(三つの交響曲;ムーテイ・ウイーンフイルの来日公演、K.425、K.504、K.550)
14-8-1、リッカルド・ムーテイ指揮ウイーンフイルの1999年来日公演記録、交響曲第38番ニ長調K.504「プラーハ」、交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」、および交響曲第40番ト短調K.550、
1999/3/17公演、サントリー・ホール、

− ムーテイの「プラーハ」は、マイペースの軽快な指揮振りのように見えていたが、全体としてみれば堂々としたオーソドックスな勢いのある演奏であり、安心して浸れる良いテンポで進行し、親しみの持てる演奏であった。続く「リンツ」は、オーケストラ全体が一体となって躍動していくエネルギッシュなスピード感があり、恐らくこの曲が一気に作曲された雰囲気をそのまま音にしたような感覚に聞こえていた。ト短調の交響曲では、久しぶりでテンポの良い緊張感に溢れた演奏を聴いて、颯爽と流れるこの曲の良さとウイーンフイルの巧さを映像でしみじみと味わうことができた−


(三つの交響曲;ムーテイ・ウイーンフイルの来日公演、K.425、K.504、K.550)
14-8-1、リッカルド・ムーテイ指揮ウイーンフイルの1999年来日公演記録、交響曲第38番ニ長調K.504「プラーハ」、交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」、および交響曲第40番ト短調K.550、
1999/3/17公演、サントリー・ホール、
(1999/05/09、NHK教育TV芸術劇場よりS-VHS-300テープに3倍速で収録、)

   8月号の最初の交響曲は、1999年にリッカルド・ムーテイがウイーンフイルを引き連れて来日公演したオール・モーツァルト・コンサートをアップしたいと思う。データベースをチェックしていたときには、このコンサートは第38番と第40番の2曲であると考えていたのであるが、テープの内容を見ると、有り難いことに第36番「リンツ」が2曲目に演奏されていた。また、このたび、マゼールのNHKの追悼番組で第38番「プラハ」(2012)が演奏されていたが、そのため、思いつきであるが、今回は大変でも、ムーテイの3曲の交響曲をアップすることとし、来月の9月分は、このマゼールの「プラハ」と、今月レコード芸術に添付していたラトルとベルリンフイルの第41番ハ長調「ジュピター」交響曲の2曲を、9月分としてアップしたいと考える。

    1999年のムーテイと言えば、メガネなしで格好良く指揮をする姿が捕らえられており、コントラバス4台の中規模な二管編成のオーケストラの構成で、サントリーホールで、ぐいぐいと前へ進む勢いがよく落ち着いた厚みのある響きの指揮振りが目立っていた。当時のウイーンフイルとは24年ぶりの来日と解説されていたので、これ以降毎年のように訪日されていたように思われる。コンサート・マスターはライナー・キュッヘルさんであった。このHPには、リッカルド・ムーテイ(1941〜)として、彼の映像の記録のデータベースが作成されているが、彼は1991年のモーツァルトイヤーでウイーンフイルを振ってモーツァルトの交響曲デビューを果たして以来、ウイーンフイルと蜜月状態を築いてきており、今回の来日記念のコンサートも息の合った演奏を聴かせてくれると楽しみにしていた。

    今回の番組は、芸術劇場という番組で、冒頭の30分は「ステージドア」というウイーンフイルのコンマスのライナー・キュッヘル氏と楽団長の第一ヴァイオリンのクレメンス・ヘルツベルグ氏に、作家の塚本哲也氏がウイーンフイルの「変わるものと変わらぬもの」というタイトルでインタビューするという試みがあり、ウイーンフイルの楽壇の最近の話題についての語りがあった。
    塚本氏は1962年ボスコフスキーが指揮をしたNYコンサート以来、ウイーンフイルが好きになって40年近くなると言う熱烈なファンであり、世紀の変わり目として楽団がどういうことを考えているかの質問者になっておられた。彼らは新しいこととしては、真っ先に、若い人たちをターゲットとして、メータやアーノンクールなど著名な指揮者によるウイーンとベルリンの二つの野外コンサートの試みを挙げていた。今回の指揮者ムーテイについては、永年、お互いに信頼して付き合ってきた方と言い、特にシュトラウス一族について理解があると語っていた。ウイーンフイルの指揮者については、1933年以来客演指揮者のみで運営し、団員が自主的に選定するスタイルを堅持している。歌劇場、モーツァルト週間など各種多様な音楽祭での若い新しい指揮者との出会いを重視しており、お互いに馴染んでいくことがこの方式には重要だと語っていた。


    最近の新しい試みとして、公開レハーサルを行うこと、また今回団員により行われた公開レッスンを挙げていたが、事前に録音テープを送って貰い、特に年齢の若い人を対象に一緒にレッスンを行い、ソリストとして自我を育てていくことで少しでもお役に立てばとキュッヘル氏が語っていた。また、女性団員が2年前から加わっているがという質問には、150年間男性だけだったので、どう変わるかは分からないが、何かが変わると思うと語っていた。一方、フォルクスOPも国立歌劇場も民営化の影響が避けられず、難しい問題であると語っていたが、助成金はあるもののそれぞれが独立した予算を組んで効率的に実施して行く必要があり、画一的にならずそれぞれの文化が守られることが重要であると語っていた。
    日本の音楽界について何かアドヴァイスをとの言葉に、日本に才能の豊かな人が多いが、創造力を伸ばせるようにもっと世界に送り出して欲しい。やや硬直した教育のせいか、若い人にもっと自由にさせて欲しいとキュッヘル氏、楽団長さんは、日本で親しい人は私と同年代かそれ以上の方なので、若い人に機会を与えて欲しいと語っていた。


このサントリー・ホールのコンサートの第一曲目は、交響曲第38番ニ長調K.504「プラーハ」であった。ムーテイは、初めの第一楽章の序奏部では、最初の一撃から柔らかくゆっくりとしたテンポで入り、弦楽器により整然と一つの頂点に達してから、テインパニーの輝かしいリズムと弦の上昇音形に乗って堂々と行進曲風にリズミックに進行し高まりを見せていた。このようなひしひしと迫る厳粛な力強い緊張感は、序奏として意味のあるものに思われた。一呼吸置いて一転してソナタ形式の最初の主題が、第一ヴァイオリンのシンコペーションで颯爽と走り出すと、フォルテの木管が主題後半を引き継いで、それから全ての楽器により歌われて、形を変え楽器を変えながら対位法的に展開され力強く進行していった。やがて弦楽器で何回も孤を描くように弾かれる軽やかな第二主題が提示され、それに木管群やピッチカートも加わって素晴らしい提示部の後半の盛り上がりを作り出していた。ムーテイはここで再びしっかりと冒頭のアレグロに戻って丁寧に繰り返しを行っていたが、ここでは充実したオーケストラの響きが堂々と勢いを増して継続され、力強く提示部をまとめていた。


      長い展開部では第一主題の前半と後半の主題断片が次ぎつぎに対位法的な変化をしながら繰り返され展開されて、ムーテイは力強い充実した展開部に発展させて再現部へと突入していた。再現部ではかなりの変化が見られ第二主題の後にも第一主題の動機が現れるなど変化を見せながら進行し、最後はコーダで一気に結ばれていた。ムーテイは古い伝統的な指揮者と異なって提示部の繰り返しは行っていたが、末尾の展開部からの繰り返しは省略していた。ウイーンフイルとのコンビは絶妙であり、ムーテイの意のままに音楽が颯爽と進行するさまは、まさに芸術的なものを思わせた。

    第二楽章のアンダンテでは、ムーテイはゆっくりしたテンポで弦楽器を穏やかに歌わせながら繰り返し、直ぐにスタッカートの動機が続いてカノン風の展開になり、弦に応えるように木管が同じ旋律を奏でて行き、美しい動機が重なるように進んで経過部を作り上げていた。ムーテイは実に丁寧に歌わせていたが、やがて穏やかで軽やかな第二主題が弦により提示され、オーボエやフルートでも繰り返されて穏やかに美しく進行していた。ムーテイはこの主題提示部を始めから丁寧に繰り返し、じっくりともう一度全体を歌わせてから展開部に移行していた。展開部では、第一主題のスタッカートの動機がカノン風に複雑に激しさを増して展開されるが、これが実に印象的で素晴らしい効果をあげていた。再現部では第一主題、第二主題と進んでいたが、後半の木管の重奏がとても美しく、ひときわ目立っていた。



     フィナーレでは、二つの繰り返しを持つソナタ形式。冒頭の第一主題が「フィガロ」の第二幕の中頃のスザンナとケルビーノの二重唱「早く、早く」の旋律にとても良く似ており、ロンド主題のような形で舞台同様に素早く小刻みに進行する。続く第二主題も軽快なテンポで進行し、弦の提示に対し管が応える対話のように進み、特にフルートが目覚ましい活躍をしていた。ムーテイは提示部の繰り返しを行い最後の繰り返しを省略するオーソドックスな演奏をしていたが、展開部では冒頭の主題を繰り返し展開しており、このフィナーレは、全体として、終始、第一主題の軽快なテンポで進行し、後半の最後に力強い終わり方をして曲は結ばれていた。大変な拍手が湧き起こっていたが、ムーテイは丁寧にこれに応えていた。
ムーテイの演奏は、マイペースの軽快な指揮振りのように見えていたが、全体としてみれば堂々としたオーソドックスな勢いのある演奏であり、安心して浸れる良いテンポで進行し、とても親しみの持てる「プラーハ」を聴かせていた。序奏のゆっくりした落ち着きのある大胆な進行、第一楽章のエネルギッシュなアレグロ、第二楽章のゆっくりしたテンポの美しいアンダンテも魅力的であったし、フィナーレの急速なプレストも颯爽として素晴らしかった。二つの繰り返しを持つソナタ形式では、前半の繰り返しは、丁寧に行い、後半の繰り返しは古楽器指揮者と異なって省略するスタイルを堅持していた。



     コンサートの第二曲目は、交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」であり、舞台ではムーテイが拍手で登場して指揮台に上がると、早速、演奏が開始された。オーケストラは、先ほどと変わらずに、コントラバスが4台でフルサイズの編成に見えた。
    第一楽章は冒頭のアダージョの序奏が、ユニゾンの荘重な付点リズムを持って堂々と開始され、続いてヴァイオリンが美しい旋律を奏でてファゴットとオーボエが引き継いで進行しており、ムーテイはゆっくりしたテンポで進めてから、重い響きで短く収束させていた。一転して、第一楽章の軽快なアレグロ・スピリトーソの第一主題が明るく晴れやかに開始されるが、この晴朗な主題の明るさとリズム感が実に快い。続いて現れる行進曲風のリズムにのってぐいぐいと軽快に進む主題も軽やかであり、テインパニーやトランペットの響きも清々しく、ムーテイは軽快そのものに伸びやかに進めていた。続いて優雅な第二主題がオーボエと弦楽器により走り出すが、この後は溢れるばかりの旋律がとうとうと流れるように進行し、主題提示部の盛り上がりを見せていた。ムーテイは再び冒頭の明るいアレグロに立ち返っていたが、この軽快さと明るさとを保ったまま、展開部へと突入していた。ここでは新しい明るい主題が弦楽器で登場しオーボエなどにより交互に現れながら堂々と進んで、充実した力強い音を響かせていた。続く再現部では、やや型どおりに第一主題に続き第二主題と軽快に再現されていたが、ムーテイはテンポ良くリズミカルに全体を進めていた。最後のコーダでは展開部の主題が再現されるなど新たな試みも見られ、この楽章全体としては、淀みのない晴朗とした明るさを保ちつつ一気に収束していた。


      第二楽章では、優美で荘重感を持った第一主題が厳かにゆっくりと登場し、 低弦の響きが豊かな気持ちにさせてくれるアンダンテであった。ムーテイは余り大きな身振りをせずにオーケストラに預けるように優雅な指揮ぶりをしており、美しい弦の響きが心地よく進行していた。続いて現れる第二主題でも弦楽器主体で厳かに進行していたが、アンダンテ楽章で耳に入るトランペットやテインパニーの響きが珍しく、全体に音の厚みが加わっていた。展開部では低弦とファゴットで繰り返し現れる上昇旋律が深く響き、それが第一・第二ヴァイオリンにも移行して、極めて充実した印象をもたらしていた。再現部は型通り進行していたが、優美で厳かな雰囲気が持続されたアンダンテ楽章であった。



       第三楽章は、フォルテで始まる明るく威勢の良い堂々とした感じのメヌエットであり、金管やテインパニーが威勢良く、繰り返された後にその後半に現れる明るい旋律が、厳かに響きわたって舞曲的な性格のメヌエットであった。ムーテイは軽やかに体を振ってリズムを取りながら指揮をしていたが、その姿にはゆとりのようなものを感じさせた。トリオでは第一ヴァイオリンとややくすんだオーボエとの二重奏で印象深く始まり、後半では弦に支えられてオーボエとファゴットの二重奏となり、明るく木管が導いていく優雅なもので、堂々としたメヌエットとの対比が鮮明な素晴らしい楽章であった。



     フィナーレは曲全体を締めくくる急速なプレストであり、繰り返しを含むソナタ形式となっていた。曲は整然とした快活な第一主題と、それに密接に関連する第二主題が現れ、続いて次々と新しい関連主題が出て急速に進み、目まぐるしく変化しながら一気に進行しており、盛大に提示部を盛り上げていた。ムーテイはきめ細かく指揮棒を振り、明るくスピード感を持って軽快に躍動するように進み、オーケストラ全体が息の合った疾走ぶりを示していた。提示部は改めて繰り返され、疾風のように勢いよく進んでから、長い展開部も推移主題が使われて急速に進行し、再現部に入っても、その勢いは止まらず、終結部ではトランペットとテインパニーも加わった総奏のフォルテッシモで一気呵成に輝かしく終結していた。

     このオーケストラ全体が一体となって躍動していくエネルギッシュなスピード感は、このシンフォニーに特に見られる威勢の良いもので、迷いのないストレートなアレグロ感覚を持ち、恐らく一気に作曲された雰囲気がそのまま音に現れたような感覚を持っていた。映像を見ていると、指揮者ムーテイを中心にしてオーケストラ全員が一体となって、スピード感溢れる瑞々しく躍動する音楽を作り上げており、さすがウイーンフイルと思わせる壮観な様子が写されていた。映像はハイビジョン規格なのであるが、古いS-VHSで収録したため、演奏はとても良いのであるが音も画像も見劣りがして、真に残念であった。

コンサートの第三曲目は、交響曲第40番ト短調K.550 であるが、この曲はムーテイの二度目の登場であり、前回もウイーンフイルを指揮(1991)して、第2版のクラリネット版を使い、第一・第四楽章は提示部の繰り返しを行い、第二楽章では提示部も末尾の繰り返しも省略して演奏されていた。今回、この曲を改めて聴き直すことになるが、前回とどのように演奏が異なるか興味があった。

     第一楽章のモルト・アレグロは、ヴィオラの伴奏に乗って軽いさざ波を打つような弦楽合奏で始まるが、前回同様にムーテイのテンポは中庸であり、厚みのあるウイーンフイルの弦楽合奏が良く揃ってとても美しく聞こえていた。ムーテイのこの始まりの主題は明るく始まり暗い翳りもあって、ウイーンフイルの確かな腕がこの素晴らしい合奏を支えていると思われた。やがて一呼吸置いて、第二主題に入って弦から直ぐにクラリネットとファゴットが活躍をし始め、前回同様に第2版であることを気付かせた。ここでも弦と管が交互に受け渡ししながら軽快に進んでいたが、ムーテイの軽快なテンポは変わらず、堂々と落ち着いて進行していた。ここで提示部の繰り返しが行われて、冒頭から再現されていたが、実に豊かにオーケストラが流れて気分を盛り上げていた。
    展開部に入ると冒頭の導入主題が暗い表情で現れ、ムーテイは速いテンポで繰り返し、続いて弦楽合奏でうねるような対位法的な展開がテンポ良く進行し、次第に力を増しながらこの主題だけで進んでいた。再現部では、再び第一・第二主題が美しく提示されていくが、ムーテイはここでもきびきびした鋭い指揮振りで、テンポを崩さずに最後まで進めていた。この楽章は、ムーテイの一貫したテンポ感とウイーンフイルの明暗のニュアンスに富んだ弦楽合奏の相性が良く、ウイーンフイルの暖かく厚みのある美しい弦楽合奏の響きが強く印象に残っていた。



     第二楽章では、ムーテイは、美しい弦楽合奏の第一主題を遅めのテンポでじっくりと始め、ホルンの伴奏がゆっくりと続いていたが、いつの間にか現れた軽やかな32分音符の休止を挟んだ3度動機のフレーズが実に美しい。そしてこのフレーズが一人歩きするように弦から管へ、管から弦へ、上昇したり下降したり、うねるように繰り返され、このウイーンフイルによる管と弦との応答が実に美しい余韻を残していた。続いて第二主題に入って美しい弦楽合奏が開始されても、この特徴あるフレーズがいつの間にかこだまのように響いており、アンサンブルの良い管と弦の絶妙な音色の美しさが魅力的であった。ムーテイは提示部で繰り返しを行い、再び冒頭から演奏されていたが、この美しいフレーズは同じように繰り返されて、展開部に移行していた。しかし、展開部でもこのフレーズが顔を出し、力強く弦から管へ、管から弦へと移行して、ここでは下降のパターンで展開されていた。展開部の後半ではオーボエの新しい半音階的動機が現れて、充実した響きを聞かせていた。再現部に入って、第一主題・第二主題と続いていたが、これらのなかにも弦と管のフレーズのアンサンブルの美しさが冴えており、さらに弦楽合奏の中でフルート、クラリネット、ファゴットが展開部で現れた半音階的動機を再現させて歌っていた。綿々と続くこの楽章の独特の装飾効果と繊細なアンサンブルの良さは実に魅力的であり、さすがムーテイとウイーンフイルのコンビと思わせる素晴らしいアンダンテ楽章となっていた。



     第三楽章のメヌエットでは、ムーテイはゆっくりしたテンポで軽快なアレグレットの弦楽合奏で開始していたが、ムーテイはメヌエットのリズムを刻むように指揮をしていた。これは出だしの三小節のフレーズがカノン風に何回も繰り返されて進行する変則的なメヌエットのせいなのであろう。しかし、ここではしっかりと三拍子を刻んで軽快に歯切れ良いメヌエットとなっていた。トリオでは、ほぼ同じテンポで弦楽合奏で始まり、木管の四重奏がこれに応えて美しさを強めていたが、繰り返しの後では木管の四重唱に続いて二つのホルンが響きだし、後半では力強い重厚な管楽合奏が続いて、弦と管のアンサンブルの対照の妙が印象的であった。ここでは、ホルンの響きがいつも心配であったが、さすがウイーンフイッルのホルンの出来は素晴らしく、堂々たる厚みのあるホルンの響きを安心して楽しむことが出来た。



    フィナーレはアレグロ・アッサイであり、ムーテイはやや早目のテンポで第一主題を進めていたが、軽快にスムーズに流れる厚みのある揃った弦楽合奏が実に軽快であった。しばらく流れるような見事な弦楽合奏が続いてから、やがてなだらかなヴァイオリン三部の第二主題が歌うように進行するが、ここでクラリネットが明るく歌い出して第二版の特徴を浮き彫りにさせていた。ここでもムーテイは、第一楽章と同様に提示部の繰り返しを行っており、再び見事な厚みのあるテンポの良いオーケストラが流れていた。展開部では冒頭の主題の動機が早いテンポで、弦から管へ、管から弦へと交替しながら執拗に繰り返されており、管と弦のアンサンブルが良く、ここでもホルンのファンファーレが素晴らしく、ウイーンフイルの響きが楽しめた。再現部でもこの安定した速いテンポが続き、第一主題・第二主題と流れるようにスムーズに進行し、一気苛性に収束させていたが、ムーテイは前回と異なって、再び展開部から繰り返しを行い、さらに再現部へと疾走し、この楽章を入念に仕上げていた。ムーテイの軽快なスピーデイなテンポで第一・第四楽章が上手く流れて、流れるような弦楽合奏の響きがこの曲では何よりも大事なことを感じさせた。

     久しぶりでテンポの良い緊張感に溢れたムーテイの第40番ト短調の交響曲を聴いて、颯爽と流れるこの曲の良さとウイーンフイルの巧さを映像でしみじみと味わっていた。ムーテイは大変な拍手により迎えられていたが、一人の女性が花束を捧げると、ムーテイはにこにことして受け取っていた。そして、再び舞台に現れると、直ぐに「フィガロの結婚」と声を出し、早速、序曲の演奏を開始した。曲は非常に早いテンポで始まっていたが、ムーテイはその早いテンポを押し通すように、一貫して軽快に進められていた。

      三つの交響曲を通して聴いたコンサートであったが、ムーテイとウイーンフイルによる自信に溢れた演奏であり、どの曲も充実感に満ち溢れた演奏であった。

(以上)(2014/08/05)


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