(古いVHSテープから;テインマーマンの二つのヴァイオリン協奏曲K.216&219)
15-5-1、フランク・ピーター・ツインマーマンのヴァイオリンとハイテインク指揮ベルリンフイルによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216および第5番イ長調K.219「トルコ風」、
1993ヨーロッパ・コンサート、93/05/01、ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドン、および、フイルハーモニー・ホール、ベルリン、1994年制作、Euro Arts、

−二つの協奏曲を、それぞれ別途のコンサートの映像であったが続けて見て、ツインマーマンはしっかりと幅の広い実力を身につけたヴァイオリニストであると言う印象を受けた。彼がヴァイオリンを弾く姿には、落ち着きのある風格が身についており、ヴィルテイオーゾ的な端整な演奏スタイルが良く似合って、ヴァイオリンの音色を大切にした名人芸的な側面もよく見えていた−

(古いVHSテープから;テインマーマンの二つのヴァイオリン協奏曲K.216&219)
15-5-1、フランク・ピーター・ツインマーマンのヴァイオリンとハイテインク指揮ベルリンフイルによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216および第5番イ長調K.219「トルコ風」、
1993ヨーロッパ・コンサート、93/05/01、ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドン、および、フイルハーモニー・ホール、ベルリン、1994年制作、Euro Arts、
(1993/05/01、NHK103BS放送をS-VHSテープ101にライブ収録、および2000/03/18、クライシカJの放送をS-VHSテープ339に収録)

     フランク・ピーター・ツインマーマンのヴァイオリンとハイテインク指揮ベルリンフイルによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216および第5番イ長調K.219「トルコ風」は、全集版の一端かと思っていたが、それぞれが同じ指揮者による独立したベルリンフイルの定期的な公演を収録したものであり、たまたまこの二曲が、未アップ映像の数が多いので、早くアップしたいという思いと重なったことにより登場したものである。
     ツインマーマンは、戦後生まれ(1965〜)のドイツの若きソロ・ヴァイオリニストの逸材として楽壇に登場しており、最初のヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216を演奏した1993年5月のベルリンフイルのヨーロッパ・コンサートでは、ドイツを代表する28歳のヴァイオリニストとして参加していた。イギリスのロイヤル・アルバート・ホールという巨大な円形のホールでの公演であり、第一曲がチャイコフスキーの序曲「ロメオとジュリエット」、第三曲がストラヴィンスキーの「春の祭典」というプログラムであった。



     この映像は、ロンドンからの国際衛星生中継の形でNHKのBS放送として企画されており、現地時間の昼の12時は、こちらの夜の8時のゴールデンタイムのようであり、ライブ中継につきものの時間調整のためか、主催者側のチャールス皇太子の談話があったり、別にツインマーマンへのインタビューなども放送されていた。彼は自分のことをスロースターターと称して基礎から1000回以上も繰り返し練習しなければ演奏できないと語っており、モーツァルトの協奏曲は若い頃より馴染んでおり安心出来る作曲家であるが、音符の数が少ないので易しそうに聞こえるがそこが難しいと、翻訳を通じて語っていた。



      最初の曲の第三番ト長調K.216の第一楽章は、トゥッティでいきなり第一主題が開始されるが、この主題はオペラ「羊飼いの王様」K.208の第3曲アミンタのアリアの転用でお馴染みである。円形の広いホールの中央にステージがあり、オーケストラを良く見るとコントラバスが三台のしっかりした弦5部とオーボエ・ホルンのオーケストラであった。長いアリア風の第一主題をに続いて、直ぐにオーボエとホルンが導く第二主題となってオーケストラによる第一提示部が簡単に終わっていた。そこで独奏ヴァイオリンが改めて登場したように見せかけて勢いよく第一主題を弾き始める。ツインマーマンは明るく装飾音を加えながら実に丁寧に弾きだすが、短いトゥッティのオーケストラの後に、直ぐに第三の新しい美しい主題を晴れやかに弾き始めた。それから早い技巧的なパッセージが続いてさすがツインマーマンと思わせてから、オーボエの重奏で第二主題が提示されて、独奏ヴァイオリンが再び元気よく活躍しながら提示部の後半を盛り上げていた。





    展開部はまずトゥッティで始まり短調の陰りを見せながら進行してから独奏ヴァイオリンが新しい主題を出して繰り返し、トゥッティ、独奏ヴァイオリン、オーボエの順に展開されていた。そしてフェルマータの後一息ついて、再現部に突入していたが、ここではトゥッティに始まり独奏ヴァイオリンが続いて第一主題を提示した後に、第三の主題が独奏ヴァイオリンで弾かれ、続いて第二主題が型通り出て発展してからカデンツアとなっていた。ツインマーマンはオリジナルのカデンツアで、表情豊かに技巧を散りばめながら各主題の一部を回想するように仕上げていたが、見事なヴァイオリンの音色が示されていた。28歳のツインマーマンは、落ち着いて素晴らしい安定した技巧を示しながら、明るくオーケストラと対話しており、この曲の持ち味を充分に弾き出しているように思われた。





    第二楽章ではアダージョで、トゥッティで4小節の美しい主題がピッチカート伴奏で始まるが、直ぐにツインマーマンの独奏ヴァイオリンがオクターブ高く繰り返して進行し、ここでもピッチカートの伴奏で独奏ヴァイオリンがこの穏やかな美しい主題を明るく歌い、変奏を加えながら繰り返していた。この楽章ではオーボエに代わってフルートが使われており、フルートとホルンの重奏と独奏ヴァイオリンが交互に第二主題を提示して繰り返されていた。続く短い展開部では、第一主題前半のモチーブによる独奏ヴァイオリンの一人舞台であり、続けて始まる再現部は独奏ヴァイオリンが中心になって再現され、第二主題も現れてフェルマータに導かれてカデンツアとなっていた。短いカデンツアは第二主題中心のものであったが、ここでもツインマーマンは丁寧に素晴らしい技巧でカデンツアを仕上げていた。最後はコーダのあと独奏ヴァイオリンが第一主題を弾きだして終わるという変わった試みで、味わい深い終わり方であった。





     第三楽章はRONDEAUと書かれたアレグロ楽章であるが、モーツァルトはこのフランス風に記された楽章では、単なるロンド楽章ではなく、中間部にいろいろな工夫がなされていた。まずオーケストラで耳慣れたロンド主題が軽やかに提示され、続いて独奏ヴァイオリンがロンド主題を繰り返していくが、ツインマーマンはこの主題を実に軽快に進め、その後は新しい主題を独奏ヴァイオリンが提示する形でA-B-A-C-A-とロンド形式の形で進んでいた。ところがロンド主題を終えてフェルマータの後、曲は一転して短調風のアンダンテとなり、独奏ヴァイオリンが弦のピッチカートに乗って軽やかに美しい新しい歌を歌い出し繰り返された。続いて曲調はアレグレットに変わって、再び独奏ヴァイオリンが民謡調の別の歌を歌い出し、更に重音奏法の新しい主題が提示されて繰り返されていた。この新しいフランス風の気まぐれな飛び込みは、新鮮な印象を与えていたが、フェルマータの後に、再び始めのロンド主題に戻ってこの楽章は静かに終わっていた。モーツアルトが協奏曲の連作時に見せるロンド楽章のこうした思わぬ新しい変化には、何時も驚かされ楽しみを持って迎えられるが、この傾向はこの後のピアノ協奏曲のロンドフィナーレにも引き継がれているように思われた。

    このコンサートは、毎年恒例のベルリンフイルの海外遠征で、指揮者とオーケストラが主役なのであるが、このコンサートのヴァイオリン協奏曲の部分だけを見ていると、やはりソリストのツインマーマンの一人舞台に見えていた。彼がヴァイオリンを弾く姿には、落ち着きのある風格が身についており、ヴィルテイオーゾ的な端整な演奏スタイルが良く似合っていた。演奏しているときの顔の表情が実に豊かで、体を上手に使って演奏しており、ヴァイオリンの音色を大切にした名人芸的な側面もよく見え、この当時からこれからの活躍が十分に期待された逸材であることがよく理解出来た。








    続く第二曲目はヴァイオリン協奏曲第五番イ長調K.219 であるが、この映像はクラシカジャパンの「名曲特集」の中の1曲であり、この曲のみが単独で放送されていた。映像の中を見ると前曲と同じハイテインク指揮のベルリンフイルの演奏であり、映像の映された様子から、どうやらベルリンの見慣れたフイルハーモニーホールにおける定期公演の演奏のように見えた。映像の末尾に1994年制作、Euro Arts とあり、市販化された映像のようであった。





  この曲の第一楽章は、始めにトゥッティによる主和音の強奏に続いて第一ヴァイオリンがスタッカートでアレグロ・アベルトの指定のように堂々と威勢よく第一主題が開始され、第一ヴァイオリンによるスタッカートの軽快なリズムで明るく進行しており、ハイテインクの手慣れた仲間と演奏を楽しむように指揮をする姿が映し出されていた。やがて軽やかな第二主題が弱奏の第一ヴァイオリンで提示されて、これもスタッカートで実に軽快な調子で進んでから、コーダを経てオーケストラによる提示部を終え、フェルマータになった。ここで曲調は一変してアダージョになり、独奏ヴァイオリンがオペラのアリアのように美しいアインガングで登場して、一際豊かな高音の音色を独奏ヴァイオリンが示していたが、曲は再びフェルマータになってからアレグロ・アベルトに戻り、ツインマーマンが生き生きとして第一主題を弾き出していた。そして素晴らしい勢いで軽快なパッセージが続き曲はドンドン進行し、やがて軽やかな第二主題が弾むように提示され、息つく暇もないほどの勢いでヴァイオリンの走句が明るく駆けめぐっていた。このツインマーマンのヴァイオリンの細かな技巧が十分に発揮され、オーボエとの掛け合いも息が合って美しく、盛り上がりを見せながら一気に駆け抜けるように提示部を終えていた。









    展開部に入ると独奏ヴァイオリンが新しい主題を提示し、華やかなソロの技巧的な走句が繰り返され、最後に第一主題を導いてから再現部へと突入していた。再現部では独奏ヴァイオリンが第一主題を提示するが、オーケストラとお互いに主役を交替するように進行し、第二主題もソリストにより主調で再現され、独奏ヴァイオリンが走句を重ねるように素晴らしい勢いで進行しながら疾走していた。終わりのカデンツアは、この楽章で現れた主題の断片を折り込んだ技巧的なものであり、聴いたことのある版を用いていた。
    この曲のアダージョで曲調を変えて改まって登場する独奏ヴァイオリンは、協奏曲では初めての試みであり、ツインマーマンがオペラのアリアの導入部を模倣したようにして登場して、ここで独奏ヴァイオリンが際立った存在感を示す技法を取り入れていた。



     第二楽章はアダージョのとても美しい楽章であり短いソナタ形式であるが、しっかりした構成で書かれていた。始めに甘い第一主題が第一ヴァイオリンによってゆっくりと始まり、直ぐに続けて細やかな揺らぎを持った第二主題が提示されひとしきり進行していたが、ここの32分音符の音形が木葉のように揺れ動いて印象的であった。この提示部が示されてから、独奏ヴァイオリンが第一主題を改めて繰り返すように提示していくが、ツインマーマンは、独奏ヴァイオリン向きに変奏しながらソロ主体で進行し、続く美しい第二主題も歌うように変奏しながらドンドンと進行し、後半には独奏ヴァイオリンが新しい軽やかな美しいエピソードを提示して充実した提示部となっていた。
  展開部では冒頭の主題を中心に独奏ヴァイオリンがリードしながらオーケストラを相手に変化を見せて再現部へと移行していた。ツインマーマンは、この楽章でも独奏ヴァイオリンを自在に弾き進み豊麗な音色を際立たせていたが、終わりの短いカデンツアでも存在感のある技巧の冴えを見せて堂々とこの楽章を収束させていた。



     第三楽章はロンドーとフランス語で書かれており、この曲では最初にテンポ・デイ・メヌエットと書かれてイ長調のメヌエットのロンド主題からなるA-B-A-C-Aの部分と、中間部にアレグロと書かれたイ短調のD-E-F-D-E-Fの「トルコ風」の名の由来の部分からなり、最後に再びテンポ・デイ・メヌエットのA-B'-A'で終わる大型のロンドになっていたが、これも他の連作にはない新しい特徴を持っていた。
   ツインマーマンの独奏ヴァイオリンにより三拍子のメヌエットが勢いよく始まると、これをトゥッティが受けて繰り返されてから、独奏ヴァイオリンが新しい主題を提示してトゥッティが繰り返すというロンド形式で軽快に進んでいた。そして冒頭のメヌエット主題が三度現れてから、突然、曲調が一転してアレグロになり、ツインマーマンが急速なソロの走句を弾き始め繰り返しているうちに第一ヴァイオリンを中心とするトゥッティで「トルコ風」のリズムを持った活発な主題をもたらし、さらにクレッシェンドして賑やかな半音階風の主題が流れ、「トルコ風」の異様さを強めていた。再度、トルコ風のメロデイが繰り返されてこの印象を深めてから、独奏ヴァイオリンが冒頭のメヌエット主題を弾き出して、曲は穏やかに終息していたが、この楽章は連作の中で、それぞれの特徴を表すためにいろいろな工夫が加えられた曲であると思った。

     曲が堂々と明るく終わり、ツインマーマンとベルリンフイルは大変な拍手で迎えられていたが、映像は指揮者とソリストの退場で終わりとなっており、やや味気ない終わり方になっていた。二つの協奏曲を、それぞれ別途のコンサートであったが続けて映像を見て、ツインマーマンはドイツで研鑽を重ねたヴァイオリニストであるが、モーツァルト演奏はグルュミオーを理想とし、ミルシュタインにも教えを受けたというドイツ以外の幅広い師に教えを乞い、しっかりと幅の広い実力を身につけたヴァイオリニストであると言う印象を受けた。彼の笑顔や体全体に漲る自信に満ちた堂々とした姿などが絵になっており、これからの期待が大きいドイツを代表する演奏家という姿が印象に残った。


(以上)(2015/05/10)



目次5にもどる 目次4にもどる
目次3にもどる 目次2にもどる
目次1にもどる 私の新ホームページへ


名称未設定