(最新のHDD3録画;二つのピアノ協奏曲、ニ短調K.466およびト長調K.107-2)
14-6-2、ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466、ピアノ;ルドルフ・ブッフビンダー、N響定期第1773回、サントリー・ホール、2014年、およびピアノ協奏曲ト長調K.107-2、佐渡裕指揮、ニュウニュウのピアノとスーパーキッズO、
東京オペラシテイ・コンサートホール、

−ファビオ・ルイージ指揮のN響定期においてウイーンで活躍しているルドルフ・ブッフビンダーの来日記念とも言える演奏があり、お馴染みのピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466を演奏していた。68歳のブッフビンダーは、オーケストラとのアンサンブルを重視する落ち着いた風格のある演奏をする人であり、期待を裏切らなかった。一方のテレビ朝日の佐渡裕の「題名のない音楽会」では、中国の16歳の少年ピアニストのニュウニュウが、ピアノ協奏曲ト長調K.107-2を弾いていたが、若いがしっかりした演奏をして観衆を喜ばせていた−


(最新のHDD3録画;二つのピアノ協奏曲、ニ短調K.466およびト長調K.107-2)
14-6-2、ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466、ピアノ;ルドルフ・ブッフビンダー、N響定期第1773回、サントリー・ホール、2014年、およびピアノ協奏曲ト長調K.107-2、佐渡裕指揮、ニュウニュウのピアノとスーパーキッズO、東京オペラシテイ・コンサートホール、
(2014/04/06、NHKクラシック音楽館N響定期講演録、および2014/05/11題名のない音楽会、テレビ朝日の放送をいずれもHDD3に録画、)

    6月号の第二曲目は、二曲のピアノ協奏曲であり、初めはウイーンで活躍しているルドルフ・ブッフビンダーの来日記念とも言えるN響との協演であった。ファビオ・ルイージ指揮のN響定期の中で演奏しており、お馴染みのピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466を演奏した映像であった。この曲の彼の演奏については、このHPでは2度目であり、 最初のものは2006年のモーツァルト・イヤーでウイーンフイルとの弾き振りの忙しい演奏(7-12-1)であったが、今回はルイージの指揮により大家らしくゆったりとした風格のある演奏をしていた。今回のブッフビンダーは渡辺佐和子のインタビューにも気さくに対応しており、6歳の時からウイーン国立音楽大学で学んだという昔話から、老練なピアニストだけが語る音楽論などを披露していた。




    第二曲目はテレビ朝日の「題名のない音楽会」から佐渡裕の指揮で、中国の16歳の神童ピアニストのニュウニュウが、16歳の時の作品であるピアノ協奏曲ト長調K.107-2を東京オペラシテイ・コンサートホールで演奏したものであった。この曲はご存じの通り、クリスティアン・バッハのピアノ・ソナタ作品5を協奏曲にモーツァルト自身が編曲したものであり、この曲にまつわる謎的な話をモーツァルト学者西原稔が解説を加えていた。この曲はこのHP初めての曲であり、すくすくと成長を続けるピアニストのニュウニュウもこのHP初登場であるので、話題性が豊富と考えてアップするものである。




    このルイージ指揮のN響定期は、ブルックナーの交響曲第9番をメインとするコンサートであり、最初の第一曲目が、このピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466であった。ブッフビンダーは、指揮者と一緒に登場し、ピアノの前に着席して、やがて曲は静かに開始した。低弦の三連符とシンコペーションのリズムによる出だしは重々しく始まるが、ルイージの指揮棒が次第にしなやかに動き出すと、オーケストラは心得たように弾み始め、暗い表情の弦による第一主題が進み出した。オーボエとフルートによる明るい表情の副主題が表れてホッとするが、そのまま経過部となり、ルイージの力強い指揮でオーケストラが高まりを見せながら力強く主題提示を終えていた。コントラバスが4台のやや重い布陣であり、ピアノはスタインウエイであった。




    ブッフビンダーのピアノが、一瞬遅れたように始まり、アインガングのピアノの音がクリアに粒立ち、素晴らしい始まりを見せてから、直ぐに不気味なリズムに支えられる第一主題に入りピアノが細やかなフレーズで走り出していた。そして、続けて明るい副主題を木管とピアノで提示してから、おもむろに独奏ピアノが第二主題を初めて晴れやかに美しく提示した。ブッフビンダーはすっかり落ち着いており、ここでは短いオーケストラとピアノの対話から始まり、オーケストラとピアノによる長い対話が続けられ、さらに木管もこれに加わると独奏ピアノが早い走句で縦横に走り出し、粒立つようなピアノの技巧を示しながら突進していた。そして、途中からルイージのオーケストラが力強く加わって盛り上がりを見せながら、主題提示部のオーケストラがしっかりと締めくくられていた。




    展開部では独奏ピアノによるアインガングの主題で始まり、オーケストラとブッフビンダーの独奏ピアノが交互に高まり合いながら進行していた。後半では再び第一主題のリズム主題が現れて、独奏ピアノの目まぐるしい技巧的なパッセージが激しく続き、まさにブッフビンダーのペースとなって力強く終結していた。再現部では、オーケストラによる第一主題を途中からピアノが引き継ぐように活躍して、いつの間にかピアノがオーケストラを従えながら進行し、ブッフビンダーのペースとなっていた。続く副主題がピアノで提示された後に現れた第二主題では、独奏ピアノの後は木管とピアノが交互に主題を提示したり、木管が主題を提示したりして進みながら、独奏ピアノの走句となり、盛り上がりながらカデンツアへと突入して行った。ブッフビンダーは、お馴染みのベートーヴェンのカデンツアを丁寧に弾いていたが、中間部では第二主題の回想がことのほか美しく聞こえていた。ブッフビンダーのピアノ演奏は、さすがルイージの指揮やオーケストラには負けていないような落ち着いた風格のあるものであり、期待を裏切らなかった。




    続く第二楽章はロマンスと題された三部形式の歌謡調の独奏ピアノによる愛らしい夢を奏でるようなアンダンテであった。初めにブッフビンダーの独奏ピアノが実に美しくて優雅なロマンスの主題をゆっくりと弾きだした。そして主題全体を呈示した後、静かに木管と弦楽器に渡されて行き、その後は独奏ピアノが主体的に歌うように進行していた。続いて独奏ピアノがトーンを変えて第二の新しい主題を提起するが、これは一音一音ピアノの音をクリアに響かせながら静かな弦の伴奏でゆっくりとこの上もなく美しく進行していた。ブッフビンダーは心得たように丁寧に弾いており、時には変奏や装飾音すら加えながら弾き進んでいた。そして再び最初のロマンスにゆっくりと戻って第一部を終えていた。
    そこへ、突然、激しい独奏ピアノが、まどろみをぶち壊すように、意表をついて疾風怒濤のように激しく共鳴し、鋭い上昇音形がもの凄いスピードで鍵盤上を駆けめぐっていた。この中間部は、木管が後押しをしながら巧みに繰り返され、素晴らしいスピードのまま盛り上がった後に静かに収まりを見せていた。ブッフビンダーのピアノは、この穏やかなロマンス主題に対し、この中間部では意表をついた激しい変化を見せ、ロマン派のピアノのようなダイナミックな姿を現しており、見せ場を作っていた。しかし、激しい嵐が去ると再び第三部としてあの美しいロマンスに戻ってゆっくりと進行し、まどろむように終息していた。今年68歳というブッフビンダーのしっかりした落ち着きのあるロマンス楽章であった。






    フィナーレはアレグロ・アッサイの早い上昇する第一主題がブッフビンダーの独奏ピアノで始まり、これがオーケストラに渡されてトウッテイで激しく反復され拡大されていた。続いて独奏ピアノが踊るような別の新しい主題を弾き始めて経過部に発展していた。そして再び独奏ピアノが力強い軽快な第二主題を提示して行くが、ブッフビンダーのピアノはスピード感にあふれて軽快に進み、これがオーケストラにより反復されてから、フルートによる新しい終結的な主題が提示され、これが提示部のエピローグに勢いよく発展していた。続いて展開部なしに再現部に移行していくが、この変化点で独奏ピアノが即興的なアインガングを入れながら再現部に突入していた。再現部ではほぼ型通りに提示部を再現していたが、エピローグの最後にカデンツアの後、最後にピアノがフィナーレ主題に立ち戻り、全体を引き締めるように独奏ピアノが存在感を示しながら最後のコーダに突入していた。この楽章は、終始、ブッフビンダーのペースで進んでおり、素晴らしいピアノの動きと響きで終始しており、手慣れた大家の風貌を見せた味のある演奏のように見えた。 
            大きなかけ声とともに演奏は終了し、拍手が盛り上がる中で、ブッフビンダーはルイージと手を繋ぎ、何回かにこやかに挨拶を繰り返していたが、最後に一人で登場したブッフビンダーは、アンコールとしてシューベルトの即興曲D.899から第二曲変ホ長調の早い軽やかな即興曲を弾き出した。この曲は最も親しみのある明るい曲で、テンポ良く弾き進み、実に爽やかな印象を残してくれた。さすがの手慣れたピアノの名人芸と思わせる、ウイーンからの使者による演奏であった。


 



     第二曲目は、テレビ朝日による「題名のない音楽会」という番組で、珍しく16歳の神童モーツァルトの作品ピアノ協奏曲K.107-2を、これも神童と言われている16歳の中国のピアニストのニュウニュウが演奏するという趣向であった。この番組に出ていた脳科学者の茂木健一郎が「天才とは人の10倍、100倍も努力が出来る人」であり、幼少の頃から神童と呼ばれ続ける人は、並々ならぬ努力の人であると言っていた。オペラシテイのコンサートホールで開かれたこのコンサートでは、最初にニュウニュウのピアノソロで、メンデルスゾーンの無言歌から第5巻第6番の有名な「春の歌」が弾かれ、澄み切ったピアノの響きを聞かせて皆を喜ばせていた。ニュウニュウの最初の出演は9歳の時でまだ小柄であったが、この番組に3回目の出演とされる今回は、16歳で背丈が長身の佐渡裕と並ぶくらいに成長しており、ピアノの腕前の方も確実に立派に成長しているようであった。









     ピアノ協奏曲ト長調K.107-2は、三つの協奏曲から出来ており、いずれもクリスチャン・バッハの6つのピアノ・ソナタ作品5から、編曲された作品と出席していた音楽学者の西原稔が説明していた。彼はこの三つの作品には三つの謎があると言い、その第一は、この協奏曲は初演されなったと言われるが、それはモーツァルトが16歳の時に学習用としてピアノ協奏曲に編曲したものであり、勉強用の習作だったからという。また、メロデイ・メーカーだったモーツァルトが何故他人の作をコピーしたかについては、ロンドンで教わり尊敬していたバッハの作品だからと言うことであり、第三にピアノの作品が他の楽器よりも作曲が遅れた理由は、当時のオーストリアは、ロンドンやドイツなど旅行中に体験したフォルテ・ピアノの普及が遅れていたからだという説明がなされていた。




     この協奏曲は二楽章の構成で、ピアノソナタ作品5-3がモデルになっており、ピアノ独奏部は余り原曲をいじっていないとされる。佐渡裕の指揮で始まった第一楽章のアレグロは、軽快なフレーズの8小節の主題がまず弦3部のオーケストラで始まり、直ぐ続いて第二主題もオーケストラで提示されており、オーケストラの面々はミュウミュウ並みの若い面々で構成されるスーパーキッズの元気の良いグループであった。オーケストラの提示部に続いて、ミュウミュウの独奏ピアノが軽やかに始まり、第一主題も第二主題も殆ど変えられずに繰り返されたように進んでいた。展開部に代わって第一主題が正調で再現して、第二主題は移調されてコーダにカデンツアと簡素に出来ていた。このカデンツアはミュウミュウの工夫によるものか、ひとしきり主題を模倣したものが演奏されていた。




     第二楽章はアレグレットで書かれており、スコアがないので詳細は不明であるが、どうやら室内楽的にまとまったテーマと3つの変奏曲のように聞こえていた。最初の曲は穏やかな曲調のピアノによる主題提示部で始まり、二曲目はピアノによる和音で進行する変奏になっていた。第二変奏はピアノの細かなフレーズにより模倣される変奏になっており、最後の変奏はリズミックな早いピアノで模倣される変奏であり、最後は駆け抜けるように元気よく収束していた。曲の最初から最後までミュウミュウの独奏ピアノが絡んでおり、モーツァルトはオーケストラの伴奏だけを追加したものと思われる。

      二つの楽章を通じて若々しさを感じさせる初々しい協奏曲となっており、ミュウミュウは質問に答えて、後期の作品では消えてしまった何かが、この作品には残されていると語っていた。このピアノ協奏曲K.107の3曲のシリーズは、チェンバロ協奏曲とされて、CDではチェンバロで演奏されることが多いが、今回のようにモダンピアノで1曲だけ取り出して演奏されることは初めてのケースであった。このピアニストは日本で勉強しているようであり、今後に期待の持てる逸材であることは確かなようである。

(以上)(2014/06/20)


目次5にもどる 目次4にもどる
目次3にもどる 目次2にもどる
目次1にもどる 私の新ホームページへ