(最新DVD紹介:チェリビダッケ指揮の交響曲第39番変ホ長調K.543など)
12-9-1、セルジュ・チェリビダッケ指揮、トリノRAI交響楽団の交響曲第39番変ホ長調K.543(1969)およびカルロ・マリアジュリーニ指揮ニュー・フイルハーモニア管弦楽団の交響曲第40番短調K.550(1964)、

−映像としては非常に珍しいチェリビダッケの指揮とジュリーニの指揮で第39番変ホ長調交響曲と第40番ト短調交響曲をお届けする。この二つの曲目は、両巨匠のイメージにそれぞれ合ったものであり、39番ではどっしりとした堂々たる風格のある演奏が、また、40番ではテンポの良い生き生きとしたフレッシュな演奏が楽しめる−

(最新DVD紹介:チェリビダッケ指揮の交響曲第39番変ホ長調K.543など)
12-9-1、セルジュ・チェリビダッケ指揮、トリノRAI交響楽団の交響曲第39番変ホ長調K.543(1969)およびカルロ・マリアジュリーニ指揮ニュー・フイルハーモニア管弦楽団の交響曲第40番短調K.550(1964)、
(購入時期不明;TDK TDBA-0133および2009年12月13日、CS736CHにてBD22.2として収録)

               9月分の第一曲目の交響曲編では、最近のDVDで購入したものやBDで放送から収録したものが10曲ほど溜まっているので、順番にお届けしたいと考えている。8月に入って録音の少ないチェリビダッケの映像が数組ブルックナーを中心に市販されたが、その中にも含まれていた交響曲第39番変ホ長調K.543(1969)を選んでみた。このDVDは3年ほど前に購入したもので、今回も新譜として発売されていた。また、2年ほど前にクラシカジャパンの「20世紀の巨匠たち」のシリーズで収録したジュリーニの交響曲第40番ト短調K.550(1964)をお送りしたいと考えている。いずれも最近耳にすることが少なくなった巨匠らしい堂々たる風格を持った演奏なので、期待できると思われる。いずれも白黒のモノラルのものであるが、ご勘弁いただきたい。



   指揮者セルジュ・チェリビダッケ(1912〜1996)には、フルトヴェングラー(1896〜1954)がベルリンフイルの指揮者として活躍中は後継者と目されていたが、フルトヴェングラーの急逝後、新鋭指揮者として頭角を現していたカラヤン(1908〜1989)にその地位を奪われ、失意のうちにヨーロッパ主要都市の客演指揮者に廻ったという有名な話がある。カラヤンと反対に録音嫌いでも有名で、われわれはその名前しか知ることが出来なかったが、不思議なことに幾つかの映像は残されていたようである。勿論、このHP初出であり、どんなタイプの指揮者かを知る唯一の映像であるが、不思議に放送交響楽団の録音ばかりが多く残されており、オペラを振らない指揮者でもあった。



                交響曲第39番変ホ長調K.543は、冒頭の序奏の始まりが聴きどころの一つであるが、チェリビダッケの演奏は、実にゆっくりしたテンポで堂々として進められる。右奥の一角には4台のコントラバスが勢揃いし、テインパニーやトランペットの響きもしっかりしており、フルートも輝くように歌って、壮大なスケールで序奏が進行するさまは非常に印象的であった。チェリビダッケは、二段高い指揮台の上にたち、温和な表情でじっくりタクトを振っており、巨匠の風格が感じられた。アレグロに入ってこれも落ち着いて柔らかい弦で歌うように第一主題が現れるが、続くベートーヴェンの「英雄」を思わせる力強いファンファーレは実に雄大そのものであり、フルオーケストラの分厚い響きがホールを轟かしていた。ついで弦で導かれる第二主題はヴァイオリンとフルートやクラリネットとが優雅に対話を繰り返し、ピッチカートの響きに乗って快調なペースで進行していた。このチェリビダッケの響きは、かってこの曲を楽しんできたLPやCD初期の時代の巨匠たちに共通する響きのように思われた。提示部の小結尾の後で、再び冒頭に戻ったが、ここがワルターなどと違うところか。チェリビダッケは丁寧に、悠々と繰り返しを行っていたが、展開部では再び力強い結尾主題が速いテンポで雷が落ちるように何回も激しく執拗に繰り返されて、再現部へと移行していた。チェリビダッケは再現部においても、終始、堂々と力強さを持って第一主題・第二主題と型通り進めていたが、この曲のダイナミックな迫力を強調させた緩急自在な力強い演奏を見せており、私には彼はやはり、古いタイプの指揮振りであることが良く理解できた。





               第二楽章は、弦楽合奏の美しいメロデイで静かに始まるアンダンテのゆっくりした楽章であり、三つの主題が順番に現れる二部分型式であろうか。譜面を見ると弦楽合奏による最初の提示部の前半に繰り返し記号が二つあるが、チェリビダッケは、この第一主題を構成する二つの繰り返しを実にゆっくりと、丁寧に演奏していた。続いて初めて出てくる木管に導かれて弦4部が第二の主題を波を打つように提示していき、管と低弦との見事な対話がひとしきり繰り返されて頂点に達していた。そしてこの高まりを沈めるかのように、第三の主題として、ファゴット、クラリネット、フルートとが互いに重なり合ってカノン風に提示されて実に美しい。チェリビダッケは終始穏やかに進めて、前半の第一部を終了していた。第二部では第一の主題が第一部同様に弦楽合奏で始まるが、直ぐに管楽器の合奏が加わり、次第に弦楽器群と管楽器群が交互に波を打つように進行し始めた。第二の主題も変形されて弦楽器群と管楽器群が交互に力強く進行し、木管と部厚い弦楽器との交錯により、深遠な音の響きを聴かせていた。終わりに第三の主題が管楽器群により互いに重なるように現れて素晴らしい合奏を行ってから、最後に第一の主題が静かに歌われてこの楽章は終息していた。チェリビダッケは、終始、時には笑顔を見せながらにこやかな表情でこの美しいアンダンテを丁寧に指揮していたが、弦と管のアンサンブルが素晴らしく見事なアンダンテ楽章であった。





               続くメヌエット楽章では、チェリビダッケは、実に良いテンポで堂々と厚みのあるメヌエットを進行させ、弦楽器も生き生きとした合奏で力強くこれに応え、木管も美しい響きを聴かせていた。このメヌエット部分の壮麗さと対照的にトリオでは二つのクラリネットの美しいデユオにフルートが加わってセレナードを思わせる流麗な素晴らしいトリオを構成していた。トリオが明るく繰り返されてから、再びメヌエット部分が力強く再現されていたが、このメヌエットは素晴らしいとしか言いようのない堂々たる楽章であった。
               フィナーレは早い出だしの第一主題が弦楽合奏で軽快に始まるアレグロで、直ぐにフルオーケストラで明るく躍動するように進行していた。チェリビダッケは、この速い動きを簡単に手を動かすだけの仕草で進めており、最初の主題から派生した第二主題についても、同じテンポで軽快に進め、フルートとファゴットの美しい対話を経て盛り上がりを見せて提示部を終えていたが、彼はこの提示部の繰り返しを再び丁寧に行っていた。展開部では冒頭主題の旋律が速いテンポで繰り返され、ここでは高弦と低弦とが追いかけ合い鋭く対立しながら波を打つように力強く進行していた。再現部では始めの通り第一主題・第二主題と型通りに疾走するテンポで軽快に進めていたが、チェリビダッケは、最後の繰り返し記号は無視して、一気に駆け抜けるようにこの速いテンポの楽章を終了していた。







チェリビダッケの指揮は今回が初めてであったが、全楽章を通して聴いて彼の演奏は、テンポ感が優れており、自分のペースに合わせてどんどんと突き進む、威勢の良い指揮をするタイプと考えられ、とても好感が持てた。彼が尊敬していたフルトヴェングラーのように、テンポを大切にし、伝統的でかつ壮麗で豊かな響きを聴かせるような指揮振りであったと思う。同じ白黒映像でもカラヤンの画像と異なり、素朴な細工や飾り気のない映像であったが、これこそ作られたものでない実像なのであろう。モノラルであったが、心配された音声もまずまずで、素晴らしい演奏であったと思った。彼は楽団に練習を強要するタイプの指揮者で、口が悪いところがベルリンフイルから嫌われたと言われているが、確かに放送楽団は彼の条件を受け入れたが故に、録音嫌いな人の録音が残されたと解説されていた。いずれにせよ、彼の遺産とも言える貴重な映像が収録できたと感謝したい。
             なお、このDVDでは、シューベルトの交響曲第2番変ロ長調D125およびケルビーニのオペラ「二日間」序曲の三曲の構成であったが、オーケストラと収録場所は同じであったが収録年月が違い、ばらばらのコンサートからの寄せ集め曲集になっていたようであった。いずれも残されているだけでも貴重な映像であると言うことが出来よう。




続いてクラシカジャパンの「20世紀の巨匠たち」のシリーズで収録したカルロ・マリア・ジュリーニ(1914〜2005)の交響曲第40番ト短調K.550をお送りしたい。収録年は1964年であり、オーケストラはイギリスのニュー・フィルハーモニア管弦楽団で、クロイドンのフェイア・フィールド・ホールでのライブ演奏だった。ジュリーニは、若くしてローマでヴィオラを学び、多くの巨匠の下で学んだが、特にワルターの影響を受け、戦後トスカニーニの指導でオペラを振る様になったという。このHPでは、ジュリーニの指揮では、ホロヴィッツとのピアノ協奏曲第23番K.488の指揮者としての映像があるが、古いS-VHSの録画なので、まだアップロードしていなかった。彼のオペラではLPで最初に入手した「フィガロの結婚」などがあり、最近亡くなったばかりなので、「巨匠シリーズ」で放送されるとは思っていなかった。白黒の暗い映像であるが、ジュリーニは50歳、おでこは広いが痩せてスマートな身体つきで、若若しいすっきりした指揮振りを見せていた。



第一楽章は、ヴィオラの伴奏型に乗ってモルト・アレグロのさざ波を打つような弦楽合奏で始まるが、ジュリーニはやや速めのテンポであり、弦が良く揃ってとても美しく、厚みのある弦楽合奏を聴かせていた。軽快に進行してやがて第二主題に入って管楽器が活躍をし始めていたが、ここでよく見るとフルート1、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2の布陣であり、第二版を使っていることが分かった。ここでも早目のテンポは終始変わらず、堂々と落ち着いて進行していが、ここで提示部の繰り返しは、ワルターに見習ったのか省略され、いきなり展開部へと突入していた。
               展開部ではジュリーニは、冒頭の導入主題を速いテンポで繰り返し、続いてうねるような対位法的な展開がテンポ良く進行し、次第に力を増しながらこの主題だけで進んでおり、いつの間にか再現部が始まっていた。ここでは再び二つの美しい主題が繰り返されていくが、ジュリーニは同じような軽やかな手慣れた指揮振りで、早いテンポを崩さず最後まで進めていた。比較の意味でワルターのCDを聴いてみたが、冒頭のモルト・アレグロはジュリーニの方が幾分早く、ワルターの演奏には弦が暖かくしなやかさがあることに気がついた。


               ジュリーニは、第二楽章は通常のテンポか、軽やかな美しい弦楽合奏のアンダンテの第一主題がホルンの伴奏でゆっくりと始まっていたが、途中から現れる32分音符の休止を挟んだ3度動機のフレーズが実に美しく、弦から管へ、管から弦へ、上昇したり下降したり、うねるように繰り返され、特に管と弦との応答が実に印象的であった。やがて、第二主題に入って美しい弦楽合奏が開始されても、この特徴あるフレーズが余韻のように響いており、アンサンブルの良い管と弦の音色の美しさが魅力的であった。提示部での繰り返しは、ワルター同様に、省略され直ちに展開部に移行していたが、展開部でもこのフレーズが力強く弦から管へ、管から弦へと移行して、主として下降のパターンで展開されていた。再現部に入って、第一主題・第二主題と続いていたが、これらのなかにも弦と管のフレーズのアンサンブルの美しさが冴えており、さらに弦楽合奏の中でフルート、クラリネット、ファゴットが新しい半音階的動機を登場させて歌い出す場面が美しく、綿々と続くこの楽章の独特の装飾効果と繊細なアンサンブルの良さに目を見張る思いがした。美しい珠玉がゆったりと転がるようなアンダンテであった。


             第三楽章のメヌエットでは、ジュリーニはむしろゆっくりしたテンポで軽快なアレグレットの弦楽合奏の厚みが快い感じで始まった。ここでは出だしの三小節のフレーズがカノン風に何回も繰り返されて進行する風変わりなメヌエットとなっていたが、しっかりと三拍子を刻んで軽快に歯切れ良く進んでいた。トリオでは、ほぼ同じテンポで弦楽合奏で始まり、木管の四重奏がこれに応えて美しさを強めていたが、繰り返しの後は木管の四重唱の後に二つのホルンが響きだし、後半では力強い見事な管楽四重奏が続いて、弦楽器と管楽器のアンサンブルの対照の妙が印象的であった。ホルンの一人は女性奏者であったが、いつも心配するホルンの出来がとても良く、堂々たる厚みのあるメヌエットを楽しむことが出来た。


フィナーレはアレグロ・アッサイであり、ジュリーニは第一楽章とほぼ同様な早いテンポで第一主題を進めていたが、早いテンポで軽快にスムーズに流れるフルオーケストラが実の心地よい。流れるような見事な弦楽合奏が続いてから、やがてなだらかなヴァイオリン三部の第二主題が歌うように進行するが、ここでクラリネットが明るく歌い出して第二版の特徴を浮き彫りにさせていた。ここでもジュリーニは提示部の繰り返しを止めて素直に展開部に突入していたが、展開部では冒頭の主題の動機が早いテンポで、弦でも管でも交替しながら執拗に繰り返されており、管と弦のアンサンブルが良く、心配されたホルンのファンファーレがまずまずの出来であったので楽しめた。再現部でもこの安定した速いテンポが続き、第一主題・第二主題と流れるようにスムーズに進行し、一気苛性にこの楽章が仕上げられていた。この曲は軽快なテンポで第一・第四楽章が上手く流れることが何よりも大事なことを思い起こさせた。

                久しぶりでテンポの良い緊張感に溢れた第40番ト短調の交響曲を聴いて、しみじみとこの曲の良さを味わっていたが、このHP初登場のジュリーニは、丁度50歳であり、脂ののりきった円熟味を増す時期であることに気がついた。映像のお陰で、かねて評判の格好の良い指揮振りを見ることが出来たし、安定感ある生き生きとしたフレッシュなト短調シンフォニーを聴いて満足した。このコンサートでは、彼は引き続き、ファリャ作曲の「三角帽子」第2組曲を振っていた。解説によると彼は1952年にミラノ・スカラ座でオペラ「はかなき人世」の最初のデビューを飾っており、昔からファリャを得意にしていたようだ。

                この白黒映像の交響曲シリーズは、まだストックが続き、次回はピエール・モントウ、ブリュッヘン、マルケヴィチなどと、著名な大指揮者のモーツアルトのシンフォニーの映像をお届けしたいと考えている。

   (以上)(2012/09/06)



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