(古いVHSテープから;堀正文さんの勇退の追想演奏記録;二つのコンチェルト)
15-6-2、ソリスト堀正文による二つのヴァイオリン協奏曲イ長調K.219「トルコ風」、 (1)フロール指揮NHK交響楽団、1993年、(2)シモーネ・ヤング指揮
NHK交響楽団1997年5月、

−このN響の演奏はソリストに堀正文ソロ・コンサートマスターを迎え、珍しく客演指揮者にシモーネ・ヤング女流指揮者による演奏であったが、独奏ヴァイオリンが美しい安定した音色であり、オーケストラも弾むような軽快感に満ちていて、安心して音楽に浸れる演奏であった。欲を言えば、やや教科書的過ぎて何となく面白味に欠けるように感じたが、女性指揮者の動きが良く、これを充分にカバーしていたように思う−

(古いVHSテープから;堀正文さんの勇退の追想演奏記録;二つのコンチェルト)
15-6-2、ソリスト堀正文による二つのヴァイオリン協奏曲イ長調K.219「トルコ風」、 (1)フロール指揮NHK交響楽団、1993年、(2)シモーネ・ヤング指揮
NHK交響楽団1997年5月、
(1993/0306、NHKBS放送をS-VHSテープ(97.02)に収録、および1999/05/29、NHKBS103の放送をS-VHSテープ(234.2)に収録)

        6月号の協奏曲部門では、先日のBS放送で長くN響のコンマスを務めていた堀正文さんの勇退が伝えられたので、ヴァイオリン協奏曲でまだアップしていないN響との演奏を取り上げてみたいと考えた。彼の演奏を調べていくと、プレヴィン指揮の第3番K.216が既にアップ済み(13-5-1)であり、第5番K.219において93年フロール指揮のものと97年シモーネ・ヤング指揮の二組の演奏が記録されていた。
        初めに堀さんの勇退を伝えたNHKのN響定期第1803回定期のクラシック音楽館は、2015年5月10日放送のものであったが、この日はN響定期を振ることになったパーヴォ・ヤルヴィのコンサートであり、庄司沙也香との協演でシベリウスのヴァイオリン協奏曲とショスタコーヴィッチの交響曲第5番の2曲が演奏されていた。この番組が終わって、ヤルヴィの来日インタビューが終わってから、突然に、今年2月にNHK交響楽団のソロ・コンサートマスターを退団した堀正文さんの「退団インタビュー」が行われていた。この番組は録画してあったが、この番組が予定されていたことを知らなかったので驚いた。



         堀正文さん(1949〜)は、高岡市出身で京都市立芸術大学を中退してフライブルク音楽大学に留学して研鑽を積み、ダルムシュタット国立歌劇場管弦楽団のコンサート・マスターとして6年間活躍し、79年に帰国してNHK交響楽団のソロ・コンサート・マスターとして活躍してきた。2月14日楽屋で行われたインタビューによると、36年間N響一筋で活躍し、感想としてあっという間の出来事であり、常に緊張感と責任感を持って過ごしてきたという。手帳の記録を見ると、毎年同じようなことの繰り返しであったが、内容は全て異なっており、充実したものであったという。心に残った指揮者はとの問いに、ギュンター・ヴァント(1912〜2002)の名を挙げられ、とてもこだわりの強いピュアーの人柄で、それが音楽に強く現れていたという。また、サヴァリッシュさんの名を挙げられ、ソリストとして宿題も与えられ、自らピアノ伴奏で指導して下さったと語っていた。忘れられない言葉として「昨日より良く弾く必要はないよ」と言ってくれたことを挙げ、その時に演奏したリヒアルト・シュトラウスのヴァイオリン協奏曲の軽快な第三楽章の演奏でこの番組が結ばれていた。その時の演奏と若いサヴァリッシュさんの写真とをアップした。



        堀正文さんをソリストに迎えた未アップのヴァイオリン協奏曲は、第5番イ長調(1)フロール指揮NHK交響楽団、1993年と(2)シモーネ・ヤング指揮NHK交響楽団1997年5月の2種類があり、ヤング指揮のものが新しく状態が良かったので、この映像を中心に紹介することにした。この番組は、1997年10月4日放送のN響アワーであり、テーマは「話題の女性指揮者初登場」というもの。檀ふみさんと池辺さんの漫才のような対談で、R.シュトラウスの交響詩「テイル」と堀正文さんのヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219「トルコ風」を取り上げた番組であった。





        この演奏をよく見ると、コントラバスが右奥に三台いる中規模なオーケストラであり、コンサート・マスターの山口さんとその隣に篠崎さんがおり、三人のN響のコン・マスがそろい踏みをするという珍しい演奏会になっていた。指揮者のシモーネ・ヤングさんは、ウイーンの国立歌劇場でオペラを振っており、その後N響に初登場となっていた。池辺さんによると、ウイーンフイルはこの年に女性ハーピストを初めて楽団員に登用した年であり、ヤングさんの登場は当時としては数少ない認められた女性指揮者であった。N響との相性もごく自然体で、彼女が音楽するときは、女性であるという意識は全くないと語っていたそうである。





      この編集された映像では、いきなりヴァイオリン協奏曲(第五番)イ長調「トルコ風」K.219がヤングの柔らかな指揮で、アレグロ・アペルトの指示通り堂々と第一ヴァイオリンのスタッカートで明るく始まった。曲はキビキビとしたヤングのテンポで弦楽器により進行し、続いて弱奏の第一ヴァイオリンにより第二主題が軽やかに進められて勢いよく提示部をフェルマータで終えていた。ここで堀正文の独奏ヴァイオリンがアダージョの美しいアインガングを弾きながら堂々と登場して存在感を示していた。そして再びアレグロ・アペルトに戻り、独奏ヴァイオリンが生き生きとして第一主題を軽快に弾きだした。堀のヴァイオリンは細い優しそうな音色であったが、このアレグロへの素速い切り替えが素晴らしい効果を上げていた。ソロによる第二主題の提示も甘く軽やかで続くオーボエとの重奏が美しく、協奏曲らしくヴァイオリンとオーケストラがどんどんと重なり合い、軽快に発展をしてコーダの音形により提示部を終えていた。独奏ヴァイオリンだけが目立つ展開部を経て再現部に突入していたが、堀の最後のカデンツアは聞き覚えのある長い技巧的なものを弾いていた。





        続いて第二楽章の甘い第一主題がヤングの手によりオーケストラでゆっくりと開始され、直ぐに細やかな第二主題も提示されひとしきり演奏されてから、独奏ヴァイオリンがおもむろに第一主題を弾き始めた。堀のヴァイオリンは早くも変奏を加えながら弾いており、歌うような第二主題も独奏ヴァイオリンのペースでどんどん進行するが、この楽章では波に揺らぐ木の葉のような32分音符の音形が独奏ヴァイオリンにもオーケストラにも現れて、この楽章の独自な世界をきめ細かく築き上げていた。独奏ヴァイオリンの変奏により展開部も飾られて、再現部も第一主題・第二主題とも変奏されながら美しく進行しており、ソリストの思いが伝わってくるような演奏であった。この楽章のカデンツアもヴァイオリンの甘い音色を際立たせるオリジナルな短いものであった。




        ロンドーとフランス語で書かれたフィナーレは、テンポ・デイ・メヌエットと指示されてメヌエットの三拍子のリズムで独奏ヴァイオリンにより明るく始まり、オーケストラが繰り返していたが、新しい明るいエピソードが次々にソリストにより提示され、A-B-A-C-A-とロンド形式で軽快に進んでいた。ところが途中から突如としてアレグロに変わりトウッテイに続いて独奏ヴァイオリンが急速なメロデイを弾き始め、繰り返されて曲調が一転してから、今度はトルコ風のリズムを持った活発なスタッカートの主題が現れ、繰り返されて行進曲のように進みだした。再びアレグロに戻ってから再度トルコ風の主題が現れて一層エキゾチックな印象を強めていた。このフィナーレはソリストのペースで進み、最後のメヌエット主題をソリストが弾いて穏やかに曲は終了したが、堀の独奏ヴァイオリンは常に主導権を取っており、きめの細かい美しい音色でソリストの務めを果たしていた。大変な拍手で迎えられ、指揮者と共に舞台に呼び戻されていたが、指揮者が女性であると華やかさが増し、なかなか良いものであると思った。





        このN響の演奏はソリストに堀正文ソロ・コンサートマスターを迎え、珍しく客演指揮者にシモーネ・ヤング女流指揮者による演奏であったが、独奏ヴァイオリンが美しい安定した音色であり、オーケストラも弾むような軽快感に満ちていて、安心して音楽に浸れる演奏であった。欲を言えば、やや教科書的過ぎて何となく面白味に欠けるように感じたが、女性指揮者の動きが良く、これを充分にカバーしていたように思う。












          なお、この演奏の3年前になるが、1993年3月6日のN響アワーにおいてクラウス・ピーター・フロール指揮、ソリスト堀正文の同じ曲を、同じNHKホールからの生中継を収録しているが、全く同じような傾向の演奏であったので、敢えて紹介を省略することにした。ただし、指揮者のフロールさんが、今では白髪であるが、当時はまだ若々しく、写真写りが良かったので、写真を数葉掲載することにした。22年前の映像であるので、皆さんが若さに溢れた様子をしている。今回、サヴァリッシュさんの写真も掲載しているが、今回の写真は、充分にお元気な姿を掲載できたと思っている。

          終わりに堀正文は、指揮者でありピアニストでもあったアンドレ・プレヴィンとその仲間たちにより、室内楽活動も行って、その一部が映像として残されており、見る機会が少ない室内楽における貴重な記録を残している。NHK交響楽団の退団を記念して、これまで収録してあった彼の映像記録をアップロードするのでご覧頂きたいと思う。


(以上)(2015/06/15)



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