(最新のHDD録画より、イブラギモヴァ・テイベルギイアン・デュオR.)
17-2-3、ヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァとピアノのセドリック・テイベルギイアンによるヴァイオリン・ソナタ選集、ヴァイオリン・ソナタヘ長調K.376、およびイ長調K.305、
2015/10/02、王子ホール、東京、

−最初のヴァイオリンソナタヘ長調K.376(374d)は、それぞれ性格の異なる三つの楽章、アレグロのソナタ形式−アンダンテの三部形式−アレグレットのロンド形式で構成されている変化の多い曲であったが、アリーナ・イブラギモヴァのヴァイオリンとセドリック・テイベルギアンのピアノとが終始、弾むように明るく対話する元気の良い演奏であり、各楽章の変化にも良く対応していた。一方のイ長調K.305(293d)では、2楽章の曲であるが、最初のアレグロの第一楽章は実に早いテンポで壮快に一気に進んでおり、ソナタ形式の2つの繰り返しを行なっても、なお、疾風怒濤のような展開を見せ、互いに息の合ったスタイルで、きめ細かく進んでいた。第二楽章の変奏曲に入ってもこの姿勢は変わらずに、変奏部分でもヴァイオリンとピアノの持ち味は変わらずに、時には素早く、あるときは顔を見合わせながら丁寧に、役割を上手く分担しながら弾き進んでいた。これは若い人たちだから出来る新しい演奏であった−

(最新のHDD録画より、イブラギモヴァ・テイベルギイアン・デュオR.)
17-2-3、ヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァとピアノのセドリック・テイベルギイアンによるヴァイオリン・ソナタ選集、ヴァイオリン・ソナタヘ長調K.376、およびイ長調K.305、
2015/10/02、王子ホール、東京、
(2017/01/24および2017/01/09のNHKクラシック倶楽部の2回の放送をHDD-5に収録)

2月号の第3曲目は、ヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァとピアノのセドリック・テイベルギイアンによるヴァイオリン・ソナタ選集であり、クラシッ倶楽部に2回にわたって収録されたものから、今回はヴァイオリン・ソナタヘ長調K.376、およびイ長調K.305の2曲を取り上げるものである。この演奏は、2015/10/02に銀座の王子ホールで演奏されたものであった。イブラギモヴァはロシア出身で、イギリスのユーデイ・メニューインスクールと王立音楽院でヴァイオリンを学んだ。ロン・テイボーコンクールで優勝して以来国際的に活躍しているヴァイオリニストで、古楽器とモダン楽器の両方を使いこなしているようである。ピアノのセドリック・テイベルギイアンはパリ国際高等音楽院で学んだ俊英で1998年ロン・テイボーコンクールで優勝するという経歴を持つ。今回の来日を二人で楽しんでいるようにも見え、演奏の前に二人のインタビユーがあり、今回はモダンピアノに合わせて、モダンのヴァイオリンで演奏するとふたりは語り合っていた。




        二人の最初の曲は、ヴァイオリン・ソナタヘ長調K.376(374d)であり、この曲が含まれるソナタ集は、1781年11月ウイーンのアルタリアより「作品供廚箸靴峠佝任気譟彼の弟子ヨゼファ・アウエルハンマー嬢に献呈されている。内容は収録順に、K.376、K.296、K.377、K.378、K.379、K.380の6曲であったが、ウイーンで作曲されたのは4曲だけで、K.296は1778年マンハイムで、K.378は大旅行後のザルツブルグで書かれていた。




       さて、この曲のヘ長調(第32番)K.376(374d)は、それぞれ性格の異なる三つの楽章、アレグロのソナタ形式−アンダンテの三部形式−アレグレット・グラツイオーソのロンド形式で構成されている。第一楽章は、両楽器のユニゾンの三和音で堂々と開始され、ピアノが第一主題の前半を提示し、後半をヴァイオリンが軽快に提示する形で進められていた。第二主題もピアノで示される部分とヴァイオリンが示す部分とがあり、イブラギモヴァのヴァイオリンとテイベルギアンのピアノとが弾むように明るく対話する元気の良い提示部であった。彼らは提示部を繰り返していたが、装飾音が若干増えたような変化のさせ方であった。
展開部ではピアノが新しい主題を提示してヴァイオリンと掛け合うもので、新味があり、二人は元気よく歌い合っていたが、再現部では第一主題の三和音に始まり、続いて第二主題とほぼ型通りに進められており、明るさに満ちた軽快な演奏であった。彼らは後半の繰り返しも丁寧に行なっており、展開部から溌剌とした明るい楽想が繰り返され、若々しいお互いをぶつけ合える演奏振りに親しみを感じさせていた。




第二楽章は、三部形式で、どの部分もピアノで開始されヴァイオリンに引き継がれる第一主題と、ヴァイオリンで示されピアノで繰り返される第二主題から出来ていた。提示部を終えて中間部では、同じパターンで進むが、調性が替わったり伴奏する楽器がトリルで飾り立てる変奏が行なわれていた。イブラギモヴァのヴァイオリンとテイベルギアンのピアノは、気ままに変化を楽しみながらお互いに演奏していたが、後半の第三部では第一部分を忠実に再現していた。




フィナーレでは、地味な前の楽章とがらりと変わり、アレグレットでロンド主題がピアノで軽快に飛び出しヴァイオリンで繰り返される。この溌剌とした主題は、二つのエピソードを挟んで大まかにA-B-A-C-A-B-Aと4回顔を出し、極めて印象的に響いていた。イブラギモヴァのヴァイオリンとテイベルギアンのピアノは、この主題と二つのエピソードとの対比が鮮やかで、ピアノとヴァイオリンは互いに旋律を受け渡し、絶えず変化を重ねており、絶えずスピード感を持って進行し、最後はロンド主題で締めくくった楽しいロンド楽章になっていた。


        続く第2曲目は、ヴァイオリンソナタイ長調K.305(293d)であり、1778年のマンハイム・パリ旅行中に書かれたテオドール選帝侯妃に捧げられた6曲中の1曲で、K.301、302、303、305(以上マンハイムで作曲)、304、306(以上パリで作曲)の6曲が作曲されていた。この6曲は2楽章制を取ることが多いが、この曲は、第一楽章がアレグロ・ディ・モルト、第2楽章がアンダンテ・グラツイオーソの主題と6曲の変奏曲の2楽章構成となっている。




        第一楽章は、力強いユニゾンで颯爽と始まり、軽快なスタッカート・モチーヴによりピアノとヴァイオリンが揃って急速に進行していくが、その二人のスピード感はエネルギッシュそのものであった。第二主題も引き続き颯爽と進行していたが、二人の息の合った威勢の良い進行振りには、唖然とさせられる面があり若さと技巧が漲っているという印象であった。提示部を終えてると、二人は冒頭から颯爽と繰り返していたが、その勢いは全く衰えず、むしろ柔軟に余裕を持って進行している様子であった。





        展開部では、冒頭のユニゾンの主題が変形されて、ピアノとヴァイオリンで交互に何回も繰り返されながら展開されていたが、再現部では改まった調子となり、 冒頭の勢いのよい第一主題が再現されていた。彼ら二人は勢いに乗って、第二主題も一気の軽快に進めていたが、ソナタ形式の最後の繰り返しも丁寧に行なっており、ここでも展開部から勢いよく繰り返しを行なっていた。彼らのスピード感のあるスタッカートによる疾走振りは、早くてビックリするが、この心地よい疾走感はこの曲にはピッタリとしており、とても快適にこの楽章が仕上げられたと思われた。





        第2楽章は、一転してアンダンテ楽章であり、最初に8小節の静かな主題がヴァイオリンとピアノが合奏して提示されて繰り返され、後半はそれらが変形されて、再び主題提示が繰り返されていた。第一変奏はヴァイオリンは完全休息で、ピアノだけで16分音符の早いパッセージで前半が変奏され、後半も同様に早いテンポで変奏されていた。第二変奏では待ちかねたようにヴァイオリンがメロデイラインを変奏しており、後半もピアノを従えるように変奏していた。第三変奏は、ピアノで始まりヴァイオリンが引き継ぎ、交替しながら前半を終了していたが、後半もピアノに続いて再びヴァイオリンが受けとめ、ピアノとヴァイオリンが交互に主役を演じていた。





     第四変奏では,ヴァイオリンが主体になって前半も、後半も変奏がなされていたが、終わりにフェルマータで一息ついて、アダージョとなり、ピアノがアルペッジョをカデンツァ風にさらりと弾いてから、第五変奏に入っていた。ここではヴァイオリンとピアノが合奏しながら前半を終了し、後半はピアノが主体となって変奏が続いていた。第六変奏では、ピアノがアレグロで主題を変奏し、,ヴァイオリンが途中から主役を演じ、その後もピアノとヴァイオリンが交替しながら、このフィナーレの変奏では繰り返し部がなく、駆け抜けるように一気にこの変奏曲を終了していた。




         このイ長調のK.305のヴァイオリン・ソナタは、イブラギモヴァのヴァイオリンとテイベルギアンのピアノにより、第一楽章から早いテンポで一気に進んでおり、互いに息の合ったスタイルで、きめ細かく進んでいたが、第二楽章に入ってもこの姿勢は変わらずに、変奏曲でもヴァイオリンとピアノの持ち味は変わらずに、時には素早く、あるときは顔を見合わせながら丁寧に、役割を上手く分担しながら弾き進んでいた。彼らの二日間における残された演奏には、最初期のオブリガート付きのヴァイオリン・ソナタが4曲ほど残されているが、今回の演奏から見るとヴァイオリンの主張がかなり目覚ましいものがあるので、初期のソナタでも面白味が期待でき、これらは次回に一気にアップロードする予定としている。


(以上)(2017/02/24)



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