(BDCHのアーカイブから小沢征爾のベルリンフィル名誉団員受賞コンサート)
17-1-1 小澤征爾指揮ベルリンフィルの受賞記念コンサートとベルリンフィル管楽グルー プによるセレナード変口長調K.36l(370a)「グラン・パルティータ」、
2016/4/10、フィルハーモニア・ホール、ベルリン、

−病魔を克服した小澤征爾が約7年ぶりで2016年4月10日のベルリン・フィル定期に登場し、ベートーヴェンのコリオラン序曲と合唱幻想曲を指揮して喝采を浴びていたが、併せてベルリンフィルの名誉団員賞を受賞していた。続く「グラン・パルティータ」K.361の演奏は、誠に残念ながら、この日は指揮者なしの演奏となり、ベルリン・フイルの13人の楽団員たちにより、主としてオーボエのリードで演奏されていた。指揮者が不在であっても、全体として実に華やかな音色に満ちており、この壮大かつ重厚な曲を充分に鳴らせて実に力に溢れた楽しい演奏を聴かせてくれた−

(BDCHのアーカイブから小沢征爾のベルリンフィル名誉団員受賞コンサート) 17-1-1 小澤征爾指揮ベルリンフィルの受賞記念コンサートとベルリンフィル管楽グルー プによるセレナード変口長調K.36l(370a)「グラン・パルティータ」、 2016/4/10、フィルハーモニア・ホール、ベルリン、
 (2016/12/24、BDCHのアーカイブより)

    最近は新しい優れたモーツァルトソフトの入手が困難になってきているので、1月号の新年の新譜紹介は、ベルリンフィルのデジタル・コンサート・ホール(BDCH)のアーカイブに頼ろうと考えてきた。前回にBDCHをチェックしたのは、2016年9月でありその時に新年用にアップしようと考えていたのが、2016年4月10日のベルリンフィルの定期公演であり、小澤征爾が7年ぶりに出演し、何とその時の演奏曲に私の大好きなセレナード変ロ長調K.361「グラン・パルティータ」が含まれていた。それが新春を飾る最初のソフト紹介17-1-1であり、この日のプログラムは、ベートーヴェンのコリオラン序曲、合唱幻想曲、セレナード第10番「グラン・パルティータ」K.361となっていた。




   これは小澤征爾が2009年以来約7年ぶりにベルリン・フィルに登場した話題のコンサートであった。1966年のデビュー以来、小澤とベルリン・フィルは頻繁に共演を重ねており、病気による長期間の休養からの復帰公演を心待ちにしていた。デジタル・コンサート・ホールの樫本大進とのインタビューで「ベルリン・フィルの好きなところは?」と聞かれた小澤は、「全員が室内楽のように演奏するところです。これがこのオーケストラの伝統を形作っていると思いますね」と答えていた。カラヤンがベルリン・フイルに在任中に、小沢はカラヤンの弟子となり、例えばカラヤンが「ドン・ジョヴァンニ」のオペラで、演出や照明などで忙しいときに、彼はピアノを弾きながら指揮の代役をしていたと語っていた。




     また、彼はこの時に、ベルリン・フィル名誉団員の称号を授与されており、その時の授与式の様子が映像で紹介され、彼が喜ぶ姿が紹介されていた。一方、この日のコリオラン序曲では、ベルリン・フイルの全員の心を捉えた素晴らしい演奏となっており、ゆっくりしたテンポで堂々としたスケールの大きい風格ある演奏であった。また、続く合唱幻想曲は、ピーター・ゼルキンのピアノのソロで始まり、コンチェルトのように進んでから、後半は第九のフィナーレを思わせる合唱で盛り上がりをみせる重厚な曲となっており、小沢はここでもじっくり歌わせて、素晴らしい効果を挙げていた。ここでこのコンサートの第1部は終了し、病魔を克服した小沢は、ベルリン・フイルと合唱団の全員から祝福され、花束の贈呈まであって、まれに見る感激的な充実したコンサートであった。

ところが、誠に残念ながら、続く「グラン・パルティータ」K.361の演奏は、この日は指揮者なしの演奏となり、ベルリン・フイルの13人の楽団員たちにより演奏されており、主としてオーボエのリードにより演奏がなされていた。しかし、指揮者なしでも彼らは実に熱のこもった演奏をしており、管楽器による歯切れの良い見事なアンサンブルを聴かせてくれ、これまで聴いてきた演奏の中でも記録に残すべき充実した演奏であると思われた。




第一楽章は、ラルゴーアレグロ・モルトの実に荘重な曲になっており、冒頭のラルゴの14小節の序奏は、トウッテイによる堂々たる響きの力強い序奏部で始まり、早すぎないテンポでじっくりと進んでいた。続いて二つのクラリネットの合奏で始まるアレグロの第一主題は、対照的にキビキビとしたテンポで軽やかに始まっており、珍しい4つのホルンの重厚な伴奏に支えられて威勢良く進んでいた。やがて続く第二主題は、楽譜ではバセットホルンであるが、ここではイングリッシュ・ホルンかバス・クラリネットが登場して、旋律は第一主題と同じ形で楽器の音色と調性を変えたもののようであった。引き続きオーボエとホルンへと引き継がれて次第に盛り上がり、提示部を威勢良く終了していた。ここで再び冒頭のアレグロ・モルトに戻って、全体が軽快に繰り返されていたが、重厚な迫力ある響きが支配しており、ベルリン・フイルの管楽グループの実力を遺憾なく発揮していると思われた。
そのせいか展開部では新しい主題がクラリネットで始まり、その主題が各声部に引き継がれて再現部に移行していたが、ここではほぼ型通りに進んでおり、全体としてオーボエのリードとクラリネットの活躍により各楽器の各声部は非常に伸び伸びとして、明るく晴れやかに威勢良く進行し、結びのコーダでは巧みに新味を出してこの楽章を終えていた。




    第二楽章のメヌエットは二つのトリオを持つ大型のものであり、トウッテイで堂々と始まり整然と進行するが、後半の終結部ではクラリネットの甘いソロで仕上げられていた。続く第一トリオは、クラリネットとバスクラとが速めのテンポで四重奏の合奏で始まり、4本のクラリネットの音色の響きが微妙に美しく極めて印象的だった。再びトウッテイでメヌエットが奏された後に、第二トリオではファゴットの細かな伴奏でオーボエが実に美しいソロを歌い出し、ホルンがファンファーレ風に相槌を奏で、素晴らしい効果を上げていた。このメヌエットは壮大で重厚な輝きを持っており、厚みのあるベルリン・ブラスの存在感を見せつける堂々としたメヌエットに聞こえていた。




第三楽章は、ゆっくりしたアダージョで三部形式で書かれており、映画「アマデウス」で特別に有名になったように思われる。ファゴットとホルンの静かな伴奏のもとで第一オーボエが高らかに歌い出し、続いて第一クラリネットが、やがて第一バスクラリネットが歌い出し、三声部が心に浸みる微妙な音色でゆっくりと語り継いでいくもの。バスクラリネットの深い響きが印象的で、モダン楽器なりの厚みのある響きになっていた。中間部は短調で一層の味わいを深くし、最後までさりげない優美な旋律が尾をひいていた。。




第四楽章は、再び二つのトリオを持つ大きなメヌエットであり、トウッテイで明るく軽やかに始まるメヌエット主題に対し、その後半を二つのオーボエが明るく受け止める形で進んでいた。第一トリオでは、二つのクラリネットの暗い前奏に続いて暗い響きが全体を覆っているのに対して、壮大な響きのメヌエットに続く第二トリオでは、がらりと趣を変えて、コントラバスの優雅なピッチカートに乗ってバスクラとオーボエが明るく歌い出す対照的なものであった。このメヌエットもベルリンブラスの響きは優美なものがあり、多彩な音色が耳を楽しませてくれた。




第五楽章は「ロマンツエ」と題された緩徐楽章であり、アダージョのゆっくりした部分に対し、中間部ではがらりとテンポの速いアレグレットになり、再度アダージョが繰り返される明確な三部形式となっていた。アダージョではクラリネットとオーボエが重なり合いながら三拍子でゆっくりと歌っていくのに対し、アレグレットではファゴットの小刻みな伴奏に乗ってバスクラリネットがおどけるような旋律を歌っていた。アダージョとアレグレットの対比が見事であり、終わりのアダージョでも明るく歌うように進んでいた。




第六楽章はアンダンテで始まる主題と六つの変奏曲であり、クラリネットがお馴染みの明るい主題を提示していた。第一変奏ではオーボエが活気のある三連符で主題を変奏しており、第二変奏ではバス・クラリネットとファゴットとのオクターブによる変奏が行なわれていた。第三変奏では力強いトウッテイを受けて、クラリネットが独奏するもので、痔四変奏では短調になってがらりと趣を変えていた。第五変奏はアダージョとなってさざ波のようなバス・クラリネットの伴奏からオーボエが美しい旋律を歌い出すもので、アレグロの第六変奏では三拍子のトウッテイで快活に主題を変奏し、コーダで結ばれていた。

第七楽章はユーモアを持った溌剌としたロンド主題が飛び出すロンド楽章のフィナーレであり、A-B-A-C-Aのキチンとしたロンド形式となっていた。モルト・アレグロのお馴染みの明るいロンド主題が勢いよく進んて軽快に進行してから、第一のエピソードが現れてコントルダンス風に軽快に進行していたが、これは三つのリピート付きの8小節楽節から成るものであった。再びロンド主題が提示され、続く第二のエピソードが始まっていたが、ここでもコントルダンス風の四つの楽節が続いており、いずれも軽快に颯爽と進行してから、最後に冒頭のロンド主題が登場して、速いテンポで一気に颯爽とこの楽章をまとめ上げていた。




    この管楽セレナード「グラン・パルテイータ」K.361のベルリン・フイルによる演奏は、第一オーボエと第1クラリネットがリーダーとなる指揮者なしの数少ない演奏であった。これまで専門の指揮者を省いた演奏は、オルフェウス室内合奏団とアンサンブル・ゼフィローの二つの室内合奏団によるものしかなかったが、これにベルリン・フイルの管楽合奏団の新しい演奏が加わったことになる。ベルリン・フイルの演奏は、モダン楽器の特長を生かした溌剌とした威勢の良い演奏であり、4つのホルンやバス・クラリネット、ファゴットなどの低音楽器が重厚な伴奏をする堂々たる演奏であり、オーボエやクラリネットが良く活躍して、全体として実に華やかな音色に満ちており、この壮大かつ重厚な曲を充分に鳴らせて実に力に溢れた楽しい演奏を聴かせてくれた。ベルリンブラスのクリスマス音楽を聴いたばかりであり、彼らの鍛えた音色がそのまま現れたような気がした。


(以上)(2017/01/06)


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