(最新のクラシカ・ジャパンより;カール・ベームの三大交響曲、K.543、K550&K.551)
15-7-1、カール・ベーム指揮ウイーン交響楽団による交響曲第39番変ホ長調K.543、1969年4月、スタジオ録音、およびウイーンフイルによる交響曲第40番ト短調K.550、&交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」、
1973年6月、ウイーン楽友協会ホール、

−1894年生まれのベームが75歳および79歳の頃に残した二種類の映像であり、第39番は映像記録を残す目的で行われたウイーン交響楽団とのスタジオ映像であり、第40・41番は楽友協会ホールにおけるウイーンフイルとのライブ映像であった。いずれも古さを感じさせる映像であったが、今回、HVリマスターによる映像となって新たに甦った。三曲とも、指摘した以外は全ての繰り返しを省略し、ゆったりとした遅めのテンポで、6本のコントラバスを擁したフルオーケストラによるオーソドックスな暖かみに溢れた演奏であり、当時のウイーンの伝統的な演奏スタイルを物語る映像であろうと思われる−

(最新のクラシカ・ジャパンより;カール・ベームの三大交響曲、K.543、K550&K.551)
15-7-1、カール・ベーム指揮ウイーン交響楽団による交響曲第39番変ホ長調K.543、1969年4月、スタジオ録音、およびウイーンフイルによる交響曲第40番ト短調K.550、&交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」、
1973年6月、ウイーン楽友協会ホール、
(2015/05/11、クラシカ・ジャパンの放送をHD1に収録、)

      7月分の紹介ソフトの交響曲部門では、先に述べたようにカール・ベームの三大交響曲の紹介済みのファイル(3-2-1)および(3-3-1)が紛失したことに気がついたところに、6月号の15-6-3)で紹介した通り、クラシカ・ジャパンの放送でベームの三大交響曲のHVリマスター版の映像が初めて放送された。そのため、今の時点で、ベームの演奏を改めてもう一度見直し再度、確かめてご報告しようと考えた。これにより、交響曲第39番の全25種類の映像のアップロードが揃って、総括を行うことが出来ることとなった。

      カール・ベームの三大交響曲は、第39番が1969年4月14〜17日にウイーン交響楽団とスタジオ録音された最も古い映像であった。また、第40番と第41番は、1973年6月4〜16日にウイーンフイルと楽友協会ホール(ムジーク・フェライン・ザール)でライブ収録されたものであり、1894年生まれのベームが75歳および79歳の頃の映像であった。これらの映像は、映像としては最初期のものであり、第39番は映像記録を残す目的で行われたスタジオ映像であり、第40・41番のライブ映像は画面全体が非常に暗く、最初期を物語る不鮮明な画像であった。しかし、これらの初期の映像は数が少ないので、いずれも貴重な存在として評価されてきた。今回、HVリマスター版として収録してあるので、これらを改めて見直して、どう評価されるか、個人的には非常に楽しみにしている。私は、音声はノイズが減った程度であるが、画面は横長で非常に見やすくなり、画面の暗さも多少は改善されて、他の新しい映像と余り変わりなくなったように思う。



     ベームの交響曲第39番変ホ長調K.543の映像は、いきなり序奏で始まるが、写真を見てお分かりのとおり、ウイーン交響楽団の面々は、扇形の階段状のスタジオに配置されていた。ベームは、扇の要の位置に直立して指揮をしており、最上段中央の6台のコントラバスが、この交響楽団の大規模な姿を示していた。序奏では最上段にいるドン・ドーンと響くテインパニーとフルートが活躍しており、重々しくゆったりとしたテンポで、荘重に進行していた。25小節にも及ぶこの長大な序奏部は、一貫して確然とした付点リズムが支配しており、力が漲った伝統的なスタイルで演奏されていた。映像の古さのせいか、残念ながら音量を上げると音声に固さがあり、その分だけ雄大な響きが失われるように思われたが、この時代のカラー映像は貴重であり、ベームを含めて楽団員全員が散髪直後のキチンとした姿を見せており微笑ましく思われた。



      続いて暖かい弦の合奏で歌うような第一主題が現れてベームらしく胸を張って軽快に進んでから、あの「英雄」を思わせる力強いエピソードが現れるが、この楽想はまさにこの曲の神髄であり、序奏部の響きにも通ずるように聞こえていた。続いて第二主題が優雅に現れるが、響きの良いピッチカートの伴奏に支えられてヴァイオリンと木管が優美な対話を続けており、この自然な動きがベームらしさを感じさせていた。しかし、経過部の楽想がいつの間にか展開部に移行しており、この楽想が激しく繰り返され高まりを見せてから、続く再現部の暖かな第一主題が始まっていた。提示部の繰り返しのない伝統的な奏法の展開部の自然な流れがここにあり、颯爽とした「英雄」を思わせる響きも再現しており、第二主題もスムーズに流れて、ベームらしい折り目正しい確かな演奏で、この第一楽章が快く終了していた。この映像では、各楽章で画面が切れて、ライブと違う古さを改めて感じさせていた。



       第二楽章では、アンダンテのゆっくりした楽章であり弦楽合奏の美しいメロデイでゆったりと始まる。曲は二部分型式で三つの主題から構成されており、譜面を見ると提示部の前段に弦楽合奏の繰り返しが二つもあり、これが第一の主題を形成していたが、ベームは最初の繰り返しは丁寧に演奏していたが、続く二つ目の繰り返しは省略しており、そのまま木管の合奏に導かれて弦4部が第二の主題を、力強く波を打つように提示していた。ここでは管と低弦との見事な対話がひとしきり繰り返されて頂点に達してから、ファゴット、クラリネット、フルートが互いに重なり合って第三の主題を提示して、前半の第一部を形成していた。続いて第二部では、第一の主題が第一部同様に弦楽合奏で始まるが、直ぐに管楽器の合奏が加わり、次第に弦楽器群と管楽器群が交互に波を打つように進行し始めた。第二の主題も変形されて弦楽器群と管楽器群が波を打つように力強く進行し、素晴らしい高まりを見せていた。そして終わりに第三の主題が管楽器群により互いに重なるように現れて素晴らしい合奏を行ってから、最後に第一の主題に戻って静かに歌われてこの楽章は終息していた。ベームは、全身でこの美しい楽章をこなしていたが、モーツァルトのエモーショナルな部分が弦と管の見事なアンサンブルにより現されており、心に滲みる素晴らしいアンダンテ楽章であった。



       続くメヌエット楽章では、ベームは歯切れの良いテンポで堂々と厚みのある壮大なメヌエットを響かせており、これがメヌエットの傑作の一つと考えても良かろう。このメヌエット部分の壮麗さと対照的にトリオでは二つのクラリネットの美しいデユオにフルートが加わって素晴らしい響きを聴かせていた。この管楽セレナードを思わせる美しいトリオは、ウイーンのモーツァルトを語る伝統的な優美さを偲ばせるものであり、さすがベームの演奏と感じさせるものがあった。



        フィナーレはアレグロの早い出だしの第一主題で軽快に始まり、ベームはフルオーケストラで明るく躍動するように進行させていた。ベームは、この速い動きを全身で勢いよくオーケストラを動かせており、続いてこの始めの主題から派生した第二主題を、同じテンポで軽快に進め、フルートとファゴットの美しい対話を経て盛り上がりを見せ、明るく提示部を終了していた。展開部では第一楽章と同様に、冒頭主題の旋律を何回も繰り返して展開していたが、高弦と低弦とが追いかけ合い鋭く対立しながら波を打つように力強く進行していた。再現部でもベームは、冒頭の躍動するように進むテンポで軽快に型どおり進めており、疾走するアレグロは第一楽章のアレグロにも似て変わらずに、フルオーケストラで一気に駆け抜けるようにこの楽章を終了させていた。

        全楽章を通して聴いてベームの演奏は、非常に後味が良い爽やかな演奏であり、テンポ感が良く、堂々とした正面から取り組んだ大きなゆったりした演奏で、落ち着いたしっかりした譜面通りの演奏をしており、これがウイーンのモーツァルトの伝統的な豊かな響きであり、正統的な演奏であるとしみじみ感じさせていた。欲を言えば、画像はHV規格に生まれ変わって、カメラワークが単調であるものの画質は改善されていたが、音声が音量を上げると固めの古さを感じさせるものであり、やむを得ないものと思わせていた。このタイプのスタジオ映像は、交響曲ハ長調(第34番)K.338が同時に収録されていたので、いずれ機会があればご報告できるものと思われる。



      映像の第二曲は、交響曲第40番ト短調K.550であり、画面ではウイーン楽友協会ホールの正面の豪華なパイプオルガンが写されており、観衆の拍手とともに指揮者ベームが登場する所から始まっていた。この交響曲の第一楽章はソナタ形式であるが、冒頭のヴィオラの伴奏型に乗ってモルト・アレグロのさざ波を打つような弦楽合奏で第一主題が始まるが、ベームは実にゆったりとしたテンポをとり、弦楽器の各声部が滑らかに良く揃ってとても美しく、ウイーンフイルの美しい厚みのある弦楽合奏を聴かせていた。主題は軽快に進行してやがて第二主題に入って管楽器が活躍をし始めていたが、ここでよく見るとフルート1、オーボエ2、ファゴット2の布陣であり、ベームは珍しく最初の版を使っていることが分かった。また、コントラバスは6本のフルオーケストラであり、ここでも落ち着いた遅めのテンポは終始変わらず、堂々と穏やかに進行して盛り上がりを見せて提示部を終了していた。ここでベームは、予想と異なって提示部の繰り返しを行っており、再び冒頭から開始していたが、終始、遅めのテンポは変わらずに、実に暖かみのある弦楽合奏が続いており、これがベーム流の解釈によるものと思われた。改めて最近のピリオド奏法とは、テンポといい合奏の穏やかさといい、かなり異なっているという印象が強かった。



          展開部ではベームは、冒頭の導入主題を幾分速目のテンポで繰り返しており、続いてフルオーケスオラによるうねるような対位法的な展開が複雑に続けられ、次第に力を増しながら変化のある展開部を終えていた。再現部に入ると、ベームは再び、二つの美しい主題を美しく順を追って提示していたが、ここでも遅めのテンポで実に暖かみのある弦楽合奏が続いていた。ひたすらに穏やかな弦楽合奏が続くべームらしい暖かみのある演奏であった。



       第二楽章では、軽やかな美しい弦楽合奏のアンダンテの第一主題がホルンの伴奏で始まってゆったりと進行していたが、途中から現れる32分音符の休止を挟んだ3度動機のフレーズが実に美しい。このフレーズが小刻みに、弦から管へ、管から弦へ、上昇したり下降したり、うねるように繰り返されていた。やがて、第二主題に入って美しい弦楽合奏が開始されても、この特徴あるフレーズが余韻のように響いており、特に管と弦との応答が実に印象的で、アンサンブルの良い管と弦の音色の美しさが魅力的であった。



      展開部でもこのフレーズが主題となり、力強く弦から管へ、管から弦へと移行して、主として下降のパターンで何回も展開されていた。再現部に入って、第一主題・第二主題と続いていたが、弦と管のフレーズの動きが提示部より拡大されて、アンサンブルの美しさが冴えており、さらに弦楽合奏の中でフルート、クラリネット、ファゴットが新しい半音階的動機を登場させて歌い出す場面もあって、ベームらしく穏やかに進められていた。むかし馴染んだ演奏をこうして改めて聴いているのであるが、綿々とこの特徴あるフレーズの展開が続けられるこの楽章の独特の装飾効果と繊細なアンサンブルの良さには、改めて驚かせられた。



        第三楽章のメヌエットでは、ベームはここでも落ち着いたテンポで、軽快なアレグレットの弦楽合奏のメヌエットを快く響かせており、しっかりと三拍子を刻んで軽快に歯切れ良く進んでいた。トリオでは、ほぼ同じテンポで弦楽合奏で始まり、木管の四重奏がこれに応えて美しさを強めていたが、繰り返しの後は木管の四重唱の後に二つのホルンが響きだし、後半では力強い見事な管楽四重奏が続いていた。これがウイーンフイル独自のホルンかと改めて気づかせていた。ベームは、トリオの後のメヌエットに帰っても、ぶ厚い音でリズムを刻んでいたが、ここでも弦楽器と管楽器のアンサンブルの対照の妙が印象的な楽章であった。



      フィナーレはアレグロ・アッサイであり、ベームは第一楽章とほぼ同様な落ち着いたテンポで第一主題を進めていたが、このようにゆったりとしたテンポで軽やかに安定して流れるフルオーケストラは実に心地よい。流れるような見事な弦楽合奏が続いてから、やがてなだらかなヴァイオリン三部の第二主題が歌うように進行するが、ここで木管が明るく歌い出してから次第に盛り上がりを見せて提示部を締めくくっていた。展開部では冒頭の主題の動機が落ち着いたテンポで、弦でも管でも交替しながら執拗に繰り返されており、管と弦のアンサンブルが良く、しっかりしたホルンのファンファーレも聴かれてゆったりと進行していた。再現部でもこの安定したテンポが続き、第一主題・第二主題と流れるようにスムーズに進行して、後半は一気苛性に盛り上がりを見せて終了していた。ライブなので、大変な拍手が楽友協会ホールを満たしていたが、この場にはベームのこの曲に対する暖かい思いのようなものが残されており、響きの良いライブ演奏の居心地の良さを感ずることができた。

       久しぶりでややゆったりした遅めのテンポで流れるように進行する第40番ト短調の交響曲を聴き、落ち着いた爽やかな気分をしみじみと味わっていた。ライブの本格的な公演で大きな拍手で迎えられて指揮をするベームのお元気そうな姿を見て、これが老ベームが79歳になって到達したウイーンの伝統的な奏法におけるご自身の総仕上げの演奏であろうと考えていた。そういえば、これまでいろいろな映像で確認してきたのであるが、カラヤンも、クレンペラーも、バーンスタインも、ショルテイも、老境になると、みなこのような落ち着いたテンポで穏やかに歌わせる指揮振りに到達していたような気持ちを思い起こさせていた。



       続いて交響曲第41番ハ長調「ジュピター」の映像では、拍手に迎えられてベームが登場し、指揮台に上がっていたが、拍手が鳴り止まず、コンサート・マスターが起立すると全員が起ち上がり、ここで改めて礼をかわしてから、フルオーケストラによる堂々たる三つの和音で第一楽章の第一主題が開始されていた。オーケストラの配置は第40番とほぼ同じで、右手奥に6台のコントラバスを並べ中央にテインパニーと管楽器を置く大規模な演奏スタイルであった。重厚な第一主題が落ち着いたテンポで、しっかりとリズムをきざむように堂々と主題が進行してから、フルートとオーボエが二重奏で主題を変形しながら軽快に繰り返され、躍動するように進行してリズミックな堂々たる経過部が続いていた。そして第一ヴァイオリンによる優雅な第二主題が提示されて趣を変えながら進行していたが、休止の後に、突然、フォルテの大音響とともにファンファーレのような大爆発が起こって素晴らしい盛り上がりを見せて、堂々たる「ジュピター」らしさで進行していた。そして軽快なピッチカートに導かれてブッフォ風の軽やかな副主題が流れ出し、最後をまとめるように収めて提示部を明るく終息していた。この提示部ではリズム感の良い厚いオーケストラが、このホール特有のピラミッド型の響きを聴かせながら、堂々たるオーソドックスなスタイルで壮大な威厳に満ちた演奏がなされていたが、これがウイーン流の伝統的な奏法であると感じさせていた。



     展開部では、前半が先の軽快な副主題が様々な形で展開され、後半では冒頭の主題が弦と木管とが交互に主題を変形しながら展開されていたが、ベームはここでも落ち着いたテンポで、分厚い音の響きが繰り返し現れていた。再現部ではほぼ型通りに第一主題・第二主題と再現されていたが、一呼吸をおいた小休止の後の大爆発では、提示部よりも一段と激しく明快に再現されており、後半が盛り上がる「ジュピター」らしさを発揮させていた。ベームは、余り表情を変えず、終始一貫して冷静に、正面から堂々と取り組む姿勢を示しており、オーソドックスなしっかりした進め方や良く旋律を歌わせる指揮振りなどが目立ち、各声部のアンサンブルの良さはとても印象的で、実に優雅で落ち着きのある立派な第一楽章が仕上がっていた。



    第二楽章は弦楽器だけで始まる第一主題が静かに提示され、厳かな感じで淡々と進むアンダンテ・カンタービレであるが、ベームは弦の流れを実にゆったりと促すように進めており、悠然とうねるようにゆっくりと進行していた。続いて木管群が歌い出す副主題では弦楽器と対話するように明るく音を響かせており、続く第二主題も明るく弦がこだましてうねるように進行していた。ここで木管も負けじとこれに参加し、フルートもファゴットも存在感を示すように歌って盛大に提示部を終えていた。
続いて展開部では、第一主題の後半の副主題が展開の対象となり、弦と管がこだまするように繰り返し展開されていた。再現部では第一主題の冒頭が第一ヴァイオリンで呈示されていたが、提示部と趣を変えて次第に低弦が32分音符のうねるような流れを示し、これが第一ヴァイオリンに移行してから、第一・第二ヴァイオリンが、続いてヴィオラと低弦に渡されて、交互にうねるように変奏されていた。続く第二主題も第一ヴァイオリンから木管も加わって、提示部と異なる力強い変奏を見せていたが、ベームはこの再現部の弦の豊麗な32分音符の流れや、フルート・オーボエなどとの対話の部分などを明快に示しながら流れるように悠然と指揮をして、この楽章の深さを心地よく示していた。



    続く第三楽章では、実に壮大な響きを持ったメヌエットであるが、ベームはここでもゆったりしたテンポでメヌエット主題をリズミックに進め、木管が一頻り歌い出しホルンやトランペットも勢いよく鳴り響いて、壮麗なメヌエットの世界が繰り広げられていた。トリオでも落ち着いたテンポで、フルートの出だしのあとにオーボエと弦が合奏する場面が繰り返され、そのあとに第一ヴァイオリンと木管や金管全体が和音を合奏していた。そして再びリズミックなメヌエット主題に戻っていたが、ベームは、ゆっくりしたテンポで厚みのあるフルオーケストラで、この壮大なメヌエット楽章を堂々と仕上げていた。



    フィナーレはド・レ・ファ・ミの四つの音から作られるモルト・アレグロの堂々たるフーガ主題に始まり、この主題を追って威勢の良い主題が軽快に提示され繰り返されていき、次第に勢いよく壮大に高められて、大きなドラマを築き上げるように演奏されていた。ベームはこのフィナーレを、両手を広げて、幾分、速めのテンポでリズムを取りながら、オーケストラを盛り上げるように力を込めて指揮をしていた。オーケストラの方もこれに応えるように颯爽として堂々たる勢いのある響きを見せて、提示部を終えていた。展開部では冒頭主題によるフーガ的展開が、繰り返し繰り返し丁寧に行われその都度壮大さを増していた。再現部に入っても、この壮大なフィナーレ主題が展開部の続きのように対位法による展開がなされ、自由な再現部となって劇的に進行していた。最後のコーダでは、ベームは身構えるように姿勢を正して指揮をしており、そのせいかオーケストラ全体が多声的対位法によるフーガ的な展開により力強く盛り上がりを見せて、高揚しながら高らかに終結していた。ベームは大きな拍手に応えて、穏やかな表情で拍手に答えていたが、実に力のこもった壮大なフィナーレを持った「ジュピター」交響曲が描かれていた。ベームの同志とも言えるウイーンフイルを自由に操れる積年の付き合いが滲み出てくるような指揮者と一体になった演奏ぶりが会場を沸かせていた。

     ベームは、この曲では指摘した以外の一切の繰り返しを全て省略し、実に穏やかなテンポで入念に演奏しており、第二楽章、メヌエット楽章でも落ち着いてしっかりと進めており、最後のフィナーレにおいても、終始一貫して正面から堂々と取り組む姿勢を見せ、最後に見事な盛り上がりを見せて壮麗な世界を築き上げていた。このような演奏ぶりは、普段からのたゆまぬ厳しいウイーンフイルとの付き合いから生じたものであり、特にベームの信条とも言えるオーソドックスな伝統的な進め方や、各声部のアンサンブルの良さ、良く旋律を歌わせる指揮振りなどによるものと思われる。このようなどっしりした伝統的な演奏は、今ではこの残された映像やCDなどでしか聴けなくなったが、このHVリマスターによる映像は、新しい映像と見間違うほど鮮明さが残されており、今では貴重な遺産として永遠に残されるものと思われる。

         なお、このベームの三大交響曲の映像は、クラシカ・ジャパンのクラシック大全という特集により、各分野における名作10傑を3種類の映像で比較考察しようという試みから収録されている。交響曲の分野では、10人の作曲家の作品が選ばれ、モーツァルトについては三大交響曲が選定されて、カール・ベームのHVリマスター映像、サイモン・ラトルとベルリンフイルの映像、アーノンクールの新録の3種類の映像が、4月、5月に放送された。また、オペラ部門では、10大オペラとして、モーツァルトの「フィガロの結婚」が選ばれて、ベーム・ポネルの映像(1976)、アーノンクールのザルツ音楽祭の映像(2006)、およびアーノンクールの演奏会形式の新映像(2014)の3種類が選ばれていた。

(以上)(2015/07/06)<BR>


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