(最新の放送記録より;エマーソン四重奏団のK.421と今井信子のK.424、)
17-10-2、エマーソン四重奏団による弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421、2017/8/20放送のクラシック館「弦楽四重奏の世界−究極の対話−」、および今井信子のヴィオラによるVnとVlaのための二重奏曲変ロ長調K.421、
ヴィオラスペース2015ガラ・コンサートより、NHKクラシック倶楽部の放送、2015/06/04、上野学園石橋メモリアル、

−エマーソン四重奏団は、前回の1991年の時も終始穏やかな演奏を行なっていたが、今回はさすが全員が老境に入ったせいか、ゆとりのある落ち着いた穏やかな演奏に終始し、これがこの映像の標題の四重奏の究極の4人の対話かと思わせる演奏振りであった。一方のヴァイオリンとヴィオラの弦楽二重奏曲変ロ長調K.424は、このHPの映像では初登場であるが、ヴィオラの今井信子は、相性の良いヴァイオリンのパメラ・フランクを得て、実に二つの楽器が綿密に絡み合った緻密な二重奏を見聴きすることが出来、地味な作品であるが素晴らしい二重奏曲であると思った−

(最新の放送記録より;エマーソン四重奏団のK.421と今井信子のK.424、)
17-10-2、エマーソン四重奏団による弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421、2017/8/20放送のクラシック館「弦楽四重奏の世界−究極の対話−」、および今井信子のヴィオラによるVnとVlaのための二重奏曲変ロ長調K.424、
ヴィオラスペース2015ガラ・コンサートより、NHKクラシック倶楽部の放送、2015/06/04、上野学園石橋メモリアル、
(2017/8/20放送NHKクラシック館をHD-5に収録、および2017/06/24放送のNHKクラシック倶楽部をHD-5に収録)

         10月号の第2曲は、つい最近、NHKのHVクラシック館で放送された「弦楽四重奏の世界−究極の対話−」というドキュメンタリ&スタジオ映像の番組を収録したが、その中でエマーソン四重奏団による弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421の来日公演が含まれていたので、早速、お届けしたいと考えた。この1曲だけでは、少し寂しいと考えて、第二にNHKクラシック倶楽部よりヴィオラスペース2015ガラ・コンサートという番組に、今井信子のヴィオラによるVnとVlaのための二重奏曲変ロ長調K.424が含まれていたので、追加アップを考えた。この演奏は、2015/06/04の日付けで、上野学園石橋メモリアルホールで収録されたものであり、このHPでは初登場の曲である。




          今回の第一曲目は、エマーソン四重奏団によるハイドン四重奏曲の第2曲目に当たる第15番ニ短調K.421であるが、実は彼らのこの曲の演奏は、1991年のものを既に収録済み(16-7-2)であった。今回の彼らの演奏時期はスタジオ演奏であり、ドキュメンタリー的な放送なのでハッキリしないが、兎に角、前回の演奏がもの凄く古いので、20年以上は経っているものと思われる。メンバーをチェックして見ると、写真に氏名を示しているが、チェロだけが、変わっているようであった。
    演奏の前にインタヴューがあり、この曲についての感想を聞かれていたが、第一ヴァイオリンのドラッカーが、ニ短調はモーツァルトが個人的な感情を表現する際に選んでいると語り出した。すると第二ヴァイオリンのセッツアーが、隣室で自分の妻がまさに分娩しようとしていたまさにその時に、この曲は作曲された。この曲で短調で表現しているのは彼女の「苦しみ」や「叫び」だといい、そして長調になってやっと生まれたのでしょうという。この曲のこの部分は、ニ短調で始まるメヌエット楽章であると言われているが、彼らの言葉から、彼らもそのように感じながら演奏しているように思われた。




    ドキュメンタリーでの笑いの後に、この曲の第一楽章の第一主題が厳かに開始された。鏡のある赤い絨毯のスタジオで、全員がソット・ヴォーチェで静かにこの主題を開始しており、第一ヴァイオリンがチェロの伴奏で、美しい主題を提示してから、一転して1オクターブ高くフォルテで反復してハッとさせるが、六曲中で唯一の短調作品であり、この冒頭の第一主題は極めて印象的に始まっていた。しかし、このエマーソン四重奏団の第一ヴァイオリンは、フォルテでも余り激しくなく、落ち着いて穏やかに進めており、悠々とした川の流れのように感じさせていた。しかし、続くせき立てるようなヴィオラの16分音符の刻みの上に、第一ヴァイオリンが優雅に歌い出す第二主題でも、祈るような素晴らしい部分を造り上げていた。この四重奏団は提示部の繰り返しを行なって、厳かな中にも爽やかな明るい部分を聴かせる一方で、短調的な暗い諦めに似た気分をもたらしており、暖かみのある味わいを見せながら繰返されていた。
     しかし、展開部になって一転して暗い表情となり、第一主題の冒頭のモチーブが緊迫した姿で執拗に何度も繰り返され頂点を築いていたが、これが短調の楽章の展開部の宿命であろうか。再現部に入ると、再び和やかな気分の第一主題が登場して、明るさを取り戻しながら発展し、優雅な第二主題に引き戻されていた。エマーソン四重奏団は、前回も終始穏やかな演奏を行なっており、ハーゲン四重奏団ほど緩急・強弱が激しくなかったが、今回はさすが全員が老境に入ったせいか、ゆとりのある落ち着いた穏やかな演奏に終始し、これが標題の究極の4人の対話かと思わせる演奏振りであった。




       第二楽章のアンダンテは、A-B-Aの三部形式か。始めに第一ヴァイオリンが微妙できめ細かい音を散りばめる繊細な味わいを与える美しい主題を弾きだし、いわば束の間の至福の姿を描き出す。この主題は休符が重要な要素になっており、続くモチーブの強弱が微妙な影を落とし、第一ヴァイオリンのドラッカーとこれを支える3声のアンサンブルの良さが際立っていた。この主題が繰り返すように進んでから中間部に入って、フォルテの合奏による激しい部分と第一ヴァイオリンのピアノの温和な部分とが交錯して変化をもたらしてから、再び冒頭の美しいアンダンテの主題に戻っていた。




      第三楽章は、堂々たるメヌエット楽章で、第一ヴァイオリンとチェロ、第二ヴァイオリンとヴィオラが対になって掛け合う素晴らしい重厚なメヌエットとなっていた。この元気の良いメヌエットを聴くと、コンスタンツエが最初の長男の出産時に作曲されたという話を思い出す。トリオでは一転して三人のピッチカート伴奏の上に第一ヴァイオリンが付点音符のついた優雅な旋律を奏で、ここでも束の間の至福の姿を描き出す。この楽章の威勢の良さとトリオで見せる至福の休息は、彼らの語る最初の子の出産時の意気込みや安堵感などにふさわしいような感じを受けた。




      フィナーレは、意表をつく珍しい変奏曲であり、主題と5つの変奏部から出来ていたが、やはりハイドンのロシア四重奏曲作品33にヒントを得たとされる。ハイドンの曲と同様にシチリアーノのリズムを持つ親しみやすい変奏主題が、8小節+16小節の二部形式で提示され、以下の四つの変奏曲は、この楽節構造を保持した装飾変奏で書かれていた。始めの第一変奏では、第一ヴァイオリンの16分音符による早いテンポの変奏。第二変奏では第二ヴァイオリンが刻む細かなリズムの上で、第一ヴァイオリンのフォルテとピアノを多用したシンコペーション旋律を奏でる。第三変奏ではヴィオラが活躍し単純化された主題を奏し、第四変奏では二つのヴァイオリンがオクターブのユニゾンでテーマを奏していた。そして、最後の第五変奏では、テンポを少し早めてもう一度最初のテーマを全員で奏し、繰り返しを止めてあっさりと終結していた。

          コンサートではなくスタジオ録音なので、映像はこれで終わりとなって拍手をしたくなる気分であったが、この映像は終わっていた。エマーソン四重奏団の面々は写真のとおり、皆さんは老境に入っておられるが、こうして楽しみながら名曲の演奏を続けておられるのであろう。この番組は「弦楽四重奏の世界」と称して、バルトークに始まり、現代曲が続いた後、ベートーヴェンとこの曲で結ばれていたが、私にはこのニ短調の四重奏曲が最も和やかな心地よい究極の世界に聞こえていた。






         第二曲目は、このHPでは初登場のヴァイオリンとヴィオラのための弦楽二重奏曲変ロ長調K.424であるが、このヴィオラスペース2015のガラ・コンサートは、今井信子が中心となって1992年から毎年開催しているヴィオラの祭典であり、国内外のヴィオラ奏者たちによるガラ・コンや若手演奏家のための公開マスター・クラスを行なっているものである。この曲はモーツァルトがコンスタンツエと結婚後、ハ短調ミサ曲を携えて、初のザルツブルグ詣でをした際に、先輩のミヒャエル・ハイドンが病気のための急場を救うために作曲したとされており、6曲中最後の2曲がモーツァルトの作品と言われている。今回演奏される曲は、第一曲のト長調K.423に続く第二番変ロ長調K.424であり、三楽章の構成となっている。






          この曲の第一楽章はアダージョの序奏で始まり、ユニゾンでヴァイオリンとヴィオラが力強く弾きだした後は、ヴァイオリンが装飾的な動きに転じ、続いてヴィオラが細かく動き始め、これをヴァイオリンが引き継いでから、静かに序奏は両者の和音で終息していた。続いてアレグロの第一主題がヴァイオリンで開始されてから、ヴィオラとの重音で軽快に経過してから、第二主題がまずヴァイオリンで奏され、続いてヴィオラに引き継がれ、再びヴァイオリンに戻って朗々と経過して、呈示部を盛り上げて結尾主題がまとめていた。ここで呈示部は繰り返されて、明るくヴァイオリンとヴィオラの美しい共演が軽快になされていた。展開部の主題は、結尾主題が繰返し繰返し発展したもので、美しいエピソードのような響きを持っていた。再現部では呈示部の素材が丁寧に反復されていたが、最後に結尾主題が美しくエコーのように奏されて印象的であった。二本の弦楽器によるソナタ楽章であるが、実はCDでは余り聴き込んでいなかったので、丁寧に聴いたのは始めてかも知れない。それぞれの声部が対等で見事な共演がなされ、名手二人による息の合った見事な演奏を聴かされて、豊かな表現力を持っている曲であると感心させられた。







          第二楽章はアンダンテ・カンタービレの美しい楽章で、全体は大きく二つに分かれた自由な変奏形式のように見受けられた。短いシチリアーノのリズムの主題に簡単な装飾音を加えて反復しているようであり、ヴァイオリンとヴィオラが絡み合って実に美しい。後半は前半の主題をより一層自由に装飾したものであり、リズムを変え音を細分化したようにも聞こえ、最後にはヴァイオリンが短いカデンツアを聴かせていた。短い単純そうな曲であるが、二人の名手による演奏で聴くと、味わい深い変化のある曲であった。




          フィナーレは、主題と六つの変奏曲であり、主題はアンダンテ・グラツィオーソの前半は順次下降し、後半は順次上昇する馴染み易い旋律から出来ていた。第一変奏はヴァイオリンが早いテンポの三連符で主題をなぞるのに対して、ヴィオラは補助的にこれに合わせていた。第二変奏では主題冒頭の付点リズムを生かして、二つの楽器がカノン風に模倣し合うものであった。第三変奏ではヴァイオリンが16分音符で動き回るに対して、ヴィオラはこれにゆったりと合わせて、リズムも刻んでいた。第四変奏では第三変奏の楽器の役割を交換したものであった。第五変奏ではテンポが変わり二つの楽器が合わせ補いながらゆっくりと進行するものであった。第六変奏ではテンポがアレグレットになり主題は休符をはさみながらヴァイオリンによって奏されるもので、この変奏の最後に、アレグロでの主題変奏が短く付け加えられて終息していた。

                   このヴァイオリンとヴィオラの弦楽二重奏曲変ロ長調K.424は、このHPの映像では初登場であるが、ヴィオラの今井信子が相性の良いヴァイオリンのパメラ・フランクを得て、実に二つの楽器が絡み合った緻密な二重奏を見ることが出来、地味な作品であるが素晴らしい二重奏曲であると思った。このヴィオラスペースのガラコンは、毎年実施されており、確かに過去に何回か収録してあるはずなので、もう一曲のト長調K.423を含めて、過去の記録を調べて見たいと思っている。


(以上)(2017/10/10)



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