のWEDOの演奏会は、ザルツブルグ音楽祭でモーツァルテウムのグロッサーザールであったのでこのようなバレンボイムの演説はなかったが、今回の話で、この曲が取り上げられたのは、5人のソリストたちへの平等と音楽的合意を図るために必要な曲であることが理解できた。また、10年後にこの曲を聴きたいし、その時には難民問題はかなり解決されているのではないかと考えたりもした。  (以上)(2017/05/03)







このファイル17-5-1の第二の映像は、がらりと変わって、NHKのクラシック倶楽部の関西の若手ソプラノたちによるオペラ・アリア集と題された美しい映像で、その第一曲目のオープニングで、モーツァルトのカノン「私の大好きな愛しい人よ」K.562が歌われており、一瞬、その三人が歌う透明な歌声とミューズの画像に惹き付けられてしまった。この三人のソプラノは、このカノンを三人で歌ってから、以下のオペラからのアリアをピアノ伴奏で、また衣裳や小道具を持って、オペラの場面を想定して4曲も歌っているので、以下に紹介しておこう。



1、オペラ「魔笛」より、第14番「夜の女王」のアリア、K.620-14、高嶋優羽、
2、オペラ「魔笛」より、第17番 パミーナのアリア、K.620-17、 端山梨奈、
3、オペラ「コシ」より、第12番 デスピーナのアリア、K.588-19、内藤里美、
4、オペラ「フィガロ」より、第13番、スザンナのアリア,K.492-13、内藤里美、



        続いて、彼女たちは、5、グノーの「ロメオとジュリエット」から「私は夢に生きたい」(端山)、6、ベルリーニの「ロメオとジュリエット」から「おお、いくたびか」(内藤)、7、ヴェルデイの「リゴレット」から「慕わしい人の名は」(高嶋)、8、ヨハン・シュトラウスの「こうもり」から「いなかの娘の姿で」(端山)、9、オッフェンバックの「ホフマン物語」から「守の小鳥は」(高嶋)、10、グノーの「ファウスト」から「宝石の歌」(内藤)などのアリアを順番に歌っており、最後に、プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」を、最初のカノンのように3重唱で歌って、可憐な姿をご披露していた。






        このようにスタジオでピアノ伴奏ではあるが、自由に衣裳を着て、素敵な身振り手振りでアリアを歌う試みは、これまで余りなかったので、若い歌い手たちの元気な姿を見て、とても楽しい雰囲気であった。それにしても、最初と最後の3重唱がとても気に入ったので、このファイルは、冒頭のカノン「私の大好きな愛しい人よ」K.562を紹介するものとしてここにアップロードする。

         このカノン「大好きな愛しの人よ」K.562 は、このHP初出なので、この曲について若干の説明が必要である。この曲は、1788年9月2日の自筆作品目録の日付けで書き入れられた10曲のカノン(K.553〜K.562)の最後の曲である。モーツァルトは、ウイーンの宮廷楽長をしていたアントーニョ・カルダーラの「7つのカノン」から歌詞を引用して、K.555、K.557、K.562の3曲のカノンを作曲した。カルダーラのカノンは、一般にカノンのテキストとして好まれていたようで、シューベルトも作曲しているようだ。

       この曲は、「あ、大好きな愛しの人よ。私をいつまでも忘れないで!」という短い詩に、3声用にカノンを作曲している。譜面を見ると、11小節の主題を各声部が5回繰り返して歌われるおよそ3分半の短い曲であるが、3声がしっとりと絡みつくように歌われて、見事に調和が図られていた。この曲はカルダーラの原曲に良く似ているそうであるが、単純ではあるが演奏によってはとても美しい。今回の関西若手ソプラノのミューズたちによるカノンを聴いて、私はビックリしてしまった。この10曲のカノン中に3声の曲はこれだけであり、不思議とこれまでこの曲と親しむ機会がなかたようである。

       私のこのK.562のデータベースでは、2017/05/01現在で、何枚かあるカノン集のCDには女性の3声というのは含まれていなく、どうやらPH全集のカノン集にだけ含まれていたので、今回のこの映像は極めて貴重であると言わなければならない。カノンというと、「おれの尻をなめろ」とか「おお、馬鹿なマルテインよ」といった下賤な曲ばかりが多いと軽蔑して扱ってきたが、この1曲で考えを改めた。最新のM225のCD173には、さすがに、ベルリナー・ゾリステンの素晴らしいものが、含まれていた。


(以上)(2017/05/05)


       
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