(最新市販BDより;バレンボイムのピアノ協奏曲第20〜27番より)
12-7-2、ダニエル・バレンボイムの弾き振りによるヒ゜アノ協奏曲第25番ハ長調K503、およびピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」、ベルリンフイル、1986〜1989年、シーメンス・ヴィラ、ベルリン、

−今回はK.503とK.537の2曲だけでなく、他の8曲についても改めて見直しているが、音質も画像も良くなり、この8曲を納めたBDは、改めて素晴らしいソフトであると思った。彼の演奏には安定感があり、テンポが良く実に安心して聴け、特にこの8曲を全体としてみたときには、いわば「大人の風格」を持った演奏であると感じさせ、ピアノにも指揮法にもそれが良く現れていた−

(最新市販BDより;バレンボイムのピアノ協奏曲第20〜27番より)
12-7-2、ダニエル・バレンボイムの弾き振りによるヒ゜アノ協奏曲第25番ハ長調K503、およびピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」、ベルリンフイル、1986〜1989年、シーメンス・ヴィラ、ベルリン、
(2012年06月11日、新宿タワーレコードにて、Metropolitan Munich BD1枚に収録)

       7月号の第二曲目は、ダニエル・バレンボイムのベルリンフイルとの弾き振りによるヒ゜アノ協奏曲第25番ハ長調K503(1988)およびピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」(1989)をお届けする。彼のニ短調第20番以降8曲のピアノ協奏曲シリーズは、私はクラシカ・ジャパンの放送で全て収録済みであり、同じものをテルデックのCDでも持っていた。これまでS-VHSのアナログで収録されていたものを6曲アップしてきたが、今だアップロードする機会に恵まれていなかったのが、上記のK.503及びK.537であった。今回は35ミリフイルムで収録されていたオリジナルテープを新たに利用して1080iのデジタルハイビジョン(16:9)の映像と非圧縮のPCMステレオ音声をHD規格に収録したものであり、8本のソフト255分の映像が1枚のBDデイスクに入っているので、画質や音声のレベルが格段に向上しているほか、小型軽量化されて取り扱いも楽になっていた。


       最初に第25番ハ長調K503からDVDを始めると、ピアノの前で起立していたバレンボイムが手を振り上げて、いきなりシンフォニーのような勢いで、ファンファーレ風に曲は堂々と開始された。この力強い第一主題は再び繰り返されて堂々と進行していたが、やがてスタッカートで始まる調子の良い経過部が登場し、同じスタッカートの新しい副主題に発展しながら朗々と進行して、オーケストラの主題提示部を終えていた。場所は客がいない明るいスタジオであり、右奥にコントラバスが5台、中央奥にテイパニーと2トランペットと2ホルンが並び、オーケストラがピアノを囲むように配列されていた。

         続いてバレンボイムの独奏ピアノが即興風の導入部で登場し、独奏ピアノによる長いパッセージがひとしきり続いてから、オーケストラにより冒頭の第一主題が堂々と始まるが、続いて独奏ピアノが主体になって力強く再現されていた。この辺りがこの曲の一番ダイナミックな見せどころであろうか。バレンボイムのピアノは、力強く弾むように和音を刻み、続いて独奏ピアノは華麗なパッセージを繰り広げていた。やがて新しい副主題に続いて歌謡性に富んだ愛らしい第二主題を提示し、後は駆け抜けるように早いパッセージを繰り広げ、あるときはオーボエとファゴット、続いてフルートとオー ボエなどと互いに歌い交わしていた。


         展開部では第一主題の最後に示された副主題を、独奏ピアノが弱音で提示してから繰り返し、木管に引き渡していたが、繰り返して登場するこの主題の弱音でのソロピアノの美しさは見事で、バレンボイムのピアノのコントロールの良さを見せつけていた。再現部では独奏ピアノが主体となって、第一主題、副主題、第二主題の順に再現されており、バレンボイムの独奏ピアノの速い動きがスムーズに進んでいた。終わりにカデンツアが弾かれていたが、新全集にないのでオリジナルなものであろう。冒頭の独奏ピアノのフレーズで始まり、いろいろな主題が追想的に現れる技巧たっぷりのカデンツアであったが、バレンボイムがゆとりを持って堂々と弾きこなしていた。


             第二楽章は、展開部を持たないソナタ形式か。オーケストラが優雅な第一主題をアンダンテでゆっくりと開始すると、直ぐにオーボエとファゴットが、それからオーボエとフルートが華やかに主題を繰り返して進み、続いて直ぐに踊るような感じの面白い第二主題がオーケストラで奏されていた。ここでおもむろに、独奏ピアノが登場し、第一主題を始めからゆっくりと弾きだして繰り返していくが、ここでピアノのパッセージと木管群との対話が繰り返されて実に美しい。続いて独奏ピアノが第二主題をゆっくりと提示していくが、後半で独奏ピアノが幻想的な自由なパッセージを呟くように弾きだし、それにオーボエとフルートの和音が重なって実に美しい三重唱になっていた。バレンボイムは、このような自由な幻想的なパッセージがお得意と見え、実に丁寧に綺麗に弾きこなしてうっとりとさせていた。再現部に入ってここでは独奏ピアノが主体になって第一・第二主題が順番になって繰り返されていたが、あの美しい三重唱も丁寧に美しく再現されてカデンツアもなく静かに終結していた。



             この曲の第三楽章は、軽快なアレグレットのロンド主題が弦楽合奏で威勢良く始まるが、これに管楽器が応えるように上昇音型で応答して繰り返されると、今度は低弦楽器が応答する形で三つ巴となってロンド主題が明るく進行していた。そこへ独奏ピアノが新しい主題で登場し、分散和音風なパッセージで進行してから、第一のエピソードがピアノで軽快に現れる。この主題はロンド主題と似ているが、独奏ピアノが奏する16分音符の三連符による早いパッセージで勢いよく進行し、冒頭のロンド主題が独奏ピアノで軽快に始まった。ロンド主題は勢いよくオーケストラに渡されバレンボイムは立ち上がるようにして指揮をしていた。続いて独奏ピアノにより第二のエピソードが始まるが、初めは悲しげなメロデイがピアノで現れた後に、突然、独奏ピアノが明るい伸びやかな旋律を奏で出す。この美しい旋律はオーボエに引き継がれ次いでフルートでも歌われていき、独奏ピアノに戻されて明るいのどかな雰囲気となっていた。そしてもう一度、このエピソードの全体が繰り返されて穏やかな雰囲気に戻った後に、再び、冒頭の軽快なロンド主題が始まった。突然現れた、つかの間の幻想のような聴かせどころをバレンボイムは良く心得ており、その後の目まぐるしいピアノの活躍が続いて、カデンツアの置き場がないまま急速にエンデイングとなっていた。この急速な収束に、見ているものは拍手を送りたくなるが、スタジオ演奏なので拍手がないまま終わりとなり、画面が直ぐに真っ暗になり、全く余韻が残らなかったのは残念であった。


               画面はピアノ協奏曲ニ長調K.537「戴冠式」に移行すると、バレンボイムがピアノの前に起立してオーケストラと向かい合っており、指揮者の腕の一振りで、第一楽章が軽快に始まった。良くお馴染みのこの曲の第一主題は、弦楽器で実に軽快なテンポで軽やかに進み、やがて管楽器が加わって標題の通り祝典的な気分が盛り上がり、テインパニーも響いて次第に盛り上がってきた。続いて明るい第二主題も第一ヴァイオリンによって軽やかに提示され、さらに経過部では新しい主題も加わって高まりを見せ、バレンボイムは歯切れ良くオーケストラを指揮しながら、長いオーケストラによる主題提示部を終えていた。

            続いてバレンボイムのピアノが登場して第一主題を軽やかに弾きだし、直ぐに華麗なパッセ−ジに引き継がれていくが、独奏ピアノはさらに発展を続けて新しい主題を提示して、引き続き技巧を示しながら華やかに、そして変奏を加えながら走り回るように進行していた。独奏ピアノはさらに第二主題も軽快にご披露し、続けて賑やかなパッセージを示しながら進行していたが、最後にはオーケストラにバトンを渡し、歯切れ良く盛り上がって力強く提示部を終結していた。
            展開部では、この終結部のモチーブを中心に独奏ピアノが力強く和音を重ねながら堂々と進行するが、バレンボイムのピアノはオーケストラと華やかに対決しており、華麗なパッセージを示しながら展開されており、極めて充実感があった。再現部では、ここでもオーケストラで第一主題が始まるが、やがてバレンボイムのピアノが引き継いでピアノのパッセージが続き、第二提示部の忠実な繰り返しのように進んでいた。カデンツアは初めて聴くもので、バレンボイムのオリジナルか、いかにも技巧に満ちた即興風で、装飾を加えた派手な回想風のものを弾いていた。



            この曲の第二楽章は、「戴冠式」と言えば直ぐ思い出すいかにもモーツァルトらしい愛らしいラルゲットで、A-B-A'の三部形式の歌謡調の曲であり、バレンボイムンの独奏ピアノが呟くように始まり、その澄んだピアノが美しかった。これをオーケストラが繰り返しした後に、独奏ピアノが変奏するかのように弾き進むフレーズが実に快く、ひとしきりピアノが歌った後に、再び冒頭主題がゆっくりと再現されていた。中間部の独奏ピアノで始まる主題は前半と対照的にリズミカルであり、バレンボイムは装飾音を交えながら明るく弾いていたが、バレンボイムのこの素直な弾き方が、好ましく思われ、この飾り気のなさがセンスの良さを示していた。結びは冒頭の愛らしい主題がさらりと繰り返され、カデンツアもなく静かに終了していた。



            この曲のフィナーレも「戴冠式」の名が染み付いたアレグレット。独奏ピアノにより軽快に飛び出すロンド主題が、いかにもモーツァルト風の軽やかな主題で、カサドジュの最初のLPで覚えたアレグレットであった。オーケストラの手に渡ってこれぞモーツァルトのロンドと呼びたくなる名調子が続いて、バレンボイムの指揮も一段と力が入ってオーケストラによる経過部が続いてから、バレンボイムの独奏ピアノが歌うような新しい主題を掲げて走り出し、しばらくオーケストラと独奏ピアノとの競演が続いていた。どうやらこれは単純なロンド形式ではなく、よくある気まぐれのフィナーレのようであった。ひとしきりこの競演が続いて緊張が高まってから、オーケストラによる落ち着いた第二主題が始まった。独奏ピアノがこれを受け止め、装飾したり即興的に流したりして華麗なパッセージが縫うように進み盛り上がりを見せてから、一端フェルマータで停止した。ここでスコアにはないアインガングが入るのであろうが、バレンボイムはここから再現部だとばかりに勢いよく、冒頭の明るいロンド主題が独奏ピアノで飛び出した。再現部はオーケストラとピアノとの競演部のほぼ忠実な反復のようであり、独奏ピアノが次々に新しい主題を提示しながら転がるようにピアノが突き進んでいた。実に伸び伸びした楽しい気分に溢れており、ピアノのパッセージが華やかで明るい色調で終結していたが、最後のフェルマータでは、バレンボイムは、カデンツアを入れずに直ちに独奏ピアノで冒頭の軽快なロンド主題に入り、オーケストラとの競演の形でこの曲を結んでいた。

               歯切れのよい「戴冠式」に相応しいお馴染みの軽快なアレグレットで終結していたが、この演奏はスタジオ録音のせいか拍手がなく、そのまま字幕が現れて終わってしまう味気なさであった。バレンボイムのニ短調第20番以降8曲のピアノ協奏曲シリーズは、私はクラシカ・ジャパンの放送で全て収録済みであり、同じものをテルデックのCDでも持っていた。これまでS-VHSのアナログで収録されていたものを6曲アップしてきたが、今だアップロードする機会に恵まれていなかったのが、上記のK.503及びK.537であった。今回のBDは、35ミリフイルムで収録されていたオリジナルテープを新たに利用して1080iのデジタルハイビジョン(16:9)の映像と非圧縮のPCMステレオ音声をHD規格に収録したものであり、8本のソフト255分の映像が1枚のBDデイスクに入っているので、画質や音声のレベルが格段に向上しているほか、小型軽量化されて取り扱いも楽になっていた。 この映像の詳しいデータは省略されており、映像では1986〜1989年、シーメンス・ヴィラ、ベルリンにおけるライブ録音とされていたが、CDの方には、第21番ハ長調K.467が1986年11月とされ、何とジャン・ピエール・ポネルが映像監督であった。その後、1988年2月にK.466、K.491、K503、K595の4曲が収録され、1989年1月にK.482、K.488、 K.537の3曲が、ポネルの映像に習って同じ場所で収録されたようであった。


  今回はK.503とK.537の2曲だけでなく、他の8曲についても改めて見直しているが、音質も画像も良くなり、この8曲は改めて素晴らしい演奏であると思った。バレンボイムは40代であり、彼の当時の関心はベルリンフイルとの指揮やオペラなど、より広い音楽の世界へと向かっていたと思われるが、彼はベートーヴェンの5曲とこのモーツァルトの8曲をベルリンフイルで残している。彼の若い頃のイギリス室内楽団との全集も私は気に入ったものが多かったが、彼は若くても音楽の経験は深く、常に本流を歩いてきており、全てを知り尽くしているような演奏をする。彼の演奏には安定感があり、テンポが良く実に安心して聴け、特にこの8曲を全体としてみたときには、いわば「大人の風格」を持った演奏であると感じさせ、ピアノにも指揮法にもそれが良く現れていた。しかし、反面では、彼の演奏は杓子定木であり、教科書的でありすぎて面白くないという人もいるが、この基本が抜群に出来ているから、演奏会などで聴くと変化があって逆に面白いものだろうと思う。演奏とはそういうものではなかろうか。兎に角、このブルーレイ・ディスクは、素晴らしい8曲が詰まっており、音が良いので、CDとしても流して聴けることに気がついた。


(以上)(2012/07/17)


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