(古いS-VHSより;オルフェウス室内管の来日公演より、ト短調交響曲など)
15-11-1、(1)オルフェウス室内管弦楽団の来日公演より、交響曲第40番ト短調K.550、1995年1月30日、来日公演、サントリーホール、(2)チェコフイルハーモニー室内合奏団によるセレナーデ(アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク)ト長調K.525、
2011年7月1日、来日公演、フィリアホール、

−オルフェウス室内楽団による流れるように疾走する第40番ト短調の交響曲を久し振りで聴いて、この楽団の弦楽合奏の軽やかで透明感のある爽やかな演奏ぶりに感動を覚えた。「どうして指揮者がいないのか」という問いには、「全員が指揮者なのです」という答えが跳ね返ってくるようだ。指揮者なしで全員が一体となって演奏する姿は格別なものがあり、さらに管と弦のアンサンブルの良さなどがひときわ目立ち、この合奏団でなければ味わえぬ美しさがあった。一方のチェコ・フイルハーモニー室内合奏団のアイネ・クライネは、総勢一二人の合奏団であったが、全体としてテンポ感・リズム感ともにセンス良く進み、第一ヴァイオリンのよく目立つトリルの装飾なども明確であり、瑞々しい弦楽合奏が聞こえる非常に気持ちの良い颯爽とした演奏であった−

(古いS-VHSより;オルフェウス室内管の来日公演より、ト短調交響曲など)
15-11-1、(1)オルフェウス室内管弦楽団の来日公演より、交響曲第40番ト短調K.550、1995年1月30日、来日公演、サントリーホール、(2)チェコフイルハーモニー室内合奏団によるセレナーデ(アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク)ト長調K.525、
2011年7月1日、来日公演、フィリアホール、
(1995/04/23、NHK3ch芸術劇場をS-VHS149.3に収録、および2012/10/01のクラシック倶楽部の放送をHD-4に収録、)

         11月号の第1曲目は、初めにオルフェウス室内管弦楽団の来日公演より交響曲第40番ト短調をお届けし、次いで、同じ放送でテープに収録されていた 若きプレヴィンのピアノ協奏曲第24番ハ短調の弾き振りを考えていたのであるが、これは何と既にアップ済み(6-7-2)であったので、あと一曲何が良いか考えた結果、同じような室内楽団の最近の収録曲から、チェコフイル室内合奏団のセレナーデト長調(アイネ・クライネ)K.525を、急遽、代わりにアップするものである。


         初めのオルフェウス室内楽団の来日公演は、1995年1月30日に収録されており、これは何と阪神の大地震直後のサントリーホールの映像であった。この日のプログラムは、ロッシーニの「アルジェのイタリア人」序曲、ト短調交響曲K.550、最後にストラヴィンスキーの組曲「プルチネルラ」という曲目であった。彼らは1970年にニューヨークで結成され、特に曲ごとにコンサート・マスターが変わるということで有名な指揮者なしの室内楽団であるが、今回は三度目の来日公演と言われていた。冒頭に日本人のコンサート・ミストレスの田中直子さんがご挨拶し、地震の犠牲者を追悼するため、プログラムの前にフォーレの「パヴァーヌ」を演奏すると申し出で、終了後拍手は遠慮してくれと述べていた。




このフォーレの「パヴァーヌ」は、ピアノ曲だと思っていたが、初めて聴いた曲であり、演奏はコントラバスが一台の管弦楽曲であった。静かなピッチカートで始まりフルートやクラリネットが花を添え、ピッチカートの弾むような伴奏で何と弦も木管も生き生きと活躍する素晴らしい瞑想的な曲で、犠牲者を追悼するに相応しい曲であった。演奏後、しばし黙祷する静寂な間の後に、オーケストラは退席していた。




    映像では、続いて軽快な第一曲の「アルジェのイタリア人」が演奏されていたが、弦楽器ばかりでなく管楽器群もなかなか元気で、とても歯切れの良い楽しい演奏が続いていた。拍手のあと全員が退場し、続いて交響曲第40番ト短調K.550 の演奏のため、再びオーケストラが入場してきた。どうやら曲ごとに編成が少し変わり、座席の位置も微妙に変えているという事情があるようであった。この曲の弦のトップは日本人の佐藤恵理子さんであり、彼女はトップの座席に座っているが、いつもより身振りを大きくして演奏しているように見えた。編成を見るとクラリネットが活躍する第二版のようであり、コントラバスが一台で管に比して弦が少ない編成で、非常にテンポが早い第一・第四楽章では前半の提示部だけを繰り返しており、テンポを非常に落とした第二楽章では前半も後半も繰り返しを行わない演奏スタイルとなっていた。




          第一楽章は、佐藤恵理子の体によるリードで、モルト・アレグロの早いテンポのさざ波を打つようなヴィオラの伴奏型に乗って、第一・第二ヴァイオリンの合奏で軽やかに始まるが、さすがこの弦楽合奏は、良く揃ってとても透明感に溢れて美しい。しばらく軽快に流れて一息おいて、第二主題に入ると弦楽器主体から管楽器に移行して、管が盛んに活躍をし始めていたが、ここでよく見るとフルート1、オーボエ2、クラリネット2の布陣であった。ここでも早いテンポは変わらず、堂々と揺るぎなく進行して提示部を盛り上げていたが、ここで繰り返しがなされて、冒頭のしっかりした弦楽合奏が始まっていた。爽やかな弦の疾走は終始安定して続いており、穏やかな伝統的なものとひと味違う明るく爽やかを感じさせる演奏スタイルであった。




    展開部では、冒頭の導入主題を早めのテンポで繰り返えし、うねるような対位法的な展開が小気味よく連続して進行しており、次第に力を増しながらこの主題だけで見事な展開部を完成させていた。そしていつの間にか再現部が始まっていたが、ここで再び爽やかな弦楽合奏の二つの美しい主題が繰り返されていくが、早い疾走ぶりは変わらずに、最後まで軽快に快く進んで、急速に駆け上がるように収束していた。ト短調交響曲の軽快さが溢れるようなリズミックな疾走する第一楽章であった。


   第二楽章は、ヴィオラで始まり、第二・第一ヴァイオリンと上昇してホルンの伴奏で進む美しい弦楽合奏のアンダンテの第一主題が、軽やかにそして実にゆっくりと始まっていたが、途中から弦で現れる32分音符の休止を挟んだ3度動機のフレーズが、早くも顔を出して実に美しい。これが進むにつれて上昇したり下降したりして賑やかになり、次第に弦から管へ、管から弦へと発展しうねるように繰り返され、特に管と弦との応答が実に印象的であった。やがて、第二主題に入って美しい弦楽合奏が開始されても、この特徴あるフレーズが余韻のように響いており、アンサンブルの良い管と弦の音色の美しさが魅力的であった。提示部での繰り返しは省略され、直ちに展開部に移行していたが、展開部でもこのフレーズが力強く弦から管へ、管から弦へと移行して、主として下降のパターンで展開されていた。再現部に入って、第一主題・第二主題と続いていたが、これらのなかにも弦と管のフレーズのアンサンブルの美しさが冴えており、弦楽合奏の中でフルート、クラリネット、ファゴットが新しい半音階的動機を登場させて歌い出す場面が美しく、綿々と続くこの楽章の独特の装飾効果と繊細なアンサンブルの良さに瞑目させられた。室内合奏団の面目を発揮した実に美しいアンダンテ楽章であった。


     第三楽章のメヌエットでは、標準的なテンポに戻って軽快なアレグレットの弦楽合奏となっていた。このメヌエットは出だしの三小節のフレーズがカノン風に何回も繰り返されて進行する風変わりな楽しいメヌエットであるが、しっかりと三拍子を刻んで軽快に歯切れ良く進んでいた。トリオでは、ほぼ同じテンポの弦楽合奏で始まり、木管の四重奏がこれに応えて美しさを強めていたが、繰り返しの後は木管の四重唱の後に二つのホルンが響きだし、後半では力強い見事な管楽四重奏が続いて、厚みのあるメヌエットを楽しむことが出来た。


    フィナーレはアレグロ・アッサイであり、オルフェウス室内合奏団は第一楽章とほぼ同様な早いテンポで、第一主題を威勢良く進めていたが、軽やかなテンポでスムーズに流れるフルオーケストラが実に快調に聞こえる。流れるような見事な弦楽合奏が続いてから、やがてなだらかなヴァイオリン三部の第二主題が歌うように進行するが、ここでも木管が明るく歌い出し、素晴らしい盛り上がりを見せて提示部を終了していた。ここで提示部の繰り返しを行っていたが、再び冒頭からオーケストラは流れるように疾走していた。展開部では、早いテンポで冒頭主題が展開され、弦に続いて管でも交替しながらこの主題が執拗に繰り返されており、管と弦のアンサンブルが良く、後半に現れるホルンのファンファーレがまずまずの響きでであったのでとても楽しめた。再現部でもこの安定して早いテンポが続き、第一主題・第二主題と流れるようにスムーズに進行し、一気にこの楽章が仕上げられていた。
         この室内楽団の流れるように疾走する第40番ト短調の交響曲を久し振りで聴いて、この楽団の弦楽合奏の軽やかで透明感のある爽やかな演奏ぶりに感動を覚えた。どうして指揮者がいないのか、という問いには、「全員が指揮者なのです」という答えが跳ね返ってくるようだが、コンサート・ミストレスの佐藤恵理子は全身で体を動かしながら統率していたようだし、指揮者なしで全員が一体となって演奏する姿は格別なものがあり、さらに管と弦のアンサンブルの良さなどがひときわ目立ち、特に第二楽章の32分音符の休止を挟んだ3度動機のフレーズのやり取りなどはこの合奏団でなければ味わえぬ美しさがあった。沢山聴いてきたト短調交響曲で、小規模な室内楽団による演奏には、コープマンやアルブレヒトとチェコ室内楽団、などがあったが、それらの中ではこの演奏が一番颯爽として技術的にも優れたものがあったように思う。        (2015/11/06、記)

       第二曲目のチェコフイルハーモニー室内合奏団は、チェコフイルの中で1980年に創設された団体であり、総勢一二名からなり、二台のチェロが中央に椅子に座り、半円を描くように左から第一ヴァイオリン4・第二ヴァイオリン3・コントラバス・ヴィオラ2の順に並んで立って演奏するのが特徴であろうか。この映像は2012年10月3日のクラシック倶楽部の放送を,旧BSレコ−ダ−のHDD(HD-4)に記録してあったが、演奏は1911年7月1日フイリア・ホールでの収録となっており、その日のプログラムはチャイコフスキーのセレナードハ長調作品48と抱き合わせになっていた。この団体は、たびたび来日しているようであるが、映像の冒頭に、11年3月の大地震の被災者のために、次のような言葉寄せられていた。


   「大震災が皆さまの国を襲った3月のあの日、私たちは日本に居合わせました。音楽は未来への勇気や希望を与えてくれます。私たちの心は,常に皆さまの心の傍にあります。再び日本を訪れ、日本の皆さまに少しでも貢献できることを、心からうれしく思っています。          チェコ・フイルハーモニー室内合奏団、  団員一同。」
         第一曲目が、弦楽セレナードト長調K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」であり、写真で見られるように、満席のフィリア・ホールの舞台の中央に二人のチェロ奏者が椅子に着席し、その周りを囲むように起立して演奏されていた。


          第一楽章は、ユニゾンであのお馴染みの第一主題が勢いよく開始されるが、続いて第一ヴァイオリンによるトリルの主題が弾むように聞こえ、音量を上げると弦楽合奏の澄んだ響きが5.1chで眼前に広がりとても気分がよい。少人数の演奏なので、各声部の動きが分離して柔らかに聞こえ、やはりオーケストラとは印象が異なってとてもクリアに聞こえる。譜面を追いながら聞いていると、第二主題も続くおどけたような推移主題もバランス良く登場して勢いよく提示部が終了していたが、再び提示部は力強く丁寧に繰り返されていた。短い展開部に突入し、冒頭主題と第二主題のあとに現れた推移主題とが転調されて繰り返し現れ完璧な展開部を作り上げて、再現部となっていた。再現部はほぼ型どおりに演奏されていたが、全体のテンポ感・リズム感ともにセンス良く進み、第一ヴァイオリンのよく目立つトリルの装飾なども明確であり、瑞々しい弦楽合奏が聞こえる非常に気持ちの良い颯爽とした演奏であった。

    第二楽章のロマンツエでは、譜面ではA-B-A-C-A-codaのロンド形式のスタイルの愛らしい楽章。美しい旋律がアンダンテで第一ヴァイオリンのロンド主題の形で現れて何回か登場した後、Bのスタッカートで始まる新しい装飾的なエピソードが歌われる。そしてCの中間部では、がらりと変わって短調の小刻みに揺れる嵐のような部分が強烈で、前後の優しく愛らしい部分といかにも対照的で面白い。今回のチェコ室内合奏団は、男っぽい集団であるが、この楽章では第一ヴァイオリンが実に優雅な音を出しており、指揮者なしでも乱れることなく優しく演奏しており、各声部の音の違いが映像で良く分り4:3:2:2:1の構成の室内合奏団の良さが良く現れていた。ロマンツエと名乗る楽章は、K.466やK.361などにも現れる愛らしい緩徐楽章で、いかにもモーツァルトらしい楽章とされる。


第三楽章のメヌエットでは明解なリズムを刻むメヌエット主題が弾むように力強く進行して気分を盛り上げ、これと対照的に、第一ヴァイオリンのソット・ヴォーチェで始まる愛らしく流れるようなトリオが美しく、短いながらも大好きな完璧なメヌエットに仕立てられていた。弦楽合奏の強弱の対比もよく目立ち、各声部の対比も明瞭で、ここでも室内合奏団の良さが現れていた。


フィナーレはロンドと記載されているが、軽快に飛び出すアレグロのロンド主題に対して副主題が一つしかなく、譜面を見ると前半と後半に反復記号が用いられ、変則的なロンド形式のように見える。しかし、このフィナーレのロンド主題は、何回も何回も繰り返して登場し、見事な盛り上がりを見せて軽快に進み、最後のコーダになっても登場して簡潔な形で終了していた。颯爽と進む弦楽合奏が心地よく、低域が明るく弾むように響くフィナーレ楽章であり、終始、軽快な心地よいテンポで第一ヴァイオリンを中心に進められ、まことに爽快な味わいのある演奏であった。

このアイネ・クライネには、フルオーケストラの演奏、今回のような室内合奏団による弦楽合奏、弦楽五重奏による演奏と大別して三種類あるが、それぞれに良さがあるものの、今回の演奏は心地の良い弦楽合奏を楽しむことができ、とても優れた演奏であったと思う。こういう演奏なら、書斎で聴いていても音量を上げると、豊かな弦楽合奏が部屋中に広がり、コンサートホールの良い席のような臨場感を得ることが出来て、手軽なハードデイスク録画の性能の良さを実感せざるを得なかった。私には、ワルター・ウイーンフイルのSP盤のこの曲が、レコード集めの原点であったので、画像を見ながら音楽を楽しむというこの現在の環境の変化に驚かざるを得ない。


(以上)(2015/11/07)



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