(HDD録画による最新映像;小菅優とチョ・ソンジンのピアノ協奏曲K.537とK.467)
13-11-1、小菅優のピアノとザネッテイ指揮名古屋フイル第394回定期公演によるピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」、2012年9月7日、愛知県芸術劇場コンサートHおよびチョン・ミョンフン指揮NHK交響楽団とチョ・ソンジンのピアノによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467、N響第1759回定期公演、2013年6月19日、サントリー・ホール、

−小菅優のピアノは音が明瞭でしっかりしており、パッセージのピアノの音は粒ぞろいでクリアーであるばかりでなく、実にテンポが良く、丁寧に弾いてくれるのでとても好感が持てた。一方のチョ・ソンジンのピアノの技巧は、まだ若いのに実にしっかりしたものがあり、大先輩のチョン・ミュンフンの指揮に安心して委ねるようにして自分のピアノの世界を築き上げており、見事な日本デビューであった−


(HDD録画による最新映像;小菅優とチョ・ソンジンのピアノ協奏曲K.537とK.467)
13-11-1、小菅優のピアノとザネッテイ指揮名古屋フイル第394回定期公演によるピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」、2012年9月7日、愛知県芸術劇場コンサートHおよびチョン・ミョンフン指揮NHK交響楽団とチョ・ソンジンのピアノによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467、N響第1759回定期公演、2013年6月19日、サントリー・ホール、
(2012/11/25、NHK特選オーケストラの放送をHD2にHDD録画および2013/9/8クラシック音楽館のN響定期放送をHD2にHDD録画)

  11月号の第1曲目は、ピアノ協奏曲の演奏を二つ、このHPで初めてのピアニストが二人登場する。第一は小菅優のピアノによるザネッテイ指揮名古屋フイル第394回定期公演によるピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」である。この小菅優のピアノは非常に軽快であり、とても楽しめる演奏であったが、彼女はカデンツアを自作しているようであり、今回も第一楽章でオリジナルな長いカデンツア弾いていた。
          第2曲目はチョン・ミョンフン指揮のN響の定期から、韓国のチョ・ソンジンという新人ピアニストによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467であった。 チョン・ミョンフンは、これまでモーツァルトに縁がなくこのHP初登場であるが、今回のコンサートもメインはマーラーの第5番であった。韓国の若手ピアニストのチョ・ソンジンは1994年生まれというから今年21歳の若さ。17歳でチャコフスキー・コンクール で第3位に入賞した実績があり、恐らく日本初登場の逸材なのであろうと期待している。




        小菅優は、このHP初登場であるので、彼女の経歴を一言触れておかなければならない。彼女は1988年の東京生まれであるが、1993年からヨーロッパに在住し、幼い頃より世界各地で著名なオーケストラと協演を重ねてきた実績を持つ。2005年にカーネギー・ホールで、2006年にザルツブルグ音楽祭で、それぞれリサイタル・デビューしている。最近、モーツァルトのピアノ協奏曲の20番以降の連続演奏会を開催しているようであるが、この第26番ニ長調K.537「戴冠式」は、この演奏が初めてであると解説されていた。ここは名古屋の愛知県芸術劇場コンサートホールで、小菅優を先頭に指揮者マッシモ・ザネッテイが登場し、挨拶を交わしてから、「戴冠式」のニ長調のピアノ協奏曲K.537が始まった。




この曲の第一楽章は、第一主題が弦楽器のみで実に軽快なテンポで軽やかに飛び出していくが、やがて管楽器が加わり、テインパニーも響いて次第に盛り上がり、快調に進行してこの曲らしい祝祭的な気分が盛り上がってきた。続いて明るい第二主題も弦楽器で軽やかに提示され、さらに新しい軽快な第三の主題も加わって高まりを見せ、ザネッテイは歯切れ良くオーケストラを進めながら、長いオーケストラによる第一主題提示部を終えて、小菅優の独奏ピアノにバトンタッチされていた。
       独奏ピアノは第一主題をピアノ流に変奏しながら提示していくが、小菅のピアノは音が明瞭でしっかりしており、直ぐに華麗なパッセージを奏で出すが、ピアノの音は粒ぞろいでクリアーであり、さすがと思わせる名人芸を披露していた。そこで独奏ピアノは止まらず、さらに新しい甘えるような副主題を提示して、引き続き独奏ピアノは技巧を示しながら華やかにそして変奏を加えながら走り回るように進行していた。続いて独奏ピアノはさらに第二主題もご披露し、続けて賑やかなパッセージを示しながら進行していたが、最後にはオーケストラにバトンを渡し、歯切れ良く盛り上がって力強く提示部を終結していた。
       展開部では、独奏ピアノが強烈な和音を重ねながら力強く進行するが、この主題は終結部のモチーブであり、ピアノはオーケストラと対等に堂々と華麗なパッセージで対決しており、極めて充実感があった。再現部では、管楽器も加わったオーケストラで第一主題が始まるが、やがてピアノが引き継いでピアノの技巧的なパッセージに入り、第二提示部の忠実な繰り返しのように進んでいた。カデンツアは小菅自身がオリジナルなものを弾くと語っていたが、第一楽章のいろいろなモチーブやパッセージが盛り込まれアレンジされた初めて聴くものであったが、いかにも楽しげに即興風に弾いており、この楽章を回想するのに相応しい内容であった。





    この曲の第二楽章は、A-B-A'の三部形式の歌謡調で、いかにもモーツァルトらしい愛らしいラルゲット。小菅優の優しい独奏ピアノが呟くように刻む単調なピアノがクリアーで美しく、これをオーケストラが繰り返しした後に、独奏ピアノが変奏するかのようにころころと弾き進むフレーズが実に快よく響く。ひとしきりピアノが歌った後に、再び冒頭主題がゆっくりと再現していた。独奏ピアノで始まる中間部の主題は対照的にリズミカルであり、独奏ピアノは多彩な装飾音を付けながら明るく賑やかに弾いていた。この小菅優のピアノのテンポは私には好ましいものであり、彼女のピアノの暖かさとセンスの良さとを見せていた。結びは冒頭の主題がさらりと繰り返され、オーケストラと独奏ピアノのとの対話が美しく、カデンツアもなく静かに終了していた。





         フィナーレは、独奏ピアノが名調子で軽快に飛び出すロンド主題で、いかにもモーツアルト風の軽やかなアレグレットであり、オーケストラに渡ってこれぞモーツアルトのロンドと呼びたくなるのであるが、続く第一エピソードがあってもロンド主題がなかなか現れない。どうやら、モーツアルトのフィナーレによくある気まぐれが現れたようで、ロンド風の第一主題を持つ、展開部を持たないソナタ形式で書かれていると考えた方が良さそうな楽章であった。
         軽快な独奏ピアノによるロンド風の第一主題の後にオーケストラによって再現され、経過部が続いてから、再び独奏ピアノが歌うように新しい軽快な主題を弾き出して走り出すが、オーケストラの手に渡ってから独奏ピアノとのやり取りがひとしきり続いていた。そして、オーケストラによる第二主題が始まった。独奏ピアノがこれを引き継いでから、小菅優による素晴らしいパッセージが続き、装飾したり即興的に流したりして華麗なパッセージが縫うように進み素晴らしい効果を上げてから、一端フェルマータで停止した。スコアにはないが小菅がお得意の派手なアインガングが短く入ってから、再び冒頭のロンド風の主題が独奏ピアノにより飛び出した。この再現部は提示部のほぼ忠実な反復のようであり、独奏ピアノが次々に早いパッセージを繰り広げながら転がるようにピアノが突き進んでいた。実に伸び伸びした楽しい気分に溢れており、ピアノのパッセージが華やかで明るい色調で終結していたが、小菅優は再び最後のアインガングで軽くカデンツアのように弾き結んでから、最後は冒頭の軽快なロンド風主題で軽快に結ばれていた。





           実に安定感があり、軽快な歯切れのよい「戴冠式」の名に相応しいお馴染みの軽快なフィナーレが終結し、終わると大変な拍手が湧き起こり、小菅優の人気の高さを示すように思われた。名古屋フイルは、お正月にガラ・コンサートをやるのでお馴染みであるが、このHPに登場することは珍しく、二つのコントラバスをベースにした二管編成のオーケストラがとても良い響きを聴かせており、この地域を代表する立派なオーケストラであることが確認できた。後半には、ブラームスの交響曲第一番で、力量を発揮するものと思われる。拍手が収まらず、小菅優はアンコールで、シューマンの「子供の情景」から、第13曲目の「詩人のお話」という曲を演奏していたが、これもゆっくりしたテンポで彼女のこの曲への深い思いを伝えるかのように丁寧に弾いていたので、再び凄い拍手が湧き起こり、大変な歓迎を受けていた。彼女はピアノの技巧が達者なばかりでなく、実にテンポが良く、粒立つように丁寧に弾いてくれるので実に好感が持てた。出来れば、モーツァルトの協奏曲をシリーズでDVDやCDで発売して頂きたいと思う。


         第2曲目はチョン・ミョンフンが連れてきた若い新人ピアニスト、チョ・ソンジンによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467であるが、21歳の日本初登場の新鋭はどんな演奏をするのであろうか。サントリーホールにソンジンが先頭で指揮者とともに二人が入場し、拍手を浴びながら着席して、ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467の第一楽章が始まった。弦五部のユニゾンで始まる行進曲風の第一主題が静かにリズミックに始まって、弦五部と木管やテインパニとの応答が明るく続いてから、トウッテイによる経過部がリズミックに進行していた。チョン・ミョンフンは余り体を動かさずに、トランペットとテインパニーが刻むリズムに注意を払いながら進めており、途中からオーボエやフルートが明るい響きを見せる副主題が登場して、終始明るい響きの中でトウッテイで行進曲風に堂々と進行し、第一主題のみでオーケストラによる主題提示部が簡潔に終了していた。



          それからファゴットとフルートに導かれながらソンジンの独奏ピアノによるアインガングが明るく始まり、トリルを4小節も続けているうちに、弦五部による第一主題が始まって、独奏ピアノがこれを力強く引き継いで、直ちに華やかなパッセージで威勢よく進行していた。ソンジンのこのピアノのパッセージは、繊細で明るく音が際立つように明快に弾かれていた。やがて独奏ピアノがト短調交響曲の冒頭を思わせるような副主題を明るく弾き出して印象づけてから、軽快な第二主題が独奏ピアノで歌うように現れた。そしてこれからは独奏ピアノがオーケストラと競い合うように素晴らしいパッセージを見せながら急速に進行し、次第に高揚しながらオーケストラとともに提示部を締めくくる盛大なエピローグとなって、展開部へと突入して行った。
           展開部ではソリスト・ソンジンのまさに一人舞台の様子で、新しい主題でリズミックに絢爛たるピアノの技巧が示されていたが、独奏ピアノはオーケストラとも対等に競い合い、大胆で力強いピアノが響いていた。再現部では提示部とは主題の順序が異なっており、いささか変則的。オーケストラで第一主題が呈示された後、独奏ピアノがこれを引き継いでから、直ぐに第二主題がピアノで再現されており、その後に提示部で第一主題の後半に置かれていたオーボエやフルートが明るい響きを見せる印象深い副主題が現れたりしていた。最後のカデンツアでは、初めて聴く響きであり、第一主題と第二主題が巧みに回想風に現れるもので、実に流暢に弾き流していた。



        第二楽章は弦楽合奏で始まる美しい静かな素晴らしいアンダンテ楽章で、三部のリート形式。初めに第一ヴァイオリンが、コントラバスのピッチカートと第二ヴァイオリンとヴィオラの三連符による豊かな伴奏に乗って、美しいテーマを歌い出し、その甘い調べにはつい引き込まれてしまう独自の美しさがある。やがて木管も加わって、チョン・ミュンフンは、実に落ち着いたテンポで静かな美しいオーケストラの世界をゆっくりと築き上げていた。ソンジンはこの美しい音色に聞き惚れるようにしていたが、やがて独奏ピアノが自ら左手で三連符を弾きながら登場し、ゆっくりしたピッチカートの豊かな伴奏に乗って右手でこの主題を明快に弾きだした。彼のピアノは一音一音、克明に弾かれ、ひとしきり美しく歌ってから華やかなトリルにより終結していた。彼のピアノの粒立ちの良さは実に快く響き、このピアニストのテンポの良さと丁寧な弾き振りに、しばしうっとりとして画面を見ていた。中間部に入って新しい主題が独奏ピアノによって示されるが、この中間部のピアノの一音一音がなんと美しく心に響くことか。ソンジンはここでも実に丁寧にゆっくりと確かめるように弾いており、ここでピアノとオーケストラが交わす対話は何とも夢見るような美しさがあった。再び冒頭の静かな主題に戻るが、ここでは始めから独奏ピアノとオーケストラで始められ幾分変奏されて進行するが、独奏ピアノの方も装飾を交えて弾かれており、ごく短いコーダの後にひっそりと静かに終息していた。カデンツアはなく、一貫してピッチカートの三連符が楽章を通じて響いており、落ち着いた爽やかな感じのする美しい楽章であった。



         フィナーレ楽章は、アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイの華やかな主題で始まる展開部を欠いたソナタ形式。オーケストラでロンド主題に似たな明るく軽やかな第一主題がトウッテイで始まり繰り返されてから、弦と木管の交換があって、フェルマータの後に独奏ピアノがトリルによる短いアインガングで登場し、このロンド風な軽快な主題を颯爽と弾きだした。直ぐにオーケストラに主題を渡してから、改めて独奏ピアノによる流れるような16分音符の副主題が走り出し、ソンジンは勢いよく軽快にパッセージを弾き進めていた。オーボエに続いてフルートも加わった木管合奏で示された第二主題が提示されると、直ぐにピアノに引き継がれ、再び16分音符のピアノの走句が続いて、快調なピアノのペースとなり、オーケストラと対話したり、伴奏させたりして、勢いよく華麗に進行していた。再びフェルマータの後に再現部に突入して、独奏ピアノがロンド風な冒頭主題を弾き出すが、今度は順序を変えてソロ、トウッテイの順で第一主題が再現されていた。再び独奏ピアノが走り出し、第一主題・第二主題と独奏ピアノが鍵盤上を走り回るように駆けめぐって頂点に達し一気にカデンツアとなっていた。ソンジンのカデンツアは、冒頭主題の勢いの良い回想風のもので、短くあっさりとテンポ良く弾かれ、最後は輝くようなピアノの音階の上昇で華やかにこのフィナーレを終結していた。

         演奏が終わると大変な拍手が湧き起こり、これはソンジンの初陣を歓迎するかのような拍手であり、オーケストラ席からも揃って弦が叩かれていた。ソンジンのピアノの技巧は、まだ若いのに実にしっかりしたものがあり、大先輩のチョン・ミュンフンの指揮に安心して委ねるようにして自分のピアノの世界を築き上げているようなスタイルであった。このN響定期の目的は、チョン・ミョンフンのマーラーの第5交響曲にあるが、その前座として子飼いの新人ピアニストの日本デビューを図ったのであろうが、このホールの雰囲気からすれば、チョン・ミュンフンの思わくは大成功であったに相違ない。それにしても韓国は英才教育が徹底しているせいか、どの分野でも素晴らしい新人が登場している。時代が変わってきていることを改めて感じさせたコンサートであった。

(以上)(2013/11/08)


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