(最新のHDD録画;ミンコフスキーのイ長調の協奏曲K.488&K.219、)
16-12-2、マルク・ミンコフスキー指揮、ルーブル宮音楽隊によるピアノ協奏曲イ長調K.488、フォルテピアノ;フランチェスコ・コルテイ、およびヴァイオリン協奏曲イ長調K.219、V; ;テイボー・ノアリ、
2015年1月、モーツァルテウム・グロッサー・ザール、モーツァルト週間、ザルツブルグ、

−大好きなK.488のフォルテピアノによる最新の映像をご報告できた。しかも、モーツァルトが弾いた住家のワルター製のモデルでの演奏である。ソリストはミンコフスキー率いるルーブル宮合奏団のF.コルテイであり、楽器の特長を生かした実に心得た演奏で、オーケストラに合わせてとてもまろやかな音色でこの大好きな曲を一気に弾いてくれた。また、 ヴァイオリン協奏曲K.219も博物館にあったイタリア製のオリジナル(1764)であって、ヴァイオリンはコンマスのT.ノアリであり、このヴァイオリンの輝かしい音色を再現しながら、オーケストラと組んでしっかりした演奏を聴かせてくれた。このような試みをM週間で実現させたミンコフスキーの意欲に感謝するばかりである−



(最新のHDD録画;ミンコフスキーのイ長調の協奏曲K.488&K.219、)
16-12-2、マルク・ミンコフスキー指揮、ルーブル宮音楽隊によるピアノ協奏曲イ長調K.488、フォルテピアノ;フランチェスコ・コルテイ、およびヴァイオリン協奏曲イ長調K.219、V; ;テイボー・ノアリ、
2015年1月、モーツァルテウム・グロッサー・ザール、モーツァルト週間、ザルツブルグ、
(2016/08/08、クラシカ・ジャパンの放送をHDD1に収録)


        続く最新のHDD録画として選んだオール・モーツァルト・コンサートは、マルク・ミンコフスキー指揮、ルーブル宮音楽隊によるピアノ協奏曲イ長調K.488&ヴァイオリン協奏曲イ長調K.219である。フォルテピアノはフランチェスコ・コルテイ、およびヴァイオリンはテイボー・ノアリであり、いずれもミンコフスキーの音楽隊のメンバーであった。この演奏は、2015年1月にモーツァルテウム・グロッサー・ザールでの2015モーツァルト週間の演奏であった。この演奏の使用楽器は、モーツァルトの住家で博物館として展示されていた楽器を使用していることに特徴があり、クラシカ・ジャパンの放送で取り上げられたものであった。ワルター製のフォルテピアノは、同じ年代のレプリカよりも多少音量が低いようであるが、ヴァイオリンの方は音色は全く衰えがないとされ、イタリア製特有の輝きを持ったものとされている。 このミンコフスキーがモーツァルト週間を主催するようになってから、毎年、新しい試みがなされて、博物館に飾られていた楽器が登場するようになっており、この試みも極めて貴重なものと思わざるを得ないと感心させられ、2017年にはモーツァルトの住家で、この楽器による演奏会が開かれる予定としているので参加する予定である。





        ミンコフスキーは、このコンサートを「モーツァルトのイ長調の協奏曲」と名付けているので、博物館にある楽器を使って当初から、ルーブル宮のメンバーをソリストとして第一曲のピアノ協奏曲第23番イ長調K.488とヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219とを演奏しようと構想を練っていたに違いない。このピアノ協奏曲イ長調は、テインパニーやトランペットを含まずに、弦楽合奏とオーボエの代わりにフルートとクラリネットが加わった異色の管楽編成となっているので、フォルテピアノとのバランスが重要な作品となっており、コントラバスは1台のオーケストラ編成としていた。舞台では指揮者もソリストも揃っており、コンサートマスターが丁寧にチューイングを行なっていた。
この曲の第一楽章は堂々たるオーケストラの提示部を持つが、ミンコフスキーは、両腕で軽く合図して、弦が軽やかに美しい第一主題を開始していた。直ぐにフルートとクラリネットがその美しい響きを確かめるように主題を繰り返しながら進行していたが、古楽器特有の弦が鋭く澄んで聞こえ、木管も柔らかくまろやかに聞こえて、特徴のあるリズミックな弦と管が応答する軽快な経過部に移行していた。続く第二主題も弦楽器で静かに呟くように始まり、管楽器が加わりながらひとしきり歌って元気よく発展して第一提示部を明るく終えていたが、フォルテピアノの通奏低音の音が聞こえていたのも珍しいと思った。






    続いてフォルテピアノのフランチェスコ・コルテイの独奏ピアノが静かに登場し、丁寧に第一主題をゆっくりと弾きだし、続いて変奏するように繰り返してから、ピアノがオーケストラを従えて転がるように進んでいた。このフォルテピアノの音は小さいが締まった音であり、続いて静かに独奏ピアノが第二主題を呟くように提示し始めたが、フォルテピアノとファゴットや木管との対話が美しく響き、これに弦が加わってピアノの心地よいパッセージを中心にヴァイオリンとピアノの掛け合いの部分が調子よく進んでいた。コルテイは譜面を見ながら丁寧に弾くピアニストであり、間を大切にするソリストのようで、独自に間をとってパッセージを始める癖も自然体で、オーケストラに合わせる地味な弾き方であったが、この曲の最初の出だしはフォルテピアノの響きがキラキラと美しくスムーズに進んでいた。




           展開部は新しい気持ちの良い新しい主題が弦で始まるが、直ぐにフォルテピアノが変奏するように主題を取り上げて進んでから、フォルテピアノと木管が交互に登場して競り合いが続いた後に、目まぐるしく早いフォルテピアノのパッセージが現れてフォルテピアノが目覚ましく活躍し始めた。ここではクラリネットやフルートが響いたり、弦楽器がしっかりピアノをサポートしたりして、素晴らしいアンサンブルで軽快に進行していた。 再現部もオーケストラで始まっていたが、直ぐにフォルテピアノを中心に軽やかなテンポで心地よく第一主題・第二主題とやや型通りに進行していたが、後半には展開部での新しい主題もピアノで再現されて上手く組み合わされていた。カデンツアは譜面にあるもの装飾されながら弾かれ、緩急自在にイメージ良く弾かれていた。




                           第二楽章のアダージョは、三部分形式で書かれており、コルテイのフォルテピアノがシチリアーノのリズムに乗って、ゆっくりと美しい主題をメランコリックに弾き始めた。そして、この主題に答えるかのように第二ヴァイオリンの分散和音をベースに、第一ヴァイオリンとクラリネットがそしてフルートが新しい旋律を歌い出していた。続いてフォルテピアノがこれらの主題を変形しながら丁寧に弾いており、オーケストラが加わって古楽器さながらの素晴らしいアンサンブルの世界を作り出していた。そして再び、フォルテピアノが始めの主題を、間をとりながら丁寧に変奏しながら淡々と進み出し、メランコリックなシチリアーノの美しい世界が繰り広げられていた。
    中間部では突然にファゴットの分散和音に乗ってフルートとクラリネットがテンポを変えて合奏しながら新しい主題提示をするが、フォルテピアノと木管との掛け合いが美しく始まり、暫くの間、ゆったりと酔ったように進んでいた。そして再び、フォルテピアノが冒頭のシチリアーノの主題を再現し変奏しながら進行するうちに、もう一度、フォルテピアノと弦と木管の見事なアンサンブルが登場し、最終部でのピッチカートの伴奏でフォルテピアノがゆっくりと歌い上げて、華やかなアンサンブルの世界をまざまざと感じさせてくれた。




     このフィナーレは、独奏フォルテピアノがいきなりアレグロ・アッサイで飛び出してくる明るく輝くようなロンド主題で始まり、オーケストラに引き継がれていくが、続く第一のエピソードは、進むに連れて新しい楽想が独奏ピアノ、フルート、独奏ピアノの形で次から次へと飛び出してきて、その都度、独奏ピアノが華麗なパッセージを繰り広げて木管との対話を繰り返しながら疾走していた。この独奏フォルテピアノは、オーケストラとの対話を楽しむように滑らかに弾かれており、古楽器によるアンサンブルの良さが身近に快く伝わってくる。やがて思い出したように冒頭のロンド主題がフォルテピアノで再現されオーケストラで繰り返されていたが、続く第二のエピソードでは、フォルテピアノの一撃とともに直ちに新しい主題がピアノで現れて木管と相づちを打ちながらピアノが転げ回り、続いてクラリネットが新しい主題を提示してフォルテピアノが引き継いで軽快なパッセージが続いていた。そして続けて第一のエピソードの三つの主題が続いて、その後半には独奏ピアノによるコーダ風の主題が現れピッチカートの伴奏の上をフォルテピアノが軽快に走り回り、最後には再びロンド主題が登場してから華やかにこの楽章が閉じられていた。

         大変な拍手で観客から迎えられ、ミンコフスキーとソリストのコルテイが挨拶を繰り返していたが、ミンコフスキーが、ソリストを讃えて拍手をし、さらに二つのクラリネットとフルート奏者に対し、観客に拍手を促す場面もあった。
この曲は既に16組の演奏のアップロードが完成しているが、フォルテピアノと古楽器集団による初めての演奏で、非常に貴重なものとなった。その上、モーツァルトの弾いた博物館のフォルテピアノを使用し、ザルツブルグの本場での演奏とあって、実に記念すべき掛け替えのない演奏となった。しかもフォルテピアノと弦と木管の三つ巴のアンサンブルの良さが光る好演であった。私の感じではフォルテピアノの音量に対しオーケストラがやや重厚すぎる面があったが、これは好みの問題であり、モーツァルテウムの小さなホールでの響きの良さは格別なものがあったと思われる。





    続く第二曲目はヴァイオリン協奏曲第五番イ長調K.219 であり、ミンコフスキーが登場して、全体を見渡していたが、前曲と同様に両腕をかるく挙げて、第一楽章のアレグロ・アペルトが颯爽と開始されていた。ソリストのコンサートマスターのテイボー・ノアリは起立しており、このトゥッティにも参加していた。このトゥッティによる主和音の強奏に続いて、第一ヴァイオリンがスタッカートでアレグロ・アペルトの指定のように堂々と威勢よく第一主題が開始され、第一ヴァイオリンによるスタッカートの軽快なリズムでこの主題が明るく進行していた。ここで前曲と異なるのは、コントラバスが2台右側に配置され、二つのオーボエが、早速、活躍をしていた。やがて軽やかな第二主題が弱奏の第一ヴァイオリンで提示されて、これもスタッカートで実に軽快な調子で進んでから、コーダを経てオーケストラによる提示部を終え、フェルマータになっていた。
      ここで曲調は一変してアダージョになり、独奏ヴァイオリンがオペラのアリアのように美しいアインガングで登場して、一際豊かなピリオド風の高音の音色を独奏ヴァイオリンが示していたが、曲は再びフェルマータになってからアレグロ・アペルトに戻り、ノアリは生き生きとして第一主題を弾き出していた。そして素晴らしい勢いで軽快なパッセージが続いていたが、博物館のヴァイオリンとは言え音色は明るく際立っており、モダンなヴァイオリンより線が細く聞こえていた。やがて軽やかな第二主題が弾むように提示され、息つく暇もないほどの勢いでヴァイオリンの走句が明るく駆けめぐっていたが、ここでノアリのヴァイオリンの細かな技巧が十分に発揮され、私にはモダンなヴァイオリンと遜色なく新鮮に聞こえていた。ここでオーボエとの掛け合いも息が合って美しく、次第に盛り上がりを見せながら一気に駆け抜けるように提示部を終えていた。






     展開部に入ると独奏ヴァイオリンが新しい主題を提示し、華やかなソロの技巧的な走句が繰り返され、最後に第一主題を導いてから再現部へと突入していた。再現部では独奏ヴァイオリンがいきなり第一主題を提示するが、オーケストラとお互いに主役を交替するように進行し、第二主題もソリストにより主調で再現され、独奏ヴァイオリンが走句を重ねるように素晴らしい勢いで進行しながら疾走していた。終わりのカデンツアは、良く聴いている版のものであり、この楽章で現れた主題の断片を折り込んだ技巧的なものであった。






      第二楽章はアダージョのとても美しい楽章であり短いソナタ形式であるが、しっかりした構成で書かれていた。始めに甘い第一主題がオーケストラの第一ヴァイオリンによってゆっくりと始まり、直ぐに続けて細やかな揺らぎを持った第二主題が提示されひとしきり進行していたが、ここの32分音符の音形が木葉のように揺れ動いて印象的で、美しく提示部が示されていた。ここで、独奏ヴァイオリンがやっと登場し、第一主題を改めて繰り返すように提示していくが、独奏ヴァイオリンは変奏しながらソロ主体で進行し、続く美しい第二主題も歌うように変奏しながらドンドンと進行し、後半には独奏ヴァイオリンが新しい軽やかな美しいエピソードを提示して充実した提示部となっていた。
       展開部では冒頭の主題を中心に独奏ヴァイオリンがリードしながらオーケストラを相手に変化を見せて再現部へと移行していた。ソロのノアリは、この楽章でも独奏ヴァイオリンを自在に弾き進み豊麗な音色を際立たせていたが、終わりの短いカデンツアでも存在感のある技巧の冴えを見せて堂々とこの楽章を収束させていた。






  フィナーレはロンドーとフランス語で書かれており、この曲では最初にテンポ・デイ・メヌエットと書かれてイ長調のメヌエットのロンド主題からなるA-B-A-C-Aの部分と、中間部にアレグロと書かれたイ短調のD-E-F-D-E-Fの「トルコ風」の名の由来の部分からなり、最後に再びテンポ・デイ・メヌエットのA-B'-A'で終わる大型のロンドになっていた。
      ソリストのノアリにより独奏ヴァイオリンが三拍子のメヌエットで勢いよく始まると、これをトゥッティが受けて繰り返されてから、独奏ヴァイオリンが新しい主題を提示してトゥッティが繰り返すというロンド形式で軽快に進んでいた。そして冒頭のメヌエット主題が三度現れてから、突然、曲調が一転してアレグロになり、独奏ヴァイオリンが急速なソロの走句を弾き始め繰り返しているうちに第一ヴァイオリンを中心とするトゥッティで「トルコ風」のリズムを持った活発な主題をもたらし、さらにクレッシェンドして賑やかな半音階風の主題が流れ、「トルコ風」の異様さを強めていた。再度、トルコ風のメロデイが繰り返されてこの印象を深めてから、独奏ヴァイオリンが冒頭のメヌエット主題を弾き出して、曲は穏やかに終息していたが、この楽章は特に連作の中で、特徴を表すためにいろいろな工夫が加えられた曲であると思った。

  曲が堂々と明るく終わり、再び大変な拍手に迎えられて、ミンコフスキーとソリストのノアリが深く握手を交わしてこれらの歓声に応えていたが、二人が退場してからも拍手が続き、ノアリが一人で登場して来て、大変な拍手に応えていた。このヴァイオリン協奏曲第5番は10演奏もアップしているが、ピリオド楽器による古楽器演奏は何と初めてであり、今回の演奏は極めて貴重なものとなった。このヴァイオリンを調べると、モーツァルトがウイーン時代に入手したイタリア・ヴェネツイアの名工ピエトロ・アントニオ・ダッラ・コスタ制作のヴァイオリン(1764)であり、イタリア特有の輝かしい音色は少しも衰えておらずに、随所でソロヴァイオリンの輝きを見せており、オーケストラと充分に対抗して渡り合っていた。DVDではアンコールとして、フォルテピアノのコルテイとノアリが、ヴァイオリンソナタホ短調のあの有名な第2楽章を弾いたようであるが、クラシカ・ジャパンの放送では、残念ながら、割愛されていた。


(以上)(2016/12/13)



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