(最新のBP-DCHより;ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、K.216、K.271、K.453)
15-8-3、(1)ベルリンフイルとツインマーマンの指揮とヴァイオリンによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216、2014/05/17、(2)ハイテインク指揮ベルリンフイルとエマニュエル・アックスのピアノによるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271、2014/03/15 、(3)ビシュコフ指揮ベルリンフイルとプレスラーのピアノによるピアノ協奏曲第17番ト長調K.453、
2014/01/11、フイルハーモニー・ホール、

− 最初のコンサートでは、名指揮者アバドの急逝と言うことで、「ロザムンデの音楽」よりアバドを偲ぶ間奏曲がベルリンフイルにより演奏されていた。続くヴァイオリン協奏曲第3番でも、アバドを偲んで指揮者不在のまま、ツインマーマンが指揮もトゥッティも引き受けて、まるで一人舞台のように名人芸を披露していた。アックスのピアノ協奏曲第9番の映像は、最新のクリアーな映像のせいもあって、非常に鮮明で音も美しく、アックスがオーケストラと良く合わせて、一音一音、丁寧に弾くピアニストであり、アンサンブルが素晴らしいソリストであると強く感じた。最後のプレスラーのピアノ協奏曲第17番は、老齢にも拘わらず、ピアノがいつも明るく輝くように弾かれており、オーケストラや木管とのアンサンブルも自然に良く融け合って聞こえ、この曲向きのピアニストのように思われた−

(最新のBP-DCHより;ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、K.216、K.271、K.453)
15-8-3、(1)ベルリンフイルとツインマーマンの指揮とヴァイオリンによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216、2014/05/17、(2)ハイテインク指揮ベルリンフイルとエマニュエル・アックスのピアノによるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271、2014/03/15 、(3)ビシュコフ指揮ベルリンフイルとプレスラーのピアノによるピアノ協奏曲第17番ト長調K.453、
2014/01/11、フイルハーモニー・ホール、

       続く最新のBP-DCHからの3曲は、続々とリリースされる最新のピアノとヴァイオリンの協奏曲の演奏を連続して取り上げるものである。15-8-3の第一曲は、(1)ベルリンフイルとツインマーマンの指揮とヴァイオリンによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216であり、2014年5月17日の定期で収録されている。彼のこの曲の2度目の演奏で、およそ20年ぶりの登場となっており、その成長ぶりが楽しみである。第二曲目は、(2)ハイテインク指揮ベルリンフイルとエマニュエル・アックスのピアノによるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271であり、2014年3月15日の定期からの収録である。アックスは毎年のように協奏曲をベルリンフイルと協演している。第3曲目は、あの高齢なプレスラーのベルリンフイルとの協演であり、(3)ビシュコフ指揮ベルリンフイルとプレスラーのピアノによるピアノ協奏曲第17番ト長調K.453で、2014年1月11日の定期における収録である。プレスラーのピアノとベルリンフイルのアンサンブルの素晴らしさが楽しみな曲であり、プレスラーの人気の秘密を確かめてみたいと考えている。


    15-8-3の第一曲は、(1)ベルリンフイルとツインマーマンの指揮とヴァイオリンによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216であり、2014年5月17日の定期で収録されている。フランク・ペーター・ツインマーマン(1965〜)は、ドイツのドゥイスブルク生まれの英才で、ヴァイオリニストの母とチェリストの父から手ほどきを受けた後、ベルリン芸術大学で研鑽を重ねており、75年10歳の時にこのヴァイオリン協奏曲を弾いて楽壇にデビユーしたという。ドイツのこの年代には、2歳年上のムター、1歳年下のテツラフやヴィオラ奏者のタベラ・ツインマーマンなどが有名で、タベラとのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲(7-12-2)のLD(1991)などで、26歳の若きツインマーマンをこのHPの映像で確認することが出来る。また、1993年のベルリンフイルのヨーロッパ・コンサートで、このヴァイオリン協奏曲第3番の映像を紹介したばかり(15-5-1)であるので、彼の名をそろそろソリスト欄に紹介しておかねばならないと気がついた。この時には、「彼がヴァイオリンを弾く姿には、落ち着きのある風格が身についており、ヴィルテイオーゾ的な端整な演奏スタイルが良く似合って、ヴァイオリンの音色を大切にした名人芸的な側面もよく見えていた」と書かれているので、今回はその23年後の演奏であるが、その演奏スタイルは全く変わっていないものと思われる。


      この2014年5月17日のベルリンフイルの定期公演は、当初指揮を予定されていたクラウデイオ・アバドが、1月20日に逝去されたので、その代役としてサー・サイモン・ラトルがブルックナーの交響曲第7番の指揮を行ったアバド追悼コンサートであった。前半のツインマーマンのヴァイオリン協奏曲は、予定通りであったとされていたが、このコンサートの開始は、いきなり指揮者なしでコンサート・マスターの合図により開始され、シューベルトの「ロザムンデの音楽」より間奏曲第二が弦楽合奏で静かに始まった。この曲は弦楽四重奏曲やピアノの即興曲でもお馴染みのシューベルトを代表する静かな名曲であるが、オーケストラが暗黙にアバド追悼の意味を込めたものと思われ、続いてフルートのパユが切々とソロを歌い、中間部では木管グループが心を込めて合奏して、穏やかに瞑目するような雰囲気で静かに演奏していた。指揮者のいない指揮台には、バラの花が一本置かれており、われわれを励まし続けてくれた兄貴のようなアバドのいない空虚さが心に滲みるように思われた。


        続いて第一曲目のヴァイオリン協奏曲第三番ト長調K.216の順番になっていたが、ヴァイオリンを片手にツインマーマンが一人で入場してきて挨拶を繰り返してから、いきなり全員のトゥッティで第一主題を開始していた。ツインマーマンは、自ら指揮をして、追悼の意味を込めて演奏したものと思われ、指揮者のいない指揮台には、バラの花が一本、おかれていた。オーケストラを良く見るとコントラバスが三台のしっかりした弦5部とオーボエ・ホルンからなるオーケストラであった。この長いアリア風の第一主題の合奏に続いて、直ぐにオーボエとホルンが導く第二主題となってオーケストラによる主題提示部が盛り上がりを見せながら、勢いよく進行していた。 
      そこでツインマーマンの独奏ヴァイオリンが、1オクターブ高く、勢いよく第一主題を弾き始め、早速、明るく装飾音を加えながら実に丁寧に弾き始めていた。そして、短いトゥッティのオーケストラの後に、直ぐに第三の新しい美しい主題を晴れやかに弾き始めた。それから早い技巧的なパッセージが続いてソリストの見せ場を作ってから、オーボエの重奏で第二主題が提示されて、再び独奏ヴァイオリンが元気よく活躍しながら提示部の後半を盛り上げていた。



     展開部は前の二つの協奏曲より規模が大きくなり、まずトゥッティで始まり短調の陰りを見せながら進行してから独奏ヴァイオリンが新しい主題を出して繰り返し、トゥッティ、独奏ヴァイオリン、オーボエの順に展開されていた。そしてフェルマータの後一息ついて、再現部に突入していた。ここではトゥッティに始まり独奏ヴァイオリンが続いて第一主題を提示した後に、第三の主題が独奏ヴァイオリンで弾かれ、続いて第二主題が型通り出て発展してからカデンツアとなっていた。ツインマーマンはオリジナルのカデンツアで、表情豊かに技巧を散りばめながら各主題の一部を回想するように仕上げていたが、見事なヴァイオリンの音色が示されていた。50歳を迎えるツインマーマンは、少し太って貫禄のある姿で、落ち着いて素晴らしい安定した技巧を示しながら、明るくオーケストラと対話しており、指揮の素振りを余り示さぬままに余裕のある演奏のように思われた。


    第二楽章ではアダージョで、トゥッティで4小節の美しい主題がピッチカート伴奏で始まるが、直ぐにツインマーマンの独奏ヴァイオリンがオクターブ高く繰り返して進行し、ここでもピッチカートの伴奏で独奏ヴァイオリンがこの穏やかな美しい主題を明るく歌い、変奏を加えながら繰り返していた。この楽章ではフルートも参加しており、フルートとホルンの重奏と独奏ヴァイオリンが交互に第二主題を提示して繰り返されていた。続く短い展開部では、第一主題前半のモチーブによる独奏ヴァイオリンの一人舞台であり、続けて始まる再現部は独奏ヴァイオリンが中心になって再現され、第二主題も現れてフェルマータに導かれてカデンツアとなっていた。短いカデンツアは第二主題中心のものであったが、ここでもツインマーマンは丁寧に素晴らしい技巧でカデンツアを仕上げていた。最後はコーダのあと独奏ヴァイオリンが第一主題を弾きだして終わるという変わった試みで、味わい深い終わり方であった。



  第三楽章はRONDEAUと書かれたアレグロ楽章であるが、前曲と異なって、モーツァルトはこのフランス風に記された楽章では、単なるロンド楽章ではなく、中間部にいろいろな工夫がなされていた。まずオーケストラで耳慣れたロンド主題が軽やかに提示され、続いて独奏ヴァイオリンがロンド主題を繰り返していくが、ツインマーマンはこの主題を実に軽快に進め、その後は新しい主題を独奏ヴァイオリンが提示する形でA-B-A-C-A-とロンド形式の形で進んでいた。ところがロンド主題を終えてフェルマータの後、曲は一転して短調風のアンダンテとなり、独奏ヴァイオリンが弦のピッチカートに乗って軽やかに美しい新しい歌を歌い出し繰り返された。続いて曲調はアレグレットに変わって、再び独奏ヴァイオリンが民謡調の別の歌を歌い出し、更に重音奏法の新しい主題が提示されて繰り返されていた。この新しいフランス風の気まぐれな飛び込みは、新鮮な印象を与えていたが、フェルマータの後に、再び始めのロンド主題に戻ってこの楽章は静かに終わっていた。モーツァルトが協奏曲の連作時に見せるロンド楽章のこうした思わぬ新しい変化は、何時も楽しみを持って迎えられるが、この傾向はこの後のピアノ協奏曲のロンドフィナーレにも引き継がれているように思われた。



      このコンサートは、年間のプログラムの一環で開催されているが、名指揮者アバドの急逝と言うことで、「ロザムンデの音楽」よりアバドを偲ぶ間奏曲がオーケストラで演奏され、続くヴァイオリン協奏曲でも、アバドを偲んで指揮者不在のまま、ツインマーマンが指揮もトゥッティも引き受けて、まるで一人舞台のように、名人芸を披露していた。彼がヴァイオリンを弾く姿には、一段と落ち着きと風格がただよっており、まさにヴィルテイオーゾ的な演奏スタイルが良く似合っていた。若いと思われていたツインマーマンも50歳を迎えて円熟期の入っており、先日聴いたクラシカジャパンのバッハのヴァイオリンソナタ集でも風格ある演奏をしていたが、これからの活躍が十分に期待される。       (以上)(2015/08/15)



    15-8-3の第二曲目は、(2)ハイテインク指揮ベルリンフイルとエマニュエル・アックスのピアノによるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」であり、2014年3月15日の定期からの収録である。このコンサートは、この協奏曲に続いて、ブルックナーの交響曲「ロマンティック」が予定されていた。アックスは、1949年ポーランドに生まれているが、少年時にカナダに移住しており、ジュリアード音楽院で学んだピアニストであり、数々のコンクールに挑戦しながらニューヨークを基盤に活躍してきた。このHPでは、この曲は2回目であり、先の15-8-2の第14番変ホ長調も収録しているので、ソリスト欄に掲載する必要のあるピアニストになって来ている。



    この「ジュノム」協奏曲はザルツブルグ時代の協奏曲の中では、抜きんでて内容的にも形式的にも優れた曲とされている。この曲の第一楽章では第一主題がモチーブで分割されており、初めにトウッテイで最初のモチーブが示されると、続けて独奏ピアノが次のモチーブで登場し、これらが対話風に繰り返されてから、オーケストラが軽快に明るく第一主題を提示していた。ピアノ協奏曲において、このように独奏ピアノが最初から意欲的に登場するのは、この曲が初めてのこととされる。続いてすこし暗い感じの第二主題がオーケストラで示されるが、この主題も前半と後半の二つのモチーブに分かれており、流れるようにオーケストラが進行して第一の提示部を終えていた。



    そこで独奏ピアノが長いトリルを響かせながら登場し、オーケストラと独奏ピアノとが冒頭のように対話風に進行してから、直ちに独奏ピアノが第一主題を力強く弾きだし、華やかに16分音符のパッセージを弾き出した。アックスのピアノはクリアなタッチで粒が揃って、丁寧に弾かれておりとても美しい。続く第二主題も独奏ピアノが軽快に弾むように弾かれて、アックスのピアノの一人舞台のペースとなって素晴らしい勢いで提示部を終えていた。




  展開部では、最初と同じ始まりでオーケストラとピアノが登場してから、冒頭の二つのモチーブが独奏ピアノで執拗に形を変えて装飾されて展開され、元気よく繰り返されて再現部に移行していた。再現部では、冒頭のソロとトウッテイが、互いに入れ替わりながら対話を行い、素晴らしいピアノとオーケストラの掛け合いが第一・第二主題へと続いていた。カデンツアは新全集には二つ用意されており、アックスはBの長い方を使っていたが、Bの方が演奏効果が優れているのか、弾く人が多いように思われた。




   第二楽章は、ハ短調のヴァイオリンの合奏で始まるアンダンテイーノのもの憂い感じの長い序奏で開始されるのが珍しい。続いて第一主題がアックスのピアノソロでゆっくりと始まり、絶えず装飾をつけながら綿々と続いてから、ヴァイオリンに始まり独奏ピアノが応える第二主題が登場し、そのまま独奏ピアノが綿々とオーケスオラと対話しながら進行する美しい曲となっていた。アックスはゆっくりとしたソロピアノで、譜面を追っていくと、実に粒だちの良いピアノを一音一音丁寧に弾いていた。続いて展開部では独奏ピアノが華やかにパッセージを短くこなして、直ぐに序奏なしで再現部が始まり、第一主題、続いて第二主題の順に型どおりに再現されていた。新全集では二つのカデンツアが示されているが、アックスはここでもBの長い方のカデンツアを弾いていた。



     フィナーレはロンドと書かれたプレストの楽章であり、形式はA-B-A-C-A-B-A のロンド形式を取っているが、Cの部分が後述するように独立したメヌエットになっており、一つの楽章で二つの楽曲を有する大ロンド形式となっていた。Aの部分は独奏ピアノによる軽快なロンド主題でプレストで始まるが、ソロピアノが珍しく軽快に続けて走り出し、続いてオーケストラを従えて、早いパッセージが続いていた。アックスは余り急がずにテンポ良く弾き進み、後半のパッセージもなめらかに粒ぞろいに弾かれていた。続いて右手と左手が交錯する次の主題がピアノソロで早いテンポで始まりオーケストラとも協奏されていくが、ここでロンド形式のA-Bの最後に、短い第一のアインガングが入り一呼吸する。そして、独奏ピアノによるロンド主題Aが始めと同じスタイルで始まった。オーケストラとピアノで早いテンポでロンド主題が展開されて終息すると、改めてCの部分がゆっくりと始まった。
   これが何とカンタービレの美しいメヌエット。美しい主題が独奏ピアノで流れ出し、やがてピッチカートのオーケストラを従えてゆっくりとピアノが進行するが、このメヌエットではピアノが変奏曲のように弾かれて、しばしの安らぎのように表情豊かに響いていた。ここでも一区切りを示すような短い第二のアインガンクが弾かれてから、再び最初のロンド主題に戻っていた。最後のA'-B'-A"では、ピアノが良く動き回ってフイナーレを盛り上げてからさり気なく終息していた。

    このE.アックスの映像は、細心のクリアーな映像のせいもあって、非常に鮮明で音も美しく、アックスがオーケストラと良く合わせて、一音一音、丁寧に弾くピアニストであり、いろいろな場面でオーケストラとのアンサンブルが素晴らしいピアニストであると感じた。この映像は前回のものよりも、印象に残る演奏であった。記憶によると彼が若いニューヨーク時代にアイザック・スターンやヨーヨー・マなどとアンサンブルの仲間であったレコーデイングもあったし、協奏曲の選び方などからも判断できそうな気がした。         (以上)(2015/08/17)



      15-8-3の第三曲目は、(3)ビシュコフ指揮ベルリンフイルとプレスラーのピアノによるピアノ協奏曲第17番ト長調K.453で、2014年1月11日の定期における収録である。ピアニストのメナハム・プレスラーは、90歳近い高齢のイスラエル生まれのピアニストであり、1955年にアメリカで結成されたボザール・トリオの主宰ピアニストとして活躍して来たが、トリオ解散後はソロ・ピアニストとして著名になっている。このHPでは既にクラシカ・ジャパンの映像で、ピアノ協奏曲第27番が収録済みであり、とても魅力的であったので、今回の映像も期待されていた。
       この曲第17番の第一楽章はアレグロのソナタ形式であるが、第二・第三楽章は、とても自由な雰囲気を持った変奏曲形式であり、フルートやオーボエやファゴットなどの木管楽器が、全楽章にわたって特に活躍し、作風が次第に変わってきて、ピアノとの対話が特に美しい曲として知られている。



          小柄なプレスラーが指揮者と共に入場し、直ぐにオーケストラにより、協奏的ソナタ形式の第一楽章が始まるが、行進曲風の流麗に流れる主題であり、直ぐにフルートやオーボエのソロや合奏が続き、さらに木管合奏の美しい音形が見事な橋渡しとなって第二主題が始まり、木管がここでも絶妙な応答を見せてオーケストラによる主題提示部が結ばれていた。
       やがて独奏ピアノが第一主題を美しく提示していくが、プレスラーのピアノは木目が細かく軽やかに聞こえ、譜面を前にして実に丁寧にピアノの音を響かせていた。続く第二主題もピアノが提示していくが、オーボエやフルートとピアノの対話が実に美しく、これが競うように繰り返し繰り返し現れて盛り上がりを見せて、提示部を形づくっていた。



     展開部ではピアノがさざ波のようにアルペッジョを奏でてピアノが中心になって展開を重ね、ピアノで新しいモチーブが美しく提示されてひとしきりピアノが活躍してから、再現部へと突入していた。この展開部における幻想的なピアノの響きは、オーケストラとも重なってプレスラーのアンサンブル・ピアニストとしての感性が滲み出ていたように感じた。カデンツアは譜面通りのモーツアルトのものがサラリと弾かれていたが、プレスラーはここでも細部のニュアンスを大切にする素晴らしいモーツアルト弾きというイメージを確認することが出来た。



              第二楽章のアンダンテでは、わずか5小節の序奏風の短い第一主題がオーケストラで提示され、フェルマータの後に続いて突然に、オーボエに続いてフルート、そしてファゴットが競うように主題を歌い出し、この曲独自の幻想的な雰囲気を醸し出す。これが変奏曲の主題提示の部分であり、この楽章は、続く3つの変奏曲とカデンツアの後の結びの前に、冒頭主題が5回現れる自由な変奏曲のような面白い形式であった。

           第一変奏はプレスラーの独奏ピアノによる小刻みな遅めの変奏で、ピアノが終始リードしてお得意のリズミカルなパッセージを繰り返しながら後半はピアノと木管とオーケストラの三つ巴で進行していた。第二変奏はオーボエとフルートが主題を変奏してから、ピアノソロが引き継いで、それからピアノと木管が交互に対話を繰り返していた。第三変奏はオーケストラとピアノによる変奏で、ここではプレスラーのピアノがオーケストラと対話をしながら自由に駆けめぐり、幻想的な雰囲気を高めながらカデンツアへと進んで、終曲となっていた。カデンツアは譜面通りのものであったが、協奏曲のアンダンテ楽章としては、独自の風変わりな不思議な楽章であった。



              フィナーレのアレグレットは、パパゲーノのアリアを思わせる鳥の囀るような軽快な主題による変奏曲であり、オーケストラで始まり、繰り返されて変奏曲の主題提示が始めに行われた。第一変奏は、やっと出番が来た独奏ピアノが軽やかに変奏し始めて、ここはまさにプレスラーのパッセージの独壇場であった。第二変奏は旋律がフルートで始まり、ピアノは早いパッセージで追いかけ、交互に進む変奏であった。第三変奏では、オーボエとフルートの活躍が目ざましく、速いテンポのピアノとオーケストラや木管が複雑に絡み合って明るく華やかに推移していた。ここでモーツァルトが飼っていたムクドリの鳴き声を模倣しているような部分が聞こえてくるという。
           音色ががらりと変わる短調の第四変奏を経て、第五変奏は一転して行進曲調となるが、ピアノの堂々とした主題旋律が鮮やかであった。終曲はフィナーレと楽譜に書きこまれたプレストで、実に賑やかに躍動的に主題の楽想が盛り上り、ピアノも早いテンポで華やかに追従する充実したフィナーレであった。プレスラーのピアノはいつも明るく輝くように弾かれており、オーケストラや木管とのアンサンブルも自然に良く融け合っており、この曲向きのピアニストのように思われた。



         終わると素晴らしい拍手が湧き起こり、指揮者のビシュコフとプラスラーが握手を繰り返しながら拍手に答えていたが、プレスラーは2回ほど呼び出されてから着席して、ショパンのノクターンから第20番嬰ハ短調の遺作「ノクターン風のレント」を弾き出した。この曲は、映画の主題曲にもなった取り分け美しい曲であるが、プレスラーのしみじみしたピアノの響きに、客席も満足したように見えていた。
            この協奏曲は、モーツァルトの弟子であるバーバラ・ブロイヤー嬢のために、第14番K.449とともに、書かれており、一連のシリーズの協奏曲とは少し感性が異なる幻想的な雰囲気を持っているような気がするが、プレスラーというアンサンブルの得意なピアニストには、聞いていてとても似合っている曲のような感じがした。

(以上)(2015/08/17)



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