(古いS-VHSより;オーストリア放送響のモーツァルト・ガラK.182&456&337)
16-5-2、ハインツ・ホリガー指揮のオーストリア放送交響楽団によるモーツァルト・ガラ・コンサート、1;交響曲第24番変ロ長調K.182、2;ピアノ協奏曲第18番変ロ長調K.456、3;ミサ・ソレムニスハ長調K.337、
ウイーン・コンツエルト・ハウス、1988制作、ORF、

−オーストリア放送協会(ORF)が「オーストリア放送響のモーツァルト・ガラ」と称して制作したソフトは、初めて収録したものであるが、音楽学者でありオーボエ奏者でもあるホリガーを指揮者に迎え、交響曲・協奏曲・ミサ曲などを含む非常にレベルの高いコンサートであった。特に第三曲目のミサ・ソレムニスK.337は、このHPでは初めてであり、オーストリア放送合唱団が期待通りの素晴らしい演奏を行なっていた−

(古いS-VHSより;オーストリア放送響のモーツァルト・ガラK.182&456&337)
16-5-2、ハインツ・ホリガー指揮のオーストリア放送交響楽団によるモーツァルト・ガラ・コンサート、1;交響曲第24番変ロ長調K.182、2;ピアノ協奏曲第18番変ロ長調K.456、3;ミサ・ソレムニスハ長調K.337、
ウイーン・コンツエルト・ハウス、1988制作、ORF、
(演奏者)ピアノ:エリーザベト・レオンスカヤ、ソプラノ:ヒルデガルト・ハイヒェレ、アルト:コーネリア・カリッシュ、テノール:ジョン・マーク・エインズリー、バス:ラズロ・ボルガー、オーストリア放送合唱団、
(1010101、CS736CJの放送をS-VHS-330に収録)

         5月号の2曲目のコンサートは、オーボエ奏者として有名なハインツ・ホリガーが指揮をして、オーストリア放送協会(ORF)が「オーストリア放送響のモーツァルト・ガラ」と称して、ウイーンのコンツエルトハウスで収録し制作したソフトであり、2000年の1月1日の元旦にクラシカジャパンが放送した記念すべき映像である。ホリガーは音楽学者としても著名であり、その上交響曲・協奏曲・ミサ曲などの多様な分野の指揮をするなど非常にレベルの高いモーツァルト・コンサートであると考えられた。初めの交響曲第24番変ロ長調K.182は、第三回目のイタリア旅行から帰って来た1773年に作曲されており、この年に三楽章で書かれた最後の作品とされ、2オーボエ(第二楽章では2フルート)、2ホルンの小編成のオーケストラのための交響曲と言えそうである。二曲目のピアノ協奏曲第18番変ロ長調K.456は、ウイーンに定着した1784年9月に書かれた盲人の女性ピアニストのために書かれた作品とされ、今回はピアニスとして旧ソ連のグルジア共和国の出身であるエリーザベト・レオンスカヤが担当している。また、最後のミサ・ソレムニスハ長調K.337は、1780年に作曲されたザルツブルグ時代の最後のミサ曲であり、アニュス・デイでフィガロの伯爵夫人の第二幕のアリアに似たソプラノソロがあることからも有名になっている。オーケストラもトランペット、トロンボーン、テインパニーが加わり、4人のソリストとオーストリア放送合唱団で歌われる壮大なミサ曲になっていたので、ご期待いただきたい。



   「オーストリア放送響のモーツァルト・ガラ」の第一曲目は交響曲第24番変ロ長調K.182であるが、ホリガーが颯爽と入場をして挨拶をしてから、直ぐに第一楽章が元気よく始まったが、第一主題は三和音で下降するユニゾンで開始されるアレグロ・スピリトーゾの速いテンポの主題で途中からシンコペーションのリズムで軽快に推移していた。短い休止で明快に区切られた第二主題は温和しい主題で弦楽器のみで提示されて行くが、後半はシンコペーションの軽快なリズムに戻っていた。提示部の繰り返しがなく、短い展開部でも冒頭のアレグロの断片が繰り返されていた。再び元気よく最初の主題が再現されて明るくスピーデイに進行して一気にこの楽章を終えていた。こういう元気の良いファンファーレ的なアレグロ楽章は、ブッフォ的な軽快な素材が組み合わされていたが、展開部でも終わりのコーダでも三和音の主題的な統一が図られており、イタリア的な序曲の颯爽とした流れを感じさせていた。



          続く第二楽章は、オーボエがフルートにかわって、フルートと弦とピッチカートによって美しく和やかに始まるお得意のアンダンテイーノ・グラツイオーソの楽章であり、形式的にはフランス風のロンドであろうか、A-B-A-B-Aの単純な形式であった。フルートと弦の合奏でゆったりとセレナード風に進行し、繰り返してから、Bの部分は弦が先行しフルートが答える変奏形の美しいエピソードで、ホリガーは実に良くフルートを歌わせていた。再びAに戻ってから再びBが再現されるが、その後半の最後に現れる2フルートと2ホルンの合奏が実に印象的であり、冒頭の主題に戻って静かに楽章を終えていた。





   フィナーレはアレグロのロンド主題が三度繰り返される8分の3拍子のジーク舞曲で、早いテンポで進行する中でホルンとオーボエが良く響き狩の音楽を思わせる。第一楽章と同じように、強いユニゾンの三連符と続く弱い部分の三連符とが対立した早いテンポのロンド主題が軽快に登場して繰り返されて行き、軽妙な早いエピソードがひとしきり進行してから、再びロンド主題に戻り、同じエピソードが登場して、このフィナーレ楽章は一気に収束していた。

         10分足らずで駆け抜けるように終了する序曲風の軽快な曲であったが、ホリガーの指揮振りは軽快そのものでザルツブルグ初期を思わせる序曲風な曲として楽しいものであった。当時もコンサートの始まりなどで演奏された曲なのであろうか。1773年に書かれた5曲の三楽章の交響曲の中では最後に作曲された曲であり、ト短調K.183(第25番)やイ長調K.201(第29番)などと並んで良く演奏される曲のようであるが、ホリガーは、自分のコンサートの一曲目として相応しい曲であると考えたに相違ない。





          続く第二曲目はピアノ協奏曲第18番変ロ長調K.456であり、ソリストにはこのHPではヴェーグと第9番のピアノ協奏曲(7-10-2)などを弾いているエリーザベト・レオンスカヤが登場していた。この曲は1784年に書かれた6曲のピアノ協奏曲の第5番目に当たる盲目のピアニスト、パラデイスのために書かれた曲とされている。この曲の構成は、第一楽章は行進曲風の主題による協奏曲風ソナタ形式で書かれており、第二楽章は「フィガロ」のバルバリーナのアリアに似た主題による変奏曲形式で書かれ、フィナーレ楽章は軽快なロンド主題を持つロンド形式で書かれている。フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2の木管がよく活躍するピアノ協奏曲となっていた。

    この曲の第一楽章は、アレグロ・ヴィヴァーチェの弦楽合奏で堂々と始まり、お馴染みの行進曲風のリズム動機を持つ第一主題が軽快に進行するが、直ちに管楽合奏に渡されてリズムを刻んでからフルオーケストラとなって流れるように進んでいた。ホリガーの指揮振りは颯爽としており、体を沈めてから伸び上がって指揮をする姿はなかなか様になっていた。続いて2本のオーボエが歌い出しフルートが相づちを打つように始まる第二主題が木管中心に進行し、繰り返されて賑やかに力強く発展していた。木管の合奏が際立って活躍してから、やがて第一ヴァイオリンによるお馴染みの行進曲風の結尾主題が現れてトウッテイの提示部を締めくくっていた。

        レオンスカヤの独奏ピアノがいきなり第一主題の行進曲をソロで元気よく弾き始めて、第二の主題提示部が始まるが、続いてオーケストラを従えて独奏ピアノによる行進曲風の走句が軽快に鍵盤上を走り出し、威勢良く次から次へ速いパッセージが続いていた。レオンスカヤは、この早いパッセージを見事にこなしていたが、続いてオーボエで始まる第二主題でオーケストラが主役になりかけても、独奏ピアノが直ちに引き継いで、ソロで主題を変奏しながら早いパッセージを繰り広げ、オーケスオラによる結尾主題が現れて提示部の後半を盛り上げていた。




         展開部では独奏ピアノが新しい主題を提示しながら力強いパッセージを重ねて行くが、これが先の軽快な結尾主題の音形のリズムであり、この動機を木管が示しながら独奏ピアノが威勢の良い走句を重ねるように進行していた。再現部はオーケストラで行進曲風に始まるが、直ぐに独奏ピアノが長いトリルを響かせながら登場してきて主役になり、以降は第二提示部とほぼ同様な独奏ピアノ主体のペースで第二主題へと進んでいた。レオンスカヤのカデンツアは、新全集に載せられた35小節の長い回想風のものをそのまま弾いていた。先に聞いたピアノ協奏曲第12番と較べれば、オーケストラが特に木管が充実しており、ピアノと対等に渡り合う部分が多くなっていることに譜面を見ながら気がついた。



         第二楽章はピアノ協奏曲では非常に珍しいト短調の変奏曲形式であり、主題は何と「フィガロの結婚」の第4幕冒頭のバルバリーナのカヴァテイーナのソックリさんの主題による五つの変奏曲であった。始めに第一ヴァイオリンが溜息をつくような切ない音でゆっくりと始まって、8小節の主題がオーケストラで丁寧に繰り返されてから、後半には弦楽器に管楽器が加わって美しい主題を提示し、繰り返されて主題提示部は終わっていた。第一変奏はレオンスカヤの独奏ピアノだけによるソロピアノの音形変奏であり、早いテンポでスタッカートの切れの良いピアノが終始転げ回る素晴らしい前半と、二つのフォルテの特徴ある分散和音に挟まれて愛らしいアリアが歌われる後半の部分に分かれていた。第二変奏は前半が管楽器だけがメロデイ部を受け持って主題提示されており、後半は弦楽器が主題を提示し独奏ピアノが32分音符の早いテンポの変奏を受け持つもので、そのあと全体がもう一度繰り返されていたが、ここからはスコアでは繰り返し記号を使わずにそのまま書かれていた。

     第三変奏はフルオーケストラによるリズミックな元気の良い主題提示がなされてから、独奏ピアノがソロでそれを受けてリズミックに力強く変奏するもので、後半にはさらに変化が加えられたフルオーケストラに続きピアノソロがそれを模倣しながら明るく前半を繰り返すように力強く演奏されていた。第四変奏はト長調で明るく木管だけで主題の変奏がなされた後、弦とピアノがそれをそのまま模倣する前半に対し、後半も変化を加えながら木管合奏の後に、弦とピアノによる明るい模倣の変奏が続いていた。第五変奏は再びト短調に戻り、弦楽器が行う主題伴奏の上に、独奏ピアノが装飾を付けながら32分音符の早いパッセージで刻まれる力強い変奏で、途中からコーダになってから美しい主題の余韻を残すように、管楽器群と独奏ピアノと弦楽器が順番に幻想的な響きを醸し出し、レオンスカヤの呟くようなピアノで楽章全体が静かに終結していた。




              この曲の初演に立ち会ったレオポルドが、臨席していたヨーゼフ2世が「ブラボー!モーツァルト」と叫んだとナンネルに手紙しているが、特にこのト短調の楽章における丁寧に弾かれたピアノの音色や響きが、いろいろな変奏によりその都度変化を見せて、素晴らしく感動的な様子をとらえたものではないかと思われる。

        フィナーレは、ロンド形式で、レオンスカヤの独奏ピアノがアレグロ・ヴィヴァーチェで軽快に飛び出してくるが、独奏ピアノはこの8小節のロンド主題だけで終わり、続いてフルオーケストラがピアノからこのロンド主題を引き継いで颯爽と走り出し管楽器が花を添えながら一頻り盛り上がっていた。続いて独奏ピアノが第一クープレの主題を明るく弾きだし、独奏ピアノに管楽器が相槌を打つように進んでいた。暫くして別の新しい旋律がピアノソロで現れて繰り返されてから、今度は管楽器がこれを引き継いで元気よく進み出し、最後には独奏ピアノが早いパッセージで颯爽と仕上げをしてフェルマータになっていた。 短いレオンスカヤの短いアインガングに続いて、再び冒頭のロンド主題が明るく独奏ピアノで開始され、型通りにオーケストラで賑やかに再現されてから、今度は第二クープレが独奏ピアノで華々しく開始されていた。これはまさにピアノソロの素晴らしい独壇場の世界であり、軽快に勢いよく区切り良く進められているうちにいつの間にか第一クープレの二つの旋律が顔を出して、フルオーケストラで盛り上がってからカデンツアとなっていた。カデンツアは新全集に記載のものをレオンスカヤはそのまま弾いていたが、技巧を凝らした早いテンポの力強い回想風のものであった。カデンツアの後も独奏ピアノが冒頭のロンド主題を提示して、オーケストラと独奏ピアノが交互に歌いながら、速いテンポでコーダに入っていたが、よく考えるとモーツァルトに良くある変則的な気まぐれなロンド形式のアレグロ・ヴィヴァーチェのフィナーレであった。

          ホリガーの颯爽と流れるように進行するオーケストラとレオンスカヤの素晴らしい技巧でパッセージを弾きまくる演奏を聴きながら、先に視聴していた第12番のピアノ協奏曲とこの第18番変ロ長調K.456とでは、僅か1年ぐらいの間に、大きな変化があったと言う印象を得た。その第一はオーケストラの管楽器群が主旋律を弦楽器に先駆けて独自に提示したり、管楽器がピアノや弦と対等に渡り合うなどと非常に活躍しており、オーケストレーションが交響曲並みに充実してきたことが上げられる。第二には独奏ピアノがより多彩になり技巧的にも華やかになり、これは第二楽章の変奏曲のピアノを聴いて、格段に表現力が増大して充実してきたことを感じさせた。これはこの演奏のレオンスカヤが、全曲を通じて見事なピアノを披露していたことにも影響されていよう。         (以上)(2016/05/11)





      広いコンツエルトハウスのステージに、コントラバス三台、2トランペット、3トロンボーン、テインパニー、さらにバロック・オルガンなどが加わった中規模なオーケストラが前段に、最後列の左側に女声合唱団が、中央を開けて右側に男声合唱団が、合計約30人が二列に配列されていた。そこへ大きな拍手とともに四人のソリストたちと指揮者のホリガーが登場して、四人のソリストたちは合唱団の前の中央に並び、演奏会形式のスタイルで整列して、拍手を浴びていた。ホリガーが全体を見渡して確認をしてから、彼の一振りで「ミサ・ソレムニス」の第一曲のキリエ(あわれみの賛歌)が始まった。




   最初のキリエでは、二声のヴァイオリンとファゴットによる短い12小節のアンダンテの前奏が、厳かに美しく始まってからオーボエなどが加わって一呼吸おいて、テインパニーの連打とともに。“キリエ”と叫ぶ合唱とオーケストラが交互にトウッティでゆっくりと力強く進み出した。アンダンテの実に厳粛で優雅な始まりとなって、“キリエ”の繰り返しから“キリエ・エリースン”へと進み、オーケストラの残響が深く響いていた。ホリガーは、ゆっくりとしたテンポで笑みを浮かべながら合唱とオーケストラを整然と進めていたが、やがてソプラノの上昇音とともにフォルテで“クリステ”の合唱が繰り返され、“クリステ・エリイソン”に進んでいた。しかし、次のソプラノの上昇音の時には再び“キリエ・エリースン”に戻って繰り返され、厳かに堂々と歌われていたが、次第に少しずつ力を落として静かに終息していた。合唱とオーケストラだけで簡潔に歌われたミサ・プレヴィスのような短いキリエで、ホリガーガゆっくりと丁寧に歌わせた実に荘厳な美しいキリエであった。



           続くグロリア(栄光の賛歌)では、合唱団が“グロリア”とトウッティで力強く歌い出す整然とした主題が早いアレグロで登場し、合唱と併行してオーケストラも堂々と進行して音楽はこの主題が何回が繰り返されるような形で進行していたが、言葉の反復はなく合唱の方は長い典文を荒々しく先へ先へと歌い進めていた。第一ヴァイオリンのスタッカートの特徴ある急速な下降音とともに、続いてソプラノとテノールが“ドミネ”と歌い出し、直ぐに合唱がトウッティで“デウス”とお返しして合唱が続いていた。そしてこのスタッカートの下降音とともにソリストたちの四重唱が登場し、続いて合唱が引き継ぐという交互に掛け合いながら進行が行なわれ、お互いが繰り返すようにして急速に進行していた。そして最後の下降音とともにソプラノのソロが“アーメン”と歌い出すとテノールも“アーメン”と歌い出し、やがて四声の合唱団がトウッティで“アーメン”と歌いだすと、全員が“アーメン”の大合唱となって盛り上がり、最後にはコーダとなって威勢良くこの合唱が結ばれていた。
   グロリアはアレグロ・モルトで書かれた早い楽章であり、およそ100小節でまとめられているが、最後のアーメンだけで30小節を要していたので、グロリアの長い教典は、およそ70小節で書かれており、恐らくほとんど、言葉を繰り返すことなく教典が収録されたものと思われ、ここでも大司教のミサ・プレヴィスの作風が反映されていると考えられた。



         続くクレド(信仰の宣言)は、アレグロ・ヴィヴァーチェの楽章であり、オーケストラの伴奏に始まって、“クレド”と叫ぶ大合唱がトウッティで活発に明快な主題をアレグロで開始しており、グロリアと同様に、長い典文をオーケストラの激しい伴奏で合唱とソロが頻繁に交替されつつ進行する楽章となっていた。ホリガーは、力強く明確にリズムを取って、力を込めて歌いながら指揮をしていた。
         しかし、中間部のアンダンテに入ると、慣例通りソプラノが登場して“エト・インカルナタス・エスト”をソロのアリアで歌っていたが、続いて“クルーチフィックス”に入ると四部の合唱団がアンダンテを歌い出し明るく進行していた。
          しかし、緩徐楽章はそこまでで、後半の“エト・レサルレキシト”に入ると音楽は再び冒頭のアレグロ・ヴィヴァーチェになり、合唱とオーケストラが勢いよくテインパニーの伴奏で進み出し、後半を盛り上げて進行していた。そして“エト・イン・スピリタム”に入ると、オルガンのピッチカートの伴奏とともにソプラノが再びソロで美しく歌い出し、ごく自然体でソリストたちの四重唱が続いていた。しかし、“エト・ウナム・サンクタム”に入ると四部の合唱が勢いよく始まって、アレグロ・ヴィヴァーチェで進行し、大合唱により後半の教典を合唱が歌っていたが、やはり最後はアーメンとなり、“アーメン”の合唱を各声部が繰り返して静かに終息していた。クレドは約180小節の大作となっており、中間部の24小節がアンダンテで、初めと終わりがアレグロ・ヴィヴァーチェの活発なクレドとなっていた。


           サンクトウス(聖なるかな)では、アダージョの壮大な“サンクトウス”と三回続く爆発的な大合唱で始まり、ホリガーは自分でも力強く口を動かしながら指揮を取り、トランペットやトロンボーンの鋭い響きと、テインパニーの力強い響きが耳にこだましていた。やがてアレグロ・ノン・トロッポのホザンナがソプラノのソロで高らかに“ホザンナ”と歌われて、数回繰り返されて、4部の合唱がこれを引き継ぎ、高らかに“ホザンナ”が合唱されていた。
           続いてベネデイクトウス(ほむべきかな)が、アレグロ・ノン・トロッポでバスの合唱から始まり、2小節遅れで、テノール、アルト、ソプラノの順に合唱の声部が加わって、“ベネデイクトウス”の大合唱が始まっていたが、全曲の中でもとりわけ穏やかな部分であった。やがて、ホザンナがオーボエの合図とともに突然にソプラノのソロで歌い出され、繰り返された後に、“ホザンナ”の大合唱に引き継がれ、聖なるかなと何回も歌われつつ収束されていた。




                           やがてミサの最後のアニュス・デイ(神の子羊)では、オーボエとファゴットの二重奏のオブリガートが、低弦のピッチカートや弦楽器とバロック・オルガンの伴奏を従えて、アンダンテ・ソステヌートでソプラノが高らかに“アニュス・デイ”と歌い出した。その主旋律は音形・調性ともに「フィガロの結婚」の第二幕の伯爵夫人のカヴァテイーナにそっくりの天上の祈りのアリアであり、オルガン伴奏が独奏風に華々しく現れて素晴らしいフィナーレとなっていた。ソプラノのヒルデガルト・ハイヒェレは後半でやや乱れが出たものの、このミサの要所要所でソロを歌っており、全体としてはまずまずの出来であったと言えよう。




           アニュス・デイは、ソプラノのソロのあと合唱団のトウッテイで繰り返されて静かに収束していたが、最後に弦楽合奏が先導してゆっくりとドーナ・ノビス(われらに平安を)が合唱団のトウッテイで威勢良く始まり、途中から珍しくソリストたちの四重奏になって進んでから、最後には再び合唱団が引き継いで、輝かしい響きの中で結びとなっていた。

 ホールに透き通るように響くソプラノの輝かしい歌声と、厳かな四重唱や壮大な大合唱の歌声がホールにこだまして、素晴らしい響きの中でミサ曲は終息していた。教会の中ではないが、オール・モーツァルト・プログラムのフィナーレとしてのミサ・ソレムニスは、ソリストたちを始め、合唱団やオーケストラの熱演があって、素晴らしく感銘深い厳かな演奏であった。指揮者のホリガーは、指揮者としてはこのHP初出であったが、テンポが実に良く実力あるオーケストラや歌手達の力量を上手く弾き出してくれたと思われる。


     (以上)(2016/05/13)



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