(最新購入のDVD;2007ボローニア歌劇場の「アルバのアスカーニョ」K.111、)
12-6-3、オッターヴィオ・ダントーネ指揮、ミカエル・ザニッキイ演出による「アルバのアスカニオ」K111、2005年12月、ボローニア歌劇場管弦楽団&合唱団、輸入盤、

−このBONGIOVANNIというボローニアのグループによるDVDの初期オペラのシリーズは、「ラ・フィンタ・センプリチェ」K.51に続く2作目のようであるが、演奏や演出・衣裳などもリブレットに近いもので、何よりも日本語が付いているので好感が持てた。今回のこのボローニア歌劇場の「アルバのアスカーニョ」K.111に於いては、K.51 に比し音楽面で優れているばかりか演奏面でもほぼ満足できるものであり、M22の新演奏・新演出に対しても、演奏面では互角以上であり、何よりもリブレットに近い演出は、初期オペラを理解する上で推奨に値する貴重な労作であると思われる−


(最新購入のDVD;2007ボローニア歌劇場の「アルバのアスカーニョ」K.111)
12-6-3、オッターヴィオ・ダントーネ指揮、ミカエル・ザニッキイ演出による「アルバのアスカーニョ」K111、
2005年12月、ボローニア歌劇場管弦楽団&合唱団、輸入盤、
(配役)ヴェネレ;エリザベート・ノルベルグ=シュルツ、アスカーニョ;マリアーナ・ピッゾラート、シルヴィア;チンツイア・フォルテ、ファウノ;デジィレ・ランカトーレ、アチェステ;ベルンハルト・ベルヒトルド、
(2011年05月14日;新宿タワーレコードにてDVD購入、Bongiovanni AB20008)

        6月号の第三曲目は、一年前に入手していたが紹介するタイミングを逸していた初期のオペラで、ボローニア劇場の「アルバのアスカーニョ」K.111である。このオペラの紹介は先のM22におけるこのオペラの初映像(7-4-3)が、余りにも演出の現代化の試みが強すぎ、リブレットから離れ過ぎて満足できなかったのに対して、今回のボローニアの映像は、リブレットに比較的忠実に上演されていて、理解しやすい映像になっており、しかも日本語字幕が付いている優れものであった。今回は、最近入会した日本モーツァルト協会のオペラサークルの9月例会で、この映像の紹介をすることになっているので、その基礎資料を作成するつもりで本稿をまとめたいと考えている。

 この曲は、1771年10月にミラノでフランツ一世の第三王子フェルデイナント大公と、モデナのマリア・ベアトリチェ王女との婚礼が予定されており、その祝典劇としてオペラなどが企画されていたが、「ミトリダーテ」の成功を目にしたミラノの総督フイルミアン伯爵の申請によって、ウイーンの王宮から作曲依頼を受けたものである。しかし、この企画では、やはり祝典オペラはハッセの作曲による「イル・ルッジェロ」で10月16日に上演されており、この曲はその翌日にセレナータとして上演されていた。セレナータは、通常は大規模なカンタータ程度の祝典劇などを意味しているが、この祝典が特に盛大で豪華なものであったため、通常のセレナータよりも規模が大きく、牧神や羊飼いたちを交え踊りを加えた充実した田園劇となっており、祝典劇としてオペラ並みに独立して作曲された「二幕の劇的セレナータ」と言うことになろう。リブレットの作詞者ジュゼッペ・バリーニは、イタリアの著名な詩人であり、明らかにこの慶事に敬意を表した比喩劇として書かれていた。すなわち、登場人物のヴィーナスはマリア・テレジア女帝、アスカーニョはフェルデイナント大公であり、シルヴィアはモデナ王女のベアトリチェとなっている。



 このオペラの公演は結果的には大成功であり、祝典の期間中に5回も公演され、中でも老練なハッセのオペラを上回る評価がなされた。両方を聞き比べたレオポルドの言葉が手紙に残されており、ハッセもモーツァルトの天才振りを認めていた。この曲は序曲に次いで第一幕5場18曲、第二幕6場15曲、全33曲で構成されているが、合唱曲が15曲も含まれており、精霊たちの混声合唱、牧人たちの男声合唱、牧人の娘たちの女声合唱に別れている。しかし、同一曲が何曲も含まれており、CDを含めて過去の録音でかねて省略が多いのもこの辺に事情があるようなので、新全集で確かめながら注意深く聴く必要があった。



   序曲はソナタ形式で書かれたアレグロ・アッサイの実に軽快な曲。トウッテイで威勢良く始まる第一主題に続いて上昇するクレッシェンドは軽快そのもので進行し、静かな落ち着きのある第二主題もとても快い。画面ではオーケストラピットのダントーネの指揮振りと、女性が多いオーケストラが丁寧に写されていた。続いて第一曲はアンダンテ・グラツイオーソであり、三拍子のオーケストラの伴奏で画面では三美神が踊りながら、宴会の準備を精霊たちが行っている様子が写されていた。第二曲はオーケストラの前奏のアレグロで軽やかに始まり、大合唱が威勢良く始まって「天のヴィーナスよ。あなたのように優しい偉大な女神はいない」と呼びかけていた。一息ついて今度は女性たちの合唱が、続いて牧人たちの合唱が続き、最後に全員の合唱で盛大にヴィーナスの賛美が歌われていた。映像ではテーブル全体を囲んで全員で大合唱が歌われ、中央では女性たちが踊っており、正面の高いところには女神が下ってくる姿が写されていた。ここまでは急・緩・急と一気に続いており、恐らくオペラの序曲(シンフォニーK.111a)として独立して使われるように工夫されていた。



   第三曲では、ヴィーナスが地上に登場し「精霊よ、三美神よ、キューピットたちよ」とレチタティーヴォで呼びかけ、我が子アスカーニョを私の代わりに、この国の王に選んだことを告げた。そして、感謝するアスカーニョを全員に紹介し、長い前奏の後にアレグロで「お前の枝の木陰を、地上の人は待っている」とアリアを歌い出した。このアリアは気品のある格調の高いもので「栄えよ、愛するわが植物よ」と歌っていた。映像では女神が歌っている間に、アスカーニョは顔隠しのグラスをつけ、周りの牧人たちと握手を交わしていた。



    アリアの後にアスカーニョとヴィーナスがレチタティーヴォで重要な会話をしていた。アスカーニョが、ヴィーナスの選んだ花嫁のシルヴィアがどこにいるか尋ねると、ヴィーナスは高僧のアチェステが連れてくるが、お前は彼女に会っても身分を明かしてはならないと厳命していた。第4曲の合唱が始まって、ヴィーナスが「偉大な女神よ」と讃えられながら天に戻っていたが、この曲は第二曲とほぼ同じ。オーケストラが多少変わり、合唱も混声合唱だけとなって半分くらいに短縮されていた。



       第二場に入り、アスカーニョはただ一人で顔を見たこともないシルヴィアを、見知らぬ土地で悩みながら、探そうと決心していた。オーケストラ付きの長いレチタテイーヴォで、彼女はどこにいるか、どうして名乗れないのか、どんな娘か、など恋の不安と憧れに迷いながら歌っており、第5曲のアリアでは「愛しい人よ、見知らぬあなたに嘆息する」と歌っていた。映像では、歌いながら着替えをし、何故正体を隠さねばならないか疑問に思い、一人で花嫁を探そうと決意を固めていた。女神たちが高い席からアスカーニョの様子を見ていたが、このダ・カーポ・アリアの最後には、簡単なカデンツアが入っていた。そこへ羊飼いたちが第6曲の男声二部合唱で「来たれ、英雄の許に」と歌いながらアスカーニョを探し、「我らから去らぬように、愛の力で捕らえよう」と歌っていた。この曲はパストラル風の合唱曲であり、木管と低弦の伴奏が珍しく、この歌はとアスカーニョが不思議に思っていると、牧神ファウノが現れて「今日はわれわれの女神に捧げられた日だ」と皆に説明し、高僧アチェステが遅れているようだと言い、アスカーニョを見つけて「ここに座れ」と指示して、高らかに第8曲のアリアを歌い出した。ここで第7曲の羊飼いたちの合唱は省略されていたが、譜面では第6曲と全くの同一曲であった。



                   このファウノのアリアは、コロラチュアの三部形式のアリアで終わりにはカデンツアがある堂々たるアリアであり「口では何も言わないけれど感謝を忘れたのではない」と明るく歌い出し、アスカーニョを励まし、元気づけるアリアであった。歌が終わるとファウノは高僧アチェステがシルヴィアを連れて来ると言い、アスカニオに「身を隠していた方が良い」と指導していた。そこへ高僧とシルヴィアがやって来ると、第9曲の合唱とバレエ音楽が始まった。この曲はオーケストラの前奏で始まり、アレグロ・コンモートのバレエ音楽が序奏に次いで混声4部の合唱で歌われ出した。これは羊飼いたちと水の精たちよる合唱とバレエであり、合唱は混声4部・女声3部・混声4部・女声3部・混声4部と続く田園風の音楽が続きシルヴィアを皆が讃える合唱であった。



               アチェステが登場し、レチタテイーヴォで女神とその息子によりこの地は新しく生まれ変わるだろうと説明していた。そしてシルヴィアを祝福し、あなたは今日、アスカーニョの花嫁になって、地上の世界に喜びをもたらすのだと皆に説明した。そして第10番と第11番の羊飼いたちの合唱(第6曲とほぼ同じ)が省略されて、第12番の高僧のアリアが始まっていた。シルヴィアはこのアリアの前奏の間に、恥ずかしくて逃げ出そうとしたが直ぐ捕まって、高僧の喜びのアリアを傍で温和しく聴いていた。このアリアは、三部形式の朗々たるもので、最後には簡単なカデンツアが歌われていた。シルヴィアは「どうして分かったの」とレチタテイーヴォで尋ねると、大司教は女神が教えてくれたと答えた。するとシルヴィアは「私、言っていいかしら。司祭さま、実は、恋をしているの」と言い出すと、「それは心配ない」と司祭が答えていた。するとシルヴィアは心配そうに「私は他の恋を胸の中に感じているのです」と第13番のカヴァテイーナを歌い出した。それはアスカーニョへの恋の嬉しさと忘れられない夢の人への憧れを歌う叙情的なアンダンテであった。



                              そして続くレチタティーヴォで「私は女神に、夢の中でアスカーニョの花嫁になると誓いました。そして目覚めていたか夢かはっきりしないのですが、私の前に一人の若者が現れ、私はその人が好きになってしまったのです。アスカーニョの容姿は知りませんが、彼の美徳についてはよく知っています」と司教に話していた。司教は「恐れることはない.これは女神の教えだ」と答え、どうしてと尋ねるシルヴィアに「女神はお前の胸の中にアスカーニョを刻みつけたのだ」と告げた。シルヴィアは「それでは私は、私の花婿を愛しているのね」と呟き、高僧や羊飼いたちの前で「私は何と幸せなのかしら」と第14番のアリアを歌い出した。このアリアは美しい前奏で始まり、コロラチュアの多いコンチェルタントなアリアであり、最後にはカデンツアが付いていた。続いて第15番の羊飼いの合唱が始まっており、これはパストラル風の合唱曲で第6曲とほぼ同じ曲であった。



  この高僧とシルヴィアの一連の動きを隠れてみていたアスカーニョはレチタテイーヴォで「何という純真さ、なんという美徳」とシルヴィアを讃え、足元に駆けつけたい思いを堪えるのが大変で、「女神の命は厳しすぎる」とぼやいていた。そして第16番のアリアを歌い出したが、このアリアはアダージョで始まり、アレグロ、アンダンテと続き、アダージョ、アレグロと続くアスカーニョの悩みのアリアであった。 そこへヴィーナスが現れ「お前はシルヴィアの美徳の持つもう一つの試練を見なければならない」と語り、第17番のアリアを歌い出した。このアリアはアレグロで、オーケストラの前奏の後、再び高らかに「ここにアルバの国が知られるように」と願いながら歌われるもので、「あの美しい眼差しで愛を育てれば、全ての人を魅するだろう」と歌っていた。続く第18番は再び精霊たちの合唱で、ヴィーナスを讃えて「女神よ、あなたは天上の誉れです」と歌っており、第2番の前奏を省き、合唱も混声合唱だけに縮小した合唱になっていた。この合唱で女神は天上に戻って第一幕は終了となっていた。



   第二幕の幕が開くと、シルヴィアが美しく着替えて羊飼いの娘たちと一緒に登場し、胸の中の恋人に会うのを待ち望んで、その希望が達せられるよう第19番のアリアを歌い出した。このアリアは、アレグロの一部とアンダンテ・グラチオーソの二部に分かれており、2オーボエと4ホルンの重厚な伴奏を持つ前奏で開始され、一部ではアスカーニョと会える喜びを歌い、二部では愛する人が女神と一緒に来て欲しいと歌っており、両方に短いカデンツアが付いた長大なアリアであった。続いて羊飼いの娘たちが「もうすぐ愛する人が現れる」と祝福の第20番の合唱が歌われていた。この合唱は第一と第二ソプラノによる二部合唱でカノン風に歌われる美しい曲であった。



     続いてアスカーニョが登場し、「シルヴィアに会いたいが身分を明かすことが出来ないから会えない」とぼやいていたが、シルヴィアを遠くに見つけ、二人は互いに近寄れないもどかしさを伴奏付きの二人のレチタティーヴォで歌っていた。やがてシルヴィアは「私の花婿に違いない」と歌い出してアスカーニョに近づいたので、アスカーニョが迷いながら手を取ってひざまずくと、そこへ突然に、牧神ファウノが駆けつけて二人を引き離し、「女神とアチェステが現れるまでは辛抱しなさい」と忠告して、第21番のアリアを歌い出した。このアリアは二人を前にして、アスカーニョの優れた風格を讃えて歌うもので、一部と二部に分かれており、コロラチュラを器楽的に使って歌わせる技巧的な曲で、両部にカデンツアが歌われる長大なアリアであった。終わると凄い拍手が湧き起こり、本来は男声役の牧神ファウノを歌った可愛らしいランカトーレは、拍手に対し会釈を返していた。



            シルヴィアが引き離され苦しんで倒れ込んでいるのに、アスカーニョは何もしてやれない自分を嘆いて美しい弦の伴奏でアダージョの第22番のアリアを歌い出すが、アリアは一転してアレグロになったりアダージョやアレグロになったりして進行し、自分も耐えがたい試練に悩みながら「この残酷なカセが取れないものか」と歌っていた。一方のシルヴィアは、自分は夫として定められたアスカーニョに心を捧げているのに、遠くに見えている彼が名乗ってくれないので困惑していると、伴奏付きのレチタテイーヴォで告白し、続いて第23番のアリアを歌い出した。始めのアダージョでは「不幸な愛情よ、このために私は苦しむ」と歌い、後半のアレグロでは「もうこれ以上、苦しめないでくれ」と叫ぶように歌っていた。そして、そこに現れたアスカーニョに、シルヴィアは「私はアスカーニョのものだ」と告げて、アチェステの許へと逃げ去っていた。そこで第24番のシルヴィアを慰める羊飼いの娘たちの合唱が静かに聞こえて来たが、これはソプラノが二部に分けてカノンを歌い、アルトが低音を歌う三声の短い女声合唱であった。



            残されたアスカーニョは、シルヴィアの純真さに深く感動し呆然としていたが、やがて気を取り直して第25番のアリアを歌い出した。このアリアはシルヴィアに「早く帰ってきてくれ」と歌うアリアであり「私はあなたの忠実なしもべだ」と彼女への愛を告げるものであった。アリアが終わるとアチェステと牧神に率いられた羊飼いたちが集まってきて「来たれ、至高の英雄たちの栄光よ」と既にお馴染みになった第26番の男声合唱が始まり、アスカーニョには「われわれから遠ざかるな」と忠告していた。この曲は第6曲とほぼ同じ内容であった。そこへシルヴィアが白の礼服に着替えて登場してきたが、アチェステは優しくシルヴィアに「何も恐れることはない。天はわれわれに試練を与えるが、これまでのしつけを守りなさい」と慰めていた。そして羊飼いたちに「儀式を始めなさい。ヴィーナスに声を掛けなさい」と命令していた。ここで通常歌われる第27番のアチェステのアリアは省略されていた。



    第28番の羊飼いの男女や水の精などの合唱が厳かに始まり「降りて下さい。天上のヴィーナスよ」と歌われていたが、これは第2曲とほぼ同じ曲であった。シルヴィアはアスカニオを見つけて「あの人を遠ざけて下さい」と頼んでいたが、アチェステは「女神にしっかり頼め」と告げていた。続いて第29番の羊飼いたちの女神を迎える大合唱が始まっていたが、音楽は第2番とほぼ同じであった。ヴィーナスが登場して来たので、シルヴィアは「私の花婿はどなたですの」と問いかけると、ヴィーナスは「アスカーニョを指さして、「彼ですよ、愛しいシルヴィア」と明確に告げた。



             シルヴィアは、そこにいたアスカーニョに「どうして正体を隠していたの」と問いかけると、アスカーニョは「今に分かる」と答え、優しく「私の胸においで、愛する人よ」と歌い出していた。これがシルヴィア・アスカーニョ・アチェステの三人による第31番の三重唱であり、曲はアンダンテで始まり、シルヴィアは意中の人が現実のアスカーニョであったので「信じられない」と喜び、アスカーニョは「何と言う喜び」とシルヴィアの手を握り、アチェステは「女神を讃えなさい」と歌っていた。後半のアレグロに入ると二人は「何と素晴らしい瞬間」と歌い、アチェステは「試練に報いるのだ」と喜びの三重唱になっていた。



    ヴィーナスは「これであなた方の苦しみは終わりだ」と告げ、「二人だけで楽しむのでなく、これからは他の人々のことも考えなければならない」と忠告し、アスカーニョには、建国の剣を記念に手渡し「これからはアルバの人々のために尽くして欲しいと」期待していた。続いて再び、第32番の喜びの三重唱が始まっていたが、この曲は 第31番の三重唱の後半のアレグロの部分とほぼ同様の音楽であった。



   ヴィーナスが再びレチタテイーヴォで語り出し、「息子たち、親族たち、私の民よ。私のように、この地と人々との強い絆を保つよう頑張って欲しい」と述べ、別れを告げていたが、アチェステが王子と王女に礼服を着せてヴィーナスに示し、第33番のフィナーレの大合唱が始まっていた。この合唱は「栄光の女神よ、あなたの子孫が繁栄しますように。そして人々がどの時代においても幸せでありますように」と歌われて、終幕となっていた。

    長い映像を見終わった直後の印象では、最後に衣裳を改めた二人の王子と王女のご苦労に対し、ヴィーナスばかりでなく、もっと周りの人々による祝福の宴がフィナーレとして主役の二人に対して続いても良いのではないかと思われたが、二人の出番がないままヴィーナスだけが目立って、終幕したような印象を受けた。全体的な終演後の印象としては、この劇はセレナータという形の祝典劇とされていたが、モーツァルトの音楽がキラキラと輝いており、舞台も豪華で初演時には著名なカストラートなどのスターが歌った筈であり、実質的にはオペラそのものであるという印象を受けた。このDVDでは二人のカストラートの役が女性歌手になっていたが、もう少し全体の動きがあれば、ミトリダーテやルチオ・シッラと余り変わらぬオペラであると感じさせられた。

              映像を見る当初から、新全集と見較べながら舞台を追っていたのであるが、全33曲のうち省略曲は5曲で、アチェステの1曲のアリア以外は全て合唱曲であり、何回も繰り返し出てくる合唱(第6曲が6回のうち3回略、第2曲が4回のうち1回略)が多かったので影響は少なく、リブレットにほぼ忠実な演奏であると言うことが出来よう。また、当初からバレエ音楽が多くバレエが踊られることに注目していたが、第1曲、第2曲の序曲からバレエが登場しており、第9曲などは本格的であった。しかし第2曲と第6曲の合唱が何度も出てきて、バレエを含んだり省略したりしていた。新全集には付録に8曲(第6版では9曲)のバレエ音楽のバス・パートが残されているが、これは手紙にある第一幕と第二幕の間のバレエ音楽の一部と見なされており、その一部がK.Anh.207の9曲のピアノ小品として別途CDで聴くことが出来る。

    この日本語が付属したBONGIOVANNIというボローニアのグループによるDVDの初期オペラのシリーズには、「ラ・フィンタ・センプリチェ」K.51(AB20008)があり、演奏や演出・衣裳などもリブレットに近いもので、好感が持てたが、 M22の新演出(7-9-5)に較べて、演奏が冴えず、歌手たちの技量に必ずしも満足できなかった。しかし、今回のこのボローニア歌劇場の「アルバのアスカーニョ」K.111に於いては、K.51 に比し音楽面で優れているばかりか演奏面でも満足できるものであり、M22の新演奏・新演出に対し、演奏面では互角以上であって、何よりもリブレットに近い演出は、非常に原作に近いものと好感が持てた。この映像のように、リブレットを正面から捉えて舞台化すれば、現代でも評価できる作品が出来るものと思われる。この作品には、二人のカストラートがアスカーニョで4曲、牧神ファウノが2曲のアリアを歌っていたが、これは余分な話であるが、このHPではお馴染みのチェチーリア・バルトリなどに歌って頂いて実力を発揮していただけたら、素晴らしいことになったものと思われる。

(以上)(2012/06/21)


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