(懐かしいS-VHSを見る;コープマンの交響曲連続演奏会、第五集、4曲)
12-8-1、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲(第−番)ニ長調K.161&163(141a)、2、ヘ長調(第13番)K.112、3、ニ長調(第−番)K.95(73n)、4、変ホ長調(第26番)K.184(161a)、5、変ホ長調(第39番)K.543、第十回連続演奏会、1991年11月17日、東京芸術劇場大ホール、日本公演、NHK、

−今回の全4曲の初期のシンフォニーで小編成の曲は、第13番ヘ長調K.112だけで、他の三曲はトランペットやテインパニーを含む大編成のイタリア序曲風の短い威勢の良い曲であった。コープマンのアムステルダム・バロック・オーケストラは、第39番変ホ長調交響曲のような後期の大編成の交響曲では、弦楽器の数が変わらないので、相対的にトランペットやテインパニーの響きが強すぎて、全体のバランスが崩れ異質な響きがするように思われた。しかし、初期の大編成の速いテンポの軽快なイタリア風序曲では、多少、これが行き過ぎても、快活感に満ち溢れ、それほど強い違和感は覚えなかった−

(懐かしいS-VHSを見る;コープマンの交響曲連続演奏会、第五集、4曲)
12-8-1、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲(第−番)ニ長調K.161&163(141a)、2、ヘ長調(第13番)K.112、3、ニ長調(第−番)K.95(73n)、4、変ホ長調(第26番)K.184(161a)、5、変ホ長調(第39番)K.543、第十回連続演奏会、1991年11月17日、東京芸術劇場大ホール、日本公演、NHK、
(1993年02月14日、NHKによる放送をS-VHSテープNo96に3倍速で収録)

8月号のソフト紹介の第一曲目は、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラの第十回目の連続演奏会のコンサートからであり、曲目は演奏順に、1、交響曲(第50番)ニ長調K.161&163(141a)、2、ヘ長調(第13番)K.112、3、ニ長調(第−番)K.95(73n)、4、変ホ長調(第26番)K.184(161a)、6、変ホ長調(第39番)K.543の5曲であった。しかし、7月号で余力があったので、最後の変ホ長調交響曲(第39番)K.543を取り上げて紹介してしまったので、今回の8月分では、第1曲から第4曲までをご紹介するものである。
このコープマンの交響曲の連続演奏会シリーズでは、別添に掲げるとおり第11回目の交響曲第40番ト短調とレクイエムの演奏で完結しているが、この2曲は、別途、アップ済みであった。従って、未収録の第4回の4曲を除いて、今回のご紹介により、全ての収録された交響曲がアップされたことになった。交響曲は数が多く、特に初期のシンフォニーは演奏機会が少ないので、このコープマンの交響曲シリーズは、コレクションのベーシックなものとして貴重な存在であった。コープマンのアムステルダム・バロック・オーケストラは、その名の通り古楽器集団であり、かつシンフォニーを演奏するには、最小の規模のオーケストラであるので、他の演奏にはない特別な演奏スタイルと響きを持っている。特に初期の小編成のシンフォニーの演奏には、このオーケストラはとても向いていると考えており、8月分の4曲は、K.95からK.184までの初期の曲であるので、期待して聴いてみたいと思っている。

第十回連続演奏会の第一曲目のシンフォニーは、交響曲ニ長調K.161&163(141a)であり、これは1772年に作曲されたイタリア序曲風の三楽章のシンフォニーである。この曲のはじめの二楽章は、72年3月、新たにザルツブルグの大司教に就任したコロレド伯の祝典のための音楽劇「シピオーネの夢」K.126の序曲としてこの時期に作曲されたものであり、第三楽章は同年の10月からの第三回のミラノ旅行で恐らく12月にフィルミアン伯邸の夜会で上演するために、三楽章の交響曲として作曲されたものと考えられている。ケッヒェルは「シピオーネの夢」K126の序曲を、シンフォニーの第一・第二楽章K.161 という番号で整理し、第三楽章のみの自筆譜にはK.163の番号を与えたが、アインシュタインによるケッヒェル目録第3版ではK.141aと言う番号が与えられ、今日の第6版まで継承されている。この曲の急緩急の三楽章は切れ目なく進行し、スコアでは、第二楽章と第三楽章との間にはフェルマータにより連続され、終止しないのが特徴であり、ソナタ形式の第一・第三楽章には繰り返し記号はなく簡潔に出来ている。この曲は本来の序曲としての性格から編成は大きく、2トランペットとテインパニーを含み、かつ2オーボエと2フルートが持ち替えでなく同時に使われて活躍しているのが珍しい。


第一楽章は典型的な三和音を上下するファンファーレ音形の第一主題で威勢良く始まり、テインパニーが良く響いていた。ヴァイオリンの生き生きしたスタッカート音形が流れ出してから、再び冒頭から繰り返されて躍動するように前半を終え、第一ヴァイオリンによる静かな第二主題が流れ出す。続く展開部では全く新たな主題が短調の翳りを帯びて登場してから、再びファンファーレ風の第一主題に立ち返り、明るく躍動するように進行して終結していた。フェルマータの後第二楽章のアンダンテがオーボエの合奏で美しく始まり、続いてフルートの合奏に渡されて、この主題が繰り返されるように印象深く続いてから、弦楽器が登場して新しい主題をフルートとオーボエに伴奏させていた。二部形式のこの楽章は、途中から再びオーボエとフルートが交互に現れる第一主題に戻り、豊かな編成の魅力を発揮して結ばれていた。ここでもフェルマータの後、プレストの終楽章が3/8拍子で活発に踊るように勢いよく始まった。
これはロンド風のソナタ形式か、全合奏で勢いよく祝祭的な伸びやかなロンド風の主題が流れてから、弦楽器だけの軽やかな主題がこれを受け、これらの主題が大きく繰り返されるように急速に進行してから、最後にロンド風主題で輝くように堂々と終結していた。これは典型的な祝祭的なシンフォニーの終楽章であり、最後を締めくくるにふさわしい華麗な舞曲であった。
スコアで確かめながら曲を追っていたが、第一・第二楽章は全く「シピオーネの夢」序曲と同じであり、フェルマータの後、第三楽章として、プレストが全く同じ楽器編成で追加された形となっていた。このような楽器編成の形式を取るからには、例えばミラノなど、ザルツブルグ以外での演奏機会に恵まれて、急いで作曲をしたものと推測できそうな気がした。
            このコンサートの第二曲目は、交響曲ヘ長調(第13番)K.112であるが、この曲には自筆譜が残っており、レオポルドの筆跡で、1771年11月2日ミラノと、完成の場所と日付が明記されている。ミラノで「アルバのアスカーニョ」K.111の上演を10月17日に成功させ、その勢いに乗って書かれたものとされている。4楽章構成で2オーボエ、2ホルンの小編成のシンフォニーである。前曲と異なってこの曲は序曲としてではなくコンサート作品として書かれたことが、第一・第二・第四楽章の全てのセクションが反復される構成になっていることから類推できる。コープマンはこの反復を、提示部ではキチンと演奏していたが、再現部の最後の反復は省略していた。
            第一楽章は、強奏する三和音風な下降モテイーブとそれを静かに受ける応答からなる第一主題により勢いよく始まり、三拍子のリズムで軽快に進行してから、オーボエの旋律的な二重奏に弦が相づちを打って答える第二主題に移行して、管と弦の対話方式で提示部が作られており、コープマンはここで勢いよく繰り返しを行っていた。短い展開部では新しい主題により趣を変えてから、再び強奏する三拍子の第一主題が再現し、威勢良く進行していた。オーボエと弦の対話による第二主題も型 通りに再現されて、提示部と同じ姿で収束していた。


             第二楽章は弦四部の合奏で奏されるセレナーデ楽章であり、その主旋律は第一ヴァイオリンでタンタン・タンタタンタンと美しく歌うように提示され、他の声部は一貫してスタッカートの伴奏で推移する素朴な歌謡楽章であった。ソナタ形式を取っているが、単一主題的に優しい動機が語りかけるように繰り返し現れて提示部を終え、コープマンはこの繰り返しを丁寧に行っていた。短調風に語りかけの向きが変わる展開部の後に、再び第一ヴァイオリンによる優美な主題が再現されて、このもの静かな楽章は優雅に終結していた。第三楽章はメヌエット楽章。しかし、メヌエット部分もトリオ部分もわずか16小節で、最も短くて単純な構造。伸びやかな愛らしいメヌエットが始まって繰り返されてから、弦4部の和やかなトリオが繰り返され、再びメヌエットが再現されていた。フィナーレは舞曲風な軽快なロンド主題が飛び出してレフレインされる間に二つの副主題が顔を出すフランス風なロンド形式であり、ロンド風の主題は明らかに第一楽章冒頭の主題と共通していた。実に颯爽とした明るく生きの良いテーマであり、循環主題的に繰り返し出てきて、このフィナーレは急速に一気に仕上げられていた。



このコンサートの第三曲目は、交響曲ニ長調K.95(73n)であり、1770年4月にローマで作曲された曲である。この曲は、第一楽章と第二楽章がフェルマータで繋がったイタリア序曲風の作品であり、軽快なアレグロの第一楽章と第四楽章は主題や雰囲気が互いに似かよっていた。従って、第三楽章のメヌエットは後で追加されたものと考えられいる。2オーボエと2トランペットと弦5部の構成で出来ており、第二楽章では、トランペットが休み、2オーボエが2フルートに置き替えられていた。



         第一楽章は、繰り返しのないソナタ形式のアレグロで、軽快で明るい早いリズムの第一主題が飛び出し、その明るい開放的な響きは正にイタリア序曲風に聞こえていた。続く第二主題も似たような軽快なリズムで颯爽と進行しており、これはオペラ・ブッファの序曲のような感じの主題提示部であった。展開部では同じテンポで第一主題が少し変形され、続けて一気に再現部に突入していた。ここでは第一主題の後半が変形されて明るく進行しながら、第二主題も顔を出したところで最後のフェルマータでストップし、ゆっくりとアンダンテの第二楽章に入っていた。ここでは、弦五部で優雅なワルツの主題を提示しており、直ぐに二本のフルートがこの主題をアリアのようにゆっくりと美しく歌い出してまるでフルート協奏曲のよう。繰り返し記号で美しく反復されていたが、フルートは装飾を自由につけていた。展開部・再現部はフルート・コンチェルトさながらに進行し、短い楽章であるが非常に美しい印象的な楽章であった。



         第三楽章はオーボエやトランペットを含んだ華やかな響きの力強いメヌエットであり、堂々と三拍子のリズムを刻んで進行していた。トリオでは、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが掛け合うように進み、後半にオーボエが彩りを添える穏やかな優雅なトリオであった。華麗なしっかりしたメヌエットに対し、穏やかな美しいトリオは、中ナック魅力的であった。フィナーレは繰り返しはあるが展開部のないソナタ形式のアレグロで、そのリズミックな軽快な第一主題は第一楽章と関係があり、続く第二主題は軽妙で明るくヴァイオリンで提示されていた。コープマンは提示部の繰り返しのみを演奏して一気苛性に仕上げていたが、前回のグラーフの演奏では、最後の繰り返しも丁寧に行っていたので、印象が異なっていた。

このコンサートの第四曲目は、交響曲変ホ長調(第26番)K.184(161a)であり、三つの楽章が切れ目なく演奏されるイタリア風の序曲である。この曲はレオポルドがまとめて製本した9曲の交響曲の「自筆譜合本」(旧全集の第22番から第30番)の最初の曲に相当している。三回目のイタリア旅行から帰国した直後にザルツブルグで作曲されており、2フルート・2トランペットなどを含む編成が大きい曲で、劇音楽の序曲としても演奏されたといわれている。



          第一楽章の始まりは、速いテンポで緊迫した表情で開始される第一主題で、主和音がファンファーレ風に響く祝典的な気分に満ちあふれ、勢いよく奔放に進行していた。一方、第二主題は全く対照的にヴァイオリンが二部で導く不安げな主題が現れていた。その後勢いのある第一主題により展開部が表れ、再現部と続いてA-B-A'-A-Bの形で進行し、Aによるコーダの後、そのままフェルマータで休止してから、続けて第二楽章に移行していた。このゆっくりしたアンダンテ楽章は、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンとがエコー風に模倣された面白い主題で、その後半には管楽器が合奏で対話するかのように弦楽器に相槌を打っていた。この楽章はフルオーケストラで全体が繰り返され、ここでも休みなく速いテンポのロンド風のフィナーレに移っていた。舞曲的な明るさを持った三拍子の第一主題が、弦楽器により颯爽と小気味よく走り回り、次いでフルオーケストラで力強く反復されていた。続く第二主題もはじめは弦のみで軽快に現れていたが、いつの間にかフルートを伴って反復されてから、実に伸びやかな自由奔放な曲想になり、フルオケで長い展開部を形成してから、再現部に入り、第一主題、第二主題が続き、コーダで力強く結ばれていた。



             コープマンは、それぞれ特徴ある三つの楽章を、一気に休みなく続けて演奏していたが、急緩急のシンフォニーとして一体化して演奏するには、この曲には楽器編成が大きいこと、弦楽器と管楽器の相互交換、主題の内容の多面性など新しい要素が多すぎたように思われ、コープマンの古楽器による一面的演奏では、テインパニーやトランペットが響きすぎて、いささか持てあまし気味の演奏のように思われた。この演奏を何回か聴き、ホグウッドの演奏も確かめてみたが、ホグウッドの演奏は、実に朗々としており、この曲の自由奔放な楽想を伸びやかに受け止めていた。

今回の全4曲の比較的初期のシンフォニーのうち、トランペットやテインパニーを含まない小編成の曲は、第13番ヘ長調K.112だけであり、他の三曲は大編成のイタリア序曲風の威勢の良い曲であった。コープマンのアムステルダム・バロック・オーケストラは、弦楽器が15人足らずであり、2ホルン、2オーボエ、2ファゴットを加えた小編成体制に対し、これに2トランペットとテインパニーなどが加わる大編成になると、弦楽器の数が変わらないので、相対的にトランペットやテインパニーの響きが強すぎて、全体のバランスが崩れるように思われる。これは古楽器演奏の好き嫌いの問題にも関係するが、コープマンは初期の小編成のシンフォニーから後期の大編成の交響曲まで一貫して弦楽器の数を変えないで、指定された必要な管楽器などを加えて演奏しているので、後期のものほど相対的に弦が薄く管が強すぎる印象を受ける。今回は、比較的初期のシンフォニーで、大編成のイタリア風序曲が多かったが、トランペットやテインパニーが強すぎても、強い違和感は覚えなかった。
                しかし、後期の変ホ長調交響曲(12-7-1)になると、序奏から古楽器演奏の特徴が強すぎる上に、トランペットやテインパニーが強く響きすぎ、反面弦楽器の音が薄すぎて豊かなゆとりのある響きは感じられなかった。

今回のコープマンの第11回目のコンサートにより、モーツァルトの交響曲の連続演奏会は完結した。モーツァルトの交響曲の全曲リストは、東京書籍の「モーツァルト事典(1991)」の一覧表(p238-9)の全47曲が標準になるが、これを満たしている全集はホグウッドものだけであるが、コープマンの今回の交響曲シリーズ(1991)は、別添の映像のコレクションに示す通り、この47曲中のオペラ序曲にフィナーレを加えた2曲を除いた全45曲に、疑わしい曲など4曲を加えた全49曲の全集となっており、演奏が新しいだけに、非常に網羅的な全集となっていた。真に遺憾なことであるが、テープ録画のミスがあって、第4回のコンサートの以下の4曲が収録洩れとなったが、ここにお詫びかたがた、漏れた曲名を記しておきたいと思う。

1、交響曲第23番ニ長調K.181(162b)、2、交響曲第6番ヘ長調K.43、3、交響曲第28番ハ長調K.200(189k)、4、交響曲第20番ニ長調K.133。

(以上)(2012/08/08)


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