(最新のBDオペラから;2014年ネーデルランド・オペラの「魔笛」)
16-5-3、マルク・アルブレヒト指揮サイモン・マクブルネイ演出によるジングシュピール「魔笛」、
ネーデルランド室内管弦楽団&オランダ国立歌劇場合唱団、2014年2月、ネーデルランド・オペラにおけるライブ収録、

−この「魔笛」は、初めから迷彩服を着た三人の侍女の異様な姿、髪を振り乱した車椅子の夜の女王など、思わぬ奇抜な姿に驚いた始まりであったが、終わってみれば、立派な組織軍団を持った太陽の国であるザラストロの国に、力のない夜の女王の闇の軍団が自滅する姿で終わっおり、タミーノとパミーナの若い王子と王女が結ばれてめでたく終わる素直な物語になっていた−

(最新のBDオペラから;2014年ネーデルランド・オペラの「魔笛」)
16-5-3、マルク・アルブレヒト指揮サイモン・マクブルネイ演出によるジングシュピール「魔笛」、
ネーデルランド室内管弦楽団&オランダ国立歌劇場合唱団、2014年2月、ネーデルランド・オペラにおけるライブ収録、
(配役)タミーノ;マキシミリアン・シュミット、パミーナ;クリステイーナ・ランドシャーマー、パパゲーノ;トーマス・オリーマンス、パパゲーナ;ニーナ・レダーマン、夜の女王;イリデ・マルテイネス、ザラストロ;ブラインドリー・シャラット、ほか、
(2015/11/13、タワーレコード新宿店でBDを購入、OpusArte OA BD7133D)

         非常にモダンな演出が多いとされるネーデルランド・オペラの「魔笛」を初めて見ることになり、しかも知っている歌手は一人もいないという心細い状況であり、やはり現代風な演出であると聞いていたので、おそれをなして見始めた。初めの序曲のしっかりした演奏を聴いて安心していたが、運動着姿のタミーノが蛇に襲われ、軍隊の迷彩服姿の三人の侍女をみて、異様な姿に驚いても、音楽はしっかりして変わりないと安心しながら見始めた。それ以降、おかしな姿のパパゲーノが出てきても、杖をついた婆さんのような夜の女王を見ても、余り驚かなくなり、これらの一風変わった変化をむしろ楽しみながら見てみようと腹が据わってきたことを覚えている。




      初めての若い指揮者マルク・アルブレヒトが入場し両手で挙げてトウッテイの最強音の三つの和音で序曲が始まり、やがて歯切れの良い弦がアレグロの主部を奏でだした。オーケストラの総奏になってからフルートとオーボエが対話を交わす主題が現れて、序曲が明るく進行していた。何もない真っ暗な舞台にPCグラフィックスか黒板に手書きの文字が現れていた。アルブレヒトの指揮は実にきびきびとしており、続く三和音でも明快に力強く響かせており、再び弦楽器が軽快な響きで疾走していた。黒板のチョークの文字は「魔笛」から始まり、序曲の終わり頃には「第1幕」に続いて「岩山の風景」となったところで、暗闇の中でスポーツ服の若い男が何者かに追われて悲鳴を上げていたが、グラフィックスに現れたのは疾走する蛇で、追われていた男は舞台中央で倒れて気絶していた。




        そこへ異様な服装をした三人の大柄な女性が飛び出してきて大声を上げて蛇もやっつけたと勝ちどきを上げていたが、よく見るとそれは戦場での迷彩服を着た女性たちであり、三人の侍女の姿だった。三人の侍女は気を失っているタミーノを囲み、若い男であることに気がつくと、誰が女王様に報告に行くかと女らしい争いを始めていたが、話がつかず結局は三人で行くことになり姿を消した。気がついたタミーノが起き上がると、蛇が殺されており、暗闇から笛の音が聞こえて来て、やがて変な恰好をしたパパゲーノが登場していた。



      パパゲーノは笛を吹きながら鳥刺しのアリアを歌っていたが、パパゲーノを追って楽譜を鳥のようにひらひらさせた合唱団の皆さんがつきまとうのでおお驚き。やがてタミーノと鉢合わせして話し込んでいるうちに、パパゲーノが力持ちで大蛇を殺したと自慢したところに、再び三人の侍女が登場してパパゲーノに罰として口かせをはめたり、タミーノにはグラフィックスのパミーナの絵姿が見えるように活躍していた。


     タミーノは絵姿を見入って「何て美しい姿」とアリアを歌い出すが、やや太めのタミーノの「これが恋なのか」と心を込めて歌うアリアは一級品。三人の侍女から悪魔に奪い去られたと聞いて、助け出そうと決意したところに、雷鳴が轟いて噂の夜の女王が登場していた。杖をついて白髪頭の変な姿の女王は「怖がらないで、私の息子よ」とレチタテイーボで語りかけ、私の力では助けられなかったと歌い出し、アレグロになって「娘を助けて」とコロラチューラで歌ってタミーノを呆然とさせていた。そして最後には用意された車椅子に座ってあっという間に立ち去っていた。


          パパゲーノの「ム、ム、ム」の歌声で我に返り、三人の侍女が女王様が喜んでいる話をし、音楽は五重唱になって助ける決意を固めたタミーノには「魔法の笛」を、いやがるパパゲーノには「銀の鈴」が贈られて、二人は勇んでザラストロの国へとパミーナを救いに出発する事になった。案内は三人の童子がすると説明を受け、グラフイックスで遠くに三人の童子らしき姿が写されていた。



              場面がすっかり変わって雷鳴の激しい奴隷部屋か。パミーナが傘を差した背広姿のモノスタトス一行に捕まって、さあ大変。必死の抵抗の二重唱が始まってついには倒れてしまう。一方、パパゲーノはうまく宮殿に潜り込み、倒れているパミーナを見つけるが、そこでモノスタトスと鉢合わせ。黒い人と鳥の怪人の姿に互いに驚いて逃げ出してしまうが、パパゲーノは上手くパミーナに近づいた。スマホの絵姿で本人を確認しているうちに二人は仲良くなり、パパゲーノに恋人すらいないことに気がついたパミーナが、「愛を感ずる男たちには、優しい心も備わっている」とあの有名な二重唱を歌い出した。パパゲーノも歌い出して、二人で男と女の愛の賛歌を歌ってから、暗闇の中を逃げ出していた。




     フィナーレに入って迷彩服を着たタミーノが登場し、三人の童子たちがタミーノにゴールまで一本道だと言われ、「冷静・忍耐・沈黙」の教えを受けて、宮殿の広場でパミーナを助けようと改めて覚悟を決めていた。「下がれ!」の脅しにも冷静で、入り口で背広姿の僧侶と押し問答が始まった。僧侶はこの聖なる宮殿には悪人はいないと断言し、不幸に打ちひしがれた女性が証人だというと、お前は女の涙に騙されているという。暗闇の中で途方に暮れたタミーノ。せめてパミーナが生きているかどうか教えてくれと尋ねると、暗闇の中から「パミーナは生きている」と遠い声が聞こえて勇気づけてくれた。




     タミーノは勇気百倍になって、感謝の気持ちで笛を取り出すと、オーケストラのフルートのプロが舞台に登場して笛を吹いてくれた。タミーノが感謝の気持ちを歌うと、何と動物たちが沢山グラフィックスで登場して来た。笛を吹き続けているうちにパパゲーノの笛も聞こえてきた。そこで探しに出かけると、入れ違いにパミーナとパパゲーノが現れたが、残念ながら直ぐに二人はモノスタトス一行に捕まってしまった。しかし、パパゲーノが「銀の鈴」を取り出すと、ここでもオーケストラのプロがグロッケンシュピールを弾いてくれ、「何て素敵な音だ」と一行はラララと歌い出し、踊りながら立ち去ってしまい二人は救われた。二人はこの銀の鈴に感謝しながら立ち去ろうとすると、そこへトランペットとテインパニーが鳴り響き、「ザラストロ、万歳!」の大合唱が聞こえてきた。




      沢山の人々がいろいろな姿で集まって来ており、ザラストロが遠くから近づいてきていた。パミーナは王女らしく「正直に話そう」と覚悟をして、皆の前で堂々とザラストロに事情を説明をしたが、ザラストロから自由にするわけに行かないと諭された。そこへタミーノがモノスタトスと一緒に現れたので、若い二人は直ぐに気がついて抱き合ってしまっていた。モノスタトスが得意げに事情を話すが、ザラストロは彼の腹黒さに対し厳しい処分をしていた。そして全員の前で、新しい二人の男性に試練の殿堂に導くように指示をしていた。その姿は実に堂々としており、立ち会った全員から「賢明なザラストロ」と親愛なる合唱を受けて第一幕が終了していた。




      幕のない舞台上に大勢の人が集まっている中で、第二幕は指揮者が入場して挨拶をしてから、ザラストロが指揮者の隣で客席に向かって、これから始まるこの会議が重要なのだと語ってから、オーケストラの序奏が重々しく始まった。神殿を模した舞台では背広姿の大勢の僧侶たちが着席しようとしており、ザラストロが中央で宣言をし、タミーノが友情を求めて神殿に来ていることや、神々がパミーナを伴侶に決めたこと、夜の女王が神殿を破壊しようとして危機が迫っていることなどを語っていた。




     続いていくつかの応答の後、三つの大和音が響いてから、ザラストロがイシスとオシリスの神々への祈りのアリアが始まり、若い二人へ叡智を授けたまえと祈って、儀式が厳かな雰囲気の中で終了していた。早速、パミーナとタミーノが呼ばれて、二人はやっと顔を合わせたが、タミーノは試練のために出発しなければならない。別れの時間が来たことを告げて激励するザラストロ、試練に立ち向かうタミーノ、別れを嘆くパミーナの、三人が思い思いを語る三重唱となっていたが、これは第19番の三重唱が前に繰り上げられていたものであった。




       場面が変わって二人の背広姿の弁士が登場し、タミーノに試練の決意のほどを確かめていた。パパゲーノも呼ばれていたが、パパゲーノにはお前にソックリな若いパパゲーナに会わせてやると同意させて、二人に「沈黙を守り、女の企みに気をつけろ」と忠告されて、二人の試練が始まったようだったが、ここで歌われる第11番の神官たちの二重唱は省略されたいた。二人は突然の雷鳴に腰を抜かしていると、早速、三人の侍女が現れて、女王のところに行こうと二人を誘い出そうとしたが、タミーノが危ないパパゲーノを何とか忠告し引き留めて、三人を撃退していた。それを大勢の仲間たちが見ており、二人は次の試練に向かっていた。





     再び場面が変わって、パミーナが寝込んでいるところへ、足が傷だらけのモノスタトスがビッコをひいて登場し、彼女を見てキスぐらいは良いだろうと早口のアリアを歌いながら近づいて、いたずらをしようとしていると、突然、夜の女王が車椅子の姿で現れた。パミーナが喜んでお母さんと抱きつくと、「この再会の喜びも、あなたを浚ったもののお陰ね」と母は言い、「若者はどうした」と質問を続け、「胸にたぎる地獄の復讐」と激しくアリアを歌い出した。この問答無用の剣幕とコロラチューラの素晴らしさに驚いているうちに、彼女は車椅子から立ち上がってナイフを娘に手渡して、これでザラストロを殺せと、凄い形相で言い捨てて、車椅子で立ち去っていた。このアリアでは高音も良く決まり、老人の姿に似ずに最高の激しいアリアとなっていたが、それを物陰からモノスタトスが見守っていたのが印象的であった。





    もの凄い拍手で現実に戻り、一人残されたパミーナがナイフを手に呆然としていると、またモノスタトスが現れ脅そうとしていた。しかしザラストロがそこに現れたので一安心。パミーナはザラストロに母を助けてと頼むが、ザラストロは「この聖なる神殿には、復讐を思う人はいない」と優しく歌い聞かせ、「母をどう報いるか見ておれ」とパミーナを慰めていた。このザラストロのアリアは朗々と優しく歌われて、素晴らしい劇的な効果を上げて、拍手が大きかった。再び、タミーノとパパゲーノの二人が登場し、パパゲーノが無駄口を言って雷鳴で脅されているうちに、あの弁士が現れ「旅を続けろ」といい、「パミーナにあっても口をきくな」と注意していた。





     そこへ天井から三人の童子たちが「ザラストロの国へようこそ」と歌い出していたが、三人をよく見ると声は童子なのに、どうしたのか、姿は老人風の様子であった。早速、魔法の笛と銀の鈴を返してくれ、二人にはワインや食べ物の差し入れがあって一安心。お腹が減っていたパパゲーノは、早速、ワインやパンにありつこうとしていたが、タミーノはさりげなく笛を手にして、オーケストラピットのフルートのプロに手渡すと、彼は静かにフルートを吹き始めていた。









      その笛の音を聞きつけてパミーナが姿を現したが、パミーナは固い表情の冷たいタミーノを見て仰天し、一方のパパゲーノもこの時だけは一言もしゃべらず、パミーナはがっかりして「ああ、愛の幸せは永遠に消え去った」と歌っていた。このパミーナの絶望のアリアは、「侮辱よりも辛い」と悲しげに歌われて、宮殿内に響きわたっていたが、タミーノは必死の思いで耐えていた。





            三つの大和音が響きわたり、僧侶たちの合唱が折から始まっていたが、彼らは神々への喜びの気持ちばかりでなく、良く聞くとタミーノへの試練に耐えた賞賛の声も歌われていた。そして倒れていたタミーノを助け起こし、良くやったと肩を叩いて励ましていた。一方のパパゲーノは、一人になって途方に暮れていたが、ワインが沢山あるのを知ってワインを並べて、叩いて音を出していた。しかし、ワインがあっても栓抜きがなく、ネギや固いパンがあっても包丁がなくて口に出来ぬ悔しさをぼやいていた。そして俺の本当の望みは何だろうと自問していると、そこに置いてあった「銀の鈴」から音が鳴り出して、彼はごく自然に「俺は娘っ子か嫁さんが欲しい」と歌い出した。そして歌うにつれて元気も良くなり、この歌は三番まであるが、最後まで賑やかに歌って拍手を浴びていた。





     そこへ18歳2ヶ月の婆さんが現れたので、パパゲーノが退屈しのぎに婆さんをからかっているうちに、握手しないとここにパンと水だけで閉じ込められてしまうと脅されてしまい、婆さんでもいいやと渋々パパゲーノが手を出して握手すると、若いパパゲーナが現れた。しかし、そこへ来た弁士一行と雷鳴に阻まれてパパゲーナは連れ去られ、パパゲーノは、奈落に落とされてしまった。それ以来、パパゲーノは必死になって宮殿の隅々までパパゲーナを探し求めていた。






    フィナーレとなって、三人の童子たちが明るい三重唱で朝の訪れと太陽が輝くことを予言していたが、やはり三人は声は若いが老人の姿であった。そしてうろうろしているパミーナを見つけ様子がおかしいと歌っていたが、よく見るとナイフを手にした半狂乱の姿なので、三人は巧みにタミーノに会わせてやろうとご機嫌を取り、ナイフを取り上げて、タミーノに会わせようと案内を始めていた。



     場面が変わって、コラールの前奏曲が始まるとザラストロが登場し、何か儀式が始まる様子。幕が開くと、鎧甲の二人の衛兵がタミーノを連れて、大勢の僧侶たちを従えて「苦悩を負ってこの道を行けば」とコラール旋律をそのまま歌っていた。そしてタミーノが現れ、勇気を出してこれに応えようとしていると、そこへパミーナの声が聞こえてきた。そこでタミーノはザラストロからパミーナとの会話が許され、勇気百倍。ここでパミーナと劇的な再会をし、二人で試練に挑戦することを決意した。タミーノの魔法の笛に導かれ、パミーナの愛の力によって、折から聞こえてきたピッチカートの旋律に乗って、二人は試練の道を克服しようと決意した。






       大勢が心配そうに見守る中で、衛兵たちの指図によって、初めに火炎の燃える試練の道から、プロが吹く美しいフルートの音と弱いテインパニーの伴奏に乗って、二人はゆっくりと進み始め、全員が心配そうに見守る中を、二人は燃え盛る火炎の道を通り抜け、無事に戻ってきた。続いて今度は、流水の試練の道。二人は魔法の笛の音とともに歩み始め、美しいフルートの音と弱いテインパニーの伴奏に乗って、流水がごうごうと渦巻く危険な流水の試練の道をくぐり抜け、無事、試練に耐えて戻ってきた。心配そうに見守っていた全員に祝福されて、二人は神殿の奥へと進んでいた。




      一方、パパゲーノは、折角、一目会えたパパゲーナを探し求めていたが、どうしても見つからない。くたびれ果てて、諦めて首でも吊ろうかと考えて、三つ数えたら首を吊ろうとゆっくり数えたが声がない。いつも手にしているハシゴに登って、垂れてきたロープに手をかけようとしたところに、三人の童子が「銀の鈴」を鳴らしたらと声をかけてきた。「すっかり忘れていた」とばかりに慌てて鈴を鳴らすと、白いひらひらの茂みの中からパパゲーナが顔を出していた。ここでパパゲーノとパパゲーナの劇的な再会と二重唱が始まり、二人の「ぱ、ぱ、ぱ」の歌声に観衆は大喜び。素晴らしい劇的なシーンのあと、二人は「可愛いい子供が欲しい」と感激の余り手を繋いで、客席の中まで愛嬌を振りまいて、客席の「魔笛」を見た喜びを感じた人々と一緒に燃え上がっていた。




       舞台が変わって、モノスタトスと夜の女王の一行が神殿の地下に現れて、神殿を破壊しようと潜んできた。しかし、ザラストロ一行が神殿でそれを待ち構えており、]夜の女王一行が様子をうかがっていると、不気味な物音が聞こえ始め、雷鳴と大音響が起こって、神殿の地下が破壊され、足の悪い夜の女王を除き一行は逃げ去ってしまっていた。




     舞台は急に明るくなり、全員が集まっている中で、ザラストロが、夜の女王を助けよと命じながら、堂々と夜の国を追い払い、太陽の国になった勝利宣言を行い、イシスとオシリスの神々に感謝を捧げていた。パミーナが助けられた車椅子の夜の女王と抱き合っており、続いてタミーノとパミーナが王子と王女の形で中央で祝福されており、パパゲーノやパパゲーナたちや大勢のザラストロ一行から大歓迎を受けながら劇的な幕切れとなっていた。






       この「魔笛」は、初めから迷彩服を着た三人の侍女の異様な姿、変な恰好のパパゲーノを追いかける鳥を模した奇妙な白い紙、髪を振り乱した車椅子の夜の女王など、思わぬ奇抜な姿に驚いた始まりであったが、終わってみれば、立派な組織軍団を持った太陽の国であるザラストロの国と、迷彩服は立派だが力のない夜の女王の闇の軍団との対立の形で始まり、闇の軍団の自滅の姿で終わっていたが、ザラストロの威厳を持った指導宜しく、タミーノとパミーナの若い王子と王女が結ばれて、イシスとオシリスの神々に護られながら、めでたく太陽の軍団を引き継いでいくという運びになったように思われた。このザラストロ集団は第2幕冒頭の儀式においても、また、最後のタミーノとパミーナの試練の前に加わった儀式においても、ザラストロの統制がしっかりしており、組織だって行なわれていたのが、この演出の大きな特徴のように思われた。

        初めは迷彩服を着て立ち向かったタミーノであったが、弁者の思わぬ抵抗に遭い、神殿で浄められて以来、イシスとオシリスの神々の試練を受けようと考えを変えたように思われ、これには隠れた中でのザラストロの指導がなければあり得ない「魔笛」の謎に踏み込むことになりそうである。パミーナの救出を図るという目的達成の近道として、力を発揮しているザラストロの懐に飛び込むという選択をしたものと考えたい。いずれにせよ、終わってみれば、めでたしめでたしで終わっており、若いタミーナとパミーナ、やっと結ばれたパパゲーノとパパゲーナが、どうなるのか、「魔笛」の興味は尽きないようである。

         初めてのネーデルランドオペラを「魔笛」を介して見たが、音楽や演出の進め方は、グラフィックスを上手に使ったり、カメラやスマホも出てきたり、一方では、人海戦術が行なわれたりと多彩であったが、恐らく、その進歩性はドイツ語圏のオペラの延長線上にあり、余り大きな違いはないと考えられた。指揮者も演出者も歌手陣も全て初めてで、当初は唐突に感じたが、終わってみれば「魔笛」らしき構図も得られたし、観客が大変な拍手で喜んでおられたので、まずまずの「魔笛」の映像であろうと思われる。なお、今回ほど日本語字幕の有り難さを感じたことはなかった。以上の通り、日本語字幕のお陰で何とかご報告ができたが、リブレットが演出者の好みで変更される最近の演出では、輸入盤で日本語字幕がなければ、いつも理解に苦しみ往生することになる。

         最後まで、理解に苦しんだことの一つに、三人の童子が申し合わせたように、杖をついた老人風の姿をしており、どうしてか不思議に思っていた。タミーノを導くため、最初から「冷静・忍耐・沈黙」などと、童子には難しすぎる言葉を使うので、老人風のスタイルにしたのであろうか。パパゲーノが登場すると、白い楽譜の紙を折って羽を模した小鳥が人海戦術で出てきたが、夜の女王の国なら良いのであるが、ザラストロの国でもなぜ出てくるのか不思議であった。最後に、舞台の四隅に吊り道具があり、引き上げれば直ぐに二階建てにできる巧みな演出上の工夫が有効に活用されていた。最初は不思議に思っていたが、後半に二階建ての出番が良くあり、滑り台などのも使われていて感心させられた。


(以上)(2016/05/18)



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