(最新のHDD録画より、初期のヴァイオリン・ソナタの二つの演奏)
17-4-3、小林道夫のチェンバロと松本紘佳のモーツァルト・ヴァイオリンによるヴァイオリン・ソナタハ長調K.6(第1番)およびニ長調K.29(第14番)、2009/12/11、国立新美術館(六本木)、およびヴァイオリンの川田知子とチェンバロの中野振一郎によるヴァイオリンソナタト長調K.27(第12番)、
2014/07/24、LICはびきのホール、大阪府羽曳野市、

−「甦るモーツァルト神童ヴァイオリン」と題されたモーツァルテウム財団総裁から日本に提供された少年モーツァルト用のピッコロ・ヴァイオリンを使用したミニコンサートは、ヴァイオリン奏者には14歳の松本紘佳が選ばれ、小林道夫のチェンバロで初期のヴァイオリン・ソナタからハ長調K.6(第1番)とニ長調K.29(第14番)が演奏されたが、少年モーツァルトを思い起こさせる好演・好企画であった。また、川田知子のヴァイオリンと中野振一郎のチェンバロによる「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」のデュオ・コンサートで、モーツァルトの「バイオリンの伴奏つきチェンバロソナタ」ト長調K.27が3曲目に演奏されていたが、コレルリやバッハに混じって遜色ないバロック的響きを聴かせていた−


(最新のHDD録画より、初期のヴァイオリン・ソナタの二つの演奏)
17-4-3、小林道夫のチェンバロと松本紘佳のモーツァルト・ヴァイオリンによるヴァイオリン・ソナタハ長調K.6(第1番)およびニ長調K.29(第14番)、2009/12/11、国立新美術館(六本木)、およびヴァイオリンの川田知子とチェンバロの中野振一郎によるヴァイオリンソナタト長調K.27(第12番)、2014/07/24、大阪府羽曳野市ホール、
(2014/07/24、NHKクラシック倶楽部の放送をHDD-2に収録および2010/03/28、クラシカ・ジャパンの放送をBD-27に収録)

       四月分の第3曲目は、3月号において初期ヴァイオリン・ソナタのデータベースを作成中に、最近身近なBDとHDDに収録した3曲、K.6、K.29、およびK.27、などに気がついたので、この際にまとめてアップしなければ忘れてしまうと考えたものである。最初の映像はクラシカ・ジャパンの放送で「甦るモーツァルト神童ヴァイオリン」であり、2010年ころのBDデイスクに収録されていたものであるが、日本・オーストリア修交140周年を記念して、モーツァルテウム財団総裁から日本に提供された少年モーツァルト用のピッコロ・ヴァイオリンを使用したミニコンサートの映像であった。ヴァイオリン奏者には14歳の松本紘佳が選ばれ、小林道夫のチェンバロで初期のヴァイオリン・ソナタからハ長調K.6(第1番)とニ長調K.29(第14番)が演奏されたものである。
        もう一組の初期ヴァイオリン・ソナタは、チェンバロの中野振一郎とヴァイオリンの川田知子による「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」演奏会で、コレルリ、バッハ、ルクレールなどの曲に混じって3曲目に、ト長調K.27(第12番)が演奏されていたものである。このソナタはこのHP初出となるが、K.29と同様にハーグソナタ(K.26〜K.31)の第2曲目に相当する曲で、本格的な演奏となっていた。



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       始めのコンサートの映像は、クラシカジャパンの30分番組による放送であり、タイトルは「甦るモーツァルト神童ヴァイオリン」とされており、現在ザルツブルグのモーツアルテウム財団が管理する博物館「モーツァルトの生家」に展示されているモーツァルトが子供の頃に弾いたとされるピッコロ・ヴァイオリンによる日本での演奏会の様子であった。この珍しい少年用のヴァイオリンは、アンドレアス・フェルディナンド・マイヤー(1693〜1764)製とされており、間違いなく当時の楽器とされている。今回のイヴェントは、日本・オーストリア修交140周年を記念して、モーツァルテウム財団総裁から日本で公開することが許可されたと言われ、総裁の話では、この楽器がヨーロッパから外に出ることは日本が初めてということのようであり、背景にはこの財団と関係が深い海老沢先生のお力があったようである。



      子供用のヴァイオリンであるから、コンクールなどで活躍した14歳の松本紘佳が選ばれ、チェンバロは大御所の小林道夫が安心出来る奏者として選ばれていた。また曲目は、ナンネルの楽譜帳にその一部が記載されているというヴァイオリンソナタ第1番ハ長調K.6(作品1の1)と第14番ニ長調K.29(作品4の4)が選ばれていた。なお、第1番の曲は、アレグロ/アンダンテ/メヌエット/アレグロ・モルトの4楽章であるが、このコンサートでは第1・第4楽章が選ばれ、二楽章の第14番はアレグロ・モルトとメヌエットが演奏されていた。

        最初のヴァイオリン・ソナタハ長調K.6(第1番)は、三年半にわたるパリ、ロンドン、ハーグへの旅で、モーツァルト少年が作曲した16曲のヴァイオリン・ソナタの第一曲目に相当する曲で、パリで作曲(1763〜64)された作品1の最初の曲になっている。


                第一楽章は、正規のソナタ形式を踏んだ楽章となっており、小林道夫のチェンバロの左手のアルベルテイ・バスが全体を支配する中でチェンバロが弾き始める三和音的な第一主題により開始されて軽快に進行するが、松本紘佳香のピッコロ・ヴァイオリンはオブリガート的にところどころで音を出しており、チェンバロで音階的に動く第二主題も軽やかに響き、ヴァイオリンはやはりオブリガートに過ぎなかった。しかし、フェルマータで小休止して提示部を終えていたが、二人は繰返しを省略していた。そして、短い6小節の三和音の展開部の後、再現部はほぼ型通りに再現されていた。終わると、二人は顔を見合わせ、笑顔を見せていたが、このピッコロ・ヴァイオリンの音色は、幼さを感じさせるオブリガートのヴァイオリンの音そのものを感じさせていた。



        フィナーレのアレグロ・モルトでは、チェンバロがが勢いよく躍動するように飛び出してトリルを繰返し、早いパッセージを重ねて進行し、素晴らしいエネルギーを持ったアレグロとなっていた。ヴァイオリンはチェンバロのメロデイを一小節遅れで追ったり、合奏したり第一楽章とは異なる伴奏の役割に聞えていた。この主題を使ってトリルを何回も繰り返した展開部の後に、再現部となっていたが、終始一貫して勢いのよい主題が走り回る明るくて活気に満ちたフィナーレとなっていた。活気のあるチェンバロに対しヴァイオリンは装飾を付けたり補う役割であったが、二人の意気は噛み合っており、しっかりと演奏していた。

        続いて第二曲目のヴァイオリンソナタ第14番ニ長調K.29(作品4の4)は、1966年にハーグで書かれたチェンバロとヴァオリンのためのソナタ6曲(K.26〜31)の第四曲目に相当しており、ハーグで出版されてナッサウ公ヴァイルブルグ妃に捧げられたモーツァルト8歳の作品とされている。第一曲が三楽章であるが、それ以外は二楽章の構成であり、第14番のニ長調は、第一楽章は展開部のない古い二部形式のソナタ形式となっており、第二楽章はメヌエットとなっていた。二人はソナタ形式の二つの繰返しを丁寧に演奏していた。



         第1楽章は、アレグロ・モルトの早いテンポで駆け抜けるかのようにチェンバロが勢いよく主題を提示し、ヴァイオリンがそれを撫でるように追従していた。気のせいかこの楽章は、先のソナタよりも、ヴァイオリンがより技巧的な扱いになっているように聞こえていた。展開部を省略した再現部では、途中からヴァイオリンとチェンバロのパーツを入れ替えたり、チェンバロの伴奏部を変化させたりして、変化の工夫が行われていた。



         第二楽章はメヌエットであり、単純ではあるが優雅な感じのメヌエットで、チェンバロが主導権を取って弾むように進んでおり、ヴァイオリンはチェンバロに追従する形で進行していた。一方のトリオはニ短調でチェンバロでメランコリックに始まるが、ここではヴァイオリンが負けじと存在感を示し、二人はここでは対等に進んでから、再びメヌエットに戻っていた。

         この音色は、モーツァルトが生きていた時代の18世紀の音色を思い起こすにたる幼い、まだ一人歩きしていないオブリガートのピッコロ・ヴァイオリンの音色であったが、幼い曲を理解するには十分な演奏であったと思われた。小林道夫のチェンバロはさすがと思わせる素晴らしい演奏であり、松本紘佳のピッコロ・ヴァイオリンも音を外すことなくしっかりとチェンバロに追従しており、この古いヴァイオリンの音試しのコンサートとしては、充分な効果を上げた楽しい演奏会であった。
(以上)、(2017/04/18)




    続く第二曲目の演奏会は、2014年9月22日に大阪府のLICはびきのホールで収録された「川田知子と中野振一郎のデュオ・リサイタル」というNHKのクラシック倶楽部の番組にあったもので、「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集」と題された、コレルリ、バッハ、ルクレールの作品集の中の3曲目に「バイオリンの伴奏つきチェンバロソナタ」ト長調K.27として、演奏されていたものであった。



            川田知子は1991年シュポア国際コンクールに優勝して以来、ソロ・コンチェルト・室内楽で幅広く活躍しているヴァイオリニストであり、一方の中野振一郎は1991年ヴェルサイユ古楽フェスティバルで世界を代表するチェンバリストに選ばれて以来、内外に広く活動を続けており、お二人ともにモーツァルトに馴染みはないが、本格的な活動を続けられていた。その一つの「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」のデュオ・コンサートの中で、モーツァルトの初期のヴァイオリンソナタが、含まれていた。
          始めにコレルリのヴァイオリンソナタが演奏されて、続いてバッハの曲が始まる前に、フアンのためのサービスか、お二人のミニ・トークがあった。



  お二人はデュオを組んでおよそ10年になるようであるが、いつもバロック音楽で「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」を演奏することが多いようである。18世紀の頃のこの種のソナタは、ヴァイオリンとチェンバロの左手のパーツが楽譜に記載されており、チェンバロの右手は即興的に弾かれるようになっているようである。ヴァイオリンの川田さんは、中野さんと弾くときは、中野さんの楽譜を見て演奏することが多いので、右手で何が弾かれるか分らないので、わくわくした気分で弾いていると面白いことをいっていた。また、ヴァイオリンはモダンの楽器で弾いているので、18世紀のチェンバロにはハンデイがあるが、二人でデュオを組むと上手くいくと二人が語っていたのも意外な気がした。恐らくそう言うところに、新しさがあるのであろう。

モーツァルトのこのヴァイオリンソナタの譜面には、ヴァイオリンの五線譜と、クラヴィーア用には左手と右手の五線譜があるので、バッハ以前の時代よりも新しくなっている。しかし、モーツァルトの曲は1766年2月で10歳の時の作品であり、バッハの曲の後はモーツァルトになっており、両者を並んで聴き比べするのは初めての試みなので、どのように弾かれるか楽しみであった。



           第一楽章はアンダンテ・ポコ・アダージョと書かれており、緩・急の変化を持たせた楽章であり、中野のチェンバロは安定したアルベルテイ・パスに乗って思いっきりゆっくりしたトリルと装飾のついた華やかな第1主題を弾きだした。川田のヴァイオリンはチェンバロの主題をなぞるだけで、軽快な三連符の伴奏に乗って明るく進み出し、途中からヴァイオリンがトリルのついたチェンバロの主題を真似るようにして歌いだして提示部を終えていた。繰返しでは、ゆっくりと進むチェンバロのトリルと装飾がひときわ冴えて、オブリガート風の優しげなヴァイオリンの伴奏とともにしっかりと進行していた。
  展開部のない再現部では、ヴァイオリンがチェンバロの響きを真似るようになり、提示部よりも賑やかに進行して、ここでも丁寧な繰返しで、ひときわ賑やかな二人の合奏が見られていた。バッハの次ぎに聴いたアダージョは、終始安定して進むチェンバロの音に支えられながら、しっかりした響きでバッハの後の和やかな雰囲気を保っていた。



  続く第二楽章は、A-B-A’の三部形式か、颯爽としたアレグロの軽快なチェンバロの主題に始まって、中間部のがらりと変わる短調への変化から再び軽快なアレグロで結ばれていた。ヴァイオリンの細かに刻む音形の伴奏によって軽快に進むチェンバロの主題が繰り返されてから、ヴァイオリンが途中からチェンバロと合奏を始めて変化を見せていた。この第1部は全体がもう一度繰り返されてから、短調のアレグロではヴァイオリンがチェンバロと一緒になって悲しげに歌い出し、印象を変化させつつ繰り返されて、再び第1部に戻って、チェンバロの軽快のアレグロで結ばれていた。



コレルリ、バッハ、モーツァルト、ルクレールと続いた一連の「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」は、同じようなトーンで4人の作曲者によるソナタが流れるように続いた落ち着きのある短いデュオ・コンサートであったが、モーツァルトが10歳の時に書いたソナタもごく自然体でそこにはまっており、演奏者たちの技量もさることながら、このようなバロック音楽の優美な響きが好きな方々にはとても心地よいコンサートであったと思われる。初期のモーツァルトは、昔の時代に戻った演奏であっても、それなりに楽しく聴ける一面を気づかせてくれたコンサートであったが、このようなコンサートでは、モーツァルトだけ取り出して聴くのは不自然であり、全体の雰囲気を楽しむコンサートであるという思いがした。


(以上)(2017/04/20)



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