(懐かしいS-VHSを見る;コープマンの交響曲連続演奏会、第五集、)
12-7-1、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲(第32番)ト長調K.318(序曲)、2、変ロ長調(第−番)K.Anh.216、(3、ト短調(第25番)K.183(173dB)、4、ハ長調(第41番)K.551「ジュピター」)、5、変ホ長調(第39番)K.543を替わりにアップ。

−第32番の序曲風シンフォニーは、大編成でありながら、急緩急の三つの部分で構成された激しい曲であったが、コープマンのオーケストラの勢いある早いテンポ感と言い、金管やテインパニーの鋭い響きと言い、この曲に良く合っていると感じさせた。しかし、第39番においては、序奏部の古楽器独自の奏法による早い進行に違和感を感じ、全体としてテインパニーとトランペットの音が鋭く大きすぎ、弦楽器の薄さが非常に気になって、残念ながらこの曲の持つ豊かなゆとりのある響きが得られなかった−

(懐かしいS-VHSを見る;コープマンの交響曲連続演奏会、第五集、4曲)
12-7-1、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲(第32番)ト長調K.318(序曲)、2、変ロ長調(第−番)K.Anh.216、(3、ト短調(第25番)K.183(173dB)、4、ハ長調(第41番)K.551「ジュピター」)、5、変ホ長調(第39番)K.543を替わりにアップ。  第五回連続演奏会、1991年6月4日、東京芸術劇場大ホール、日本公演、NHK、
(1993年02月14日、NHKによる放送をS-VHSテープNo96に3倍速で収録)

7月号のソフト紹介の第一曲目は、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラの第五回連続演奏会で、曲目は1、交響曲(第32番)ト長調K.318(序曲)、2、変ロ長調(第−番)K.Anh.216、3、ト短調(第25番)K.183(173dB)、4、ハ長調(第41番)K.551「ジュピター」であった。ところが、調べてみると後半のメインの2曲が、既にアップロード済み(6-6-3および8-12-1)で、前半の2曲では、物足りないことが分かった。一方、8月に予定されている第10回の曲目を調べると、1、二長調K.161及びK.163(141a)、2、ヘ長調(第13番)K.112、3、ニ長調K.95(73n)、4、変ホ長調(第26番)K.184(161a)、5、変ホ長調(第39番)K.543、の5曲となっていた。5曲を一度にアップするのは大変なので、このうち1曲を選んでこの7月分にアップすれば良いと考えていたが、大好きな変ホ長調(第39番)K.543にすることにした。その理由は、この曲が一番好きな交響曲かなと思うからである。



さて、第一曲目のシンフォニーの交響曲(第32番)ト長調K.318は、つい6月号で聴いたばかりのマリナーの指揮による序曲風のシンフォニー(12-6-1)であり、記憶に新しい。いつも重々しい感じの生真面目なN響が、マリナーによって、軽やかなテンポで軽快な響きを聴かせてくれたと書いてきた。今回のコープマンの演奏は、フルート2、ホルン4、トランペット2、テインパニーと、最小限の弦楽器であり、どんな響きを聴かせてくれるか楽しみであった。なお、第5回の演奏会と一目で分かる目印は、第一ヴァイオリンの僂叛弔僚声の並んだ姿である。

この曲は、荒々しい第一主題がフォルテで軽快に始まり、勢いよく繰り返されるように進んで、この力強い音形が元気よく発展してから、チッチッチッチと第一ヴァイオリンが鳴き出す軽快な特徴ある第二主題が弦で開始され、ひとしきり演奏されていた。コープマンはこの弦の楽しげな主題をピアニッシモからフォルテイッシモへと盛り上がらせて、冒頭の動機に戻って提示部を終えていた。続いて第一ヴァイオリンによる第三の主題が現れて管楽器の付点のリズムにより激しい盛り上がりを見せてその頂点に達したかに思われた。



しかし、突然に、フェルマータに続いてアンダンテの楽章にがらりと変わり、早速、ゆっくりした第一主題が第一ヴァイオリンと後半はフルートいより歌うように現れた。続いて第二主題がオーボエと四つのホルンの重奏の形で現れていた。これらの主題がゆっくりと繰り返されたところで、再び突然に、第三楽章のアレグロに突入して驚かされた。フォルテとピアノの交替する激しいトレモロの経過部を経て、第一楽章の第二主題が思い出したように明るく現れてひとしきり進んでから、曲は直ぐにまとめに入り、冒頭主題が飛び出してコーダになり、全体が力強く終結していた。

           この曲は急緩急の三つの部分で出来ていたが、それぞれが楽章として独立せず、最初のアレグロでは二つの主題が提示され、展開部が終わったところでアンダンテに入っていた。また、ここでも二つの主題が提示されてから、急にアレグロに移行し、最初のアレグロで使われた主題によりフィナーレをまとめるという、全体が一つのソナタ形式の曲のように構成されていた。しかし、素材としては三つの楽章を構成するだけの主題の数は揃っており、明らかにこれは新しい試みであった。「パリ」交響曲を作曲し、楽器編成に変化が生じてきたと同様に、これまで作曲されてきたいわゆる三部構成の序曲と異なって来たのは、パリ旅行以降に現れた作風上の変化によるもののように思われる。コープマンは、緩急・強弱の変化が著しいこの曲を手慣れた指揮振りで指揮をしており、テインパニーやトランペットなどの鋭い響きや4ホルンの重厚な響きが、古楽器演奏の特徴に追加されたかのように聞こえて、この曲には良く合っているように思った。実際、オーケストラの早いテンポの勢いと言い、小編成の鋭さと言い、コープマンらしさが漲っているように感じさせられた。

             第二曲目は旧番号を持たない変ロ長調 K.Anh.216(K.74g→C11.03)で、取り扱い上のいろいろな履歴を持ったシンフォニーのようである。この曲は旧全集刊行後に発見されたもので、写譜があるだけで真筆の草稿がない。モーツァルトが第一回のイタリア旅行から帰ってきて、1771年の夏にザルツブルグで作曲された全6曲の1曲として追補に加えられた。そして、アインシュタインによるケッヒェル目録の第3版では、内容的にK.73やK.75などと、多少関連があるとしてK.74gに加えられた。しかし、アインシュタインの死後、新しい研究により改訂出版されたケッヒェル目録第6版では、内容的な理由により、モーツァルトの作品とは認め難いとされて、疑問作のグループであるC11.03の扱いとされた。
総譜はブライトコップ・ウント・ヘルテル版で「交響曲第54番」として出版されたものがあり、メヌエットを除く三つの楽章は、全て短い展開部を持ったソナタ形式で書かれている。アレグロ楽章ばかりでなく、アンダンテの楽章まで旋律性に乏しく生き生きさに欠け、全体的にある種の異質的なものを感じさせると思われる。第一楽章アレグロ、第二楽章アンダンテ、第三楽章メヌエット、第四楽章アレグロ・モルトとされているが、スコアが新全集に含まれていないので、聴いて確認したいと思った。

第一楽章は弦楽器による颯爽とした第一主題で始まりひとしきり経過部が続いてから、同じテンポで第一ヴァイオリンが第二主題を奏で出して盛り上がりを見せながら提示部を終え、温和しい短い展開部を経て再現部に入り、再び第一・第二主題が型通りに繰り返されていた。標準パターンのアレグロ楽章であった。
第二楽章は落ち着いた歌謡風のアンダンテ楽章であり、これも二つの主題が丁寧に提示され、再現されていた。第三楽章は、余り特徴のない平凡なメヌエットであり、3拍子であることが前後の楽章と異なっていた。フィナーレは早い弦の動きが目立つ急速なアレグロで、これも二つの似たような主題が提示され、自由奔放な勢いで一気に駆け抜けていくといった印象が残った。
全楽章を通じてこれと言った特徴が目立たない印象の薄い作品で、ケッヒェル第6版で偽作の疑いが濃い作品として分類されたのはやむを得ないことと思われた。

さて、第三曲目のシンフォニーは、次回(8月号)の中から一曲を繰り上げて紹介するもので、変ホ長調(第39番)K.543を取り上げさせていただいた。この演奏の全体をさらりと聴いた限りでは、コープマンの演奏は、序奏部の扱いは古楽器風の伝統に反する早い弦の降下音によるものであり、続く各主題も早めのテンポでぐいぐいと進行するものであった。ソナタ形式での繰り返しは丁寧に行われており、どちらかと言えば早いテンポで緊張感を持って進行する古楽器色の強い演奏で、軽快ではあるが強弱の変化が多く重量感には乏しい演奏のように見えた。



         第一楽章はテインパニーが響く壮大なアダージョの序奏で始まるが、コープマンは分厚い和音を力強く付点リズムで奏していたが、そのリズムの中で素早く弦の下降音階が奏されて、古楽器演奏独特の序奏を開始していた。この序奏は速いテンポでフルートと弦とが対話し、テインパニーが細かくリズムを刻みつつ盛り上がりを見せながら進行していたが、伝統的な豊かな序奏とは異なる急ぎ足のまさに古楽器風の序奏で、ホグウッドが先鞭をつけた共通の響きであった。
           続くアレグロでは、弦楽器で軽快な3拍子の第一主題が急速に始まり、木管も加わって勢いよく進んでから、ベートーヴェンの英雄交響曲を思わせる力強いファンファーレが堂々と開始され、ここでも序奏部に似た弦の下降音階によるフレーズが実に明解に響いて力強く結尾主題に繋がっていた。続く第二主題も第一ヴァイオリンにより歌うように提示され、木管との優美な対話が繰り返され、低弦の弾むようなピッチカートも加わって快い響きとなって提示部後半を盛り上げていた。コープマンはここで提示部の繰り返しを行い、丁寧に進んでいた。展開部では提示部後半の力強い結尾主題が速いテンポで何回も執拗に繰り返されて勢いよく展開され、木管に渡されてから再現部へと移行していた。コープマンは再現部においても、終始、軽快にテンポ良くリズムを刻みながら、第一主題・第二主題と型通り進んでいたが、この曲のダイナミックな迫力を強調させつつ緩急自在に軽快な演奏を見せており、序奏部の失点を取り戻していた。



          第二楽章は、弦楽合奏の美しいメロデイで静かに始まるアンダンテのゆっくりした楽章であり、譜面を見ると提示部の前半に繰り返し記号が二つあり、第一の主題を構成していたが、コープマンは全ての繰り返しを丁寧に繰り返して演奏していた。曲は二部分形式で三つの主題から構成されており、ここで木管に導かれて弦4部が第二の主題を波を打つように提示していき、管と低弦との見事な対話がひとしきり繰り返されて頂点に達してから、ファゴット、クラリネット、フルートが互いに重なり合ってカノン風に第三の主題を提示して、前半の第一部を形成していた。
           第二部では第一の主題が第一部同様に弦楽合奏で始まるが、直ぐに管楽器の合奏が加わり、次第に弦楽器群と管楽器群が交互に波を打つように進行し始めた。第二の主題も変形されて弦楽器群と管楽器群が交互に波を打つように力強く進行し、終わりに第三の主題が管楽器群により互いに重なるように現れて素晴らしい合奏を行ってから、最後に第一の主題が静かに歌われてこの楽章は終息していた。コープマンは、終始、この美しいアンダンテを丁寧に指揮していたが、弦と管のアンサンブルが素晴らしく見事なアンダンテ楽章であった。



             続くメヌエット楽章では、コープマンは実に軽快なテンポでこのメヌエットを速めのテンポで進行させていた。このメヌエット部分の華麗さと対照的にトリオでは二つのクラリネットの美しいデユオにフルートが加わってセレナードを思わせる流麗な素晴らしい響きを聴かせていたが、繰り返しではクラリネットが自由に装飾をつけていた。再びメヌエット部分が力強く再現されていたが、実に楽しい心温まるメヌエット楽章であった。
          フィナーレは早い出だしの第一主題で軽快に始まるアレグロで、フルオーケストラで明るく躍動するように進行していた。コープマンはこの速い動きを前進でしっかりと進めており、最初の主題から派生した第二主題についても、同じテンポで軽快に進め、フルートとファゴットの美しい対話を経て盛り上がりを見せて提示部を終え、再び丁寧に繰り返しを行っていた。展開部では冒頭主題の旋律を繰り返し展開していたが、高弦と低弦とが追いかけ合い鋭く対立しながら波を打つように力強く進行していた。再現部では始めの通り第一主題・第二主題と型通りに疾走するテンポで軽快に進めており、コープマンはこの最後の繰り返しを無視して、一気に駆け抜けるようにこの楽章を完成させていた。

この曲がこのコンサートの最後の演奏か、コープマンは客席から花束を受け、それが全員に当たるように沢山の花束だったので、一人一人に手渡ししながら、このコンサートは終了となっていた。新たに二つのコンサートが加わったので、このコープマンの連続演奏会は充実したものとなり、収録漏れになった1コンサートが、返す返すも残念に思われた。

(以上)(2012/07/06)


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