(最新のクラシカHDD録画より;モテット「踊れ、喜べ」K165、)
16-11-4、大野和士指揮、バルセロナ交響楽団、マドリガル合唱団によるモテット「踊れ、喜べ」K165、
ソプラノ;マリア・イノポサ、バルセロナ響音楽監督就任公演、2015年9月20日、サグラダ・ファミリア(バルセロナ)、

−このモテット「踊れ、喜べ」の新しい演奏を久し振りで大きな教会で目にして、若い元気の良いソプラノが声を張り上げて、オーケストラと競い合いながら明るく歌う姿に、私も思わず熱い感動の思いが胸を走った。多少の未熟なところがあっても、素敵なパッセージやカデンツアなどで朗々とした声で、精一杯、力強く声を張り上げる姿は実に良いものだと思った。また、広々とした教会での演奏であったので、第二楽章の前に入る美しいレチタティーヴォが実に厳かに聞こえ、バロック・オルガンの響きも実に良く、反面、フィナーレのハレルヤは実にテンポ良く明るく歌われて、モテットらしさを充分に良く発揮した宗教的な雰囲気をもたらしてくれた−

(最新のクラシカHDD録画より;モテット「踊れ、喜べ」K165、)
16-11-4、大野和士指揮、バルセロナ交響楽団、マドリガル合唱団によるモテット「踊れ、喜べ」K165、
ソプラノ;マリア・イノポサ、バルセロナ響音楽監督就任公演、2015年9月20日、サグラダ・ファミリア(バルセロナ)、
(1160821、クラシカジャパンの初回放送をHDD2に収録、)

           12曲目の第4曲目は、短い曲であるが、最新のクラシカジャパンのHDD録画より、モテット「踊れ、喜べ」K165をお送りする。世界に挑む日本人たちという特集で、大野和士のバルセロナ響音楽監督就任公演と題する2015年9月20日のコンサートの中の一曲として収録されたものであり、ソプラノはスペインが誇る若きマリア・イノポサが、サグラダ・ファミリアという大聖堂(バルセロナ)で歌ったものである。もの凄く大きな広々とした教会で歌われたモテットであり、コンサートホールでの演奏会形式で歌われるとソプラノの輝かしい協奏曲に聞えるが、教会の中でじっくり歌われると教会音楽らしい雰囲気が出てモテットのように聞えるものである。この日のメインはフォーレの「レクイエム」であり、指揮者大野和士は大きな教会の中でのコンサートという日本では経験できない立派な仕事をしているなと感心させられた。




      この曲は、第三回のイタリア旅行でミラノ滞在中の1773年に、「ルチオ・シッラ」のチェチーリオ役を務めたカストラート歌手ヴェナンツイオ・ラウッツィーニの声に合わせて書かれたとされ、オーストリアに比してかなり「非教会性」を鮮明にした世俗寄りのオペラ風の教会音楽をイタリアで数多く耳にして作曲したとされる。外見上から見ると、二つのアリアと二つのレチタティーヴォよりなりハレルヤで終わるという大まかな当時のモテットの定義に従えば、レチタティーヴォは1つしかないが、モテットの形態を辛うじて備えている。しかし、そのレチタティーヴォを除けば、急・緩・急という楽章の組み立てとなり、それは、当時、関心を持っていた協奏曲の形式であって、宗教的色彩よりも、声のためのコンチェルトとしての性格を強く印象づける作品となっている。




       このモテットは、曲の第一楽章および第二楽章が、オーケストラで主題提示してからソロが中心になって再び主題提示される協奏的ソナタ形式の形を取っており、ともに展開部を欠き、主題提示部の繰り返しを省いた簡潔なソナタ形式となっていた。そして第二楽章に入る前にソプラノのレチタティーヴォが置かれ、第二楽章とフィナーレは連続して演奏されて、ロンド形式のハレルヤが連続するフィナーレとなっていた。
        映像はコンサートの2曲目の武満徹作品が終了して拍手の中で指揮者が退場してから、その拍手の中でソプラノのマリア・イノホサと指揮者の大野和士が登場し、 観衆ににこやかに挨拶を繰り返してから一息ついて、おもむろにオーケストラによるアレグロの第一楽章の第一主題からストレートに軽快に始まっていた。






大野和士の指揮振りは、落ち着いたしっかりしたテンポで軽やかにそして弾むような弦の音で開始していたが、この第一主題の明るい弦に答えるように二本のオーボエが歌い出す第二主題が印象的であり、弦に引き継がれて短いオーケストラによる提示部を終えていた。続いて、直ちに、ソプラノのソロが歌い出し、マリア・イノホサがソロで第一主題を歌い出してから、新たに第三の経過的な主題が流れていたところへ、二本のオーボエが快く響きだして第二主題が歌われて、直ぐに華やかなコロラトゥーラのパッセージに繋がって、素晴らしい勢いでソプラノによる主題提示部を終えていた。






       再現部になってソプラノが再びソロで第一主題を歌い出し、軽快にソプラノが弾むように歌ってから、第三の経過句が現れてソプラノがまたコロラトゥーラの華やかな楽句が続いていたが、オーボエとともに第二主題が顔を出し、カデンツアに入って終了していた。カデンツアは「天も私とともに歌うでしょう」という趣旨の短いものであったが、ソプラノ協奏曲の花を添えるものに聞こえていた。






  バロックオルガンの低い響きで、第二楽章初めのソプラノソロのレチタテイーボが始まる。マリア・イノホサが両手に楽譜を持ち、祈るような表情で静かにレチタテイーボを歌っていたが「平安な時が訪れた」という趣旨で、字幕が出るので良く分り、宗教的な意味合いの穏やかさをたたえたシーンが保たれていた。第二楽章も展開部のない簡潔な協奏的ソナタ形式であり、弦三部とオルガンのオーケストラによる美しい第一主題と第二主題が続けてアンダンテで前奏のように美しく提示されて、これがオーケストラによる提示部となっていた。




そしてマリア・イノホサが「私たちに平安を与えてください」と静かに祈るように優しく第一主題を歌い、続いて敬虔な気持ちが届くかのようになだらかに下降する第二主題がヴァイオリンの特徴ある伴奏で平穏に歌われていた。マリア・イノホサは、若さ溢れる表情でやや不安定な面を見せながらも、それを抑えながら精一杯の様子を見せながら歌っていた。再現部に入っても彼女の祈るような歌い方は変わらなかったが、最後のカデンツアでは声を張り上げてこの曲の最高音を出して、声に余力のある所を見せていた。




  第二楽章から切れることなく、続けてテンポが急変してオーケストラの8小節の短い前奏の後に、明るく晴れやかなテンポでフィナーレのハレルヤがソプラノのソロで開始された。これがロンド主題のAであり、この楽章はロンド形式でA-B-A-C-Aの形を取り、この時を待っていたかのように、オーケストラとソプラノソロとが互いに競い合うように順繰りに歌い出していた。第一クープレはハレルヤの言葉で華やかな曲調でコロラトウーラの技巧を発揮しながら輝かしく歌い、再びロンド主題に戻ってから、第二クープレで、新たにコロラトウーラのハレルヤのパッセージが歌われて神への賛歌が繰り返されていた。マリア・イノホサは、若い力を爆発させるようにここでは全力で声を張り上げて歌っていたが、多少の乱れも若い声が吹き飛ばしてくれたように思われた。




凄い嵐のような拍手が湧き起こって、このソプラノのマリア・イノホサの若さ一杯の元気溢れる演奏が終了していたが、指揮者の大野もマリア・イノホサも、挨拶を繰り返していた。その最中に、マリア・イノホサに花束の贈呈がなされて拍手は最高に高まって、大野はオーケストラを起立させて、全員で大拍手に答えていた。この名曲の新しい演奏を久し振りで大きな教会で目撃して、私も若い元気の良いソプラノが声を張り上げて、オーケストラと競い合いながら明るく歌う姿に、思わず熱い感動の思いが胸を走ったように覚えた。多少の未熟なところがあっても、カデンツアなどで朗々とした声で、精一杯、力強く声を張り上げる姿は実に良いものだと思った。また、この演奏は教会での演奏であったので、第二楽章の前に入る美しいレチタティーヴォが実に厳かに聞こえ、バロック・オルガンの響きも実に良く、反面、フィナーレのハレルヤは実にテンポ良く歌われて、モテットらしさを充分に良く発揮した宗教的な雰囲気をもたらしてくれた。コンサートの演奏会形式とは異なった教会の雰囲気に演奏になっており、私には非常に印象に残る演奏であった。


(以上)(2016/10/30)



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