(古いLDの録画から;二つのピアノ協奏曲第9番K.271および第21番K.467)
14-8-2、ジャン=フィリップ・コラールの指揮とピアノによるピアノ協奏曲第9番K.271「ジュノム」、トウルース室内管弦楽団、1989、フランス、およびマリア・ジョアン・ピリスのピアノとマテイアス・バーメルト指揮、ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467、
トウルース室内管弦楽団、1989年10月、

−このコラールの映像は、彼の弦とのアンサンブルを大切にする独奏ピアノの性格が滲み出たような演奏であり、肌理の細かなニュアンスを大切にする丁寧な弾き方の「ジュノム」協奏曲であった。一方のピリスの演奏は、全楽章を通じてスピード感のあるソロピアノが刻印を押すような響きにクリアに捉えられており、映像は変化がなく単調なものであったが、演奏はなかなか楽しめるものであった −

(古いLDの録画から;二つのピアノ協奏曲第9番K.271および第21番K.467)
14-8-2、ジャン=フィリップ・コラールの指揮とピアノによるピアノ協奏曲第9番K.271「ジュノム」、トウルース室内管弦楽団、1989、フランス、およびマリア・ジョアン・ピリスのピアノとマテイアス・バーメルト指揮、ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467、
トウルース室内管弦楽団、1989年10月、
(1994/05/22、アマデオLD、Mozart Treasuresの1枚をS-VHS130.5に収録)

    8月分の第2曲目は、先月号に引き続きアマデオのMozart Treasures という数枚のLDをコピーしたS-VHSテープからであり、二つのピアノ協奏曲として、はじめに ジャン=フィリップ・コラールの指揮とピアノによるピアノ協奏曲第9番K.271「ジュノム」を、トウルース室内管弦楽団との協演でお送りしたい。この演奏の会場は、丁度、 7月号のオーギュスタン・デュメイの弾き振りによる二つのヴァイオリン協奏曲のうち第3番ト長調K.216を演奏した会場(14-7-2)と同一の会場のように見えた。コラールのピアノは、この映像が最初のものであり、スマートな姿を見せていた。
     ピアノ協奏曲の第二曲目は、マリア・ジョアン・ピリスのピアノとマテイアス・バーメルト指揮、フェルンスフェルス室内楽団による第21番ハ長調K.467であり、ここには恐らく新鋭ピアニストとして仏楽壇に再登場したまだ若いピリスの姿が写されている筈である。この演奏は9月号の二つのフルート協奏曲の演奏の次ぎに写されていたものであり、どうやら同じ建物で、指揮者中心のコンサート形式ではない新しいソリストと演奏者中心の協奏曲の映像を模索しているかのような変わった映像となっていた。



   今回の最初の映像のピアノ協奏曲K.271「ジュノム」は、ザルツブルグ時代に作曲された協奏曲の中では、抜きんでて内容的にも形式的にも優れた曲とされている。特に、この曲の第一楽章の冒頭の第一主題が、二つのモチーブで分割されており、初めにトウッテイで最初のモチーブで示されると、続けて独奏ピアノが次のモチーブで登場し、これらが対話風に繰り返されてから、オーケストラが主題提示部として第一主題を通して軽快に明るく提示されていた。ピアニストのジャン=フィリップ・コラールは、指揮者を兼ねており、ピアノの前に座って両手を振るとオーケストラのトウッテイが開始され、直ぐに鍵盤に向かって素早く独奏ピアノを弾き、もう一度印象づけるように繰り返してから、オーケストラで第一主題が進み出した。しかし、コラールは体を揺するだけの簡単な指揮振りで、コンビのトウルース室内楽団に任せており、続く第二主題も軽快に進み、盛り上がりを見せながら提示部を終えようとしていた。



     独奏ピアノの再登場はこの提示部の終結と併行して、三小節にわたる高いトリルで始まり、直ちに独奏ピアノが明るく第一主題を力強く奏で出し、軽快に16分音符の早いパッセージを重ねてから、すこし暗い感じの第二主題も独奏ピアノが弾き出した。コラールのピアノは軽いタッチで粒が揃っており、軽快に弾むように弾かれていた。それからはオーケストラと一体となって進行し、独奏ピアノが軽快なパッセージを重ねながら提示部を盛り上がりを見せて終結していた。
    展開部では、最初と同じ始まりでオーケストラとピアノが登場してから、冒頭の二つのモチーブが独奏ピアノで執拗に形を変えて装飾されて展開され、元気よく繰り返されて再現部に移行していた。再現部では、冒頭のソロとトウッテイが、互いに入れ替わりながら対話を行い、素晴らしいピアノとオーケストラの掛け合いが第一・第二主題へと続いていた。カデンツアは新全集には二つ用意されており、コラールはBの長い方を使っていたが、Bの方が演奏効果が優れているのか、弾く人が多いように思われた。




    第二楽章のアンダンテイーノは、珍しくもの憂い感じの長い序奏で始まり、ハ短調のヴァイオリンの合奏でゆっくりと開始され、ひとしきり綿々と続いてから、第一主題がピアノソロでゆっくりと始まる。コラールは絶えず装飾をつけながら淡々と歌いながら進んでから、ヴァイオリンに始まり独奏ピアノが応える第二主題が登場し、そのまま独奏ピアノがオーケスオラと明るく対話しながら進行する美しい曲となっていた。コラールのピアノは、ゆっくりとした丁寧なソロピアノで、ここでも粒だちの良いピアノを一音一音綺麗に聴かせていた。続いて短い独奏ピアノが華やかな展開部を終了すると、序奏なしで再現部が始まり、第一主題、続いて第二主題の順に再現されていた。新全集では二つのカデンツアが示されているが、コラールはBの長い方のカデンツアを弾いていた。




    フィナーレはロンドと書かれたプレストの楽章で、形式はA-B-A-C-A-B-A のロンドであるが、中央のCの部分が独立したメヌエットの形式になっており、一つの楽章で二つの楽章を包含するような大ロンド形式であった。Aの部分はコラールの独奏ピアノによる軽快なロンド主題で始まるが、独奏ピアノによるプレストが34小節も続き、それ以降はオーケストラを従えて、早いパッセージが続いていた。コラールは早いテンポであるがきめ細かく丁寧にテンポ良く弾き進み、後半のパッセージもなめらかに粒ぞろいに弾かれていた。続いてBの主題がピアノソロで早いテンポで始まりオーケストラとも交錯するように協奏されていくが、ここでロンド形式のA-Bの最後に、短い第一のアインガングが入り一休み。そこで独奏ピアノによるロンド主題Aが始めと同じスタイルで始まって、オーケストラとピアノで早いテンポのロンド主題が展開されて終息するとCのメヌエットが始まった。これはカンタービレと称された美しいメヌエットであり、まず美しい主題が独奏ピアノで流れ出し、やがてピッチカートのオーケストラを従えてゆっくりとピアノが進行しするが、このメヌエットではピアノが変奏曲のように装飾的に弾かれて、しばしの安らぎのように表情豊かに響いていた。ここでも一区切りを示すような短い第二のアインガンクが弾かれてから、再び最初の急速なロンド主題に戻っていた。最後のA'-B'-A"では、ピアノが再び良く動き回ってフイナーレを盛り上げてから、さり気なく終息していた。







     このコラールの映像は、彼の最初の映像であるが、彼の弦とのアンサンブルを大切にする独奏ピアノの性格が滲み出たような演奏であり、肌理の細かなニュアンスを大切にする丁寧な弾き方の「ジュノム」協奏曲であった。一音一音、丁寧に弾くピアニストには好感が持てるが、余りピアノが出しゃばらないのは、彼自身の指揮がそうさせていたようにも思われた。コラールは、CDでは彼の小編成のオーケストラとのピアノ協奏曲やピアノ四重奏曲などが残されていたが、このHPにおける映像となると、1995年10月に来日した際に、 N響とプレヴィンの指揮によるピアノ協奏曲イ長調第23番(13-3-2)しか、残念ながら記憶に無い。映像で彼の弾き方をよく見ていると、性格的に温和しいピアニストのようであり、他人に合わせるのが好きなようで、もっと個性的であっても良いと思われた。モーツァルト以外だと変わるのかも知れないが、今回の演奏も彼の地道な弾きぶりが印象に残り、良い年齢になっている筈であるので、今現在どうしているか気になるピアニストの一人であると言えよう。



       第二曲目はピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467であり、ピアニストはマリア・ジョアン・ピリス(1944〜)のピアノとマテイアス・バーメルト指揮のフェルンスフェルス室内楽団という初めての団体との協演であった。初期のレーザーデイスクが音源であり、1989年10月の録音であるから彼女が再出発を始めた時期であり、まだ初々しい表情を見せていた。このLDは前2曲がフルート協奏曲であり、協奏曲でありながらオーケストラを前にしたコンサートの映像ではなく、ソリストを中心にした映像であり、オーケストラは、団員たちがバラバラに位置して演奏をする変則的な人間中心の撮り方になっていた。このピアノ協奏曲も同様であり、弦のユニゾンで始まる行進曲風の第一主題が明るくリズミックに始まって弦と管の応答が続いているうちは、指揮者の姿は一向に現れず、ピリスのピアノを前にした表情が写されており、トウッテイによる経過部がリズミックに進行して、途中からオーボエやフルートが明るい響きを見せるところあたりでオーケストラ団員たちの姿が登場していた。提示部では第二主題は現れないまま、終始明るい響きの中でトウッテイで行進曲が堂々と進行し、提示部を短く終了していた。



     続いてファゴットとフルートに導かれるように独奏ピアノがアインガングにより明るく登場し、トリルを繰り返しているうちに、オーケストラによる第一主題が始まって、ピリスの独奏ピアノは力強くこれを引き継いで、華やかなパッセージで威勢がよく進行し始めた。ピリスが弾いているピアノの機種は最近はヤマハであるが、今回は残念ながら判別出来ないまま、第一主題後半の早いパッセージは繊細で一指乱れず明確に弾かれていた。やがて独奏ピアノがト短調交響曲の冒頭を思わせる副主題を繰りかえして明るく印象づけてから、軽快な第二主題が独奏ピアノで歌うように現れた。そしてピリスのピアノがオーケストラと競い合うように素晴らしいパッセージを見せながら急速に進行し、次第に高揚しながらオーケストラとともに提示部を締めくくる盛り上がりを見せて展開部へと突入して行った。
        展開部ではピリスのピアノがひときわ目立ち、まさに絢爛たる独奏ピアノによる技巧が示されていたが、ピリスはオーケストラとも対等に向き合い、しっかりと力強くピアノを弾きこなしていた。再現部では提示部とは主題の順序が異なっており、オーケストラで第一主題が呈示された後、独奏ピアノがこれを引き継いでから、直ぐに第二主題がピアノで再現されたり、後半で第一主題のトウッテイによる提示の後オーボエやフルートが明るい響きを見せる印象深い副主題が現れたりしていた。最後のカデンツアでは、ピリスはどこかで聴いたことのある緩急自在なものを流暢に弾きこなしていた。




    第二楽章は弦楽合奏で始まる美しい静かなアンダンテ楽章で、コントラバスのピッチカートと第二ヴァイオリンとヴィオラの三連符による豊かな伴奏に乗って、第一ヴァイオリンが美しいテーマを歌い出し、その甘い美しい調べにはつい引き込まれてしまう。やがて木管も加わって、静かな美しいオーケストラの世界が築き上げられてから、独奏ピアノが自ら左手で三連符を弾きながら登場し、弦楽合奏の美しいピッチカートによる豊かな伴奏に乗って、ピリスは右手でこの主題を明快に弾きだした。独奏ピアノは、一音一音を明確に弾き、右手と左手を交差させたりしてひとしきり美しく歌ってから華やかなトリルにより終結していた。中間部に入って新しい主題がピアノによって示されるが、この中間部のピアノは、矢張り三連符に乗って、例えようもないほど美しく、ピリスはここでも一音一音ゆっくりと刻印を押すかのようにしっかりと丁寧に弾いており、ここでピアノとオーケストラで交わす対話には夢を見るような美しさがあった。再び冒頭の静かな主題に戻るが、ここでは始めから独奏ピアノとオーケストラで始められ、幾分変奏風に現れて進行するが、独奏ピアノの方も幾分装飾を交えて弾かれており、ごく短いコーダの後にひっそりと静かに終息していた。カデンツアはないが、ピリスの装飾風のピアノが加わって、落ち着いた爽やかな雰囲気を持った美しい楽章であった。





    第三楽章は、アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイの華やかな主題で始まる展開部を欠いたソナタ形式。オーケストラでロンド主題に似たな明るく軽やかな第一主題がトウッテイで始まり繰り返されてから、弦と木管の対話があってフェルマータの後に、ピリスの独奏ピアノが短いアインガングで登場し、改めてこのロンド風な主題を軽快に弾きだした。再びオーケストラに主題を渡してから、独奏ピアノによる流れるような16分音符の副主題が走り出し、ピリスは勢いよく軽快にパッセージを弾き進めていた。オーボエに続いてフルートも加わった木管合奏で示された第二主題が提示されると、直ぐに独奏ピアノに引き継がれ、続いてピリスがお得意のスピード感のあるピアノの走句が続いて、快調なピアノのペースとなり、オーケストラと対話したり従えながら進行していた。再びフェルマータの後に再現部に突入して、独奏ピアノがロンド風な冒頭主題を弾き出すが、今度は順序を変えてソロ、トウッテイの順で第一主題が再現されていた。再び独奏ピアノが走り出し、第一主題・第二主題と独奏ピアノが鍵盤上を走り回るように駆けめぐって頂点に達し一気にカデンツアとなっていた。最後のピリスのカデンツアは、冒頭のロンド主題の短いあっさりとした回想風のものであり、最後は独奏ピアノの輝くような音階の上昇で華やかにこのフィナーレを終結していた。



   指揮者バーメルトは、この映像では姿を現さず、陰で指揮をしていたようであるが、この曲をしっかりと捉えており、各楽章ともテンポも良く安心して聞くことが出来た。ピリスのピアノも、機種は識別出来なかったが良く響いており、全楽章を通じてスピード感あるソロピアノが刻印を押すような響きにクリアに捉えられており、映像は変化がなく単調なものであったが、演奏はなかなか楽しめるものであった。第一楽章では行進曲風なピアノの運びが実に軽快に堂々として、第二楽章では優美なピアノが印象深く、フィナーレでは早いパッセージを見事に弾きまくり、女流ピアニストの第一人者を思わせる力強いタッチを見せて曲を盛り上げていた。

    ピリスは、CDではテオドール・グシュルバウアーの指揮によりエラートレーベルでピアノ協奏曲を録音していたが、全集ではなく彼女が好きな曲を網羅したものであり、彼女が刻印を押すようにピアノを響かせる演奏が評判であった。このHPにおいても、彼女が残したピアノ協奏曲は、 第9番「ジュノム」がガーデイナー(5-2-1)およびハハイテインク(13-7-2) 第17番がプロムシュテット(5-5-1) 第20番がブーレーズ(4-2-2)、第21番がバーメルト(14-8-2)などがあるが、全てCDに収録された彼女が得意な曲たちであろうと思われる。彼女の最初の白黒の映像のアップを機会にして、ピアニストの演奏者リストに掲載したいと考えている。

(以上)(2014/08/13)


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