(最新の放送から;ブロムシュテットほかのN響の二つのト短調交響曲、K.550とK.183)
15-2-1、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団による交響曲第40番ト短調、N響定期第1788回、2014/9/19、およびクリスティアン・エーヴァルト指揮、N響による交響曲第25番ト短調K.183、N響定期第1187回、1994年12月4日、NHKホール、ライブ中継、


−ブロムシュテットは、丁度88歳という高齢でありながら、衰えは少しも見せず、元気に両手を広げて指揮をしておられ、久し振りでやや早めのテンポの良い緊張感に溢れた第40番ト短調の交響曲を聴いた。譜面通りに全て丁寧に繰り返しを行う几帳面な様子をしみじみと味わって、とても快い気分を味わうことが出来た。一方のエーヴァルトとN響の第25番のト短調交響曲の演奏は、軽快なテンポで第一楽章と第四楽章が対比されるように上手く流れており、非常に激しい中にも穏やかさがあって、とても安心して聞くことが出来た。二つのト短調交響曲を聴き比べるように聴いて来たが、両曲とも、第一楽章とフィナーレが早いテンポでリズミカルに疾走するところが共通しており、とても面白かった−



(最新の放送から;ブロムシュテットほかのN響の二つのト短調交響曲、K.550とK.183)
15-2-1、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団による交響曲第40番ト短調K.550、N響定期第1788回、サントリー・ホール、2014/9/19、およびクリスティアン・エーヴァルト指揮、N響による交響曲第25番ト短調K.183、N響定期第1187回、1994年12月4日、NHKホール、ライブ中継、
(2014/10/12、BS103の放送をHDD3に収録およびNHKBモードをS-VHSに収録)

     1月号に引き続き、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮(1927~)のNHK交響楽団による交響曲第40番ト短調K.550をお届けする。この演奏会は、サントリー・ホールで行われたN響定期第1788回の演奏会であり、最初にモーツァルトの第40番を、後半にはチャイコフスキーの交響曲第5番が演奏されていたが、両曲ともポピュラーな名曲であるせいか、盛大な拍手に恵まれた素晴らしい公演であった。
      1月号の第39番も第41番も、指揮者ブロムシュテットが長い間譜面と向き合って、一音一音丹精を込めた演奏であると感じていたが、この曲の演奏前にリハーサル風景が写されており、ブロムシュテットが第2ヴァイオリンの声部を丁寧に指導する様子が写されていた。彼は声を出して歌いながら、丁寧にこうあるべきだと指導する姿は実に説得力があり、N響の演奏者たち皆さんからも、譜面と向き合う姿勢を学んでいるようで、歓迎されているようであった。

       続くN響定期公演を収録した映像は、第1187回定期であり、1996年12月4日NHKホールで収録されていた。指揮者は、クリスティアン・エーヴァルトであり、この日のプログラムの第一曲目が今回の交響曲ト短調(第25番)K.183であった。この曲を聴くと私は直ぐ映画「アマデウス」の冒頭部分を思い出すが、この部分は、当時のウイーンの作曲家たちに流行していた「疾風怒濤」のスタイルを、モーツァルトが初めて取り入れたものと言われており、ト短調の特別な調性を持った珍しい交響曲として知られている。この演奏をここに取り入れたのは、並べて聴いてみたいという興味のほかに、この演奏のアップで、第25番のアップロード作業が完了するという意味も含めて、ここにアップするものである。





     初めにブロムシュテット指揮のNHK交響楽団による交響曲第40番ト短調K.550については、第一楽章はソナタ形式であり、冒頭のヴィオラの伴奏型に乗ってモルト・アレグロのさざ波を打つような弦楽合奏で始まるが、ブロムシュテットは幾分速めの軽やかなテンポをとり、弦楽器の各声部が良く揃ってとても美しく、N響らしい厚みのある弦楽合奏を聴かせていた。軽快に進行してやがて第二主題に入って管楽器が活躍をし始めていたが、ここでよく見るとフルート1、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2の布陣であり、第二版を使っていることが分かった。ここでも早目のテンポは終始変わらず、堂々と落ち着いて進行して盛り上がりを見せて提示部を終了していた。ここでブロムシュテットは提示部の繰り返しを当然のように行って、再び冒頭から始まっていたが、終始、早めのテンポは変わらず、前回よりも勢いを増して見事な弦楽合奏で展開部へと突入していた。







          展開部でブロムシュテットは、冒頭の導入主題を速いテンポで繰り返し、続いてうねるような対位法的な展開がテンポ良く進行し、次第に力を増しながらこの主題だけで進んでおり、いつの間にか再現部が始まっていた。ここでは再び二つの美しい主題が繰り返されていくが、ブロムシュテットは同じような軽やかな手慣れた指揮振りで、早いテンポを崩さず最後まで進めていた。



           ブロムシュテットは、第二楽章は非常に早いテンポで始まるが、軽やかな美しい弦楽合奏のアンダンテの第一主題がホルンの伴奏で始まって、途中から現れる32分音符の休止を挟んだ3度動機のフレーズが実に美しい。このフレーズが小刻みに、弦から管へ、管から弦へ、上昇したり下降したり、うねるように繰り返され、特に管と弦との応答が実に印象的であった。やがて、第二主題に入って美しい弦楽合奏が開始されても、この特徴あるフレーズが余韻のように響いており、アンサンブルの良い管と弦の音色の美しさが魅力的であった。ここでも提示部での繰り返しを行っており、冒頭に戻って弦楽合奏と管と弦の見事な応答が繰り返されていた。
          展開部でもこのフレーズが主題となり、力強く弦から管へ、管から弦へと移行して、主として下降のパターンで何回も展開されていた。再現部に入って、第一主題・第二主題と続いていたが、これらのなかにも弦と管のフレーズのアンサンブルの美しさが冴えており、さらに弦楽合奏の中でフルート、クラリネット、ファゴットが新しい半音階的動機を登場させて歌い出す場面が美しかった。ブロムシュテットは、この楽章でも譜面通り、最後の繰り返しを行っており、再び展開部から、綿々とこのフレーズの展開が続けられていたが、この楽章の独特の装飾効果と繊細なアンサンブルの良さに改めて驚かせられた。



             第三楽章のメヌエットでは、ブロムシュテットは標準のテンポに戻って軽快なアレグレットの弦楽合奏の厚みが快い響きで始まった。ここでは出だしの三小節のフレーズがカノン風に何回も繰り返されて進行する風変わりなメヌエットとなっていたが、しっかりと三拍子を刻んで軽快に歯切れ良く進んでいた。トリオでは、ほぼ同じテンポで弦楽合奏で始まり、木管の四重奏がこれに応えて美しさを強めていたが、繰り返しの後は木管の四重唱の後に二つのホルンが響きだし、後半では力強い見事な管楽四重奏が続いて、弦楽器と管楽器のアンサンブルの対照の妙が印象的であった。ブロムシュテットはトリオの後のメヌエットにおいても、繰り返しを省略せずに行っていたが、モダン楽器の演奏では初めて聴く演奏であった。





          フィナーレはアレグロ・アッサイであり、ブロムシュテットは第一楽章とほぼ同様な早いテンポで第一主題を進めていたが、このように早いテンポで軽快にスムーズに流れるフルオーケストラは実に心地よい。流れるような見事な弦楽合奏が続いてから、やがてなだらかなヴァイオリン三部の第二主題が歌うように進行するが、ここでクラリネットが明るく歌い出して第二版の特徴を浮き彫りにさせていた。ここでもブロムシュテットは提示部の繰り返しを行って、冒頭から威勢良く疾走するように繰り返して展開部に突入していた。展開部では冒頭の主題の動機が早いテンポで、弦でも管でも交替しながら執拗に繰り返されており、管と弦のアンサンブルが良く、心配されたホルンのファンファーレがまずまずの出来であったので楽しめた。再現部でもこの安定した速いテンポが続き、第一主題・第二主題と流れるようにスムーズに進行し、一気苛性に最後まで到達していたが、ブロムシュテットはここでも繰り返しを行い、再び展開部からの再現となっていた。この曲は軽快なテンポで第一・第四楽章が上手く流れることが何よりも大事なことを思い起こさせた。

                久しぶりでやや早めのテンポの良い緊張感に溢れた第40番ト短調の交響曲を聴き、丁寧に繰り返されている様子をしみじみと味わって、快い気分になっていた。ブロムシュテットは、丁度88歳という高齢でありながら、衰えは少しも見せず、元気に両手を広げて指揮をしておられた。ベームの最後の録音にしても、最近のプレヴィンの演奏にしても、高齢になるとテンポがゆっくりになると思っていたが、ブロムシュテットは全くそのような様子が無く、かくしゃくとした元気な指揮振りを見せていた。映像のお陰で、最新の画像と音質で格好の良い指揮振りを見ることが出来たし、安定感ある生き生きとしたフレッシュなト短調シンフォニーを聴いて満足であった。私は今回の、ブロムシュテットの三大交響曲の映像は、素晴らしい演奏が残されたと思っており、恐らくN響の皆さんも会心の出来だったと考えているに違いないと思う。この後のチャイコフスキーの第五交響曲も名演であり、N響の力強い素晴らしい出来の交響曲を映像に収録することが出来た。







       続くN響定期公演を収録した映像は、第1187回定期であり、1996年12月4日NHKホールで収録されていた。指揮者は、クリスティアン・エーヴァルトであり、この日のプログラムの第一曲目が今回の交響曲ト短調(第25番)K.183であった。この日のプログラムは、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とシューマンの交響曲第3番「ライン」が続いていた。舞台を見るとコントラバスが3台配置され、珍しく4本のホルン、2ファゴット、2オーボエの編成であり、中規模の編成のオーケストラとなっていた。この曲を聴くと私は直ぐ映画「アマデウス」の冒頭部分を思い出すが、この部分は、当時のウイーンの作曲家たちに流行していた「疾風怒濤」のスタイルを、モーツァルトが初めて取り入れたものと言われている。



        指揮者のクリスティアン・エーヴァルトは、このHPでは初登場であり、勢いよく舞台に登場して、いきなり第一楽章のアレグロが始まった。第一主題は、冒頭から鋭い弦の荒々しいシンコペーションのリズムで開始され、急速に上昇していく旋律線で構成されており、前半を繰り返すように進行してから、悲しげにゆっくりと長い旋律を歌わせるオーボエが鳴り響いて弾いて推移主題に移行していた。これと対照的にスタッカートが強調されて踊るようなリズムを持った第二主題が優雅に響いてから提示部が終了していたが、エーヴァルト再び冒頭から繰り返していた。再び激しい勢いの第一主題が始まったが、前よりもさらに威勢良く進行しており、4本のホルンも吠えるように威力を発揮して提示部を勢いよく終了していた。
       展開部では冒頭の主題の音形とリズムが繰り返されオーボエの主題も現れ流短いものであったが、再現部では再び冒頭主題が早いテンポで繰り返されて、この交響曲の異色的な存在を強く印象づけていた。エーヴァルトの演奏は、一貫して力強く全体を推し進めており、4本のホルンと3台のコントラバスを生かした重厚な響きを示していた。



             第二楽章はゆっくりしたテンポで優雅に進められるアンダンテ楽章であるが、よく見ると珍しくファゴットが弦5部と静かに対話しながら進行し、続いて唐突にオーボエと第一ヴァイオリンがスタッカートで軽やかにブッファ的なおどけた第二主題を弾き出す面白い展開があった。楽譜をよく見ると2つの繰り返し記号を持つ単純なソナタ形式で書かれており、短い展開部のあとに再び冒頭の優雅なファゴットとの対話が再現され、更にこれが入念に引き伸ばされていた。指揮者エーヴァルトのテンポは第一楽章と対照的に意識的にテンポを落としており、第一楽章アレグロの重厚さに対し、実に優雅な安らぎの一時を与えてくれるアンダンテであった。



       続く第三楽章は、前楽章の優雅な響きを一瞬でかき消すようなユニゾンの響きで始まる12小節の短いが堂々たる力強いメヌエットであった。踊るような伸びやかなリズムで力強く進行し、4本のホルンが高らかに鳴る堂々とした豊かな響きが特徴であった。この楽章のトリオは珍しく管楽器だけで演奏されており、2オーボエが誘導しながら2ファゴット、4ホルンの編成で、馴染み深い旋律を明るく輝くように堂々と合奏をしていた。ここでは2オーボエが存在感を示し、管楽のデイヴェルテイメントを思い起こすようなトリオであったが、再びメヌエットに移行して、整然として力強く終了していた。



       フイナーレは第一楽章と同じくト短調の急速なアレグロのソナタ形式で書かれているが、2つの繰り返しと独立したコーダを持つウイーン風のものであった。早いテンポの第一主題は、先のメヌエット主題と類似しており、弦のトレモロやシンコペーション動機などが現れて颯爽と始まった。これは当時ウイーンで流行していた第一楽章と似たスタイルで、全楽器が参加して疾風怒濤的な勢いでうねるように進行させていた。続く第二主題も似たように威勢が良く、全力疾走して一気に高揚を見せ、提示部を終えて繰り返しに入っていた。展開部でも、全楽器が参加して力強く疾走し、半音階的響き、弦のトレモロ、シンコペーション動機などが現れていた。そして再現部へとうねるように一気に進行し、提示部とほぼ同じスタイルであったが、さらに8小節のコーダによりいつの間にか静かにこの楽章を終息させていた。

        エーヴァルトとN響の演奏は、軽快なテンポで第一楽章と第四楽章が対比されるように上手く流れており、非常に激しい中にも穏やかさがあって、とても安心して聞くことが出来た。二つのト短調交響曲を聴き比べるように聴いて来たが、両曲とも、第一楽章とフィナーレが早いテンポでリズミカルに疾走するところが共通しており、とても面白かった。また、N響も初めの演奏と最後の演奏では、実に20年の開きがあるが、堀さんや大林さんなどの顔が見えており、変わらずに安定した音を出していると思った。このように、いろいろな演奏を自分の都合で勝手に並べて聴くなんて、随分変わったことをやっていると思われそうであるが、こういう勝手なことが出来る映像の有り難さをつくづく感謝している。

(以上)(2015/02/07)


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