(古いS-VHSから;カヴァコスの弾き振りの協奏曲と交響曲)
15-3-1、レオニダス・カヴァコスの弾き振りのヴァイオリン協奏曲第2番K.211およびアレクザンダー・ヤニチェック指揮の交響曲第28番ハ長調K.200(189k)、
カメラータ・アカデミカ・ザルツブルグ、グロッサーザール、1999年制作、クラシカ・ジャパン、

−オーケストラと一体になって弾くソリスト・カヴァコスは、大柄にも似ずに生真面目そのものの様子で、ソリストぶらずにアンサンブルを大切にして丁寧に弾いており、好感が持てた。一方のコンサート・マスターのヤニチェックが指揮するシンフォニーも、カメラータ・アカデミカの得意芸であり、トリルとスタッカートが疾走する軽快なアレグロの両端楽章を楽しげに弾きこなしており、安心してこの流れに浸ることが出来た。両曲とも、初期のザルツブルグ・スタイルを反映した好ましい演奏で楽しかった−


(古いS-VHSから;カヴァコスの弾き振りの協奏曲と交響曲)
15-3-1、レオニダス・カヴァコスの弾き振りのヴァイオリン協奏曲第2番K.211およびアレクザンダー・ヤニチェック指揮の交響曲第28番ハ長調K.200(189k)、
カメラータ・アカデミカ・ザルツブルグ、グロッサーザール、1999年制作、クラシカ・ジャパン、
(2000/10/01、クラシカのCS放送をS-VHSテープ352に収録)

    3月号のソフト紹介では、交響曲部門では、かねて交響曲28番K.200の山崩しのため早くアップしたいと考えていたカヴァコスの弾き振りの協奏曲と交響曲を紹介しようと思っていた。しかし、実際にS-VHSテープを見てみると、演奏は記憶通りカメラータ・アカデミカ・ザルツブルグのモーツァルト週間1999年の演奏であった。しかし、ヴァイオリン協奏曲第2番ニ長調K.211の方はカヴァコスの弾き振りであったが、引き続き演奏された交響曲の方は、何とカヴァコスの指揮ではなく、コンサート・マスターのヤニチェックがマスター席に座ってオーケストラ全体の指揮をしていた。ヤニチェックは、セレナードとかデイヴェルテイメントの弾き振りをすることがあったが、カヴァスコもそうしているので、記憶違いが具体的に出てきたものである。彼らのザルツブルグ時代のモーツァルトの演奏は確かなものなので、期待して聞きたいと考えていた。



  カヴァコスのヴァイオリン協奏曲の演奏は、第一番変ロ長調K.207(7-2-3)および第5番イ長調K.219(3-6-2) などがアップ済みであり、今回の第2番は第一番と同じモーツァルト週間1999における演奏であった。いずれもオーケストラは、カメラータ・アカデミカであり、影像を見ていると、彼は指揮をしながら新全集の譜面にあるとおりオーケストラの部分も初めから弾いており、このオーケストラとは良く馴染んで一体となってアンサンブルを充実させるように演奏しているように見受けられた。この第2番の協奏曲は、1774年の暮れにミュンヘンでオペラ「偽りの女庭師」K.196を完成させており、その翌年にザルツブルグに戻ってからコンサート・マスターの自分かブルネッテイのために書かれた4曲のヴァイオリン協奏曲の最初の曲である。特にこの旅行の成果とも言えるフランス風のギャラントな様式を積極的に取り入れた作品であると見なされている。



  この曲の第一楽章は、協奏的ソナタ形式であり、指揮者とソリストのカヴァコスとコンサート・マスターのヤニチェックが拍手とともに一緒に登場して、それぞれの場所に着き、二人が顔を見合わせてからカヴァコスがヴァイオリンを弾き出して、全員がトウッテイで軽快に第一主題が始まった。強弱の対比が明確な主題がアレグロ・モデラートでゆっくりと展開され、直ぐに続いて静かな第二主題もトウッテイで提示され、しばし発展が続いて短い第一提示部を終えていた。そこでカヴァコスの独奏ヴァイオリンが高らかに第一主題を提示していたが、それはオーケストラよりも一オクターブ高く始まって、オーケストラと対話するように進んでいた。そしてカヴァコスは続いて第三の主題を颯爽と提示していたが、後半では独奏ヴァイオリンによる三連音符が繰り返される技巧的な走句が提示されていた。つづいて、オーケストラの伴奏でユニークな第二主題を提示されると、独奏ヴァイオリンは高い音でヴィルテイオーゾ的な輝きを随処で示しながら進行し、オーケストラによって主題提示部が力強く終了していた。


短い展開部でも独奏ヴァイオリンが支配的に駆けめぐり、後半ではオーケストラが締めくくって、独奏ヴァイオリンにより再現部に突入していた。ここでは独奏ヴァイオリンを中心に第一主題に続いて第三の主題そして第二主題と型通りに進行していた。カヴァコスのこの楽章のカデンツアは、各主題の一部を取り上げてアレンジしたオリジナルな技巧的なものを弾いていたが、スケールの大きなカデンツアで、第一楽章が終わると、客席から思わず拍手が飛び出すなど賑やかであった。オーケストラと一体になって弾くソリスト・カヴァスコの姿は、大柄にも似ずに生真面目そのものの様子に写り、ソリストぶらずにアンサンブルを大切にして丁寧に弾いており、まさに初期のザルツブルグ・スタイルを反映しているように見えていた。


   続く第二楽章のアンダンテでは、カヴァコスの合図によりトウッテイで第一主題を提示してから、独奏ヴァイオリンがこのフランス風の美しい三拍子の主題を繰り返していた。続いて直ぐに独奏ヴァイオリンがそのまま歌うような愛らしい第二主題を弾きだし、カヴァコスが弱音を楽しむように楽しげに弾き進んでから、これをオーケストラに引き渡していた。フェルマータがあって独奏ヴァイオリンによる第一主題の変奏的な短い展開部に続いて、フェルマータのあとに再現部となり、再び第一主題から独奏ヴァイオリンに中心が移って型通りに進行していた。最後の短いカデンツアでは、カヴァコスは第一主題の冒頭部分を素材にした短くて優雅なカデンツアで静かに終了していた。



  フィナーレはRONDEAUと書かれたアレグロ楽章で、いきなり独奏ヴァイオリンが軽快なロンド主題を弾き始め、トウッテイで繰り返されていた。この楽章は概ねA-B-A-C-A’-D-C'-Aの形でやや変則的に進行しており、独奏ヴァイオリンで主題が弾かれたり、オーケストラで繰り返されたりしながら進行していた。第二のエピソードが独奏ヴァイオリンによって威勢良く弾かれていたり、3度目のロンド主題がオーボエにより登場したりして変化を見せて、第三のエピソードに続いて第二のエピソードも顔を出していた。そして4度目のロンド主題でこの楽章は明るく締めくくられていたが、独奏ヴァイオリンが随処で難しい技巧を発揮しているのが目についた楽章であった。

  全楽章を通じて、カヴァコスは評判通りの優れた実力者であり、オーケストラにも良く溶け込んで、ソリストとしてばかりでなくトウッテイでも活躍して、オーケストラからも信頼されているヴァイオリニストであることが分かった。カメラータ・ザルツブルグは、2台のコントラバスをベースに2オーボエ、2ホルンの中規模の構成であったが、コンサート・マスターのアレクサンダー・ヤニチェックを中心としたまとまりの良いオーケストラであり、カヴァコスと一体になって新鮮で伸びやかな初期の協奏曲を聴かせてくれた。




  続くカメラータ・アカデミカ・ザルツブルグの交響曲第28番ハ長調K.200(189k)は、前曲のオーケストラに2トランペットとテインパニーが加わって、コンサート・マスターのアレクサンダー・ヤニチェックの指揮により行われた。ヤニチェックは、椅子に座ったままで、大きく体を動かして全体を見渡しながら、体の動きで指揮をしており、これは恐らくいつもと同じ仕草であろうと思われた。この交響曲の第一楽章は、強弱2音の対照で始まるイタリア風ファンファーレに続くヴァイオリンの特徴あるトリルにより導かれる快調な出だしの第一主題で華やかに開始された。繰り返すように進み、トリルとスタッカートによる軽やかな動機が続いてから、ヴァイオリンとオーボエの対話が対照的に美しい第二主題が現れ、やがてトランペットの響きも加わって祝祭的な雰囲気を感じさせ、スピード感に溢れる盛り上がりを見せて提示部を終了していた。ヤニチェックはここで繰り返しを行っていたが、この一連の主題を構成するヴァイオリンのトリルの部分は、こだまのように強い印象を残し、どうやら続く第2楽章にも終楽章にも繰り返し使われて、全曲を循環し支配しているように聞こえていた。
  トリルとスタッカートの動機による短い展開部を経て、再び冒頭のファンファーレとトリルによる軽快な第一主題が再現されると、再びトリルとスタッカートが疾走するアレグロになり、明るい第二主題を経て一気に第一楽章は結ばれていた。ヤニチェックとカメラータの面々は、楽しげにこの軽快な楽章を弾きこなしており、安心してこの流れに浸ることが出来た。



   第二楽章は、歌謡的なゆったりした曲調のアンダンテで始まり、下降する面白い弦の収束主題で終わる第一主題が繰り返された後、トリルモチーブによる二声の主題による第二主題が現れて、ここでも特徴ある収束主題で結ばれて提示部を終えていた。ヤニチェックは提示部の繰り返しを丁寧に行いゆっくりと進んでから、管で始まりこの収束主題を変化させる短い展開部を経て、再現部に入っていた。とても穏やかで、セレナード風のソナタ楽章であったが、収束主題が各所で目立つアンダンテであった。
     メヌエットでは、トウッテイで始まる緩やかな三拍子で、後半に鄙びたホルンのエコーが入るのが特徴で、オーストリアのレントラー風の趣を持った曲で、トリオは弦だけで付点リズムを持った軽快な曲調。ヤニチェックの体の揺れが目立つ楽しいメヌエットに聞こえていた。



フィナーレは、ヴァイオリンだけで始まる弱奏のトリルを伴う軽快なプレストで、それに全合奏がフォルテで応答して急速なテンポで奔流のように進行する第一主題に対し、平明で伸びやかな民謡のような第二主題が続いて疾走する提示部を作り上げていた。ヤニチェックは、再び冒頭から繰り返して勢いを高めて、弱奏のトリルと全合奏が応答する短い展開部を経由して、再現部へと飛び込んでいった。このフィナーレは、第一楽章の疾走するアレグロと軽快さと、トリルとスタッカートによる軽妙さに共通性があり、第一楽章と対をなすように一気に進行し、奔流のような勢いで収束していた。

  カメラータ・アカデミカ・ザルツブルグは、モーツァルトのザルツブルグ時代の、初期のシンフォニーや、セレナード、デイヴェルテイメントなどを演奏する機会が多いと思われ、その当時の演奏スタイルを要求されることがありそうなので、コンサート・マスターは指揮法についても心掛ける必要があろう。今回のアレクサンダー・ヤニチェックは、このモーツァルト週間でしばしば指揮者なしのコンサートを行っており、オーケストラも手慣れたものであった。今回の演奏もごく自然体の演奏であり、これは常日頃の訓練の結果であろうと思われる。


(以上)(2015/03/05)



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