(最新のHDD録画より、イブラギモヴァ・テイベルギイアン・デュオR.その2)
17-3-3、ヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァとピアノのセドリック・テイベルギイアンによる初期のヴァイオリン・ソナタ選集、ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調K.15(第10番)、ハ長調K.6(第1番)、ニ長調K.7(第2番)およびニ長調K.29(第14番)、
2015/10/02、王子ホール、東京、

−今回取り上げたヴァイオリンのイブラギモヴァとピアノのテイベルギイアンによる初期のヴァイオリン・ソナタは、NHKクラシック倶楽部のアラカルトという2回目の放送で収録したものであり、ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調K.15(第10番)、ハ長調K.6(第1番)、ニ長調K.29(第14番)およびニ長調K.7(第2番)の4曲であった。これらの演奏の特徴は、モダンピアノ中心の演奏ではあったが、ヴァイオリンの演奏は、フォルテとピアノが厳密に区分され、トリルやスタッカートなどを明確にし、二人のテンポ感が一体となった肌理の細かさを大切にした極めてアンサンブルの優れた演奏であったと思われる。パリ・ロンドン・ハーグで作曲された初期の16曲は、今では演奏機会が失われているが、これを真面目に取り上げたこと自体に意義があり、今後の二人の活躍と成長を心から期待したいと考える−

(最新のHDD録画より、イブラギモヴァ・テイベルギイアン・デュオR.その2)
17-3-3、ヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァとピアノのセドリック・テイベルギイアンによる初期のヴァイオリン・ソナタ選集、ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調K.15(第10番)、ハ長調K.6(第1番)、ニ長調K.7(第2番)およびニ長調K.29(第14番)、2015/10/02、
王子ホール、東京、
(2017/01/09および2016/03/07のNHKクラシック倶楽部の放送をHDD-5に収録、)

        終わりの3月号の第3曲目は、2月号に引き続き、イブラギモヴァ・テイベルギイアン・デュオ・リサイタル.その2であり、今回はモーツァルトの初期のヴァイオリン・ソナタ選集として、ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調K.15(第10番)、ハ長調K.6(第1番)、ニ長調K.29(第14番)およびニ長調K.7(第2番)の4曲を一度にアップする予定である。最初の三曲は、クラシック倶楽部のアラカルトという2回目の放送で、収録したものであり、最後の一曲は、前回アップした二つのヴァイオリン・ソナタに挟まって、演奏されていたものである。これらの演奏は、いずれも2015/10/02、銀座の王子ホールで収録されたものとされているようである。




        最初の第一曲は、ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調K.15(第10番)であるが、ここではヴァイオリンとピアノの二重奏で演奏している。しかしこの作品は、新全集では、ヴァイオリンまたはフルート伴奏付き(チェロは任意)クラヴィーア・ソナタの形で楽器で作曲されており、ピアノ三重奏曲の扱いになっている。この曲は、1964年にロンドンで書かれたロンドン・ソナタと言われる6曲(K.10〜K.15)の作品群の最後の作品に相当している。ロンドンでショーベルトやクリステイアン・バッハやヘンデルを知って書いたこれらの作品は、彼の少年時代の成長過程を示す貴重な作品群と言われている。





        ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調K.15(第10番)は、6曲のソナタのうち最終曲になっており、そのせいか第一楽章アンダンテ・マエストーソは、展開部のないソナタ形式で書かれており、第二楽章のアレグロ・グラツイオーソも、展開部のないソナタ形式の二楽章の編成という、いわば緩・急の変則的なスタイルになっていた。アリーナ・イブラギモヴァのヴァイオリンは、今回のモダンピアノの使用に合わせて、モダンのヴァイオリンが使われていたが、形式的にはヴァイオリンの伴奏付きクラヴィーア・ソナタとなっていた。

        第一楽章のアンダンテ・マエストーソでは、ピアノが奏する重々しい荘重な第一主題で開始され、フォルテの付点和音はヘンデルを思い起こさせる。フェルマータの後にピアノが玉を転がすように響く愛らしい第二主題が提示されて提示部が終わるが、二人は繰返しを行なって、今度はヴァイオリンが多少華やかに聞えていた。展開部のないソナタ形式で、再現部ではほぼ型通りに二つの主題が再現されていたが、ここでも二人は繰返しを丁寧に行なって、一気に仕上げていた。参考までにPh全集の古いヴァーレのチェンバロとプーレのヴァイオリンのCDを聴いてみたが、テンポが実にゆっくりでヴァイオリンが遥かに強調されており、反面、繰返しはなく、まるで別の曲を聴いた感じであった。






          第二楽章のアレグロ・グラツィオーソでは、トリルとスタッカートが交互に飛び出してくる愛らしい主題で始まり、これがピアノとヴァイオリンでも交互に現れて明るく進んでから、ピアノとヴァイオリンが16分音符の早いパッセージのような主題に変わり、一気に提示部を終えていた。繰返しも早いテンポで行なわれてから、一気に再現部に入っていたが、ヴァイオリンとピアノの二人の息の合ったアンサンブルが絶妙で一気に仕上げられていた。Ph全集のチェンバロとヴァイオリンも響きが良く調和して魅力的に聞えていたが、繰返しは省略され、あっさりと終了していた。

         新全集では三重奏の扱いになっている曲であったが、ロンドン・ソナタの最終曲だったせいか、緩・急の変則的な構成の曲になっており、この曲がロンドン・ソナタを代表する曲ではないと感じさせられた。現在は、演奏者が演奏した順番に聴いているが、聴きなじみのない曲を聴く際には、演奏者の意図が示されない場合には、例えば、作曲した順番に聴いていったほうが、解りやすいと思わざるを得なかった。






                   二人の演奏する第二曲目のヴァイオリン・ソナタハ長調K.6(第1番)は、三年半にわたるパリ、ロンドン、ハーグへの旅で、モーツァルト少年が作曲した16曲のヴァイオリン・ソナタの第一曲目に相当する曲で、パリで作曲(1763〜64)された作品一の2曲と作品二の2曲(K.6〜9)のうちの文字通り最初の曲である。この曲は、作品1の1にふさわしい堂々たる4楽章構成の曲になっており、細かく見ると、第三楽章の第二メヌエットは1762年7月にザルツブルグで、第一楽章は1763年10月にブリュッセルで、第二楽章と第一メヌエットも恐らくは、ブリュッセルで書かれており、パリで書かれたのはショーベルトの作品からテーマを得た第4楽章のみとされる。ナンネルの楽譜帳の曲にヴァイオリンパートを加えただけの曲も含めて、1年半もかけてこの曲はパリで完成され、作品1として出版され、フランス国王の第二王女マダム・ヴィクトワールに捧げられた。
第一楽章は、アレグロでソナタ形式、第二楽章はアンダンテで二部形式、第三楽章は、第一メヌエットおよび第二メヌエットと書かれているが、第二メヌエットはトリオに他ならない。第四楽章はアレグロ・モルトでソナタ形式で書かれていた。








第一楽章は、正規のソナタ形式を踏んだ楽章となっており、ピアノの左手のアルベルテイ・バスが全体を支配する中をピアノの三和音的な第一主題により開始されて軽快に進行するが、ヴァイオリンはオブリガート的にところどころで存在感を示していた。ピアノで音階的に動く第二主題も軽やかに響き、フェルマータで小休止して提示部を終えていたが、二人は丁寧に繰返しを入れて、ここではヴァイオリンが、多少、強調されていた。短い6小節の三和音の展開部の後、再現部はほぼ型通りに再現されており、最後の繰返しも行なわれて、二人は顔を見合わせ、笑顔を見せる余裕を見せながら丁寧に演奏していた。




  第二楽章はヴァイオリンとピアノの規則的な細かなパスの下で、トリルとスタッカートの可愛らしい主題がピアノで提示され楽しく進行するアンダンテであり、その後半は、ピアノとヴァイオリンが交互にトリルとスタッカートを繰り返していた。第二部でも、第一部と同様の主題が再現されていたが、ヴァイオリンとピアノのアンサンブルがとても良く魅力的なアンダンテとなっていた。
   第三楽章は、メヌエット楽章であり、早いテンポのメヌエット気任蓮▲團▲里軽やかにメロデイを歌い出しヴァイオリンもしっかりと追いかけるように追従した立派なメヌエットであった。続いて遅いテンポのメヌエット兇任蓮△海譴魯肇螢なのであるが、ピアノがメロデイを担当してスタッカートが特徴ある響きを出しており、、ヴァイオリンがピアノに合わせるように弾かれて、お互いが補い合ってしっかりと進行し、再び、初めのメヌエット部に戻っていた。




フィナーレのアレグロ・モルトでは、ピアノが勢いよく躍動するように飛び出してトリルを繰返し、早いパッセージを重ねて進行し、素晴らしいエネルギーを持ったアレグロとなっていた。ヴァイオリンは影の伴奏の役割に見えていた。この主題を使ってトリルを何回も繰り返した展開部の後に、再現部となっていたが、終始一貫して勢いのよい主題が走り回る明るくて活気に満ちたフィナーレとなっていた。活気のあるピアノに対しヴァイオリンは装飾を付けたり補う役割であったが、二人は意気がが合っており、しっかりと演奏していた。
急・緩・メヌエット・急のしっかりした構成の第一番であり、過去の作品を活用した部分も見受けられたが、フィナーレがほとばしるような勢いで躍動して、生き生きとした輝きと緊張感をもたらして,しっかりと全体をまとめていた。レオポルドの指導で完成された曲であろうが、まずまずの出来映えの曲であった。Ph全集のCDで第一番を確かめていたが、全体としてテンポが落ち着いており心持ちチェンバロに対しヴァイオリンの音が強めであったが、急・緩・急のバランスが良く、こちらもとても良い演奏に聞えていた。





 続く第3曲目のヴァイオリン・ソナタニ長調K.29(第14番)は、1966年にハーグで書かれたヴァオリン・ソナタ6曲(K.26〜31)の第四曲目に相当しており、ハーグで出版されてナッサウ公ヴァイルブルグ妃に捧げられたモーツァルト8歳の作品とされている。第一曲が三楽章であるが、それ以外は二楽章の構成であり、第14番のニ長調は、第一楽章は展開部のない古い二部形式のソナタ形式となっており、第二楽章はメヌエットとなっていた。二人はソナタ形式の二つの繰返しを丁寧に行なっていた。

第1楽章は、アレグロ・モルトの早いテンポで駆け抜けるかのようにピアノが勢いよく主題を提示し、ヴァイオリンがそれを撫でるように追従していた。気のせいかこの楽章は、ヴァイオリンがより技巧的な扱いになっているように聞こえていた。展開部を省略した再現部では、途中からヴァイオリンとピアノのパーツを入れ替えたり、ピアノの伴奏部を変化させたりして、変化の工夫が行われていた。




第二楽章はメヌエットであり、単純ではあるが優雅な感じのメヌエットで、ピアノが主導権を取って弾むように進んでおり、ヴァイオリンはピアノに追従する形で進行していた。一方のトリオはニ短調でピアノでメランコリックに始まるが、ここではヴァイオリンが負けじと存在感を示し、二人はここでは対等に進んでから、再びメヌエットに戻っていた。
二楽章で終わるこのソナタが、ハーグソナタの6曲の代表曲かどうかは不明であるので、Ph全集の古いヴァーレのチェンバロとプーレのヴァイオリンのCDでこの6曲(K.26〜K.31)を順番に聴いてみたが、ここでは全体的にヴァイオリンがよく響いており、K.26(第11番)の三楽章は素晴らしい名曲になっており、最後のK.31(第16番)も素敵なアレグロと第二楽章がヴァイオリン・ソナタで最初の魅力ある変奏曲になっており、どうして第3曲目が選ばれたかが分らないが、恐らくは、二人が最も気に入った曲であったろうと思われる。





最後に演奏する第4曲目のヴァイオリン・ソナタニ長調K.7(第2番)は、前回アップした17-2-3のK.376とK.305の間に挟まって演奏されていた曲であったが、この曲は最初期のパリ・ソナタ(K.6〜K.9)の第2番に相当し、第1番が4楽章であったに対し、以降の3曲は、急・緩・メヌエットの3楽章構成になっていた。この曲も、二人の演奏は、ソナタ形式などの反復記号は、丁寧に指示通りに演奏されていた。

第一楽章は、ピアノの三和音で勢いよくアレグロ・モルトで始まり、繰り返してからヴァイオリンが主導権を取り経過部を経た後に、第二主題がヴァイオリンとピアノの合奏で始まった。そしてヴァイオリンとピアノがそれぞれ主導権を取りつつ、進行して、最後は三和音の合奏で勢いよく結ばれていた。三和音で始まる展開部も中段でヴァイオリンが変化を見せてから、再び三和音で始まる再現部に突入していた。ここでは第一主題の後、直ぐに第二主題に入り、ほぼ型通りに推移して、勢いよく三和音で終結していた。 第二楽章のアダージョでは、ピアノが主題を提示していくが、ヴァイオリンはピアノに相槌を打つだけで殆ど旋律を弾くことはなく、第二主題に移行しても変わることなく推移していた。展開部に入って一部でヴァイオリンとピアノが合奏していたが、再現部では、再び主導権はピアノに移り、ヴァイオリンは静かに相槌を打っだけであった。




続いて第三楽章のメヌエット気貌り、ヴァイオリンとピアノは対等に合奏しながら、早めのテンポで一緒にリズムを刻んでいた。メヌエット(トリオ)では、テンポを落として、短調のおどけたようなフレーズでヴァイオリンとピアノが合奏しており、メヌエット気箸梁佝罎鯡棲里砲靴討い拭再びメヌエット気北瓩蝓堂々と対等に合奏しながら、しっかりしたリズムでフィナーレを終え、第二番が終了していた。拍手とともに二人は挨拶を繰り返していたが、二人はにっこりと笑みを浮かべて、満ち足りた表情で、この短いコンサートを終了していた。

   終わりに、今回取り上げたヴァイオリンのイブラギモヴァとピアノのテイベルギイアンによる初期の4曲のヴァイオリン・ソナタの演奏では、4曲がどういう理由で選定されたのか分らないが、二人の演奏態度は一貫していたように思う。今回はモダン楽器での演奏であったが、二人は古楽器にも堪能であるようだし、ピリオド奏法のソナタ形式の2カ所の繰返しは実行し、繰返しでは装飾などが豊富でかなり自由な演奏になっていた。これらの演奏の特徴は、今回はモダンピアノ中心の演奏ではあったが、ヴァイオリンの演奏は、フォルテとピアノが厳密に区分され、トリルやスタッカートなどを明確にし、二人のテンポ感が一体となった肌理の細かさを大切にした極めてアンサンブルの優れた演奏であったと思われる。パリ・ロンドン・ハーグで作曲された初期の16曲は、今では演奏機会が失われているが、これを真面目に取り上げたこと自体に意義があり、今後の二人の活躍と成長を心から期待したいと考える。


(以上)(2017/03/19)



目次5にもどる 目次4にもどる
目次3にもどる 目次2にもどる
目次1にもどる 私の新ホームページへ


名称未設定