(最近収録のBS放送から;ゲヴァントハウスQとモザイクQのK.465およびK.458)
15-12-2、(1)ゲヴァントハウス四重奏団による弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」、来日公演、2014年11月12日、いずみホール(大阪市)、(2)モザイク弦楽四重奏団による弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K.458「狩」、
来日公演、2014年12月24日、フィリアホール、

−ゲヴァントハウス四重奏団の「不協和音」は、前回に続いて二度目の収録となっているが、今回も前回に増して爽やかな疾走感を感じており、第一ヴァイオリンが常にリードを保ち、各声部がしっかりした素晴らしい演奏であると思った。この曲は、何度聴いても冒頭の序奏部には驚かされるが、続く主題の軽快さは格別なものがあり、いつも爽快な気分にさせられる。一方の久し振りで聴くへーバルト主宰のモザイク四重奏団の「狩」は、響きの良いフイリア・ホールで最新のハイビジョンの収録であったので、ピリオドの弦楽合奏の各声部の音が実に克明に収録されており、見事なアンサンブルを示すピリオド特有のきめ細かさがとても良く捉えられていた。私に取って、この曲が一番好きなので、このモザイク四重奏団による生き生きした快演奏がとても気に入った−

(最近収録のBS放送から;ゲヴァントハウスQとモザイクQのK.465およびK.458)
15-12-2、(1)ゲヴァントハウス四重奏団による弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」、来日公演、2014年11月12日、いずみホール(大阪市)、(2)モザイク弦楽四重奏団による弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K.458「狩」、
来日公演、2014年12月24日、フィリアホール、
(2015/01/29、および2015/03/05、NHKクラシック倶楽部のBS放送をHDD-2に収録)

         今回の二つの弦楽四重奏曲は、いずれも最新のNHKのBSクラシック倶楽部の来日公演の記録映像であり、いずれもハイドンセットの中からの有名曲の演奏である。最初のゲヴァントハウス四重奏団は、同名のライプチヒの著名なオーケストラの中心メンバーにより構成されており、このHPでは、二度目の登場である。 前回は2005年5月の現地のランメナウ宮殿での演奏でNHKのクラシック・ロイヤルシートのBS102の放送を収録した演奏(7-11-1)であった。今回の「不協和音」四重奏曲K.465はその時も演奏されているが、メンバーのうちヴィオラ奏者だけが入れ替わっており、お馴染みの有名な第二ヴァイオリンのコンラート・ズスケは今回も健在であった。
        もう一方のモザイク四重奏団は、1985年の創設とされているが、第一ヴァイオリンのエーリヒ・ヘーバルトは、アーノンクールのウイーン・コンツエントウス・ムジクス(WCM)のコンサートマスターであり、このHPではウイーン弦楽六重奏団の主催者として一連の五重奏曲(3-10-2)でお馴染みの方である。この四重奏団もこのHPでは2度目の登場であり、前回は2002年10月29日のトッパンホールでの来日公演で弦楽四重奏曲第21番を演奏(4-2-3)しており、約10年ぶりであるが、写真で同じメンバーであることが直ぐ分った。


        12月分の第一曲目はゲヴァントハウス四重奏団による弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」であるが、この演奏は2014年11月12日、大阪のいずみホールでの演奏記録であり、この日のTVではこの一曲とハイドンの四重奏曲「皇帝」とが取り上げられていた。このK.465は、ハイドンに捧げられた6曲の最後の曲とされ、標題のとおり冒頭に「不協和音」が続く序奏を持つことで有名な曲である。この序奏はアダージョで、譜面を見ながら注意深く聴いてみると、チェロから順にヴィオラと和音を構成していき、第一ヴァイオリンが入って不協和音の連続となっていく不思議な形で始まっている。誰しもがこの曲の冒頭に神経を集中させて聴かざるを得ない面白い構成の曲であり、改めて聞き直してもやはり、初めて聴いたときとほぼ同様に、その異様な響きに驚かされる。しかし、良く聴き直すと序奏の直後に始まるハ長調の颯爽としたアレグロを明るく明解に聞かせるためのモーツァルトの巧妙な伏線であることが理解出来るであろう。

          この面白い22小節も続く長い序奏が終わると、第一楽章の明るい第一主題が、第一ヴァイオリンにより軽やかに始まり、第二ヴァイオリンとヴィオラがリズミックにこれを支えていた。この主題は各声部にも力強く繰り返されていき、やがて第一ヴァイオリンが力強いフォルテの和音とともに16分音符による素速い印象的な下降フレーズが奏される。そして三連符のリズムによる軽やかな活気のある第二主題が第一ヴァイオリンに現れ、次第に加速され高潮してゆく。ゲヴァントハウス四重奏団によるこの序奏から提示部への動きは実に軽快であり、一気呵成に進行し鮮やかな響きを聴かせていた。この四重奏団は、第一ヴァイオリンを中心に見事なアンサンブルを見せ、ソナタ形式の提示部の繰り返しを丁寧に行って、これが本番とばかりに、颯爽と疾走する弦楽合奏が続いていた。
展開部では第一主題の前半部を集中的に扱っており、伴奏の八分音符のリズムと主題の組合せが各声部によりさまざまな形で展開されていた。再現部では、第一主題に続いて素早い下降フレーズ、第二主題とほぼ提示部と同様に型通り進んでいたが、再現部の末尾の繰り返しは省略されて、その後に第一主題による長いコーダがあり、この四重奏団は丁寧に演奏したあと静かに終結していた。HDD録画によるハイビジョンの美しい映像とクリアな音響のお陰もあって、久しぶりで聴いた弦楽四重奏曲の軽快さと快適さとを改めて味わうことが出来た。


             第二楽章はアンダンテ・カンタービレと指示された緩徐楽章で、その構成は展開部を欠いたソナタ形式のようであった。第一ヴァイオリンを中心に歌い出す第一主題は重厚な和声を持つ力強い合奏であり、続いて直ぐに第一ヴァイオリンとチェロが小さなモチーブを対話するように歌い交わす美しい推移主題が暫く続く。それからチェロの低域の伴奏で、フーガのように始まる第二主題には詩があり、穏やかに夢のように推移していた。再びチェロと第一ヴァイオリンによる推移主題が顔を出して美しく結ばれた後に、再現部が始まった。ここでは、第一主題が変形されて現れ、続いて歌われる推移主題も変形されており、最後の第二主題もチェロの低域の伴奏が変形されて再現されていた。この楽章の最後はコーダで結ばれていたが、これは推移主題が第二ヴァイオリンで奏されて、これに各声部がさまざまな形で伴奏する実に言葉では言い表せない美しいもので、静かにこの楽章を閉じていた。


              続く第三楽章はメヌエット楽章。第一ヴァイオリンの飛び出しによる早めのテンポを持つ荒々しい落ち着きのない主題で始まるが、ピアノとフォルテの交替があったり、休息や激しい和音が現れたりして、穏やかなメヌエットではなくまるでスケルツオのような響きに聞こえていた。トリオでは第一ヴァイオリンの旋律が他の声部の機械的な伴奏のリズムに乗ってテンポ良く情熱的に歌い、メヌエットに対してばかりでなく、他の楽章に対しても面白いコントラストを作り出していた。再びメヌエットに戻っていたが、ゲヴァントハウス四重奏団の力強い歯切れの良いこの楽章を聴いて、四重奏曲の弾むような音色にしばしうっとりとさせられた。


フィナーレは明るいアレグロ・モルトのソナタ形式であり、第一楽章のアレグロと共通の疾走する軽快さを持ち、第一ヴァイオリンの澄みきった明るい第一主題に始まり、経過的に現れる第二主題に続いていた。そして軽快な16分音符によるパッセージがさらりと続き、第一ヴァイオリンによる印象的なエピソードが軽快に続いて提示部を終了していた。このゲヴァントハウス四重奏団は、提示部での繰り返しを行なって、再び明るく疾走する第一主題に戻り、颯爽と進んでいた。展開部では第一主題と第二主題の冒頭部分が何度も繰り返されて、再現部へと突入していた。ここでは型どおりに第一主題から第二主題と再現されていたが、反復記号の後にコーダがあり、第一主題がサラリと現れて全体が収束していた。


このゲヴァントハウス四重奏団の「不協和音」は二度目の収録となっているが、今回も前回に増して爽やかな疾走感を感じており、第一ヴァイオリンが常にリードを保ち、各声部がしっかりした素晴らしい演奏であると思った。この「不協和音」は、何度聴いても冒頭の序奏部には驚かされるが、続く主題の軽快さは格別なものがあり、いつも爽快な気分を得ている。メンバーを紹介しておくと、第一ヴァイオリンのフランク・ミヒャエル・エルマンがリーダーであり、第二ヴァイオリンの日本でも活躍していたコンラート・ズスケが第一ヴァイオリンを助け、内声部の充実に力を発揮していた。ヴィオラのオラフ・ハルマンが今回の新しいメンバーであり、チェロのユルンヤーコプ・テイムは、前回同様、落ち着いた低い声部をしっかりと守っていた。



             第二曲目は、モザイク弦楽四重奏団による弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K.458「狩」であり、この映像もクラシック倶楽部からの収録であった。この曲の第一楽章は、アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイとされ、ソナタ形式で書かれていた。曲は、いきなり第一ヴァイオリンが勢いよく「狩」の愛称のもとになった快活な第一主題を提示するが、このモザイク四重奏団のへーバルトは、古楽器の音と鮮明に分る美しい音で、この親しみのある主題を開始した。続いて第二ヴァイオリンと対話する形で推移していたが、第一ヴァイオリンの長いトリルのもとで、第二ヴァイオリンによりもう一度華やかに歌われて、続く第二主題のもととなる、躍るようなモチーブが順番に各声部で繰り返されていた。続く第二主題は、第二ヴァイオリンから開始され、第一ヴァイオリンに引き継がれて軽快に進行し、勢いよく一気に提示部を終了していた。モザイク四重奏団の古楽器の弦楽合奏は実に鮮明で良く揃い、生き生きとして期待に応えていたが、再び冒頭に戻って、フレッシュな「狩」の主題が登場して、溌剌として勢いよく提示部を繰り返していた。


           展開部ではがらりと変わってのどかな感じのする主題で開始されるが、第一ヴァイオリンがオクターブ高く繰り返すものの、直ぐにわずかに変形された先のモチーブが現れて、これが各声部で対位法的に扱われて、繰り返し繰り返し、執拗に展開されていた。再現部では、再び「狩」の主題が明るく現れて、勢いよく進行してほぼ型どおりに進んでいたが、後半の反復記号の後に長い充実したコーダがあり、この楽章を勢いよく盛り上げるようにして結んでいた。ゲヴァントハウス四重奏団を聴いた直後であったので、勢いのある生き生きとした古楽器による弦楽合奏がとても新鮮に聞こえ、第一ヴァイオリンが特に活躍するこの楽章との相性の良さを感じさせていた。


             第二楽章は意表を突いてメヌエット楽章であり、堂々たる8小節のメヌエット主題が登場し、全員合奏で華やかに勢いよく進行していた。一転してトリオでは、第一ヴァイオリンが優雅な旋律を奏で出し、他の三声部は軽やかなリズムの伴奏に廻って、明るい夢のように美しい世界を築いていた。再び、充実したメヌエエト主題に戻っていたが、このさりげない美しいトリオを含んだメヌエット楽章が、この四重奏曲の、ひときわ、魅力ある存在となっていた。


             第三楽章は、アダージョの緩徐楽章で、どうやら展開部のないソナタ形式のように見えていた。深遠な感じのする第一主題が、第一ヴァイオリンによって穏やかに弾かれ、冒頭がオクターブ高く再び繰り返されて清澄に厳かに開始されていた。続いて第一ヴァイオリンが美しいエピソードを奏でだしてチェロがこれを支えていたが、やがて第一ヴァイオリンが他の三声のスタッカート伴奏に乗って第二主題を歌い出していたが、これが珍しく高音域のチェロに引き継がれて繰り返されて、微妙なアダージョの世界を築き上げていた。提示部は反復されずに、再び第一主題から順に再現されていたが、思わぬ高音のチェロが美しい澄んだ響きを見せる奥深い楽章であった。モザイク四重奏団の各声部は実に明瞭であり、HDDによるHV録画のお陰もあって、この楽章も優れた響きを味わうことが出来た。

            

          フィナーレはアレグロ・アッサイであり、中間部に繰り返しのあるソナタ形式であるが、譜面を追っていくと、珍しいことに第二主題が対等の形で二つ用意されていた。この第一主題は第一ヴァイオリンによって提示される明るい勢いのある主題であるが、解説書によると、ハイドンの四重奏曲から意識的に転用された主題のようであった。へーバルトは勢いよくこの主題を提示していたが、やがて初めの第二主題は、第二ヴァイオリンに第一ヴァイオリンが即興的に応える面白いもので、これが繰り返されて発展していくものであった。続く第二主題は、分散和音で階段状に上行し、三連音符で下降する落ち着いた旋律で、これも繰り返されて発展していくものであった。モザイク四重奏団は、中間の繰り返しを省略して直ちに展開部に移行していたが、この展開部は第一主題の冒頭部の主題の対位法的な処理に集中しており、長大で難解なものに聞こえていた。そのせいか、再現部で第一・第二主題が明るく清澄感を持って疾走するようなフィナーレとなっており、ほぼ型どおりな内容であったが、素晴らしいフィナーレになっていた。


          演奏が終わると、凄い拍手が湧き起こり、熱演の程度を示すものと思われたが、何回か呼び出された後に、アンコールの演奏が行なわれていた。曲は第15番ニ短調K.421(417b)の第三楽章のメヌエットであった。この曲は良く耳に馴染んでいる重量感のあるメヌエット主題で始まり、堂々と進行する明るい曲であるが、中間のトリオが、第一ヴァイオリンによる絶妙な旋律が、残りの三声の美しいピッチカート伴奏で弾かれており、実に珠玉のようなメヌエット作品になっている。モザイク四重奏団は、へーバルトが生き生きと繊細にこのヴァイオリン独奏部を受け持っており、アンコールに相応しい明るく活気のある演奏を行なっていた。

           今回の55分間のクラシック倶楽部は、前半がシギスヴァルト・クイケンの「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ」というベルトで首にぶら下げて弾く古楽器で、バッハの無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調BWV1012の演奏があり、残り時間がモザイク四重奏団の演奏となり、残念ながら30分余と時間が限られていた。久し振りで聴くへーバルト主宰のモザイク四重奏団であったのに、僅か一曲では心残りがする。しかし、響きの良いフイリア・ホールで最新のハイビジョンの収録であったので、弦楽合奏の各声部の音が実に克明に収録されており、見事なアンサンブルを示すピリオド演奏のきめ細かさがとても良く捉えられていた。私に取ってハイドンセットの6曲の中では、この曲K.458が一番馴染んでいたので、このモザイク四重奏団による生き生きした快演奏がとても気に入ったことをご報告しておきたい。


(以上)(2015/12/15)



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