(最新購入のDVDより;P.ジョルダン指揮パリ・オペラ座の「フィガロの結婚」)
13-4-3、フイリップ・ジョルダン指揮パリ・オペラ座の「フィガロの結婚」K.492、ストレーレル演出、 2010年10/11月、パリ・オペラ座、

−パリ・オペラ座による「フィガロの結婚」K.492は、ポーマルシェのご当地だけにこのオペラは大人気であり、このHPでもこの映像を含めて4種類も集まっている。ショルテイ・ストレーレル(1980)に始まって、ガーデイナーのシャトレ座(1993)の古楽器によるもの、カンブルラン・マルターラー(2006)による思い切った現代風の新演出のものと出番を重ねてきた。今回の舞台は、古きに戻るストレーレル演出であったが、改めてその古きの良さを新鮮なスタイルで味わう趣向であり、出演者の好演もあってとても楽しかった。これにカットされたアリアが加わり、映像に日本語字幕が加われば、最新の「フィガロ」として大いに喜ばれたと思われる−

(最新購入のDVDより;P.ジョルダン指揮パリ・オペラ座の「フィガロの結婚」)
13-4-3、フイリップ・ジョルダン指揮パリ・オペラ座の「フィガロの結婚」K.492、ストレーレル演出、
2010年10/11月、パリ・オペラ座、
(配役)伯爵;Ludovic Tezier、伯爵夫人;Barbara Frittori、スザンナ;Ekaterina Siurina、フィガロ;Luca Pisaroni、ケルビーノ;Karine Desyayes、マルチェリーナ;Ann Murray、バルトロ;Robert Lloyd、
(2013/01/21、新宿タワーレコードにて輸入盤DVD2枚組BelAir]-DVD-BAC071を購入)

4月号の第三曲目はフイリップ・ジョルダン指揮パリ・オペラ座の「フィガロの結婚」K.492であり、伝統的なストレーレル演出による2010年10/11月のパリ・オペラ座の最新の輸入盤のDVDである。残念ながら日本語字幕はないが、私にとっては、伯爵夫人のフリットーリ、フィガロとスザンナのピサローニとシウリーナが最近のお馴染みの上、マルチェリーナとバルトロが、非常に懐かしいアン・マレイとロバート・ロイドというコンビが名を連ねており、出来るだけ早くアップしておきたい映像であった。かってパリ・オペラ座のストレーレル演出のショルテイの「フィガロ」(1980)の映像(9-9-2)をアップしているが、舞台はほぼ30年前と同じであることから、パリ・オペラ座の伝統を重んずる保守的なものが残されているものと思われ、それが現代でも通用するかどうかが楽しみな舞台であった。



画面はまずオーケストラピットが写され若い指揮者ジョルダンが入場し、挨拶もそこそこに序曲が軽快に始まった。映像はピットから舞台の様子が回想風に現れて、それを背景に画面に配役・制作者などが字幕で紹介されていた。序曲は軽やかに快く進み開幕への期待を高めており、ジョルダンは厳しい表情であるが、しっかりと指揮をしていた。第一曲の序奏が軽やかに始まり、幕が開くと舞台は薄暗い物置部屋、大きな椅子にスザンナが腰をかけて白い頭の飾りを気にしており、フィガロが夢中で床を測りながら、二人の小二重唱が明るく歌われていた。この部屋にベッドを入れる話から、第二曲目の小二重唱となり、スザンナから話を聞いて、伯爵の企みを知ったフィガロはやっと頭が動き出した。スザンナが呼ばれて一人になって考え出し、チェンバロのかすかな伴奏に乗って威勢良くカヴァテイーナを歌い出したが、ロンドン行きを思い出してか腹いせに、手にした棒でぶら下がった伯爵の洋服を殴りながら歌って、その元気の良さに凄い拍手があった。このフィガロとスザンナの二人は相性が良さそうでこれからが楽しみであった。



           黒装束のバルトロとマルチェリーナが登場したが、良く見るとこれが何とロバ−ト・ロイドとアン・マレイの昔のコンビ。バルトロはマルチェリーナにおだてられて「復讐だ!」と元気にアリアを歌い、俺に任せろとばかりに得意顔で退場していた。続く女二人の口争いの小二重唱は、ドアの前でどうぞお先にと表情豊かに争われていたが、スザンナからお歳の話が出て、マルチェリーナが怒りだして大袈裟に退散していた。そこへ入れ替わるようにケルビーノが登場し、伯爵夫人のリボンをスザンナから取り上げ、その代わりに自作の恋歌を渡し、「自分が自分で分からない」と元気よく歌い出した。ケルビーノは、ズボン姿がよく似合い、余り速くなくハッキリと歌われ、声も表情も良く、凄い拍手を浴びていた。そこへ伯爵の声が聞こえて、二人は大慌て。スザンナが一人と見た伯爵が、早速、スザンナを口説き出すが、良いところでバジリオの声が聞こえて、伯爵は隠れて盗み聞きする。バジリオがケルビーノの話から伯爵夫人の噂話に及んで、伯爵が「何だと!」と立ち上がってしまい、愉快な三重唱が始まるが仰天したスザンナが気絶してしまっていた。


   スザンナが介抱されているうちに椅子に隠れていたケルビーノが見つかってしまい、「コシ・ファン・トッテ」とバジリオに冷やかされ、スザンナは弁解に一苦労。そこへ、運良くフィガロが村人達を連れて登場し、伯爵を讃える大合唱となっていた。しかし、伯爵はフィガロの作戦には乗らず、二人を認めずにマルチェリーナを期待していた。再び合唱が始まるが、バジリオが指揮をしてうまく村人達を解散させていたのが面白かった。残されたケルビーノは、伯爵から連隊の士官に命ぜられ、直ぐに出発となって、フィガロから「さらば、少年ケルビーノ」とばかりの少々手荒な激励の歌で励まされ、最後には行進曲となって、鉄砲を肩に軍隊帽を被って堂々と行進をしながら退場して幕となっていた。この一連の舞台の進行は大変に楽しく、大拍手で観衆を喜ばせていた。


         第二幕ではオーケストラピットが写されて前奏で始まるが、幕が開くとそこは右奥にベッドがある伯爵夫人の間。伯爵夫人のカヴァテイーナがゆっくりと始まり、正装の伯爵夫人のフリットーリが落ち着いて悲しげに歌い出し、さすが名調子でうっとりとさせてしまう。スザンナが現れ、続いてフィガロが現れて、浮気な伯爵を懲らしめようとフィガロが作戦を練るが、ケルビーノを女装させることには女二人は大賛成。早速、軍服姿のケルビーノが登場して、スザンナのギター伴奏で歌い出すが、これが直立不動の姿勢で正調で歌われ、後半も崩さずに丁寧に歌い上げて、万雷の拍手を浴びていた。ピッチカートと木管の豪華な伴奏が快いこのカンツオーネは、兎に角、明るく楽しく人気満点であった。続いてスザンナの着せ替えのアリアが始まったが、スザンナが喜々として軍服姿のケルビーノをからかいながら、ズボン姿から長いドレス姿に見事に変身させて大笑いで拍手を浴びていた。ケルビーノが自分の腕に巻いた夫人のリボンが欲しいと伯爵夫人に詰め寄ってあわやと思わせたときに、ドアが叩かれ伯爵の大声が聞こえてきたのでさあ大変。


         大慌てで衣裳部屋に隠れたケルビーノをスザンナだと言い張る伯爵夫人を怪しいと睨んだ伯爵が、「スザンナ、出て来なさい」と大声を上げて三重唱が始まった。この三重唱は疑心暗鬼の伯爵と、当惑し隠そうとする夫人と、隠れて二人の様子を見ているスザンナによりドラマテイックに歌われていた。夫人がドアを開けさせまいと必死に抵抗するので、伯爵は自分で工具を取りに行こうと夫人を連れて外に出た。その僅かな一瞬の隙に、スザンナが「早く、早く」の小二重唱でケルビーノを部屋から出し、ケルビーノは大慌てで窓から飛び降りて逃げ出して、スザンナが衣裳部屋へと入れ替わってしまった。工具を手にした伯爵が部屋に戻ると、遂に観念した伯爵夫人が子供だ、ケルビーノだと白状したが、伯爵はまたもあいつかとカンカンになり、「出てこい、無礼な小僧!」と歌い始めて、第二幕の長い五景からなるフィナーレが始まった。


        フィナーレは怒る伯爵に対し、あの子には罪はないとする伯爵夫人との口論の二重唱から始まって、部屋の鍵を渡して開けようとした所に、ドアが開いて「シニョーレ、どうぞお手討ちを」とスザンナが現れた。そこで大驚きの三重唱となり、謝る伯爵と強い立場の女二人による謝罪の三重唱に発展した。そこへフィガロが現れたので、伯爵は手紙の問題を問いただそうと四重唱が始まった。知らぬ存ぜぬを決め込んだフィガロに呆れていたところに、アントニオが二階から人が飛び降りたと伯爵に抗議して何と五重唱になった。自分が飛び降りたと言うフィガロに、アントニオがケルビーノが落とした辞令を伯爵に見せ、これは何かと追求されて、絶体絶命。しかし、アントニオを追い出して、女二人の知恵を借りて四重唱で伯爵の追求を何とか逃れたフィガロだったが、そこへマルチェリーナ一行三人が登場して、伯爵に借金の契約の執行を訴えたため七重唱となった。フィガロ側は劣勢となって大声で抵抗するので場面は盛り上がり、争いはどうなるか緊張の中で第二幕が終了していた。このフィナーレは、この五景にも及ぶ緊張感の連続であり、一瞬たりとも気の抜けない出演者たちは、素晴らしい息の合ったアンサンブルで、この入り組んだシナリオを手順通りに巧みに歌って演じて見せていた。


         第三幕は伯爵の部屋で始まるが、チェンバロが置いてあり、伯爵はチェンバロを自分で弾きながら第二幕の不思議な出来事を自問自答していた。これはストレーレルのオリジナルな珍しい演出であった。部屋の隅では伯爵夫人がスザンナに対し何やら伯爵を欺く作戦を秘かに指示している様子であり、スザンナは夫人用の気付け薬を口実に伯爵に接近し、スザンナらしいコケットリーな仕草で伯爵の気を惹き、いつの間にか伯爵から今夜の庭でのデートを約束する二重唱となっていた。終わりにはキスまで許して伯爵を喜ばせてしまうが、別れ際にすれ違ったフィガロに「訴訟には勝った」と漏らしたのを伯爵に聞かれてしまった。伯爵はそれを聞き謀られたかと伴奏付きのレチタテイーボで自問自答しながら激しく歌い、「ため息をつきながら召使いの幸せを見ているのか」とアリアを歌い出し、終わりには「復讐への望みだけが我が喜びだ」と元気よく伯爵唯一のアリアを朗々と歌って会場を沸かせていた。


          続いて「判決が出た」とドン・クルチオを先頭に伯爵の部屋にマルチェリーナとバジリオが登場し、フィガロが一人で不平を言っていた。一金2000を払うか結婚するかの判決であったが、フィガロが「結婚するには盗まれた貴族の子だから親の承諾が必要だ」として頑張っており、その証拠は盗まれたときの洋服と右腕の絵文字の痣だと息巻いていた。しかし、それを聞いてマルチェリーナが、その子は盗まれたラファエロだと言うことになり、マードレ・パードレの珍妙な六重唱が始まった。親子の抱擁をしていると、お金を持って駆けつけたスザンナがそれを見て、フィガロへの平手打ちを誘い出し、お互いに和解して、伯爵とクルチオがのけ者にされる六重唱は実に面白く、アン・マレイの声がひときわ高く響いて存在感を示しており、最後には親子の二組の結婚式を挙げようと言うことになった。



          それから赤いドレスに着替えた伯爵夫人が登場し、スザンナと伯爵との約束がどうなったか気にしながら、自分が女中の服を着て主人を待つという情けなさを自問自答して、「あの幸せなときは、どこへ」という美しいアリアをアンダンテで歌い出した。後半にはアレグロになって「伯爵の心を取り戻すなら希望がある」と勢いよく決意を高らかに歌っていた。フリットーリのこの馴染み深いアリアは、堂々として貫禄があり、会場ではたいそうな拍手で迎えられていた。続いて伯爵夫人は、スザンナから伯爵との約束を聞いて、待ち合わせの場所が心配だから、手紙を書いて場所をハッキリさせようと夫人が歌い出し、スザンナに書き取らせて、「手紙の二重唱」が始まった。二人が言葉を繰り返しながら丁寧に歌うこの二重唱は、少しテンポが速かったが実に美しく、このアリアも会場から盛んに受けていた。



       そこへ村の若い娘達の合唱が威勢よく始まり、伯爵夫人に花を献花していたが、娘達の中に一人見慣れぬ娘を夫人が見つけたが、それが何とケルビーノ。アントニオと伯爵が捕まえて懲らしめようとする一騒動があった。しかし、バルバリーナがケルビーノの一大事とばかりに伯爵に告白したので、伯爵夫人はカンカン。
        フィナーレに入って行進曲とともに、村人達や二組の婚約者が入場し、二人の乙女達の祝福の二重唱が続き、スザンナが伯爵からヴェールを受けていた。その隙にスザンナから手紙が伯爵にソッと手渡され、すっかりご機嫌になった伯爵の高らかな挨拶で第三幕が盛大に終了していた。舞台は大勢の出演者で賑やかであったが、第三幕でも物語の進行の芸が細かく、全体としては余り矛盾がなく、順調に進んでいた。



    第四幕はバルバリーナのピンが見つからないという悲しげなアリアで始まるが、フィガロが登場しマルチェリーナのピンを代わりに差し出して、彼女からスザンナと伯爵の逢い引きの企みを始めて聞き出した。新婚の夜だというのにと、フィガロは怒り出したが、マルチェリーナに宥められても治まらない。ここでマルチェリーナとバジリオのフィガロを諭す二つのアリアが省略されて、フィガロがスザンナの裏切りを怨むアリアを歌い出した。場面はいつの間にか、松の木がある庭園で、フィガロは暗闇の中で朗々と感情を込めて歌われて、大拍手が送られていた。一方、スザンナはフィガロの姿を暗闇で見て、自分を疑うフィガロをからかうために、「さあ、時がきた」と歌い出した。ピッチカートに支えられた木管三重奏のオブリガートに乗った絶妙な前奏に続くアリアは、シウリーナがここぞとばかりに気を入れて素晴らしい声でしっかりと歌っており、このアリアも大拍手の嵐となり、フィナーレに突入していった。


           松の木の木陰でスザンナの衣装を付けた伯爵夫人が登場すると、ケルビーノがスザンナと見間違えて、ちょっかいをかけ出してしつこい。それを伯爵が見守る中で、フィガロとスザンナも茂みの陰に隠れて様子を見ており、五人の五重唱の形でフィナーレが始まった。伯爵が邪魔なケルビーノを追い払おうと平手打ちすると、それが隠れていたフィガロに当たって一騒動。音楽が変わってやっとスザンナの伯爵夫人と伯爵が二人きりになり、伯爵が手を取って口説きだし、素直なスザンナに対し盲目となってダイヤの指輪までサービスしてしまう。見かねたフィガロが通行人で現れると、証拠の指輪を手にしたスザンナの伯爵夫人は、フィガロを追っていなくなり、伯爵はスザンナを探してうろうろしていた。


           一方、スザンナの逢い引きを見たフィガロが怒って伯爵夫人を見つけて訴えると、それが何とスザンナであることが分かり、ここでフィガロはスザンナに対し一芝居。二人の一騒動があって、恋人同士のフィガロとスザンナは仲直り。そこで二人は、スザンナを捜す伯爵を見て、奥方と従僕の姿でラブシーンを演じて浮気な伯爵をからかうと、伯爵は芝居であると気がつかずに「皆のもの、密通だ」と大声を上げてしまう。そして平謝りの二人に対し、伯爵は集まって来た皆の前で「絶対に許さない」と大声で叫んでしまった。さあ大変。皆が心配して見守っていると、反対側の陰から伯爵夫人が「私がお許しをお願いしたら」と静かに現れたので、伯爵は仰天する。よく見るとスザンナとフィガロが平謝りの姿だったので、伯爵は自分の非を始めて知った。考える間もなく一呼吸置いて、伯爵が皆の前で奥方に深々と膝をついて頭を下げて許しを乞い、伯爵夫人は「私が怒れましょうか、許しましょう」と寛大な姿勢をみせたので、見ている一同は一安心。素晴らしい赦しの音楽とこれを讃える満足の音楽とが重なって、場面は登場人物全員による華やかな喜びの重唱となり、賑やかにスピーデイに終幕となっていた。


伝統的なストレーレル(1921〜1997)の舞台装置・演出は、各幕が物置部屋・伯爵夫人の部屋・伯爵の部屋・松の木がある庭園の四つの舞台を基調とした伝統ある落ち着いた舞台背景となっており、この舞台のデイレクターHumbert Camerloが演出家として、直接、出演者を指導していた。動きも新しく新鮮な感じのする舞台を創出していたので、演出面では安心して見ていれた。彼はボーナス画面で、ストレーレル演出と自分の役割について語っていたが、このオペラのレチタテイーボやアリアの前奏などの音楽で、モーツァルトは歌手の細かな動きを実に良く音で現しており、それを見逃さずに忠実に再現することが重要だと語っていた。伝統的な舞台装置などを背景に、歌手の歌や動きに現代性を持たせる方式で、最近ではメトロポリタン歌劇場のポネル演出の「テイト」に感動した覚えがあるが、演出家の独りよがりな新演出に較べて遙かに説得力があると思われる。

全体として気持ちよく音楽が流れ、歌手たちも良く歌っていたのは、このHP初出の若いフイリップ・ジョルダン(1974〜)の指揮の、軽快で速めのテンポが快く、歌うところは良く歌わせるセンスの良い指揮振りのせいであろうか。スイス生まれの指揮者の息子として生まれ、ベルリンOPでバレンボイムのアシスタントを務めて研鑽し、2001年にグラーツ歌劇場の音楽監督でスタートし、09年にパリ・オペラ座の音楽監督となって注目を浴びつつある新鋭である。音楽面では、最近、第4幕のマルチェリーナとバジリオのアリアが日の目を見ることが多くなっているが、ここでは割愛されており残念であった。

       このDVDの魅力は、新しい若い歌手たちと昔歌っていた歌手たちとの取り合わせの妙にもある。フィガロのピサローニは、先にレポレロ役(12-2-2)で評価されていたが、フィガロでもとても動きが良く、第4幕のアリアでも堂々たる歌唱力を示していた。小柄なシウリーナのスザンナとの相性も良く、伯爵との対立面でもすごみを見せ、ほどほどに愛嬌もあって、面白いフィガロ役であった。一方のシウリーナのスザンナは、イリア(7-9-4)、セルヴィリア(11-10-2)、ツエルリーナ(10-4-3)と次第に出番を高め、遂に得た今回のスザンナ役で初々しくて、伯爵やマルチェリーナにも体当たりでぶつかっていく姿も見せ、第4幕のアリアで最高の拍手を受けており、フィガロのピサローニと合わせて、新鮮な魅力のカップルであった。一方、伯爵夫人のフリットーリは、このところエルヴィーラやヴィッテリア役で大変なヴェテランぶりを発揮していたが、今回のこの舞台では、主役のような堂々たる存在感を見せており、まさに行動する伯爵夫人として見栄えのする姿を見せていた。伯爵はこのHP初出であるが、これら実績のある三人に負けないように演じていたと思われる。しかし、最後の赦しの場面では、伯爵夫人の貫禄勝ちのように見えており、これもこの演出の面白みであろうか。

マルチェリーナ、バルトロ、バジリオなどの裏を支える役がこのオペラにとって重要であるが、アン・マレイやロバート・ロイドなど、昔、舞台で主役を演じていた人々が活躍して持ち味を見せていたのが面白かった。バジリオはいろいろな場面で合唱団の指揮を取っており、板に付いていたので、第4幕でアン・マレイとともにアリアを歌わせていれば、面白かったと思われる。大ヴェテランの反面に、ケルビーノやバルバリーナは全くの新人たちであったが、この演出ではこの二人が特に目立っており、若い人たちが新鮮な動きと歌を見せていたのが印象的であった。

              パリ・オペラ座による「フィガロの結婚」は、ポーマルシェのご当地だけにこのオペラは大人気であり、このHPでもこの映像を含めて4種類も集まっている。ショルテイ・ストレーレル(1980)(9-9-2)に始まって、ガーデイナーのシャトレ座(1993)(9-1-3)の古楽器によるもの、カンブルラン・マルターラー(2006)(9-11-2)による思い切った現代風の新演出のものと出番を重ねてきた。今回の舞台は、古きに戻るストレーレル演出であったが、改めてその古きの良さを新鮮なスタイルで味わう趣向であり、出演者の公演もあってとても楽しかった。これにカットされたアリアが加わり、映像に日本語字幕が加われば、最新の「フィガロ」として大いに喜ばれたと思われる。

(以上)(2013/04/26)


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