(最新のBS放送より;異色の木管・金管五重奏曲の演奏会)
13-7-3、ベルリンフイルハーモニー木管五重奏団演奏会、デイヴェルテイメント変ロ長調K.270(ミヒャエル・ハーゼル編曲)、めぐろパーシモンホール、2006年10月9日、およびカレファックス・リード・クインテット・コンサートより、弦楽五重奏曲ハ短調K.406(エドアルト・ウエスリー編曲)、
東京文化会館小ホール、2009年11月28日、

−最初のデイヴェルテイメント変ロ長調K.270は、原曲のオーボエ2、ホルン2、ファゴット2の木管6重奏曲を、フルート・オーボエ・クラリネット・ホルン・ファゴットの木管5重奏曲に編曲されたものであった。ベルリン・フイルハーモニー木管五重奏団の演奏は、フルート・オーボエ・クラリネットが入れ替わり立ち替わりに登場して主役を演じて、メロデイラインが多彩になっており、素朴な原曲よりも純粋できめ細かい室内楽風の曲に変化していた。一方のオーボエ・クラリネット・サクソフォーン・バスクラリネット・ファゴットの5重奏のカレファックス・リード・クインテットは、オーボエ2、クラリネット2、ホルン2、ファゴット2の管楽8重奏曲のセレナードハ短調K.388と、モーツァルト自身が弦楽五重奏曲ハ短調K.406に編曲したものを、現代楽器用のリード・クインテットに編曲したものであり、ハ短調の暗いイメージの曲が、変化に富んだ明るい感じに編曲されていた。しかし、彼らはモーツァルトよりも後半のジャズ風な「くるみ割り人形」などをもっと生き生きと演奏しており、モダンな崩れた曲の方が、彼らの演奏スタイルに向いているような気がした−

(最新のBS放送より;異色の木管・金管五重奏曲の演奏会)
13-7-3、ベルリンフイルハーモニー木管五重奏団演奏会、デイヴェルテイメント変ロ長調K.270(ミヒャエル・ハーゼル編曲)、
めぐろパーシモンホール、2006年10月9日、およびカレファックス・リード・クインテット・コンサートより、弦楽五重奏曲ハ短調K.406(エドアルト・ウエスリー編曲)、東京文化会館小ホール、2009年11月28日、
(1008/06/06BS103クラシック倶楽部放送をBD02.8に収録、2012/02/22BS103クラシック倶楽部放送をBD48.1に収録)

         7月号の第三のソフトは、いずれも最新のBS放送より収録してBDに収めたソフトであるが、「異色の木管・金管五重奏曲の演奏会」と題して、じっくり紹介したいと考えている。第一曲はベルリンフイルハーモニー木管五重奏団演奏会より、デイヴェルテイメント変ロ長調K.270(ミヒャエル・ハーゼル編曲)というもので、原曲はオーボエ2、ホルン2、ファゴット2の木管6重奏曲が、フルート・オーボエ・クラリネット・ホルン・ファゴットの5重奏曲に編曲されたものであった。また、オーボエ・クラリネット・サクソフォーン・バスクラリネット・ファゴットの5重奏のカレファックス・リード・クインテット・コンサートでは、弦楽五重奏曲ハ短調K.406をエドアルト・ウエスリーが編曲したもので、原曲はオーボエ2、クラリネット2、ホルン2、ファゴット2の管楽8重奏曲のセレナードハ短調K.388であった。それをモーツァルト自身が弦楽五重奏曲ハ短調K.406に編曲しているが、今回の編曲は、これら二つの原曲を参考にして、現代楽器用にモダンに編曲したものと考えられ、ハ短調の暗いイメージの曲が明るい感じに編曲されていた。


さて、第一曲の木管デイヴェルテイメント変ロ長調K.270は、1777年1月の作とされ、大司教宮廷の食卓音楽として書かれたと思われる一連の木管六重奏のデイヴェルテイメント6曲中の1曲とされている。楽器構成はいずれもオーボエ2、ホルン2、ファゴット2 となっており、一部を除き、4楽章構成となっており、この曲では、アレグロ・モルト、アンダンテイーノ、メヌエット、プレストの構成となっていた。6曲のうちこの曲がこのHP初登場であり、編曲であるので譜面はないが、初めてであるので原曲の新全集の譜面を見ながら、慎重に聴いた。兎に角、演奏機会に恵まれない曲なので、編曲版であっても貴重であり、注意深く聴いてみたい曲たちであった。
今回演奏するベルリン木管五重奏団のメンバーは、座り順で向かって左から、フルートがミヒャエル・ハーゼル、オーボエがアンドレアス・ヴィットマン、ホルンがファーガス・マクウイリアム、ファゴットがヘニング・トローク、クラリネットがワルター・ザイフェルト、の5人のメンバーであり、編曲者がどうやら左端のフルート奏者のようであった。編曲はオーボエの2声部をフルート・オーボエ・クラリネットに分割するように編曲されたものと思われる。


第一楽章はソナタ形式であり、堂々とした主和音と分散系のユニゾンで始まる第一主題が非常に軽快であり、小刻みに刻むファゴットの同一音の反復音とホルンの応答音に支えられて進行し、続いて装飾音が効果的な長い経過部を経てから、第二主題に入っていた。この主題は二小節単位で反復するように進む軽快なもの。原曲では二つのオーボエで進んでいたが、編曲では、フルート・オーボエ・クラリネットが入れ替わり立ち替わりに登場して主役を演じており、きめ細かな変化に満ちていた。提示部は繰り返されていたが、装飾音が一層目立つようになっていた。
展開部では、第一主題の素材を使って和声的な展開を見せる短いもので、再現部ではほぼ型通りに二つの主題が再現されるものであった。


          第二楽章は短いロンド形式で、スタッカートで始まる短いロンド主題が愛らしく、美しいアンダンテイーノを作っていた。この主題の合間に入る小さなエピソードもこの主題に合った歌謡風なもので、全体が軽やかに旋回する旋律の動きとスタッカートの魅力に満ちており、この楽章ではフルートが特に活躍していた。第三楽章は、わずか8小節の短いメヌエットで、フォルテとピアノを繰り返す単調なもの。トリオでは、音階モチーブと同音反復のモチーブが各声部でカノン風に繰り返し現れて、賑やかな牧歌風な雰囲気が漂っていた。
フィナーレはもの凄く早いプレストで、この早いロンド主題が繰り返して出てくるA-B-A-C-A-B-Aでコーダで結ばれるロンド形式。3/8拍子の3連符による早いロンド主題がフルートからオーボエへ、そしてクラリネットへと矢継ぎ早に引き継がれ、絶えず何処かの声部で3連符が鳴っている疾風のような快活なプレスト楽章であった。



   この6曲のデイヴェルテイメントのシリーズでは、私は昔から、どうしたものか、変ホ長調K.252が大好きであったが、この曲は冒頭楽章がカンタービレなゆっくりしたシチリアーノのリズムで始まる舞曲風のものであり、各楽章が舞曲を中心にしたバロック的な食卓音楽に相応しいものになっていた。各曲とも特徴がありそうなので、今回は1曲だけのアップであるが、これから注意していたいと思う。
  この曲の次には、マンハイムのダンツイ(1763〜1826)による木管5重奏曲Op56-3を演奏していたが、この曲ではメロデイラインはまずフルートが口火を切り、続いてオーボエが繰り返し、合奏をすると言った使い方であり、クラリネットは伴奏が多く、メロデイラインに加わることは少ないように見えた。この演奏スタイルを見て、編曲者はメロデイラインのトップをフルートにしたダンツイの方式で編曲を試みたものと思われた。今回の編曲は、原曲よりもメロデイラインが多彩になっているが、ホルンとファゴットが1台に減っているので、純粋な室内楽風の曲に改められたように思われた。細部にこだわらなければ、十分にモーツァルトの曲として楽しむことが出来ると考えられる。
     

      今回の第二曲目は、オーボエ・クラリネット・サクソフォーン・バスクラリネット・ファゴットの5重奏のカレファックス・リード・クインテット・コンサートで演奏されたもので、原曲はオーボエ2、クラリネット2、ホルン2、ファゴット2の管楽8重奏曲のセレナードハ短調K.388であり、これをモーツァルトが弦楽五重奏曲ハ短調K.406にしており、おそらく編曲者のエドアルト・ウエスリーはこれら二つの曲を参考にして、サクソフォーンの加わった異色的な木管五重奏曲に編曲したものと思われる。このリード・クインテットは2ホルンの代わりにサックスとバスクラが入っており、他のオーボエ・クラリネット・ファゴットは8重奏曲で使われていることから、編曲の中心は2ホルンのパーツをサックスとバスクラにそれぞれ編曲することが重要であったと思われた。このシリーズを演奏する場合に、例えばコリン・デーヴィスのバイエルン放送SOゾリステンによる「セレナード集」(5-11-2)などのように、コントラバスを追加して演奏すると効果が大きいが、この5重奏曲の編曲でバス・クラリネットを加えたことは非常に効果的であり、低音部に芯が出来たように聞こえていた。


この曲は、1782年の7月にウイーンで作曲されており、セレナーデと言う名の最後の曲でもある。父親宛の手紙に、この時期に「管楽器だけの夜の音楽を急いで書かなければなりません」とだけ書かれており、何のために作曲されたかは不明である。しかし、前作の変ホ長調K.375と較べて、4楽章でハ短調という調性でもあり、その名のような社交的な娯楽のための音楽ではなく、交響曲や室内楽のように芸術的に純度の高い作品のように思われる。実際、モーツァルトは、1787年に自らこの曲を弦楽5重奏曲K.406(516b)に書き改めており、彼の記憶に残された重要な作品と言うことができよう。
彼らは1985年オランダで結成されたとあり、古典から現代曲、ジャズにいたるまで幅広く演奏しており、楽器編成が特殊であるところから、随時、編曲を行っているようである。今回のプログラムでは、モーツァルトのほか、ベルドウ作曲「装飾的変奏の書」という現代曲、最後にジャズ組曲「くるみ割り人形」からデユーク・エリントンが作曲したものを5重奏用に編曲したものが組まれていた。お馴染みの上野文化会館小ホールは、ほぼ満席で、男性5人はばらばらな色彩の背広姿で立って演奏するスタイルであり、モダンな感じを受けていた。


この曲の第一楽章の始まりは、ハ短調でユニゾンで奏される暗いイメージで第一主題が奏されるが、主題の後半はオーボエが提示しており、これは展開部の主要主題でもあった。推移部を経過してやがてオーボエがクラリネットの伴奏で明るく第二主題を歌い出してホッとする。途中からは各声部がそれぞれが明るいメロデイラインや伴奏型を歌い出して盛り上がり、最後はトウッテイで勢いよく提示部を閉じていた。ここで提示部の繰り返しは丁寧に行われていたが、やはりこの曲の構成はしっかりして厚みがあり、まるでセレナードというよりシンフォニーのような感じさえしていた。
          展開部では、第一主題の後半の音型を使った独特の展開部は短いがハッとさせる迫力があり、展開部の最後は全休止で閉じて、再現部の入りを強調していた。再現部では、冒頭主題がユニゾンでしっかりと再現されていたが、第二主題はオーボエが変奏形で提示しており変化を付けながら演奏し、最後の後半では素晴らしい五重奏でこの楽章が結ばれていた。


           第二楽章は、前楽章の緊張を取り除くような、クラリネットとファゴットで始まるのどかな牧歌的な感じのアンダンテで始まり、オーボエとサックスに引き継がれていた。続く第二主題もクラリネットの独奏で始まるがオーボエで反復されて終始穏やかにゆっくりと進む。この楽章は反復記号を持たないソナタ形式か。形だけの展開部に続いて、再現部ではサックスやバスクラが第一主題を合奏して、存在感を示しており、聞き慣れた木管8重奏とは異なる5重奏になっていた。
         第三楽章は、「カノン風メヌエット」と譜面に表示されており、メヌエット主題がオーボエで始まり、ファゴットが一小節遅れて進行する部分と、オーボエにクラリネットの分散和音が加わる部分と、メヌエット主題をクラリネット、オーボエ、ファゴットの順に演奏する部分とがある。トリオはオーボエが休んで、サックスとクラリネット中心で奏され、表示通り反行カノンの形を取っており、明るく澄んだ感じのするこのトリオは、重厚なメヌエットと、好対照をなしていた。

 

          フィナーレは、二部リート形式の16小節の主題の7つの変奏曲であると思っていたが、譜面を見ながら厳密に調べてみると、この曲だけに見られる複雑な構造を持っており、全体の構造は、主題と変奏(第一〜第四)−中間部−主題と推移部−終結部、の形式になっていた。第一部は明るく軽快に進むアレグロの主題がオーボエとファゴットで提示されてから、オーボエとクラリネットが旋律を、その他が伴奏をユニゾンで力強く合奏される第一変奏から始まった。第二変奏はオーボエのソロで主題は三連符による変奏であった。第三変奏はシンコペーション・リズムの主題がオーボエとファゴットに現れるもので、第四変奏は反復記号がなく、前半は全楽器が八分音符で主題を奏し、後半はオーボエがトリル、ファゴットが16分音符の音階、他の楽器は和音提供で変奏されていた。
           中間部ではサックスとバスクラの明るい和音が特徴であり、他の楽器に引き継がれても再びサックスとバスクラに戻っていた。主題回帰ではオーボエの主題提示にファゴットが動きの激しい伴奏を付け、推移部ではシンコペーションのリズムが支配的であり、フェルマータで休止する。最後の終結部では、この曲の仕上げのスピード感あるアレグロであり、主題が激しく一気に力強く奏され、堂々と盛り上がりを見せて終結していた。

           まるでシンフォニーのフィナーレのように輝きを持っており、変化に富んだリード・クインテットになっていた。すべての楽章を通じて、終始、オーボエの活躍とそれを補佐するクラリネットが目立っており、サックスやバスクラを加えた異色的な響きのするモダンなクインテットに生まれ変わったような気がした。従って、それなりに編曲の面白さを理解しながら聴いていたが、改めてコリン・デーヴィスの木管8重奏曲と比較すると、画質・音質面では新しいものがよいものの音楽面ではやや軽すぎて物足りなさを感じてしまった。このリード・クインテットは、ジャズ風なくるみ割り人形なども後半に演奏していたが、非常に真面目なモーツァルトのこの曲よりも、彼らはもっと生き生きと演奏しており、モダンな崩れた曲の方が、彼らの演奏スタイルに向いているような気がした。

(以上)(2013/07/23)


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