(最新のBDより;ミンコフスキーの「レクイエム」K.626、K.85、K.618、)
17-12-2、ミンコフスキーとルーブル宮音楽隊による「レクイエム」K.626、ザルツブルグ・バッハ合唱団、バルタバス演出によるヴェルサイユ馬術アカデミー、「ミゼレーレ」K.85、「アヴェ・ヴェルム」K.618、
2017年1月、フェルゼンライトシューレ、2017モーツァルト週間、ザルツブルク、

−ミンコフスキーとバルバタス一行のこの映像の「レクイエム」は、ソリストにキューマイヤーなどの優れた人たちを迎え、ザルツブルグ・バッハ合唱団の面々も力強く素晴らしい演奏であり、また、ルーブル宮音楽隊のオーケストラも大型の布陣であったが、教会の大聖堂での録音に較べて響きがやや薄く感じられ、ピリオド奏法に徹底していたせいか、あっさりと淡々として進行する演奏であると思われた。指揮台に立ったミンコフスキーの指揮振りはしなやかで動きが良く、見るからに全体を引っ張っていたが、舞台上の最大8頭に及ぶ人馬の踊りと駆け足の姿が見ものであり、「レクイエム」の美しい荘厳な音楽に合わせて踊る姿が珍しく、魅力的であり、見るからに人馬の群れと壮大な音楽による「総合芸術」としての印象を高めていた。「レクイエム」の前奏となったミゼレーレK.85も、後奏となったアヴェ・ヴェルムK.618の音楽も味わいがあり、「レクイエム」を見事に引立てており、その着想に深く敬意を表したいと思った。何度、繰り返しても見飽きない、素晴らしい総合芸術の姿であった−

(最新のBDより;ミンコフスキーの「レクイエム」K.626、K.85、K.618、)
17-12-2、ミンコフスキーとルーブル宮音楽隊による「レクイエム」K.626、ザルツブルグ・バッハ合唱団、バルタバス演出によるヴェルサイユ馬術アカデミー、「ミゼレーレ」K.85、「アヴェ・ヴェルム」K.618、
2017年1月、フェルゼンライトシューレ、2017モーツァルト週間、ザルツブルク、
(ソリスト)S;ケニア・キューマイヤー、A;エリーザベト・クールマン、T;ジュリアン・ベール、B;チャールズ・デカイザー、
(2017/11/14、新宿タワーレコードにて購入のDVD、C Major、741904、)

       12月号の第2曲目は、最新のBDに収録されたミンコフスキー指揮の2017モーツァルト週間における「レクイエム」K.626であり、バルタバス演出のヴェルサイユ馬術アカデミーによる馬技競演による特別なものであった。この馬技競演を伴った宗教音楽の試みは、これで2回目であり、私は2015年と217年のモーツァルト週間に参加したので、フェルゼンライトシューレにおける演奏・演技を直接見てきたのであるが、 2015年にはカンタータ「悔悟するダヴィデ」K.469による馬技競演(16-1-1)であり、2017年の試みは、「レクイエム」ほかの演奏で、旅行記の方で報告済みのものであった。これらの演奏は、フランスの宮廷芸術として伝統的に培ってきた謂わば馬技と音楽の総合芸術であり、やはり、音楽だけを味わう舞台とは異なるものであろう。これはやはり「レクイエム」の音楽に合わせて馬が踊る総合芸術であり、音楽が「レクイエム」であったので、騎乗者の服装や馬も黒ずくめであり、馬たちの動きも前作よりも華やかさを潜めて、厳粛な音楽に合わせて動くアンサンブルを重視したもののように見えていた。



        この映像は、何と若きモーツァルトのイタリア旅行時に作曲されたミゼレーレ(主よ、あわれみ給え)K.85で、厳かに始まった。アルトとテノールとバスの三声曲にオルガンの通奏低音がついた8曲からなる合唱による小品集であった。暗闇に近いフェルセンライトシューレの一角でミンコフスキーが指揮をして合唱団が歌い始めると、スポットライトに照らし出されて、黒ずくめの人馬が一組、鮮やかな手綱さばきで、音楽に合わせて踊り出していた。よく見るとクロの頭巾で、前が見えているのかどうか、上半身が裸でタイツ姿の男が、黒馬を操り人馬一体となって合唱の動きに合わせて静かに踊っていた。恐らくバルタバス隊長の人馬一体のソロ舞踏の敬虔な姿であろうと思われ、神秘的な荘厳な雰囲気を感じさせていた。



        ミゼレーレはおよそ8分間続き、続いてヘンデルの「キャロライン王妃のためのアンセム」より(シオンの道は悲しみ)HWV264が、チェロ中心の弦楽合奏により続いており、「レクイエム」の前奏に相応しい暗い悲しみを示す音楽となっていた。これらの前奏音楽と舞台は、「レクイエム」が始まる心の準備として、実に効果的であり、これから何が始まるか、固唾をのんで舞台を注目していた。



        そのまま続いて、音楽は「レクイエム」のイントロイトウスが静かに始まり、バセットホルンとファゴットが沈んだ音色で響き交わす序奏が始まると、舞台では馬上に死者を載せた人馬が静かに合唱に合わせて歩みを進めており、全体で8頭の人馬の姿が見受けられて、静かに歩みを重ねていた。合唱団が深く弦の引きつるような伴奏に乗って堂々と進行し始め、全員の斉唱となって和やかな音調となっていたが、やがてソプラノのキューマイヤーのソロがレクイエムの開始を告げるように朗々と歌いだした。



      すると馬上の死者は十字架の形を示すように両手を広げた姿になり静かに歩みを続けていたが、後半部に入ると、再び厳粛な合唱が堂々と進みだし、二つのレクイエム主題による力強い二重フーガとなり、モーツァルトらしさを示しながら進行していた。
             続く「キリエ」に入ると、テンポはかなり早まって、8頭の人馬は並足となって、キリエとクリステの二つの主題によるこの二重フーガに合わせて、颯爽と歩んでおり、人馬の織りなす歩みと大合唱とが整然と一体になっており、さすがという感じがしていた。後半のキリエの大合唱でも堂々として壮大に歌われる一方、人馬も粛々として整然と歩みを重ねて総合芸術の思いを強く感じさせていた。



          休む間もなく続けて「セクエンツイア」に入って、第一曲目の「怒りの日」では、強奏のトウッテイで、いきなりテインパニーがけしかけるように響き、「デイエス・イレ」と叫ぶように歌う激しい勢いの大合唱が始まると、人馬は素晴らしいスピードで駆け抜けるように走り出していた。初めのうちは手綱を引き締めていたが、次第に馴れてくると、騎手の彼女たちは両手を広げて駆けており、日頃の訓練の成果を発揮させているかのように思われた。



        続いて第二曲の「トウーバ・ミルム」では、トロンボーンの柔らかな明るい音色のソロが厳かに響き出してから、バス歌手がトロンボーンを伴奏にじっくりと朗々と歌い出し、一瞬、新たな明るい気分にさせられた。舞台では二頭の黒の三角頭巾を被り黒ずくめの服装の人馬が厳かに歩みを進めており、音楽に合わせて何が始まるか注目させられた。続いてテノールが声を張り上げて朗々と力強く歌い始めると新たに二頭の人馬が仲間に入り、4頭の人馬による駆け足のテンポの踊りが披露されていた。最後は四人のソリストたちによる豊かな四重唱になって静かに終息していたが、この時にははじめの二頭の人馬が前後ろに並んで、騎手たちが腕を互いに交差させるなど、静止状態での細かな芸を披露していた。



          第三曲の「レックス・トレメンデ」では、激しいフォルテの弦楽器とトロンボーンの付点音符の前奏に続いて、「レックス」の大合唱が三度続いてから、リズムの激しい斉唱が始まり、迫力に満ちた大合唱が続いていた。舞台では先ほどの腕を互いに組んだ二頭の人馬を中心にして、6頭の人馬がそのまわりを音楽に合わせて駆け巡っており、実に美しい人馬の姿が写しだされていた。この曲は最後には音調を急変させて、ピアノの女性の合唱で「お救い下さい」とかすれるように歌い、男声もそれに続いて応えてから、最後には四重唱で悲痛な声で祈るように歌われて、徐々にテンポを落としながら消えるように終結するのであるが、8頭の人馬もこの音楽に合わせるように、静かに歩みを運び、ゆっくりと静止状態に入っていた。実に美しい光景であった。



          第四曲は、ソリストたちにより歌われる「リコールダーレ」で、チェロとバセットホルンによるしっとりしたしめやかな感じの前奏に続いて、アルトとバス、ソプラノとテノールとが順に厳かにゆっくりと歌い出す平穏な曲で始まっていた。舞台では2頭の三角頭巾のリーダーに従って6頭の人馬が音楽に合わせて歩み始めて、6頭の人馬が十字架を暗示させるかのように両腕を広げて一周したり、中央に整列したりしていた。



     しかし、中間部からテンポがやや速まってソリスト4人がそれぞれ歌い出して非常に豊かな響きの深みのある四重唱となっていたが、2頭プラス6頭の人馬も、前半と同じように4頭ずつペアになって音楽に合わせて静かに歩み、再び横一列に整列をしていた。激情の溢れるレクイエムの中にあってソリストたちの四重唱は平穏で厳かな雰囲気を醸し出しており、舞台でも、あたかも一息入れるような、休息出来る場面であった。



          第五曲の「コンフターテイス」では、全オーケストラの荒々しい伴奏で男声合唱が激しく雄叫びを上げるように歌い出してから、一転して救いを求めて悲鳴のように聞こえるソットヴォーチェの女声合唱が対照的に歌われ、そして再び始めから全体が激しく繰り返されていた。舞台では10人ほどの黒ずくめの衣裳の女性たちが登場しており、このまわりを6頭の人馬がゆっくりと歩みを重ねていた。この男性声部と女性声部の対照の妙の凄さには驚くものがあるが、よく見ると指揮のミンコフスキーがこれを引き出すように素早い動きを見せており、終りには弦の三連符の伴奏で、4声が一緒になって「死に際の苦しみを救ってください」という悲痛な叫びが繰り返されて、激しく胸に迫るものがあった。舞台では、つぎのラクリモサへの準備をするかのように、女性たちが隊列を組んで、静かに動いていた。



           そして切れ目なしに続いて第六曲の「ラクリモサ」がヴァイオリンの切々たる音で静かに始まったが、舞台では6頭の人馬が整列して6人の騎手が馬上で仰向けに横たわり、両腕を高く掲げて掌を合わせて合掌の姿になっていた。ミンコフスキーは、テンポを落とし淡々と一音づつ進め、合唱が少しずつクレッシェンドで次第に高まりを見せ、8小節を超えてさらに高まりを見せながら高揚し続けていたが、何と舞台には10人くらいの合唱団が指揮者の前で歌い、それに合わせて6頭の人馬が両手を上げたり下げたりして祈りを捧げていた。



     やがてバセットホルンとトロンボーンが厳かに響き出し、テインパニーの打音に乗って、大合唱の最後の燃焼が続いていたが、6頭の人馬はそれに合わせて静かに腕を上下させて祈りを捧げていた。終わりのアーメンの合唱が実に厳かに結ばれ、起伏の大きかったセクエンツイア全体が締めくくられていたが、舞台では馬上の6人の騎手たちが一斉に両腕を上げて合掌の姿勢に入ろうとしていた。映像では、ここで一呼吸置いて、オッフェルトリウムに入ろうとしていたが、私のレクイエムへの集中力の限界はここまでで、取りあえず休息せざるを得なかった。



     続く「オッフェトリウム」では、初めに「ドミネ・イエス」の早めのテンポの大合唱で始まっていたが、舞台では二人の黒装束の女性が立ち、その間を6頭の人馬が二組づつペアになって、この女性を目印にしてまわりを音楽に合わせて駆け巡っていた。やがてソリストたちの四重唱となって、明るさを取り戻したあと、再び合唱のトゥッテイに戻っていたが、6頭の人馬は2頭づつペアーになって、軽快に二人の女性の間を元気よく駆け抜けていた。
         「ホステイアス」では、アンダンテの安らかな合唱が続いたあと、再び前曲の早いテンポのアブラハムのフガートの合唱に戻っていたが、舞台では8頭の人馬が2頭ずつペアーになって、舞台を軽やかに輪を描くように駆け巡っていた。



        ここで一呼吸おいてから、サンクトウスに入る前に、1頭の裸の黒馬が寝転んでおり、素早く立ち上がって格好の良い姿を見せてから、再び横になってから立ち上がって見せ、騎手がいないのに一匹で馬なりに自分の演技ができる裸馬の姿には驚かされた。馬は何と利口な動物なんだろうと、不思議に思われた。



         続いて「サンクトウス」のアダージョの大合唱が始まり、高らかに三度繰り返されてから、「怒りの日」に似た主題が始まり、やがてホザンナではアレグロの大合唱が続いていたが、舞台では黒の三角頭巾を被った8頭の人馬が軽やかに合唱に合わせて駆け抜けていた。ベネデイクトウスに入ると第一ヴァイオリンに先導されてアルトから始まってソリストたちの四重唱が続き、しばし安らぎの歌が続いていたが、舞台では6頭の人馬に変わり、ここでも3頭づつの2組のペアーに分かれて、軽いステップを踏んでいた。そしてホザンナの大合唱を経て収束していたが、舞台では6頭の人馬が舞台を大きく何周か駆け巡って、元気の良い姿を見せていた。



         最後の「アニュス・デイ」では、テインパニーと細かな弦による前奏に続いて、厳粛な合唱が死せる者の安息を祈願して静かに歌っていた。舞台では三頭の白馬の背中に羽の骨がついた骸骨が跨がって、黒い三角頭巾姿の騎手に曳かれて歩んでおり、恐らくは、羽のついた天使の安息を祈っているものと思われた。
          そして最後の「コンムニオ」では、冒頭の「イントロイトゥス」のキューマイヤーのソプラノの独唱から静かに始まっていたが、続くキリエ全体が再現されており、実に厳粛に進行していたが、舞台では最初と同じ二頭の三角頭巾の騎手に先導された6頭の馬に死者が乗せられて登場して静かな歩みを見せていた。



      そして後半のキリエでは、テンポを速めて、8頭の人馬による軽やかな駆け足となり、広い舞台を使って輪を描くように疾走している姿が見られ、最後のアダージョでは、テンポを緩めて「慈悲深くおられる神よ」で厳かに全体が結ばれていたが、8頭の人馬は指揮者の前で整列していた。



      レクイエムの演奏終了後も祈りのポーズを崩さずに瞑想状態を続けて静寂な状態を続けてから、8頭の人馬と4人の黒装束の騎手が横一列に整列しており、ミンコフスキーが指揮台から降りて整列した皆さんの前に立って、静かに指揮を取り始めた。曲は「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618であり、最初に弦楽合奏で全奏が流れてから、合唱団や整列した皆さんにより静かな合唱が始まった。舞台では、横一列に並んだ人馬の皆さんと合唱団の皆さんがにこやかに「主よ、永遠の安息を彼らに与えたまえ」と厳かに歌っており、わずか2分余りであったが、馬も動かずに頭を揃えて、歌声に聴き惚れているかのように見えていた。それは素晴らしい美しい音楽の奏でる世界であった。



     終わると盛大に拍手が湧き起こり、ミンコフスキーがバルバタスと抱き合って互いに祝福し、握手を重ねてから、二人が並んで最敬礼し、拍手をする観衆にご挨拶をしていた。拍手は限りなく続いており、背広姿のソリストや演出家などが一列に並んで挨拶を繰り返していたが、遠くではオーケストラ団員も合唱団も起立して拍手に応えていた。それでも拍手は鳴り止まず、一列はさらに長くなって、挨拶を繰り返しており、この「レクイエム」の音楽と馬術との総合芸術は、大成功と思われた。

          ミンコフスキーとバルバタス一行のこの映像の「レクイエム」は、ソリストにキューマイヤーなどの優れた人たちを迎え、ザルツブルグ・バッハ合唱団の面々も力強く素晴らしい演奏であり、また、ルーブル宮音楽隊のオーケストラも大型の布陣であったが、教会の大聖堂での録音に較べて響きがやや薄く感じられ、ピリオド奏法に徹底していたせいか、あっさりと淡々として進行する演奏であると思われた。指揮台に立ったミンコフスキーの指揮振りはしなやかで動きが良く、見るからに全体を引っ張っていたが、舞台上の最大8頭に及ぶ人馬の踊りと駆け足の姿が見ものであり、「レクイエム」の美しい荘厳な音楽に合わせて踊る姿が珍しく、魅力的であり、見るからに人馬の群れと壮大な音楽による「総合芸術」としての印象を高めていた。「レクイエム」の前奏と後奏に当たった音楽も素晴らしく、「レクイエム」を見事に引立てており、その着想に深く敬意を表したいと考える。何度、繰り返しても見飽きない、素晴らしい総合芸術の姿であった。


(以上)(2017/12/13)



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