(最新の市販DVDから;再び2010年のシドニーOPより「フィガロの結婚」K.492)
14-11-3、パトリック・サマーズ指揮オーストラリアオペラ&バレー管弦楽団、アームフィールド演出による「フィガロの結婚」K.492、
2010年、シドニー・オペラ・ハウス、オーストラリア、

−このシドニー・オペラ・ハウスの「フィガロの結婚」は、全体として比較的ゆっくりしたテンポで進み、歌手陣は落ち着きのある雰囲気の中でゆったりと伸び伸び歌っていた。これはサマーズの指揮と一体となった、またアームフイールド演出に見合った伝統的な舞台造りや現代風の動きの良さなどから来るものであろう。このオペラハウスの陣容は、オーストラリア出身の方々ばかりのようであるが、それがチームワークの良さに現れているようで、オペラハウスのスタイルの傾向としては、イギリスのオペラに似た上品さとユーモアを持ったものと考えられ、まだ2つの公演しか見ていないが、決して地方のオペラ水準に留まらず、世界的な一流の水準に近づきつつあるオペラハウスと言う感触を持った−

(最新の市販DVDから;再び2010年のシドニーOPより「フィガロの結婚」K.492)
14-11-3、パトリック・サマーズ指揮オーストラリアオペラ&バレー管弦楽団、アームフィールド演出による「フィガロの結婚」K.492、
2010年、シドニー・オペラ・ハウス、オーストラリア、
(配役)伯爵;ピーター・コールマン=ライト、伯爵夫人;ラシェル・ダーキン、スザンナ;タリン・フィービッグ、フィガロ;テデイ・タフ・ローズ、ケルビーノ;サイアン・ペンドリー、バルトロ;ワーウイック・ファイフェ、マルチェリーナ;ジャクリーン・ダーク、
(2014/08/07、市販DVD購入、Sydney Opera House OPO-Z56001DVD)

        最後に11月分のオペラ部門では、7月号でアップした初めてのオーストラリアのシドニー・オペラ・ハウスの「ドン・ジョヴァンニ」(14-7-3)が面白かったので、続けてこのオペラ劇場の「フィガロの結婚」を取り上げることにした。指揮者は変わってパトリック・サマーズであるが、この人は5月号にアップしたブレゲンツ音楽祭の「魔笛」(14-5-3)を振って既にお馴染みである。出演者は、フィガロがドン・ジョヴァンニ役、スザンナがツエルリーナ役、伯爵夫人がドンナ・アンナ役、マルチェリーナがエルヴィーラ役などと共通しており、この顔ぶれを見ると今回も安心して見ておれる伝統的なしっかりした骨組みの楽しい「フィガロの結婚」であろうと想像できるからである。2010年のシドニー・オペラ・ハウスの最新の上演であり、ご期待いただきたい。

        DVDではサマーズが入場すると序曲が直ぐ開始される。弦の軽快なテンポで序曲が進行し、フルートやファゴットの響きも新鮮に聞こえており、幕が開くと伯爵家の召使いたちが総出で忙しそうに動き回っていた。序曲が終わりに近づくと、舞台は大きな椅子のある部屋となり、フィガロが巻き尺で5ヤード、10ヤードと真面目に測りながら忙しそうに大声で歌い出していた。スザンナも壁の鏡を見ながら頭に飾りを付けており、二人の軽快な二重唱が始まりだした。二人の衣裳は伝統的なスタイルでまずまず。フィガロがスザンナの手作りの帽子を誉めていると、すかさずベッドの話となり、スザンナが反対して怒り出す。フィガロがデインデインの二重唱を歌い出し、スザンナが引き継いでドンドンと声を震わすと、フィガロもやっと伯爵の高遠な企みに気が付き、もっと話を聞きたいという。二人のレチタテイーヴォが始まり、伯爵の真の狙いを知ったフィガロは、改めてその対策を考え出す。フォルテピアノの賑やかな伴奏にやがてチェロも加わって、フィガロの怒りのアリアがピッチカートの伴奏で朗々と生真面目に歌われて、会場から大きな拍手を浴びていた。ここまでは一気に進むが、この二人のコンビの生きの良さから、楽しいフィガロになりそうな感じがした。


  太めでメガネをかけた派手な姿のマルチェリーナと髪の毛がばさばさの老人風のバルトロが出てきて何やら怪しい頼み事。バルトロが昔の女の前で格好を付け、「復讐だ」と表情豊かにアリアを披露して、自信ありげに歌っていた。そこへスザンナが顔を見せたので、二人の女の忙しい口喧嘩が始まっていたが、何と二人は生き生きしていることか。ここではどうやらスザンナの若さが勝利して、マルチェリーナは逃げ出した。そこへ格好の良いズボン姿のケルビーノが登場し、スザンナの持つリボンを取り上げ小競り合い。よく見ると可愛い顔に髭を生やしたケルビーノが、お城の女性たち全員にお愛想を言って「自分で自分が分からない」と歌い、その男っぽい仕草がおかしく表情豊かだったので、凄い拍手を浴びていた。




そこへ伯爵の声が聞こえる。ケルビーノが大慌てで隠れると、誰もいないと知って伯爵が大胆にスザンナを口説き出す。バジリオの声が聞こえて、伯爵も身を隠すと、陽気でヒマそうなバジリオが何と伯爵夫人のうわさ話。聞いていた伯爵が驚いて思わず声を出して立ち上がってしまい、さあ大変。おかしな三重唱が始まった。困ったスザンナが気を失い、男二人の怪しげな手つきに介抱されて飛び上がるスザンナ。伯爵がケルビーノの話になって椅子のカバーを取ると、何とこの部屋でもケルビーノが隠れていた。驚く伯爵と弁解するスザンナに、バジリオが「コシ・ファントッテ」と歌って面白い三重唱が終わった。そしてケルビーノが伯爵に責められてどうなるかと心配したが、そこに突然現れた村の仲間たちの合唱でこの場は救われた。



フィガロは皆と作戦を練って、初夜権を放棄した伯爵を持ち上げて、スザンナとの結婚を認めさせようとしたが、挙式は約束するものの、もう少し時間をくれと逃げられた。伯爵の冷たい態度を怒る村人たちの合唱が再び始まって、この場は収まりかけたが、残されたケルビーノが罰として伯爵から空席のある連隊の士官に任命された。そこでフィガロからケルビーノは手厳しい激励のアリアを贈られていたが、このアリアが実に堂々と元気よく歌われ、やがて行進曲にもなって最後のカデンツアも勇ましく、大拍手の中で第一幕が終了していた。




       第二幕は窓とベッドが置いてある伯爵夫人の部屋で、弦による美しい前奏に続いて、憂いに満ちた伯爵夫人が鏡を見ながら、悲しげに「愛の神よ」と祈るようにアリアを歌っていた。スザンナに伯爵の冷たい変わり様をこぼしていると、フィガロが登場し殿様を懲らしめようと相談し早速、提案をしていた。長い計画の中で女性軍は、ケルビーノを女装させる計画には賛成したので、フィガロは意気揚々と歌いながら引きあげていた。




          早速、可愛い軍服姿のケルビーノが伯爵夫人の部屋に入り、スザンナに催促されて、憧れの夫人の前で恥ずかしそうにアリアを歌い出した。スザンナのギターの伴奏でケルビーノは、良い声で快いテンポで軽快に歌っており、後半には度胸がついて装飾をつけたりして大好きな夫人の傍で歌って上機嫌。思わずブラボーと夫人が叫ぶほどの熱演で、この日一番の大拍手で会場も喜んでいた。続いて、スザンナが部屋にカギを掛け、夫人の見ている前で、ケルビーノと向かい合って女装させながら、着せ替えのアリアを歌い出した。髪を解かし、お白粉を塗り、帽子を被せ、歩かせたり踊らせたりして大笑い。ケルビーノの腕に夫人のリボンがあることに夫人が気がつき、ケルビーノが伯爵夫人に説明しながら迫りかけたところに、部屋の外から伯爵の大声が聞こえてきた。さあ大変。




      ケルビーノを衣裳部屋に閉じ込めて、夫人は大慌てでドアを開けると、伯爵が飛び込んできてフィガロの手紙を見せる。夫人が言い訳しているうちに衣裳部屋で大きな音がした。とぼける夫人を怪しんだ伯爵が「スザンナ、出てこい」と大騒ぎして三重唱が始まるが、伯爵夫人が何としても名誉を賭けて必死に頑張り鍵を渡さない。伯爵の怒りと夫人の防戦の二重唱となっていたが、納得しない伯爵は自分でドアを開けるため、夫人を連れて工具を取りに部屋を出た。その間一髪の間に、スザンナが「早く、早く」とケルビーノを外に出して二重唱が始まり、ケルビーノが走り回りながら窓を開け、スザンナの悲鳴と共に窓から飛び下りて一目散に逃げ出して一安心。




        伯爵は衣裳部屋にいるのはスザンナではないなと気がつき、夫人を責めると、子供の話からまたケルビーノが出てきたので大怒りとなった。そして、「悪童め、出てこい」と大声を上げて、第二幕の長いフィナーレが始まった。「奴は死ぬのだ」と怒って夫人から鍵を取り上げたところに、スザンナが「シニョーレ」と何食わぬ顔で出てきたので、二人は大驚き。伯爵が確かめに小部屋に入った隙に、スザンナが伯爵夫人にケルビーノが窓から逃げたことを説明してから、女性二人は急に強くなり、許せと迫る伯爵をはねつける長い三重唱が続くが、風向きが変わったところへフィガロが楽士を連れて登場してきた。




     しめたとばかり喜ぶ伯爵が、早速、フィガロにこの手紙を知ってるかと尋ね、フィガロが、ばれているのに知らぬ存ぜぬの四重唱となって、伯爵がカンカンになっていた。そして音楽も次第に重低音になり、あわやと思われたところへ、顔が真っ赤なアントニオがバルコニーから人が降ってきたと訴えて、場面はヘンテコな五重唱に変わっていた。飛び降りたのは俺だとフィガロがつくろうが、この落ちていた書類は何だとまた大難題。女二人の機転で、フィガロは何とか言い逃れたが、伯爵はカンカンでおさまらない。そこへやっとマルチエリーナ一行が登場して、殿様に契約の履行を迫る賑やかな七重唱となった。伯爵は上機嫌で裁くのは私だと「静まれ」と大声を上げて盛り上がり、この場は伯爵側が優勢のうちに、長い長い第二幕が終了となっていた。




       第三幕はしきりに考え込んでいる伯爵の独り言から始まっていた。スザンナが伯爵夫人から頼まれて、気付け薬を口実にして機嫌の悪い伯爵に近づき、「殿の望みは私の義務です」と調子よく答えたことから話が弾み、二人の二重唱になっていた。「庭に来てくれるか」という伯爵の誘いに、イエスと言ったりノーと言ったり、伯爵をじらしながら喜ばせていた。そして別れてからすれ違ったフィガロに、スザンナが「裁判に勝った」と漏らしたのを聞いた伯爵が、騙されたかと疑って怒りながらアリアを歌い出した。「私が溜息をついているのに、召使いが幸福になっていいものか」と歌う激しいアリアが朗々と歌われて、賑やかな拍手があった。




       舞台の片隅に、バルバリーナとケルビーノが仲良く顔を出してから、伯爵夫人が登場し「スザンナがまだ来ない」とレチタテイーヴォを歌ってから「あの幸せな日は何処に」と美しいアリアが歌われ、それが余りにもの哀しく生真面目に歌われていたが、後半になって夫人の伯爵へ仕返しようという強い意志が現れたように見えていた。




      車椅子に乗ったクルツイオが「判決が出た」と言いながら登場し、フィガロが金を返すか結婚するかとなったが、マルチェリーナや伯爵の前で、フィガロが一人だけ反発し「盗まれた貴族の子供だ」と言って笑われ、一人で親の承諾が要ると言い張っていた。そして証拠があるかと言われて皆に見せた右腕のアザがきっかけとなり、マルチェリーナが我が子のラファエロだと大声を上げた。そこで面白おかしい親子対面となり、フィガロがマルチェリーナと抱き合って六重唱が始まったところにスザンナがお金を持って登場し、それを見てフィガロに見事な平手打ち。その後は、事情が分かって何とも珍妙なマードレ、パードレの六重唱が続いて、4人は二組の結婚式を挙げようと決心していた。



     場面が変わって、伯爵夫人はスザンナからどんな話を伯爵としたかを確認し、合う場所を指定する手紙を書くことにして、夫人が口述しスザンナが書きながら歌う「手紙の二重唱」が始まった。松の木の下でと同じセリフを繰り返す二重唱は実に美しく、ピンで封をして、このピンを返すようにと念入りであった。そこへ村の娘たちが花束を持って伯爵夫人に献げようと登場して来たが、一人見慣れぬ顔がいた。アントニオが駆けつけてきて、その娘を伯爵に引き渡すと、その娘は何と女装したケルビーノ。バルバリーナが皆の前で伯爵からケルビーノをもらい受け、ケルビーノは全てを白状していた。




       そこへフィガロがお祝いの踊りだと駆けつけるが、伯爵がフィガロにびっこで踊るのかと皮肉を言い、ケルビーノが白状したとフィガロに迫って、二人は爆発寸前になっていたが、結婚式の行進曲に救われていた。
        踊りの音楽が始まり、バジリオが指揮をしてフィナーレが始まり、二人の村娘の二重唱で大勢が入場し、二組の花嫁に伯爵がヴェールを被せてお祝いがなされていた。その間に、スザンナが手紙を伯爵に渡して、伯爵がピンを刺す一幕があったが、兎に角、全員の踊りとお祝いの合唱が始まり、伯爵の挨拶があってから、全員で写真を撮るという一幕があって、賑やかな婚礼の儀式が盛大に終了し、第三幕が賑やかに閉幕していた。




      第四幕に入って幕が開くと、バルバリーナがローソクを手にして、暗闇の中でのアリアを歌い出すが、しきりにピンを探しており見つからずに泣きながら歌っていた。そこへフィガロが登場し、マルチェリーナからピンを貰って、探していたピンだと手渡すと、バルバリーナは大喜びで、フィガロに伯爵が「これが松の木の封だ」と言ってスザンナに渡せと語ったことを全て話してしまう。スザンナの伯爵との逢い引きの計画を知ったフィガロは、にわか母親のマルチェリーナの慰めも聞かずに怒りが頂点に達していた。




      そこでマルチェリーナが「雄山羊と雌山羊は、いつも仲良しだ」というアリア歌ってフィガロを慰めていた。このアリアは滅多に歌われないが、このマルチェリーナは両手を上手く使って元気よく歌って、拍手を浴びていた。バルバリーナが顔を出してフィガロに見つかり、バルトロやバジリオも現れて二人が残り、バジリオが「私も若い頃は、元気が良かった」とアリアを歌い出したが、「ロバの皮を被ると身に降りかかった災難から逃れることが出来る」とフィガロに忠告するアリアであった。




       続いてフィガロが登場し、「全ての用意が整った」とレチタテイーボを歌ってから、この結婚式の夜なのにとスザンナを怨むアリアを「目を見開け、無関心で愚かな 男たちよ」と元気よく歌い出した。このアリアも良いテンポで歌われ、フィガロの大アリアになって、さすがフィガロと大拍手であった。続いて、スザンナと伯爵夫人が目立つガウンで衣裳を変えてから、スザンナの「ついにその時がきた」とレチタテイーヴォに始まり、美しいピッチカートに乗ってオーボエとフルートの伴奏に乗って、スザンナのアリアが歌われた。陰で隠れて心配しそうに見守っているフィガロの前で「どうか直ぐに来て、素晴らしい喜びよ」と歌われたこのアリアは、後半には装飾音符を着けながら見事に歌われて、万雷の拍手を浴びていた。バルバリーナに始まりスザンナまで5人の歌手が、まるで学芸会のように順番に歌うのは珍しく、舞台は拍手が続いていた。




     フィナーレに入って、悪戯っ子のケルビーノが登場して、スザンナに変装している伯爵夫人をからかってまとわりつき、夫人はケルビーノを持て余していたが、そこへ伯爵が登場する。伯爵もスザンナだと思い込むが、ケルビーノが邪魔で、追い払おうとしてケルビーノを平手打ちするが、それが隠れていたフィガロに大当たりして大災難。しかし、伯爵はやっと目指すスザンナの手を掴まえて口説き始め、素直なスザンナにご機嫌になって、気前よくダイヤの指輪まで渡してしまっていた。フィガロが通行人の振りをして音を立てたので、スザンナの伯爵夫人は逃げ出してしまった。


        一方のフィガロは暗闇の中で伯爵夫人を見つけ出すが、話しているうちに声でそれがスザンナであることを知り、腹いせにスザンナをからかって、伯爵夫人を口説きはじめた。スザンナは次第にフィガロが熱してくるのでついに腹を立て、フィガロを平手打ちにし今度は足蹴りまでしてしまうが、フィガロがからかったのだと白状したため、仲直りしてしまう。そこへ伯爵が現れたので、二人は伯爵を懲らしめようと、そのままの姿で伯爵夫人とフィガロの大袈裟な逢い引きの演技をして見せた。




        伯爵はそれを見て大声で「皆、武器を持て」と大騒ぎして皆を集めてしまった。そして謝る二人に対し、皆の前で「許さぬ」と大声を上げてしまったが、そこへ後ろから伯爵夫人が声を出しながら現れたので、さあ大変。しかし、音楽はアンダンテとなって、伯爵はどうしてか分からないままに、直ぐに自分の間違いに気付き、皆の前で伯爵夫人に膝をついて心からの詫びを入れたので、伯爵夫人も素直に夫を許し、見ていた一同も安心して一段落となった。この映像では、伯爵は夫人と見間違えたスザンナにも頭を下げていた。音楽が変わって、最後は一同10人が舞台の前に一列に並び、対立は全て消えてこれで満足だと、全員が喜びの歌を歌って長いアルマヴィーヴァ伯爵家の「たわけた一日」が大団円になっていた。最後の画面の中央には、ついに結婚の運びとなったフィガロとスザンナが体一杯に喜びを現しながらディープ・キスをして幕が下りていた。

       最後の伯爵の一段とテンポを落とした見事な赦しを請う演技で、舞台はとても引き締まり、大変な歓声の中でカーテンコールが始まったが、最後まで舞台にいたフィガロとスザンナに続いて、伯爵と伯爵夫人のペアーが挨拶してから、アントニオ、バルバリーナ、バジリオ、ケルビーノ、バルトロ、マルチェリーナ、などの順に出てきて、最後には一列になっていた。会場の観衆の熱狂振りは素晴らしく、観衆に支えられて劇場と一体になった地方劇場でのオペラブッファの良さをしみじみと感じさせ、この公演は大成功であることを如実に示していたように思う。




        このシドニー・オペラ・ハウスの「フィガロの結婚」は、冒頭に申し上げたとおり、全体として比較的ゆっくりしたテンポで進み、歌手陣は落ち着きのある雰囲気の中でゆったりと伸び伸び歌っていた。これはサマーズの指揮と一体となった、またアームフイールド演出に見合った歌い方や動きの良さから来るものであり、繰り返しなどでは装飾をつけて歌う余裕に現れていた。このオペラハウスの陣容は、オーストラリア出身の方々ばかりのようであるが、それがチームワークの良さに現れているようで、オペラハウスのスタイルに、ドイツ式・フランス式・イタリア式などがあるとすれば、今回はイギリス式とでも言える上品さとユーモアを持ったものと考えられ、まだ2回の公演しか見ていないが、決して地方のオペラに留まらず、世界的な水準に近づきつつあるオペラハウスと言う感触を持った。

        衣裳や舞台の伝統的な演出に加えて、オーケストラや歌い方の音楽作りの面でも伝統的であり、安心して楽しみながら舞台を見ることが出来たが、その反面、この映像ならではの新しさも見られた。冒頭の貴族の館と大勢の働く召使いたちが一目で時代を反映させていたり、よく見ると髭を生やした可愛いケルビーノのご愛敬、第三幕の伯爵夫人のアリアの順序が早く、アリア後半での夫人の決意の姿が立派であり、第三幕の結婚式後の写真撮影などは初めて見るもので、第四幕の5つのアリアの学芸会が揃って出来が良く、第四幕の最後に伯爵が夫人ばかりかスザンナにも赦しを求めた姿などなど、新しさを感じさせたた場面が多く、やはり考え抜かれた舞台であると思われた。

        各人の動きやテンポの良さが目につき、中でもバルバリーナが各所で好演技を見せており、また、バジリオが剽軽な動きを見せて観衆を喜ばしていたし、マルチェリーナが各所で素晴らしい活躍をして舞台を盛り上げており、さらにケルビーノがとても元気がよく各所で笑いを振りまいていた。彼らの活躍がそのままこのオペラの成功に繋がっていたが、主役となる伯爵と伯爵夫人もまずまずの歌と演技を見せていたし、フィガロとスザンナの動きの良さが役柄にピッタリで、素晴らしい効果をあげていた。著名な方は見当たらないが、全員が仲良く持ち味を発揮するローカルな舞台の良さが、このオペラハウスでは強く感じさせた。

(以上)(2014/11/22) 


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