(最新のHDD録画より;ウイーン楽友協会合唱団のレクイエム・オルガン版)
14-5-2、ウイーン楽友協会合唱団による「レクイエム」ニ短調K.626、オルガン伴奏版、
日本公演記録、2012/12/24、大阪市和泉・ホール、

−このウイーン楽友協会合唱団は、この「レクイエム」の合唱音楽としての素晴らしさを改めて気づかせる演奏であると思った。この合唱団は、アマチュアでありながら、60人を超える大合唱の迫力があり、また弱音においても声が良く揃っており、オルガン伴奏によって合唱が浮かび上がるように聞こえていた。1812年の創設と聞くと、今年は創立200年の節目を迎えることになるが、その長い歴史を心から祝福するとともに、今後のさらなる発展を祈念したいと思う−


(最新のHDD録画より;ウイーン楽友協会合唱団のレクイエム・オルガン版)
14-5-2、ウイーン楽友協会合唱団による「レクイエム」ニ短調K.626、オルガン伴奏版、
日本公演記録、2012/12/24、大阪市和泉・ホール、
S;半田美和子、MS;井坂 恵、T;望月哲也、B;若林 勉、
(2013/11/25、NHKクラシック倶楽部の放送をBDレコーダーのHDDに録画)ログ収録)

  5月号の第2曲目は、最新のHDD録画より、ウイーン楽友協会合唱団の「レクイエム・オルガン版」であり、2013/11/25にNHKクラシック倶楽部の放送をBDレコーダーのHDDに録画した最新の映像である。私は知らなかったのであるが、この有名な合唱団はどうやらアマチュアの合唱団であるので、外国でオーケストラと共演することは困難なようで、オルガン版で演奏した「レクイエム」であった。このような例は、これも訪日のコンサート記録である有名なスエーデン放送合唱団がオルガン伴奏で演奏(9-2-2)をしていた。1812年設立というベートーヴェンが活躍していた時代に創設されたこの由緒ある合唱団は、当時からアマチュアの団体として組織され、それが今日まで伝統を守って続いているようであった。ソリストはソプラノの半田美和子ほか日本人のプロの歌手たちであった。この曲が作曲されたウイーンで、恐らく200年近くこの曲を歌い続けてきたこの由緒ある正統的なウイーン楽友協会合唱団であるので、敬意を持って聴かなければならないと思う。



   映像では最初にこの楽団の総裁トーマス・アンギャン氏の話があり、創設以来、アマチュア、すなわち積極的意味での音楽愛好家の集まりであり、今日までウイーン楽友協会主催の合唱付き演奏会の殆どに出演してきたという。そのため世界を代表する指揮者たち、バレンボイム、ムーテイ、ヤンソンス、メータなどやジョルダンなどの若い指揮者とも共演してきた。今回のように演奏旅行をすることは特別なことであり、大人数の合唱団では旅行することは経済的に大変である。それだけに、今回、再び、大阪に訪問できたことは有り難く幸せなことである。この合唱団は、偉大な伝統を持っていること、アマチュアの情熱はプロとは全く違うこと、毎晩歌わねばならぬプロの合唱団とは、情熱や自発性が違っていることを述べ、世界的指揮者と共演出来る機会が多いことを、再び、強調してインタビューに答えていた。



  続いてソリスト達が入場し、オルガニストと指揮者が席について「レクイエム」の演奏に入っていたが、この演奏は大阪の和泉大ホールで収録されており、正面上部の巨大なパイプオルガンには、同行の若いオルガニスト、ロベルト・コヴァチが紹介されていた。静かにイントロイトウスの序奏がオルガンで始まっていた。そして老練な合唱指揮者アロイス・グラスナーが、オーケストラの替わりのこのオルガンの低い静かなゆっくりした低音の響きに支えられながら、バスから順次テノール、アルト、ソプラノへと指示をして、静かにレクイエムと歌いだす合唱が始まった。オーケストラのレクイエムを聴きなれた耳には、この巨大なパイプオルガンのイントロイトウスの始まりは、実に優しく、ふっくらとした厚い響きに聞こえていたが、合唱は大勢の人数のせいか、もやっとはじまっていた。




   楽友協会合唱団は、女性が左側で36名、男性が右側で30名、それぞれ3列に並び総勢66人の大合唱団であるが、次第にオルガンの響きに負けずに堂々と歌い出し、エト・ルクス・ペと4声が揃った斉唱になって、言葉が聴き取れるような整然とした響きになっていた。続いて現れるソプラノの半田美和子のソロは、大合唱団に負けずに朗々と高らかに響いており、レクイエムの始まりを告げるように聞こえていた。続いて合唱は、レクイエム主題にドーナ、ドーナの新しい主題が加わって二重フーガの形を取りながら、静かに進行して、この非常に印象的なイントロイトウスの最後を見事に盛り上げていた。





  続いてテンポが変わって第二曲のキリエに入り、冒頭からキリエ・エリーソンとクリステ・エリーソンの二つの主題による壮大な二重フーガが早いテンポで始まって、各声部ごとに異なった歩みを見せて複雑にうねるように進行し、展開されていた。どこかの声部が必ず特徴あるクリステ・エレーソンのレ音の早いメロデイを歌っているように美しく聞こえていた。そして最後にフェルマータのあと斉唱でキリエ・エリーソンが歌われて見事に終息していたが、オルガンの異色の伴奏のせいもあって、ここでは合唱団の各声部が競い合うように独立して歌っていたが、全体としては、大合唱団のせいか、やや明瞭さを欠いたキリエに聞こえていた。


 


   セクエンツイアに入って最初の「怒りの日」では、トウッテイの合唱がより早いテンポで力強く「デイエス・イレ」と歌い出し、4声が斉唱でパイプオルガンの流す断続的なリズムを相手に力強くうねるように歌い上げ、「怒りの日」の激しさを伝えていた。これぞ60人を超える大合唱団の凄さなのであろう。後半になって、バスの雄叫びにも似た激しいパートに対し、上三声がこれに相づちを打つように強く応えながら繰り返して進んで、終盤を盛り上げていた。合唱の力がいろいろな形でこの「怒りの日」を強めていた。








    第二曲目は「妙なるラッパ」であるが、トロンボーンに変わってオルガンの伴奏となり、ふんわりとしたおとなしい雰囲気の中でバスがチューバ・ミルムスと堂々と歌い出し、一息おいてオルガンの低い響きの中でしっかりと同じ言葉を繰り返していた。続いてテノールが明るく高らかに引き継いでこれも朗々と歌って存在感を示し、アルトにそしてソプラノにと渡されていた。そしてソプラノが最後に高い声を張り上げて歌い継ぎ、ハイソプラノの存在感を示していた。そして揃って歌い出す四重唱では、穏やかなオルガンの低い伴奏の中で整然と見事なアンサンブルの四重唱が歌われて、この曲の妙なる響きの素晴らしさをしっかりと伝えていた。大合唱団の後のソリストたちの歯切れの良い言葉が印象的で、合唱部分はやや言葉が濁るような気がした。





     第三曲目の「みいつの王」では、いきなり始まる付点リズムの付いた刻むような強いオルガンの前奏のあとに、「レックス」という男性大合唱団の雄叫びが三度、トウッテイで響き渡り、それから力強い混声合唱がうねるように堂々と続いていた。しかし、後半の最後には、一転して力を弱めテンポを落として、悲痛な祈りにも似た静かな斉唱が印象的で、静かに終息していた。強弱・緩急の著しい変化に富む合唱で、大合唱団だから出来るその実力が示された素晴らしい曲であった。





   第四曲のレコルダーレでは、静かに始まるオルガンの序奏に乗って、アルトとバスの二重唱が厳かに始まり、続いてソプラノとテノールの明るい二重唱にと上昇しつつ進行していたが、いつの間にかソリストによる四重唱が始まっていた。そしてソリストたちは男声と女声が交互に歌ったり、四重唱に戻ったり、男女の組み合わせを変えた二重奏で掛け合いをしたりして、絶えず変化を重ねながら四重唱を続けていた。この曲は、丁度、前後の激しい合唱曲の間をつなぐ安らぎの場のように聞こえていた。







  そして第五曲の「呪われた者どもよ」では、オルガンの激しいうねるような強奏のもとにトウッテイの男声合唱が激烈な調子で「コンフターテイス」と歌い出す。そして一瞬の間をおいて、女声合唱がソット・ヴォーチェで静かに喘ぐような細い声で歌い出した。この強者と弱者の対照の妙がもう一度、激しく繰り返されて、改めて聴くものを震撼とさせてから、テンポを変え新たなオルガンの厳かな伴奏の下で4声が合体して静かに祈りを捧げるように唱和していた。この不協和音と半音の交錯する和声の深遠さにはいつ聴いても何かしら瞠目させられるものがあり、レクイエムの深さに改めて驚かされてしまう。



   この余韻を残しながら、セクエンツイアの最後の「涙の日」のため息のような短い前奏が始まり、ピアノで静かに「ラクリモサ」の合唱が始まって、一音一音クレッシェンドしながら上昇し、8小節の頂点に達していた。そして、その余韻を大事にしつつソット・ヴォーチェで合唱が続き、フォルテになったりピアノになったりしながら荘厳な祈りの合唱が進み、最後にもう一度「安息を下さい」とフォルテで高まりを見せてから静かに影を落しながら、「アーメン」の合唱で「涙の日」が終息していた。実に素晴らしい沈黙の世界が訪れていたが、そこには長い伝統に従って歌い継いできた確固たる自信のようなものが漲っていた。

   レクイエムの演奏は、ここで一息静寂の間を持ってから、続いてオッフェルトリウムの早いテンポのドミネ・イエスの合唱に入っていたが、聴く側の私の方の緊張がここでどうしても途切れてしまう。それはここまでで死者を弔うための音楽的感動が充分に与えられており、後続部分は単に付け足しのようにしか私には聞こえないので、ここで中断することが私の場合には長年の慣習で、ごく自然になっているからだ。
 この楽友協会合唱団の「レクイエム」は、この曲の合唱音楽としての素晴らしさを改めて気づかせる演奏であると思った。何と言ってもこの合唱団は、60人を超える大合唱の迫力があり、また弱音においても声が良く揃っており、オルガンによって浮かび上がるように聞こえたからだ。そしてこの合唱を支えたオルガンの伴奏は、オーケストラの雰囲気を柔らかく間接的な響きで伝えており、合唱の全体を支える力強いベースになっていた。しかし、やはり「レクイエム」の音楽には、オーケストラの多様な響きをもった起伏の大きい巨大な力強い響きが必要不可欠であり、この演奏によって改めて「レクイエム」におけるオーケストラの重要性を再確認させられたように思った。

   三列に勢揃いした合唱団の顔ぶりを拝見すると、白髪の年配の方々が男女ともに熱心に、元気よく歌っていたが、この合唱団には定年制みたいなものがあるのか聞いてみたかった。恐らく、定年制とは言わなくとも、こうした公演に参加するためには合唱団としての水準を維持するための、何かしら意欲だけでは参加出来ない不文律的なものがあるのであろうと思われた。1812年の創設と聴くと、今年は創立200年の節目を迎えることになる。その長い歴史を心から祝福するとともに今後のさらなる発展を祈念したいと思う。

(以上)(2014/05/16)


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