(最新のHD録画より、パノハ四重奏団K.80とヴォーチエ四重奏団のK.465より)
17-1-3 パノハ四重奏団による弦楽四重奏曲第1番ト長調K.80、2015/12/02、浜離宮朝日 ホール、およびヴォーチエ四重奏団による弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」 より、
2014/12/09、王子ホール、

−最初の弦楽四重奏曲第1番ト長調K.80は、過去においても余り耳にすることがなかった初めてアップする曲であったが、さすがヴェテランのパノハ四重奏団は存分にモーツァルトらしさを歌い上げ、軽快さや新鮮さにおいて見るべきものがあるこの曲の目新しさを上手く表わしていた。一方のヴォーチエ四重奏団による第19番ハ長調K.465「不協和音」は、3人の若い女性による優雅な演奏を期待していたのであるが、NHKの都合で肝心の第二・第三楽章が割愛されており、早いアレグロ楽章の第一・第四楽章しか聴くことが出来ず、演奏に荒さが見られたため、序奏のような落ち着いた演奏は聴くことが出来ず残念であった−

 (最新のHD録画より、パノハ四重奏団K.80とヴォーチエ四重奏団のK.465より)
17-1-3 パノハ四重奏団による弦楽四重奏曲第1番ト長調K.80、2015/12/02、浜離宮朝日 ホール、およびヴォーチエ四重奏団による弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」 より、
2014/12/09、王子ホール、
(2016/10/12及び2015/05/25、NHKクラシック倶楽部の放送をHD5及びHD3に収録)

    2017年の第3曲目は、NHKクラシック倶楽部の最新のHDD録画より、パノハ四重奏団とヴォーチエ四重奏団が一曲づつモーツァルトの四重奏曲を演奏していたので、始めにパノハ四重奏団による弦楽四重奏曲第1番ト長調K.80(2015/12/02の浜離宮朝日ホール)を、続いてヴォーチエ四重奏団による弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」より(2014/12/09、王子ホール)の演奏をご紹介するものである。

    初めのパノハ弦楽四重奏団は、1968年にプラハ音楽院の学生によって結成され、以来、約半世紀にわたって活躍を続けている団体であり、祖国チェコの音楽を中心に、古典派から近・現代音楽まで幅広い作品をレパートリーとしている。1980年以来、日本にもたびたび訪れ、息の合ったアンサンブルで聴衆を魅了している。第一ヴァイオリンのイルジー・パノハは、「私たちは1967年に三重奏団としてスタートし、1968年から第二ヴァイオリンのパヴェルを加えて弦楽四重奏団を結成しました。唯一の変化は、1971年にビオラ奏者を、ここにいるミロスラフに交替したことです。ほぼ、同じメンバーで44年間も仕事をともにしているので、博物館のように歴史とともに歩んでいます。来日回数は30回を超えましたので、日本は大好きな国で第二の故郷と言えます。来日時の滞在期間を合わせると、何と2年にのぼります。客席の集中力や緊張感を肌に感じ、いつも心地よく演奏しています」と語っていた。この演奏は、2015年12月2日の浜離宮朝日ホールからのものでNHKのクラシック倶楽部の放送を収録したものである。



    この弦楽四重奏曲第1番ト長調K.80は、モーツァルトが14歳の時、1770年の作品で、憧れの地イタリアを旅行中のローデイで手掛けた最初の弦楽四重奏曲で、初稿はイタリア風の3楽章構成であったが、後に第4楽章を加えたものとされ、アダージョ・アレグロ・メヌエット・ロンド(アレグロ)の全体構成となっている。他の初期の四重奏曲がミラノ四重奏曲(第2番〜第7番、1772〜73)とか、ウイーン四重奏曲(第8番〜第13番、1773)とか呼ばれる6曲のセットであるに反して、この曲は1曲だけ独立して作曲されており、レオポルドの筆跡が自筆譜にあるところから、旅行中での習作であろうとも考えられている。しかし、曲は溌剌とした初々しい曲となっており、このパノハ四重奏団の手慣れた演奏は4声が良く噛み合って、とても楽しい演奏になっていた。




    アダージョで始まる第一楽章は、反復のついたソナタ形式となっており、ビオラとチェロが八分音符で刻む伴奏に乗って、第一ヴァイオリンが伸びやかな旋律を奏でながら第一主題が開始された。続いて第二主題も同じような伴奏で二つのヴァイオリンが音域の交差を美しくみせながら軽快に進んでいた。この主題提示部は繰り返されていたが、パノハ四重奏団は第一ヴァイオリンを中心にして、優美な旋律を明るく演奏していた。
    ビオラが主題を提示する短い展開部があって、再現部では両主題とも変奏されて各声部に現れていたが、このアダージオには不思議な明るい魅力があり、第一曲目の四重奏曲としてなかなか印象的であり、パノハ四重奏団はこの若々しい新鮮な感覚のアダージョをきめ細かく丁寧に演奏をしていたのが印象的だった。




     第二楽章はアレグロで、ソナタ形式で書かれており、元気いっぱいの第一主題がユニゾンでシンフォニア風に開始され、颯爽と勢いよく進行していたが、第一ヴァイオリンから一小節遅れでカノン風に第二主題が始まり、続いて第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンとが掛け合い風に進行して提示部を終えていた。この四重奏団はここで折り目正しく繰り返し、再び、冒頭から颯爽とこのアレグロの提示部を繰り返していた。
     展開部はビオラが新しい主題を提示しており、再現部では、再び元気いっぱいのアレグロ楽章が再現されていた。




      第三楽章はメヌエット楽章。第一ヴァイオリンがメヌエットのメロデイラインを受け持って堂々と進行していた。一方のトリオでは、4声による物静かな合奏で簡潔に仕上げられていた。
      フィナーレは旅行後に追加された楽章で、アレグロのロンド楽章となっており、譜面ではA-B-A-C-A-B-A-コーダからなる標準的な構造となっていた。フランス風のガヴォット的なロンド主題がアレグロで軽快に飛び出し、第一のエピソードで二つのヴァイオリンがもつれ合い、短いロンド主題の後の第二のエピソードでは第一ヴァイオリンがリードして繰り返されて、一気にロンド主題に戻り、最後はコーダで結ばれていた。パノハ四重奏団は、,ここでも軽快にロンド主題を進め、いかにも手慣れた仕草で楽章を終えていた。




     この四重奏曲は初めてアップする曲であり、過去においても余り耳にすることがなかったが、モーツァルトの第1番は、交響曲にしても、ピアノ協奏曲にしても後続する曲よりも出来が良いことが多く、弦楽四重奏曲においても、その軽快さや新鮮さにおいて見るべきものがあり、ヴェテランのパノハ四重奏団は存分にモーツァルトらしさを歌い上げ、その目新しさを上手く表わしていた。末尾になったが、パノハ四重奏団のお名前を紹介して結びにしたいと思う。
(メンバー)第一ヴァイオリン;ノルジー・パノハ、第二ヴァイオリン;パヴェル・ゼイファルト、ビオラ;ミロスラフ・セフノウトカ、チェロ;ヤロスラフ・クールハン、




      第二曲目は、ヴォーチエ四重奏団による弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」であり、2014年12月9日、王子ホールでの来日公演である。この四重奏団は、2004年パリ国立高等音楽院の卒業生によって結成され、これまでにイザイ四重奏団やアルバン・ベルク四重奏団の元メンバーの指導を受けて、技術を磨いてきたとされる。2006年に開かれたジュネーヴ国際音楽コンクールで最高位を受賞し、国際的な評価を確立してきている。3度目となる今回の来日公演は、結成10周年を記念した特別演奏会である。ヴァイオリンは結成メンバーのサラ・ダイヤンとセシル・ルーバンであり、ビオラは2005年加入のギョーム・ベケールであり、チェロは2013年加入のリデイア・シェリーとなっている。ビオラを除き女性が3人のこの四重奏団は珍しく、どんな演奏になるか楽しみであった。
      このNHKクラシック倶楽部の放送は55分であり、この日のメインはヤナチェック作曲の弦楽四重奏曲第2番であり、この不協和音四重奏曲は、一部が時間の都合で割愛される恐れがあった。しかし、通して聴いてみると、やはり、誠に残念ながら、第2楽章と第3楽章が割愛されていたが、と言って予定を変更するわけにもいかず、放送通りにアップロードしたいと考えた。ここに謹んで不明の点をお詫びしたいと思う。



          この弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」は、ハイドンに捧げられた6曲の最後の曲とされ、標題のとおり冒頭に「不協和音」が続く序奏を持つことで有名な曲である。この序奏はアダージョで22小節もある長い序奏となっており、いつも最初は譜面を見ながら注意深く聴いてみることにしている。チェロから順にビオラ、第二ヴァイオリンと和音を構成していき、第一ヴァイオリンが入って不協和音の連続となっていく不思議な形で始まっているが、誰しもがこの曲の冒頭に神経を集中させて聴かざるを得ない面白い構成になっており、改めて聞き直してもやはり、初めて聴いたときとほぼ同様に、その異様な響きに驚かされる。しかし、良く聴き直すと序奏の直後に始まるハ長調の颯爽としたアレグロを明るく明解に聞かせるためのモーツァルトの巧妙な伏線であることが理解出来るであろう。




          この面白い長い序奏が終わると、第一楽章の明るい第一主題が、第一ヴァイオリンにより軽やかに始まり、第二ヴァイオリンとヴィオラがリズミックにこれを支えていた。この主題は各声部にも力強く繰り返されていき、やがて第一ヴァイオリンが力強いフォルテの和音とともに16分音符による素速い印象的な下降フレーズが奏される。ヴォーチェ四重奏団によるこの序奏から提示部への一連の動きは実に軽快であり、一気呵成に進行し鮮やかな響きを聴かせていた。続いて三連符のリズムによる軽やかな活気のある第二主題が第一ヴァイオリンに現れ、次第に加速され高潮してゆく。この四重奏団は、第一ヴァイオリンを中心にしっかりしたアンサンブルを見せており、ソナタ形式の提示部の繰り返しを丁寧に行って、これが本番とばかりに、颯爽と疾走する力強い弦楽合奏が続いていた。




展開部では第一主題の前半部を集中的に扱っており、伴奏の八分音符のリズムと主題の組合せが各声部によりさまざまな形で展開され、さらに後半ではチェロと第一ヴァイオリンの対話のような展開がなされていた。再現部にはいると、第一主題に続いて素早い下降フレーズ、第二主題とほぼ提示部と同様に型通り進んでいたが、再現部の末尾の繰り返しは省略されていた。最後には第一主題による長いコーダがあり、この四重奏団は丁寧にこれを演奏したあと静かに終結していた。
HDD録画によるハイビジョンの美しい映像とクリアな音響のお陰もあって、3人の女性による演奏は視覚的にも楽しみがあったが、じっくり聴いた感じでは、女性の割には全体的に音が荒く、アンサンブルにまろやかさが欠ける面があったように思った。しかし、久しぶりで聴いたこの曲の疾走するようなアレグロの軽快さや快適さを改めて楽しく感じさせてくれたと思う。




               NHKのお陰で、二つの楽章を割愛してフィナーレを聴き始めたが、このフィナーレは明るいアレグロ・モルトのソナタ形式であり、続いて聴いてみると、第一楽章のアレグロととても良く似た共通の疾走する軽快さを持っていた。初めに、第一ヴァイオリンの澄みきった明るい第一主題に始まり、続いて16分音符が連続する疾走する第二主題に続いていた。そして第一ヴァイオリンによる印象的なエピソードが軽快に続いて提示部を終了していた。ヴォーチェ四重奏団は、提示部での繰り返しを行なって、再び明るく疾走する第一主題に戻り、颯爽と進んでいた。展開部では第一主題と第二主題の冒頭部分が何度も繰り返されて、再現部へと突入していた。ここでは型どおりに第一主題から第二主題と再現されていたが、反復記号の後に第一楽章と同様に長いコーダがあり、第一主題がサラリと現れて全体が収束していた。

       ヴォーチェ四重奏団は、続いてヤナチェックの弦楽四重奏曲第2番「内緒の手紙」という標題の曲に入っていたが、続けて聴いた印象では、彼らはヤナチェックの方が向いているように思われた。それは、もの凄く早い第一・第四楽章で彼らの演奏にやや荒さを感じたせいであり、第2楽章のアンダンテ・カンタービレなどゆっくりした楽章を聴いていないためかも知れない。しかし、例えばゲバントハウス四重奏団のように、もっと揃った円熟した演奏があるという思いはある。しかし、NHKによる割愛の入った不十分な映像の一部の演奏だけで、彼らを比較・評価するのは不見識であり、慎まなければいけないと思う。


(以上)(2017/01/17)



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