(最新のHDD録画より;クラリネット五重奏曲とクラリノッテイ演奏会)
17-3-1、セバスティン・マンツのクラリネットとカルミナ弦楽四重奏団によるクラリネット五重奏曲K.581、2015年11月29日、第一生命ホール、および、クラリノッテイ演奏会による5つのディヴェルティメント第5番K.Anh.229(439b)、
オッテンザマー父子3人によるクラリネット三重奏、2014年2月5日、トッパン・ホール、

−今回のセバスティン・マンツのクラリネットとカルミナ弦楽四重奏団による五重奏曲は、マンツのクラリネットが、この曲の性格や特徴を良く捉えた力のこもった充実した演奏であり、若いのに実に落ち着いてゆとりのある音を響かせていたのに対し、残念ながらカルミナ四重奏団が余り燃えずに、寂しい感じがした。独奏クラリネットが右端に位置して第一ヴァイオリンと向き合っていたのは当を得ていたが、両者の掛け合いが多いのに、第一ヴァイオリンがいまひとつ生彩が上がらずに、やや期待に反していた。一方のディヴェルティメントK.Anh.229(439b)の第5番変ロ長調は、オッテンザマー父子3人によるクラリネット三重奏で、兄弟の二本のクラリネットが主としてメロデイラインを構成し、父親のバス・クラリネットが低音の分散和音などで支えながら楽しく進行するスタイルであったが、三声の微妙なアンサンブルが見事な名人芸となっており、曲もCDの聞き流しで頭に入っていたので、実に楽しく最高のアンサンブルを味わうことが出来た。このメンバーで、出来れば5曲とも演奏して欲しかった−

 (最新のHDD録画より;クラリネット五重奏曲とクラリノッテイ演奏会)
17-3-1、セバスティン・マンツのクラリネットとカルミナ弦楽四重奏団によるクラリネット五重奏曲K.581、2015年11月29日、第一生命ホール、および、クラリノッテイ演奏会による5つのディヴェルティメント第5番K.Anh.229(439b)、
オッテンザマー父子3人によるクラリネット三重奏、2014年2月5日、トッパン・ホール、
 (2016/03/14および2014/07/18のNHKクラシック館の放送をHDD-5に収録)

3月号のソフト紹介は、ザルツブルグからの旅行帰りの月でもあり、旅行記作成と同時に作業をする必要があり、先月号に引き続き、最も身近なHDDに収録してあった最新のHDD-5の録画を整理して、組み合わせてアップロードすることにしていた。
       最初のファイル17-3-1は、ごく最近の二つのNHKクラシック館の放送から、二つのクラリネット曲を引き出して組合わせたもので、第一曲がセバスティン・マンツのクラリネットとカルミナ弦楽四重奏団によるクラリネット五重奏曲K.581であり、2015年11月29日、第一生命ホールで収録されたものである。続いて第2曲は、クラリノッテイ演奏会と称されて、オッテンザマー父子3人によるバセットホルンと2本のクラリネットによる三重奏で、「5つのディヴェルティメント」より第5番K.Anh.229(439b)を演奏するもので、2014年2月5日、トッパン・ホールで収録されたものである。




        最初の第一曲のクラリネット五重奏曲イ長調K.581を演奏するセバスティン・マンツは、1986年ドイツ・ハノーバー生まれで、ザビーネ・マイヤーなどに学び、2008年にミュンヘン国際債音楽コンクールでクラリネット部門で第1位を獲得して以来、注目を浴びてきた。2010年以降はシュツットガルト放送交響楽団のソロ・クラリネット奏者を務めている。一方のカルミナ弦楽四重奏団も、このHPは初登場であり、1984年スイスで結成された四重奏団で、メンバーは第一ヴァイオリンがマティアス・エンデルレ、第二ヴァイオリンがスザンヌ・フランク、ビオラがウエンデイ・チャンプニー、チェロがシュテファン・ゲルナーであり、結成以来30年間、現在と同じメンバーで、国際的に活動を続けているという。




          クラリネット五重奏曲の第一楽章は、ソナタ形式のアレグロであり、第一主題は弦楽四重奏によるコラール風の荘重な出だしで始まるが、これを受ける後半のクラリネットの美しく上昇する分散和音が参加する絶妙な音色でバランス良く成り立っており、聴くものを一気に捕らえてしまう。この絶妙な第一主題がもう一度繰り返され、マンツのクラリネットのソロと第一ヴァイオリンが対話しながら進み、クラリネットによる輝くような経過部に聞き惚れているうちに、ピッチカートの伴奏で第一ヴァイオリンに続いてクラリネットが美しい第二主題を提示し始めていた。このドルチェで始まるマンツの独奏クラリネットはやや影を帯びた暗い音色で進むが、音は柔らかく透明であり、低音も高音も良く響き、実に美しい。さらに発展的に進行してドルチェのヴァイオリンで始まり、クラリネットに引き継がれる結びの主題が続いて提示部を終えていた。ここでもう一度振り返るように、冒頭から全体が再現されていたが、各パーツは装飾音などを加えながら,伸び伸びと再現しており、特にクラリネットの哀愁的な響きが、提示部全体を支配しているように思われた。




            展開部では冒頭主題の前半をクラリネットが美しく提示してから、後半部の主題を、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの順に、各声部が執拗に激しく展開しながら提示されるもので、クラリネットは後半から顔を出して分散和音で応答していたが、低音から高音にいたるクラリネットの響きは力強く、実に魅力的な展開部になっていた。再現部で第一主題はクラリネットが前半を、後半は弦と役割を変更して再現されており、第二主題はクラリネットにより見事に変奏されて哀調に富む独自の雰囲気を醸し出していた。マンツの独奏クラリネットはしっかりとした音調であり、全くまろやかに美しい音色をちりばめて、それに華やかさも加わって、この曲の魅力を高めていたように思われた。




         続く第二楽章は、NHKが良くやるカットの対象となってガッカリ。大いに興を削がれてしまったが、続いて第三楽章のメヌエットが明るく威勢良く始まって救われた。このメヌエット楽章は、全5声が一体となって合奏する堂々たるものであり、珍しく二つのトリオを持った壮大で華やかな楽章であった。メヌエット主題はクラリネットと第一ヴァイオリンで導かれる活発で晴れやかなものであり、堂々とリズムを刻んで進んでいた。第一トリオは、弦楽器でだけで綿々と歌われるが、ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いで進められていた。再びメヌエット主題の後に始まる第二トリオは、クラリネットに導かれる民族舞踊的な音調でクラリネットが明るく高らかに美しいメロデイを奏でてから、再び、朗々とメヌエットが繰り返されていた。




          フィナーレはアレグレットの主題と四つの変奏に加えてアダージョとアレグロの二つの自由な変奏部分から構成されていた。主題はクラリネットと弦の合奏で明るく活発に提示され、前半の第4変奏までは(8小節*2)で構成され、キチッと繰り返しが行われていた。第一の変奏は弦による主題提示をクラリネットが明るく変奏しながら彩りを添えるもので、繰り返しでは装飾音符やトリルなどが目立っていた。第二変奏は前半が弦楽器だけの付点リズムによる変奏であり、後半はそれにクラリネットが彩りを付けていた。第三変奏も弦楽器による変奏で第一ヴァイオリンのオクターヴ跳躍とヴィオラの分散和音により終始リードする変奏であったが、第四変奏はクラリネットの速いテンポによる変奏で十分な技巧が発揮されていた。 続いては一転してアダージョの変奏となり、クラリネットが低音を響かせながら憂いのこもった素晴らしい響きを見せてひと休止の後に、最後にアレグロの変奏となり、主題の前半を五声で変奏しながら、アレグロのコーダに入り、この魅力的な変奏曲を充分に歌い上げて楽しく終結させていた。






このクラリネット五重奏曲は、クラリネットの明るい魅力に溢れた第一楽章や、異常に美しい第二楽章に加えて、後半の二つのトリオを持ったメヌエットや、フィナーレの楽しい主題と充実した変奏によって、非常に豊かなイメージを持った五重奏曲に仕立てられている。今回のセバスティン・マンツのクラリネットとカルミナ弦楽四重奏団による演奏は、マンツのクラリネットは、この曲の性格や特徴を良く捉えた力のこもった充実した演奏を聴かせてくれており、若いのに実に落ち着いてゆとりのある音を響かせていたのに対し、残念ながらカルミナ四重奏団が余り燃えずに、やや力量に差のあるような感じがした。独奏クラリネットが右端に位置して、第一ヴァイオリンと向き合ってチェロの隣に座っていたのは当を得ていたが、第一ヴァイオリンとクラリネットとの掛け合いが多いこの曲には、第一ヴァイオリンがいまひとつ生彩が上がらずに、やや期待に反していた。美しい第2楽章がカットされたのも原因したと思われるが、やや年齢的に差のある組合せが災いしたか、私には何となく物足りない演奏であった。







17-3-1ファイルの第2曲目は、クラリノッテイ演奏会と称された2014年2月5日、トッパン・ホールで収録されたオッテンザマー父子3人によるクラリネット三重奏を中心にしたコンサートであり、その第一曲目にモーツァルトによる5つのデヴェルティメント第5番K.Anh.229(439b)が演奏されていた。
この5つのディヴェルティメントK.Anh.229(439b)は、このHPでは初出なので、この曲について若干の説明を加えておきたい。この曲は早い時点で自筆譜が失われたため、編成や形式についてさまざまな解釈がなされてきた作品である。大方は、バセットホルン三重奏と見なされてきたが、中には「ウイーンのソナチネ」などと称するピアノ独奏用の編曲版があったりして驚かされることがあった。新全集のこの作品の編集者M.フロトホイスは、いろいろな資料の精査の結果として、1)楽器編成はバセットホルン三重奏とし、2)5つのディヴェルティメントとする根拠はなく、むしろ「25の小品」と呼ぶべき作品群としているが、楽譜では従来の5曲区分を、付録扱いの形で残している。作品の成立事情は、姉妹作と言うべきノットゥルノ(バセットホルン三重奏伴奏付きの三重唱曲K.436など6曲)と同様に、友人ジャカン家での音楽会のために書かれたものであり、作曲時期は、ノットゥルノと同様に1783〜88年の間としている。








25の作品群の第5番目とされたディヴェルティメントは、新全集では、(21)アダージョ、(22)メヌエット、(23)アダージョ、(24)ロマンス アンダンテ、(25)ポロネーズの5楽章制となっており、バセットホルン機↓供↓靴了粟爾乃譜されていたが、オッテンザマー父子は、父親がバスクラリネットを用い、長男と次男は通常のクラリネットを使用していた。この父親のエルンスト・オッテンザマーは、1955年オーストリア生まれで、1973年にウイーンフイルに入団し、ソロ・クラリネット奏者として活躍し、1983年より独立してウイーン音楽大学の教授として指導に当たっていた。長男のダニエルは1986年ウイーン生まれで、2009年よりウイーンフイルでソロ・クラリネット奏者として活躍している。弟のダニエルは1989年ウイーン生まれで、2011年から22歳の若さでベルリンフイルの首席クラリネット奏者として活躍している。そして親子三人でクラリネット・アンサンブルを楽しめるのは非常に珍しいとされ、父親のエルンストは、ウイーンのクラリネットの伝統を引き継ぐことが出来、大変嬉しいと語り、ウイーン独特のクラリネットの響きを体現できると語っていた。モーツァルトの曲は、この親子のために書かれたような曲であり、コンサートで演奏されたメンデルスゾーンの演奏会用小品作品113やドップラーのリゴレット幻想曲は、いずれも彼ら3人のために編曲された作品となっていた。




モーツァルトのディヴェルティメントK.Anh.229(439b)の第5番変ロ長調は5楽章構成で、他の5曲と異なった構成となっており、第一楽章はアダージョであり、単純な二部形式で書かれていた。兄弟の二本のクラリネットがメロデイラインを構成し、ドルチェの合奏で聞き覚えのあるなつかしいメロデイを吹き鳴らし、父親のバス・クラが低音の分散和音で支えながら静かに進行するアダージオで始まっていた。これを繰り返した後は、兄の第一クラリネットがメロデイラインを受け持ち、なつかしげに明るい歌を歌いながら、三声の楽しげな合奏で静かに結ばれていた。この三声によるクラリネットの微妙なアンサンブルは、三人の楽器と息がピッタリとしていなければ上手く成立しないものであり、言わず語らずの絶妙な親子のコンビによる熟成された響きが伝わってきた。




第二楽章はメヌエットであるが、兄弟の二本のクラリネットの合奏で明るくメヌエットの三拍子を刻み、中間部ではバス・クラの上昇音形で全体を支えながら楽しげに進行し、再びメヌエットに戻っていた。トリオでは第一クラリネットがメロデイラインを担当して明るく雰囲気を一変させてから、再びメヌエット部に戻り、堂々と明るく結ばれていた。第5番ではこれが唯一のメヌエット楽章であった。
第三楽章は再び短いアダージョであり、やはり二部形式で単純に構成されていた。ゆったりしたドルチェの上昇音形の合奏で始まり、兄弟の二本のクラリネットが歌いながらバス・クラの低音に支えられながら進行するもので、繰り返されてから、後半では兄弟の二本のクラリネットが交互にメロデイラインを担当して、しっとりと静かに結ばれていた。




第四楽章はロマンスの標題となっており、アンダンテでやはり二部形式で書かれていた。この曲はロマンスの名の通り、実に美しい溜息が出てきそうなメロデイで溢れており、兄弟の二本のクラリネットが交互に歌いながら、或いは合奏しながら進行していた。繰り返しを行なってからも、後半はバス・クラの分散和音に支えられながら、二本のクラリネットが美しく合奏しており、束の間のロマンスという印象を与えていた。
第五楽章のフィナーレはポロネーズとされていたが、他の二声の伴奏に支えられて、第一クラリネットが速いテンポで軽快にメロデイラインを歌い始め、繰り返しを行ってから、中間部で若干の変化を見せてから、一気に冒頭のメロデイを再現して、アクセントのついた結びで曲が仕上げられていた。




譜面があったので、三声の微妙な変化を確かめるために、譜面を見ながら視聴してみたが、大体が三声のCDやカツァリスの音のきれいな「ウイーンのソナチネ」で頭に入っていた旋律が流れていて、非常に楽しい思いをした。ただし、一曲だけの演奏では余りにも短すぎて残念で、もう何曲か続けて欲しかった。こうして名人の三人が真剣に体全体で演奏しているのをつぶさに見て、見かけは簡単な単純な曲であっても、キチンと演奏するのは大変であるという思いが伝わってきた。出来ればこの三人に、全曲のDVDでも出してもらえたら有難いとしみじみ感じていた。


(以上)(2017/03/09)



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