(二つの交響曲;最新録画のジュピター交響曲とD-VHSのプラーハ交響曲)
14-7-1ヤニック・ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア交響楽団の交響曲第41番ハ長調「ジュピター」、2014/06/03サントリー・ホールおよび、ゲルト・アルブレヒト指揮ドイツ室内管弦楽団の交響曲第38番ニ長調「プラーハ」K.504、
1990/12/02、クリスチャン・ツアイス・ザール、ヴィースバーデン、
(2014/06/22、NHKクラシック音楽館よりHDD3に収録、および2006/02/05、CS736CHの放送をD-VHS132.9に収録)

−37歳でこの楽団を指揮するようになったセガンは、若々しい風貌でエネルギッシュに指揮をしており、映像の冒頭のインタビューで新しいサウンドをお示ししたいと語っていたが、歯切れの良い生き生きした軽快で爽やかな「ジュピーター」交響曲となっていた。 一方の私と同年代のアルブレヒトによる「プラーハ」交響曲は、指揮のスタイルは古楽器演奏であるが、演奏内容は軽快感をもつ伝統的な重厚なしっかりした演奏であり、とても好感が持てた−


(二つの交響曲;最新録画のジュピター交響曲とD-VHSのプラーハ交響曲)
14-7-1ヤニック・ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア交響楽団の交響曲第41番ハ長調「ジュピター」、2014/06/03サントリー・ホールおよび、ゲルト・アルブレヒト指揮ドイツ室内管弦楽団の交響曲第38番ニ長調「プラーハ」K.504、
1990/12/02、クリスチャン・ツアイス・ザール、ヴィースバーデン、
(2014/06/22、NHKクラシック音楽館よりHDD3に収録、および2006/02/05、CS736CHの放送をD-VHS132.9に収録)


   このHPの交響曲については、新しい映像ストックがなくなってきたので、これからは未アップの交響曲を古いS-VHSのストックの中から掘り出す必要があると考えていたが、7月分の交響曲については、去る6月22日に収録したばかりの最新のネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団のジュピター交響曲ハ長調K.551を早速取り上げ、それに手元にあった古いD-VHSからアルブレヒト指揮ドイツ室内楽団の交響曲第38番ニ長調K.504「プラーハ」を加えた2曲の交響曲をアップしたいと思う。



   フィラデルフィア交響楽団と言えば、われわれの映像の歴史では、ストコフスキーのデイズニーの「ファンタジア」などから始まっており、続くオーマンデイからクラシカ・ジャパンの放送に取り入れられ、極めて親しみを覚えている。その後、ムーテイ・サバリッシュ・エッシェンバッハ・マゼールとヨーロッパ系の有名指揮者が続いてきた。しかし、よく調べてみるとN響の指揮者だったカナダ系のシャルル・デユトワなども名を連ねており、今回のヤニック・ネゼ=セガンもその系列のフランス系カナダ出身の有望な指揮者で、8代目とされていた。この指揮者はザルツブルグで何回か聴いたことがあるが、このHPでは初めて登場することになる。今回の訪日プログラムでは、「ジュピター」交響曲の後にマーラーの第一交響曲「巨人」が予定されており、フィラデルフィア・サウンドと言われる伝統的な華麗なサウンドを聴かせることが期待されていた。



   舞台では、コンサート・マスターのディヴィッド・キムが入場してきて拍手が沸いたが、直ぐにオーボエとコンマスにより音合わせが行われていた。そこへにこにこしながら、小柄なセガンが登場して指揮台に立ち、周囲を見渡して挨拶を行ってから曲が重々しく開始されていた。この交響曲の第一楽章の第一主題は、フルオーケストラによる堂々たる三つの和音で開始されるが、指揮者のネゼ=セガンの指揮振りは、両手を挙げて小刻みにリズムを取る人であり、オーケストラの配置はいつものN響とほぼ同様で、右手奥に3台のコントラバスを並べ中央にテインパニーと管楽器を置く中規模のスタイルであった。重厚な第一主題がやや早めのテンポで現れて、リズムをきざむように堂々と主題が進行してからフェルマータのあと、フルートとオーボエが二重奏で主題を変形しながら軽快に繰り返され、躍動するように進行して、「ジュピター」らしさを感じさせるリズミックな堂々たる経過部が続いていた。そして第一ヴァイオリンによる優雅な第二主題が提示されて趣を変えながら進行していたが、休止の後にフォルテの大音響とともにファンファーレのようなオーケストラによる大爆発が起こって素晴らしい盛り上がりを見せて、フィラデルフィア・サウンドの一端を示していた。再び休止の後、軽快なピッチカートに導かれてブッフォ風の軽やかな副主題が流れ出し、最後をまとめるように収めて提示部を明るく終息していた。セガンはここで冒頭からの繰り返しを行っていたが、改めてフィラデルフィア・サウンドを気づかさせる厚いオーケストラのピラミッド型の響きを伴った堂々たるオーソドックスな演奏が続いており、やや早めのテンポではあるが、壮大な威厳に満ちた演奏に聞こえていた。





       展開部では前半が先の軽快な副主題が様々な形で展開され、後半では冒頭の主題が弦と木管とが交互に主題を変形しながら展開されていたが、ここでもセガンのテンポはやや早めで、分厚い音の響きが繰り返し現れていた。再現部ではほぼ型通りに第一主題・第二主題と再現されていたが、一呼吸をおいた小休止の後の大爆発では、提示部よりも一段と激しく明快に再現されており、後半が盛り上がる「ジュピター」らしさを発揮させていたように思われた。終始オーソドックスな軽快な進め方や良く歌わせる指揮振りにはとても好感が持てた。





    第二楽章は弦楽器だけで始まる厳かな感じの美しい第一主題が静かに提示され、淡々と進むアンダンテ・カンタービレであるが、セガンは弦の流れを実にゆったりと促すように丁寧に指揮をしており、悠然とゆっくり進んでいた。続いて木管群が歌い出す副主題では弦楽器と対話するように明るく音を響かせていたが、第二主題も明るく弦がこだましてうねるように進行するが、木管も負けじとこれに参加し、フルートもファゴットも存在感を示すように歌っていた。ここで提示部は繰り返されず、そのまま展開部に移行していたが、ここでは第一主題の後半の副主題が展開の対象となり、弦がこだまするように繰り返し展開されていた。再現部では第一主題の冒頭が第一ヴァイオリンで呈示されていたが、提示部と趣を変えて次第に低弦が32部音符のうねるような流れを示し、これが第一ヴァイオリンに移行してから、第一・第二ヴァイオリンが、続いてヴィオラと低弦が唸りだし、交互にうねるように変奏されていた。続く第二主題も第一ヴァイオリンから木管も加わって提示部と異なる変奏を見せていたが、セガンはこの再現部の弦の豊麗な32分音符の流れと、フルート・オーボエ・ファゴットなどとの対話の部分とを、実に明快に示しながら流れるようにゆったりと指揮をして、この楽章の豊かさを暖かく示していた。



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   続く第三楽章では、実に壮大な響きを持ったメヌエットであるが、セガンはやや早めのテンポでメヌエット主題をリズミックに進め、木管が一頻り歌い出しホルンやトランペットが鳴り響いて、壮麗なメヌエットの世界が繰り広げられていた。トリオでも同じような早めのテンポで、フルートの出だしのあとにオーボエと弦が合奏する面白い場面が繰り返され、そのあとに第一ヴァイオリンと木管や金管全体が和音を合奏しながら流して趣を変えてから、再びリズミックなメヌエット主題に戻っていた。譜面にしてわずか6枚の短い曲であるが、実に充実したメヌエットであった。



   フィナーレはド・レ・ファ・ミの四つの音から作られるモルト・アレグロの堂々たるフーガ主題に始まり、この主題を追って威勢の良い主題が軽快に提示され繰り返されていき、次第に元気良く高められて壮大なドラマを造り上げていくが、          セガンはこのフィナーレを両手を広げて速めのテンポでリズムを取りながら、オーケストラを盛り上げるように力を込めて指揮をしていた。オーケストラの方もこれに応えるように颯爽として堂々たる勢いのある響きを見せていた。提示部の繰り返しは省略され、展開部では冒頭主題によるフーガ的展開が、繰り返し繰り返し丁寧に行われその都度壮大さを増していた。再現部に入っても、この壮大なフィナーレ主題が展開部の続きのように対位法による展開がなされ、特に最後のコーダでは、オーケストラ全体が力強く盛り上がりを見せて、高揚しながら高らかに終結していた。指揮を終えたセガンは、緊張から一転して解放されて、微笑みを見せながらにこやかな表情で、拍手に答えていた。



   37歳でこの楽団を指揮するようになったセガンは、若々しい風貌でエネルギッシュに指揮をしており、映像の冒頭でインタビューにも快く応じていた。このオーケストラはこの楽団にしかないカルチャーを持ち、団員一人一人が新たに表現しようとする強い意志を持っていると語り、モーツァルトは彼らの十八番であるが、新しいサウンドを試みたいと語っていた。アーティキュレーションをはっきりつけ、ビブラートを止めたりせずに、あくまでも楽団の良さを生かすように、エネルギッシュで明快な演奏を目指したいと語っていたが、その言葉通りの早いテンポで軽快な晴れやかなジュピター交響曲であった。


   第二曲目の交響曲は、モーツァルト・イヤーの年、2006年2月5日のクラシカ・ジャパンの放送をD-VHSにデジタル収録したものであり、指揮者はゲルト・アルブレヒトがドイツ・カンマーフイルハーモニーを振った「プラーハ」交響曲ニ長調K.504であった。この演奏は1990年12月2日ウイースバーデンのクリスティアン・ツアイス・ザールで演奏されたものであり、これ一曲のみの放送であったので、このコンサートの事情は良く分からないが、大勢の聴衆を集めた中規模のホールでのライブ収録であった。このオーケストラはこのHPでは珍しい登場であるが、オーケストラをよく見ると、ベースはコントラバスが三台の中規模な構成であり、フルート2、オーボエ2、ファゴット2,ホルン2,トランペット2にテインパニーが加わった構成になっており、女性の団員が多いオーケストラのように感じられた。

   そこで早速この演奏を聴きだし、三つの楽章の感想文を書いて全体をまとめようと過去のゲルト・アルブレヒトの演奏を検索して見ると、何とこのプラーハ交響曲は、ジェフェリー・テイトのジュピター交響曲と一緒に6-4-2でアップロード済みであることが分かった。6-4-2で報告文をまとめたが、プラーハ交響曲のデータベースに登録していないミスであることが分かった。早速、内容をチェックして見ると、写真も良く撮れており、間違いなくアルブレヒトの優れた演奏を報告する内容であった。参考までに、この文面をコピーすると以下の通りとなる。

   この演奏は90年12月のかなり古い演奏であり、アルブレヒトが読響の常任指揮者になって日本で活躍していたのはそれ以降であるが、彼は当時から、古楽指揮者のように指揮棒を持たずに、両手と指先をこねるようにして指揮をしていた。この時の演奏で、第一・第二楽章は、ソナタ形式の繰り返しを全て省略していたが、フィナーレの第三楽章では彼は、提示部の末尾の繰り返しも、再現部の末尾の繰り返しも丁寧に行っていたのに気がついた。当時の演奏として、全てを繰り返すのは極めて珍しいのであるが、今回聴き直して、彼のプレストのテンポが非常に早いので、二つの繰り返しはこの交響曲のフィナーレ締めるには極めて適切であったと思われた。この曲がメヌエットを欠いていたこととプレストのテンポが早いことと関係があると思われる。なお、指揮者アルブレヒトの演奏を一覧すると次のデータベースの通りとなる。以上のことを附記して、前回の報告を、今回、写真を含めて以下に再録することにしたので、お許し頂きたい。

(以上)(2014/07/09)



    第二曲目のアルブレヒト指揮のドイツカンマーフイルハーモニーによる「プラハ」交響曲ニ長調K.504は、3本のベースを中心とした40〜50人のオーケストラであり、冒頭の序奏から重厚な迫力ある響きを聞かせていた。序奏はゆっくりしたテンポで始まり、次第に緊張した高まりを見せながら終息してから、第一主題が軽快に弦楽器で開始される。アルブレヒトは、古楽器指揮者のように指揮棒を持たずに、両手を使って小刻みに指揮をしていた。展開部では長い第一主題の断片が次ぎつぎに対位法的な変化を見せ、アルブレヒトは入念にこの長大で充実した展開部をこなしていた。オーケストラの規模は大きくないが、終始堂々として厚みのある音を響かせていた。

  第二楽章のアンダンテでは、第一主題がゆっくりしたテンポで弦楽器により静かに歌い出され、美しい動機による経過部を経て第二主題が弦により提示される。軽やかな主題でフルートやオーボエが弦と対話しながら進行していた。アルブレヒトは、両手を細やかに使い体の動きを使いながら、細心の注意を払って奏者を制御していた。



  プレストのフィナーレでは、冒頭の主題がオペラの「フィガロ」の旋律に極似しており、ロンド主題として速いテンポで小刻みに進行する。ジュピター交響曲と同様に調べてみると、第二幕のスザンナとケルビーノの二重唱「早く開けて」の旋律にとても良く似ていた。この曲も「フィガロ」の作曲の直後に書かれており、この旋律が頭の片隅にあったに相違ない。第二主題でも弦と管の美しい対話が目まぐるしいが、中でもフルートとオーボエがの活躍が際立っていた。
 アルブレヒトの指揮ぶりは、シンフォニー全体を通じて、整然とした重厚な指揮ぶりであり、オーケストラに信頼されている指揮者であるという感じがした。この交響曲は三楽章形式であるが、終わってみればそれを感じさせない充足感があり、形ばかりのメヌエット楽章は無くても、第一・第三楽章が充実していれば、それなりに満足できるように思われる。



 今回の二つの交響曲は、このホームページにとってはいずれも初出のソフトではあるが、評価する自分にとっては、過去にS-VHSに収録済みのものであって、新ソフトではなく、たまたまクラシカジャパンで特集的に放送されたものを、前後の脈絡がないまま、二つを一緒に取り上げたものである。過去に収録済みのソフトを沢山紹介していくためには、このように数曲をまとめてアップしていく必要があり、タイムリーさに欠ける面があることは承知の上ではあるが、お許し願いたいと思う。

(以上)(06/04/23)



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