(古いS-VHSより;二つの名曲、ト短調交響曲とアイネ・クライネのアップ完了)
15-12-1、(1)ジャンルイジ・ジェルメッテイ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団による交響曲第40番ト短調K.550、1991年、シュヴェツインゲン音楽祭、(2)デユトワ指揮NHK交響楽団によるセレナーデ(アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク)ト長調K.525、
N響定期公演、第1121回定期、2000/11/30、NHKホール、

−シュヴェツインゲンのロココ劇場で、ジェルメッテイにより久しぶりで穏やかな落ち着いた感じの第40番ト短調の交響曲を聴いた。今では聴けなくなった鄙びた感じのベーム以来の伝統的な演奏であり、映像は古くて暗くて最低であるが、懐かしい演奏を楽しむことができた。一方のデユトワとN響の「アイネ・クライネ」は、2001年4月のN響定期の収録であり、コントラバスは4本の弦楽合奏としては大規模なものであったが、デユトワの早めのすっきりしたテンポが快く、譜面通りに丁寧に繰り返しを行なったまさに現代の標準的なすっきりした演奏であると思った−

(古いS-VHSより;二つの名曲、ト短調交響曲とアイネ・クライネのアップ完了)
15-12-1、(1)ジェルメッテイ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団による交響曲第40番ト短調K.550、1991年、シュヴェツインゲン音楽祭、(2)デユトワ指揮NHK交響楽団によるセレナーデ(アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク)ト長調K.525、
N響定期公演、第1121回定期、2000/11/30、NHKホール、
(2001/01/25、クラシカJの放送をS-VHS365.4に収録、および2001/04/15のNHKBS103の放送をD-VHS-008に収録、)

     先月号の交響曲第39番変ホ長調K.543のアップロード完了に引き続いて、今回ジェルメッテイ指揮の交響曲第40番ト短調K550 をアップロードすれば、この曲についても全ての曲を見てきたことになり、あとは大もののジュピター交響曲だけだと気がついて、やっとこのHPのアップ作業も終焉に近づいて来たという実感が沸いてきた。今回、同時にアップする、デユトワのセレナーデト長調「アイネ・クライネ」K.525についても、収録数は少ないがアップロード完了の見通しであり、これからはそれぞれの曲の「総括」作業が忙しくなると思われる。

        ジェルメッテイのト短調交響曲は、シュトゥットガルト放送交響楽団による1991年の録音であり、彼がシュヴェツインゲン音楽祭で収録したロッシーニのオペラのLDを次々とリリースしていた時期に相当しており、音楽祭の中心になる宮廷劇場で演奏されている。この映像を見てすぐに、現地で「フィガロの結婚」を見たロココ劇場での演奏であることが懐かしく思い出された。一方のデユトワとN響の「アイネ・クライネ」は、2001年4月のN響定期の収録であり、当時、S-VHSテープにデジタルで録画するというD-VHSレコーダーを使い始めたばかりの頃の映像で、アナログと違うデジタル映像の緻密さに喜んでいたことを懐かしく思い出す。この二つの映像は、両曲のアップ完了に相応しい、私にとっての懐かしいとても優れた映像であった。

       思い出深いロココ劇場にオーケストラの面々が並んでおり、そこへジェルメッテイが落ち着いた足取りで登場して来た。指揮台に上がり観客に会釈をして拍手が治まったところで、さざ波を打つような弦の流れであの交響曲第40番ト短調K.550の第一楽章が開始されていた。やや早めのテンポであったが、彼の指揮ぶりは、腕を余り細かに振らずゆったりと全体を動かしていくやり方であった。また、第一・第四楽章では、前半の提示部だけを繰り返しており、第二楽章では前半も後半も繰り返しを行わず、またクラリネットを用いた第二版が使われ、コントラバスは3台のように見えていた。弦楽合奏はお手も良く揃い軽やかに進んでおり、やがて第二主題に入って管楽器が活躍をし始めていたが、ここでよく見るとクラリネット2、フルート1、オーボエ2の布陣であった。ここでもやや早めのテンポは変わらず、颯爽進行していたが、ここで提示部の繰り返しがなされていた。そして、再び冒頭のしっかりした弦楽合奏が始まっていたが、彼の指揮振りはあくまでも穏やかな伝統的なものと感じさせていた。

        展開部では、冒頭の導入主題を早めのテンポで繰り返し、うねるような対位法的な展開が小気味よく進行し、次第に力を増しながらこの主題だけで進んでいた。そしていつの間にか再現部が始まっていたが、ここで再び美しい第一主題、第二主題と軽快に進行していくが、ジェルメッテイはやや早めのテンポを最後まで崩さずに、軽やかな手慣れた指揮振りでオーソドックスに進んで、駆け上がるように収束していた。疾走する弦楽合奏の軽快さが溢れるような第一楽章であった。


   第二楽章は、ホルンの伴奏で美しい弦楽合奏のアンダンテの第一主題が軽やかにゆっくりと始まっていたが、途中から弦で現れる32分音符の休止を挟んだ3度動機のフレーズが実に美しい。そしてこれが進むにつれて次第に弦から管へ、管から弦へと発展し、上昇したり下降したり、うねるように繰り返され、特に管と弦との応答が実に印象的であった。やがて、第二主題に入って美しい弦楽合奏が開始されても、この特徴あるフレーズが余韻のように響いており、ジェルメッテイは目をつぶって、両手を僅かに振るだけでオーケストラを動かしていた。提示部での繰り返しは省略され、直ちに展開部に移行していたが、展開部でもこのフレーズが力強く弦から管へ、管から弦へと移行して、主として下降のパターンで展開されていた。再現部に入って、第一主題・第二主題と続いていたが、これらのなかにも弦と管のフレーズのアンサンブルの美しさが冴えており、弦楽合奏の中でフルート、クラリネット、ファゴットが新しい半音階的動機を登場させて歌い出す場面が美しく、綿々と続くこの楽章の独特の装飾効果と繊細なアンサンブルの良さに聴き惚れていた。アンサンブルの良い管と弦の音色の美しさが魅力的であり、実に美しいアンダンテ楽章であった。


     第三楽章のメヌエットでは、ジェルメッテイは実にゆったりとしたテンポで進めており、とても美しいアレグレットの弦楽合奏となっていた。この進め方は最近の走るような古楽器演奏と較べて、何とものどかで優雅な演奏で、こののどかな雰囲気が私は貴族的な18世紀のロココスタイルと思い込んでいた。トリオでも、このゆったりしたテンポは変わらずに、弦楽合奏で始まり、木管の三重奏がこれに応えて美しさを強めていたが、繰り返しの後は低弦と木管の三重唱の対話の後に、二つのホルンが響きだし、後半では力強い見事な管楽四重奏が続いて、素晴らしい効果をあげていた。再びメヌエット主題が再起していたが、このジェルメッテイの演奏は今では聴くことが出来ないゆったりした実に優雅なメヌエットであった。


    フィナーレはアレグロ・アッサイであり、ジェルメッテイは第一楽章とほぼ同様な穏やかな落ち着いたテンポで第一主題を進めていたが、軽やかに疾走する弦楽合奏が実に快い。流れるような見事な弦楽合奏が続いてから、やがてなだらかなヴァイオリン三部の第二主題が歌うように進行するが、ここでクラリネットが明るく歌い出して管と弦とが融合したアンサンブルの良さを響かせていた。ここでジェルメッテイは珍しく提示部の繰り返しを丁寧に行っていたが、ごく自然な流れのように感じさせていた。展開部では冒頭の主題の動機が早いテンポで、弦でも管でも交替しながら執拗に繰り返されており、ここでも管と弦のアンサンブルが良く、後半に現れるホルンのファンファーレがまずまずの響きでであったので楽しめた。再現部でもこの安定した落ち着いたテンポが続き、第一主題・第二主題と流れるようにスムーズに進行し、一気にこの楽章が仕上げられていた。

         久しぶりで穏やかな落ち着いた感じの第40番ト短調の交響曲を聴いて、今では聴けなくなった鄙びた感じのベーム以来の伝統的な演奏を楽しんだ。 ジェルメッテイの演奏は、オペラ「後宮」(1991)(11-9-3)しか記憶に残っていないが、やはり同じシュヴェツインゲン音楽祭の録音であった。1945年生まれなので未だ健在であろうが、最近はほとんど耳にすることはない。映像は古くて暗くて最低であるが、こういう楽しい録音を聞くことが出来たことを有り難く思っている。



       続いてデユトワとN響によるアイネ・クライネであるが、2000年11月30日のNHKホールにおける第1441回定期であり、その第一曲目として、演奏されていた。この日は第二曲目が、R.シュトラウスの組曲「町人貴族」、第三曲目は「春の祭典」であり、町人貴族は初めて聴く曲。D-VHSの鮮明な画像と5.1CHのデジタル音響を楽しもうと大いに期待された番組であった。この日のアイネ・クライネは、総勢40人くらいでコントラバスは4本の弦楽合奏としては大規模な範ちゅうに属し、デユトワの早めのすっきりしたテンポが快く、譜面通りに丁寧に繰り返しを行なったまさに現代の標準的な演奏であった。


         第一楽章は、ユニゾンであのお馴染みの第一主題が勢いよく開始されるが、音量を上げると弦楽合奏の澄んだ厚みのある響きが5.1chで眼前に広がりとても気分がよい。やや早めのテンポであるが、現在ではこれが標準なのであろうと思いながら聴いていた。譜面を追いながら聞いていると、第二主題も続くおどけたような推移主題もバランス良く登場して勢いよく提示部が終了していたが、再び提示部は力強く丁寧に繰り返されていた。短い展開部に突入し、冒頭主題と第二主題のあとに現れた推移主題とが転調されて繰り返し現れ完璧な展開部を作り上げて、再現部となっていた。再現部はほぼ型どおりに演奏されていたが、全体のテンポ感・リズム感ともにセンス良く爽やかに進み、第一ヴァイオリンのよく目立つトリルの装飾なども明確で、瑞々しい弦楽合奏が聞こえる非常に気持ちの良い颯爽とした演奏であった。


    第二楽章のロマンツエでは、譜面ではA-B-A-C-A-codaのロンド形式のスタイルの愛らしい楽章。美しい旋律がアンダンテで第一ヴァイオリンのロンド主題の形で現れて何回か登場した後、Bのスタッカートで始まる新しい装飾的なエピソードが歌われる。そしてCの中間部では、がらりと変わって短調の小刻みに揺れる嵐のような部分が強烈で、前後の優しく愛らしい部分といかにも対照的で面白い。今回のデユトワの演奏は、サラリと歌っており、余り甘えずすっきりとした演奏になっていた。中間部の変化のある部分が爽やかであり、実に楽しいアンダンテ楽章であった。

          

   第三楽章のメヌエットは実に簡潔な造りであるが、明快なリズムを刻むメヌエット主題が弾むように力強く進行して気分を盛り上げ、素晴らしい楽章となっていた。これと対照的に、第一ヴァイオリンのソット・ヴォーチェで始まる愛らしく流れるようなトリオが美しく、短いながらも大好きな完璧なメヌエットに仕立てられていた。弦楽合奏の強弱の対比もよく目立ち、各声部の対比も明瞭で、ここでも厚みのある弦楽合奏の良さが明確に現れていた。


    フィナーレはロンドと記載されているが、軽快に飛び出すアレグロのロンド主題に対して副主題が一つしかなく、譜面を見ると前半と後半に反復記号が用いられ、変則的なロンド形式のように見える。しかし、このフィナーレのロンド主題は、何回も何回も繰り返して登場し、見事な盛り上がりを見せて軽快に進み、最後のコーダになっても登場して簡潔な形で終了していた。デユトワの颯爽と進む弦楽合奏がとても心地よく、低域が明るく弾むように響くフィナーレ楽章であり、終始、軽快な心地よいテンポで進行し、まことに爽快な味わいのある演奏であった。


    このアイネ・クライネには、このような大人数のオーケストラによる演奏、コントラバス1台の室内合奏団による弦楽合奏、弦楽五重奏による室内楽演奏と大別して三種類あるが、それぞれに良さがあるものの、今回の演奏はしっかりした多人数の弦楽合奏であり、重量感のある合奏であった。デユトワは最近の古楽器演奏スタイルを、モダン楽器の弦楽合奏に取り入れており、繰り返しもスコア通りに丁寧に行なっており、現代風な新鮮な感覚を持った迫力のある演奏であった。
私には、ワルター・ウイーンフイルのSP盤のこの曲が、レコード集めの原点であったので、手元にあるCDのコロンビア交響楽団の演奏と聴き比べてみたが、デユトアとN響のこの演奏は音が良いだけに迫力があり、しかも映像を見ながら音楽を楽しむというこの現在の環境の変化に驚かざるを得ない。


(以上)(2015/12/02)



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