(最新購入のDVD;2007チューリッヒOPのアーノンクールによる「魔笛」K.620)
12-5-3、ニコラウス・アーノンクール指揮、マーテイン・クシェイ演出による「魔笛」K620、2007年チューリヒ歌劇場管弦楽団&合唱団、輸入盤、

−このクシェイによる超モダンの新演出は、一度通して見た時には、理解できない部分が多すぎて、日本語字幕の必要性を痛切に感じていたが、最後の「二人の愛のキス」の意味が分かれば、理解できない演出の部分は、放置しても問題は余りなさそうである。音楽面ではアーノンクールのやり方が良く分かって耳慣れてきたせいか、その変化をむしろ楽しんでいる自分を発見していた−

(最新購入のDVD;2007チューリッヒOPのアーノンクールによる「魔笛」K.620)
12-5-3、ニコラウス・アーノンクール指揮、マーテイン・クシェイ演出による「魔笛」K620、2007年チューリヒ歌劇場管弦楽団&合唱団、輸入盤、
(配役)ザラストロ;マッテイ・サルミネン、夜の女王;エレナ・モスク、パミーナ;ユリア・クライター、タミーノ;クリストフ・ストレール、パパゲーノ;ルーベン・ドロール、パパゲーナ;エヴァ・リーバウ、
(2012年03月05日;新宿タワーレコードにてDVD購入、D.Gramophon00440 073 4367)

  12-5-3においては、4月号に引き続き、アーノンクールの登場であり、今回は新しい2007年チューリヒ歌劇場で、クシェイ演出の「魔笛」である。初めてこの指揮者の「魔笛」のCD(1988)を聴いて、その斬新な解釈とその響きを耳にして驚いた記憶があるが、今回はおよそ20年後の同じ歌劇場の演奏である。この20年間にどのような変化が生じたか、今回新たに入手したこのDVDによるライブ映像により、彼の強烈な個性を改めて再確認したいと考えている。
このクシェイによる超モダンの新演出は、一度通して見ただけでは、余りにも理解できない部分が多すぎて、日本語字幕の必要性を痛切に感じていたが、音楽面ではアーノンクールのやり方が良く分かってきたせいか、むしろ楽しめる演奏になっていた。このクシェイ演出も2度・3度と見直すにつれて、次第にその意図が理解できるようになって来たが、抹消のおかしな分からぬ演出の部分は、放置しておいても問題はなさそうである。



アーノンクールが入場してきたが、アリス夫人がヴァイオリン席におられたので驚いているうちに序曲の三和音がゆっくりと始まり、舞台にはタミーノとパミーナの手を組んだウエデイングスタイルが写し出されていた。これが何を意味するのか考えながら、軽快に進行する序曲を聴いていた。二度目の三和音で序曲は展開部になっていたが、舞台の二人はそのままで最後にクローズアップされて、二人がキスをしようとしたところで後ろから邪魔が入り、二人は後ろに引きずり込まれてしまった。これは一体何を意味するのか、最後まで見なければ理解できないであろうが、「この主役二人の素敵なキスは、一番最後の場面に取っておけ」というクシェイの意図なのであろう。この映像のテーマは、「愛」であり、これは背広姿の現代に置き換えても、モーツアルトの時代と同じであると言いたかったのであろう。



    序曲が終わり、導入の音楽が始まりだして幕が開くと、大勢の人が倒れて音楽に合わせて苦しんでおり、一人立っているタミーノが、式服のまま黒い紐のようなものを手にして「助けてくれ!」と叫んで歌い出していた。クローズアップでよく見るとそれは黒い蛇であり、全員が襲われてもがいており驚いているところへ、後方の三つのドアから三人のサングラスの超モダンな派手な女性が登場し「勝った!」と勝利宣言をしていた。三人が歌いながら倒れているタミーノに近づいているうちに、全員が退場して蛇の死骸が散乱していたが、三人はタミーノを囲んで三重唱をゆっくりと歌っていた。誰が残るかで言い争いとなっていたが、途中でテンポが変わって皆で女王様に報告に行くことになり、出てきた入り口から立ち去っていった。三人とも、目が不自由なようであり、派手な姿なのに勢いがなく、どうして蛇を殺したのか、何とも不思議な光景であった。



   気を失ったタミーノが起き上がり、辺りを見渡すと蛇の死骸が横たわり、驚いて立ち上がると、遠くから笛の音が聞こえて来た。舞台は回転式になっており、ゆっくりした前奏が聞こえて来て、どうやら隣室には大きな鳥かごに入ったパパゲーノが「鳥刺しのアリア」を歌い出していた。背広姿のパパゲーノは自分でパンを吹き、アリアは三番まで丁寧に歌っていたが、そこへタミーノが現れ二人のおかしな長い会話が始まり、ほぼリブレット通りに進んでいた。しかし、俺は力持ちだと自慢し始めると雷鳴が鳴り出し、「パパゲーノ!」の鋭い声とともに三人の女性が現れた。三人は口々にパパゲーノを懲らしめ、最後にそれぞれが力ずくでキスをすると、パパゲーノは口がきけなくなる。そしてタミーノには額縁を手渡すと、タミーノは「何て美しい人なんだろう」と美しい木管の伴奏にのって絵姿のアリアを歌い出した。そして「これが恋と言うものか」と歌っていると、このパミーノは悪魔に浚われたと三人に聞かされた。



   雷鳴が鳴り響き、真っ暗な隣室では夜の女王が一人で姿を現し、タミーノに対して「愛しい息子よ」とレチタティーヴォを歌い出していた。そしてアリアでは「おまえこそ娘の救い手だ」と歌って速いテンポのコロラチューラの技巧のさえを見せていた。ここでは夜の女王は困った悩める一人の母親の弱い姿を示すように人間的に描かれていた。一方、口がきけないパパゲーノが「ム、ム、ム、」と悲鳴を上げて五重唱が始まり、三人の女性はパパゲーノをまず助け、タミーノには女王様の贈り物として「魔法の笛」を、パパゲーノには「銀の鈴」が贈られて、二人はパミーナを助けに行くことになった。悪人のザラストロの国へは三人の童子たちの道案内でと教えられ、早速、二人は出発した。



      場面がすっかり変わって、一室で若い三人の女性がひそひそ話しをしていると、モノスタトスが突然現れて大騒ぎ。そして突然に悲鳴が聞こえ、パミーナがモノスタトスに捕まって早速、三重唱が始まっていた。そこへパパゲーノが忍び込み、若い女性を見つけて介抱しているうちにモノスタトスと鉢合わせ。お互いに姿を見て「悪魔だ!」と逃げ去るが、パパゲーノはパミーナに近づいて事情を話し、直ぐに仲良くなった。そして二人は男と女の愛の賛歌とも言える美しい二重唱を歌い出していたが、クライターのパミーナもドローレのパパゲーノのも純情そのものに見え、実に表情豊かに歌っていたので、分からないところが多いが、ここでやっと落ち着いて、楽しい魔笛の世界に誘い込まれてしまった。



  しかしフィナーレになって、三人の童子たちがタミーノを案内した部屋には、不思議なことに黒いカラスを手に抱いた子供たちが沢山おり、タミーノに忍耐と沈黙が大事で賢くふるまえと忠告をしていた。タミーノが隣の部屋に一人で移り、彼らの忠告を聞いて、パミーナを助けようと決意を固めた。隣に入ろうとして「下がれ!」と脅されたがひるまず、他の部屋で出てきた弁者と押し問答。ザラストロは聖人で、お前は悪い女に騙されていると突き放され、途方に暮れていた。思わず「パミーナは?」と口に出すと、暗闇の中で姿は見えないが声が聞こえてきて、「パミーナは生きている」という返事。



           「生きている」という言葉にタミーノは感動して、姿なき声に感謝のつもりで「魔法の笛」を吹くと、動物の代わりに現代風の大勢の労働者や看護婦たちが聞きつけて現れ、みな喜んで生き生きとしていた。それを見てタミーノが喜んでもっと吹いているうちに、パパゲーノの笛が応えてきて、タミーノは勇気100倍。パパゲーノたちを見つけようとしているうちに、隣から現れたパパゲーノとパミーナが怖いモノスタトス一行に捕まってしまった。そこでパパゲーノが手にした「銀の鈴」を鳴らしてみると、ラ、ラ、ラ、の美しい音楽が鳴り出して、一行は音楽に聴き惚れて、踊りながらどこかへ行ってしまっていた。



           そこへザラストロ万歳の大合唱が始まり、大勢の宮殿の人々とともにザラストロが登場してきた。パミーナは急にしっかりした王女の口調になり、罪を犯しましたと正直に真実を語り出すと、ザラストロは良く分かっていたが、自由を与えることは出来ないと釘を刺していた。そこへモノスタトスがタミーノを連れて登場し、タミーノとパミーナが初めて顔を合わせていた。しかし、モノスタトスは処罰され、タミーノとパパゲーノは宮殿で試練を受けることになって宮殿に導かれ、ここで終曲となっていた。
            第一幕の各場面で、大勢の群衆や子供たちなどが突然に現れて、ビックリすることが多く、現代風の衣裳で戸惑うことが多いが、ダイアローグは省略を少なくする努力が払われていた。また、回転式の舞台で場面変更は、部屋の移動で簡単に行われており、岩山や動物たちのメルヘン調のない現代演出で、背広姿に合っていた。




          第二幕は厳かな行進曲の前奏で開始されるが、画面では大勢の人が雪の中で倒れているようであったが、隣の部屋では刀を持ったフェンシングスタイルの一団が集まっていた。三つの和音が鳴って、そこへザラストロが入場し、タミーノが夜のヴェールを引き裂いて、彼が試練を受けたいと望んでいることを皆に告げていた。彼らは共通のユニフォームの集団であり、再び、三つの和音が響いてから、ザラストロは、「神は王子の妻にパミーナを定められた」と語り、続いて「イシスとオシリスの神に、二人に叡智の心を授けたまえ」とゆっくりと歌い出した。ザラストロの歌う敬虔な落ち着いた調べは感動的であり、続くザラストロ軍団の合唱も祈りの声の間に挟まれて、いかにも「魔笛」らしい荘厳な宗教的な行事のように見えた。この場面はほぼテキスト通りの語りと会話がなされていたが、雪の中で倒れている人は一体何を意味するのだろうか。



  軍団が立ち去ると、暗闇の中にはタミーノとパパゲーノが目隠しの姿で残され、二人は雷鳴により脅されて大騒ぎしていた。そこへ二人の弁者が登場し、タミーノには試練を受けることを確認していた。一方、パパゲーノは、始めは試練を拒否していたが、ザラストロが用意した自分に良く似た若くて美人のパパゲーナに、口さえきかねば会ってもよいと聞かされて、喜んで握手をしてしまった。そして二人の弁者は、沈黙をし、女の企みに気をつけろと二重唱で教えていた。彼らが立ち去ると、早速、暗闇の中から三人の女たちが現れて、夜の女王が来ていると頻りに誘う五重唱が始まっていたが、うるさい三人に対し、タミーノが言い聞かせてパパゲーノが何とか頑張り通したので、彼女たちは最後に諦めて消え去った。



            暗闇の中でモノスタトスが登場し、月明かりの中で寝込んでいるパミーナを発見して、「惚れれば楽しいさ」と早口のアリアを歌い出し、「キスをしたい」といたずらをしようとしていた。しかし、折から現れた夜の女王に見つかって、「お下がり!」と一喝されてしまった。夜の女王は、気のついたパミーナに「私が遣わした若い男はどうした」と尋ね、軍団たちに身柄を預けたと答えると、女王は怒りを露わにし、パミーナにナイフを手渡して、「ザラストロに復讐しなければ、お前は私の娘でない」とコロラチューラで歌う華やかなアリアを歌って風のように立ち去っていった。夜の女王のこのアリアは、第一幕のアリアよりも激しく決然と歌われ、残されたパミーナはナイフを手にして倒れ込んでいた。




          そこへモノスタトスが現れ、一人呆然とナイフを持って立ちすくんでいたパミーナを脅し始めていたが、そこに現れたザラストロに一喝されて逃げ去った。母親の罪を許してやって欲しいと訴えるパミーナに、ザラストロは優しく慰めるように「この聖なる殿堂には、復讐を思う人はいない」とアリアを歌い出し、パミーナを慰めていた。この美しいアリアは実に朗々と明るく歌われ、客席から素晴らしい拍手で迎えられていた。
          一方、場面が変わって、再び暗闇の中でタミーノとパパゲーノが登場し、退屈したパパゲーノがここには「一滴の水もない」とこぼしていると、そこへ宇宙人みたいなパパゲーナの婆さんが現れて水を差し出した。パパゲーノが適当にからかっていると、18歳と2分の若い婆さんで、恋人が自分であることが分かって、さあ大変。しかし、ここでは暗闇と雷鳴のお陰で、何とかこの場は救われた。



         そこに三人の童子が現れて、「ザラストロの国にようこそ」と歌い出し、美しい三重唱を歌いながら「魔法の笛」と「銀の鈴」を返し、ワインや食べ物を手渡して、沈黙を守るように注意していた。そこでタミーノが思わず笛を吹くと、それを聞きつけて、突然、パミーナが話しかけてきた。しかし、男二人は注意されたばかりであるので、パミーナの相手になるわけにいかない。タミーノが笛で答えてもパミーナには通じない。パミーナは悲しげに「ああ、確かにもう終わりなのね」とアリアを歌い出し、「無視されるのは死ぬほどつらい」と恨めしそうに歌っていた。パパゲーノも口にご馳走が入っており口がきけず、今回は立派だった。



           三つの和音が鳴り響き、軍団の人たちが集まって、僧侶たちの合唱が始まっていた。合唱は、「イシスとオシリスの神よ、何という喜び」と祈っていたが、しかし良く聞いていると、「若者は我らの務めに捧げるであろう」と歌っていた。そこへザラストロが登場し、「王子よ、冷静であった」と語り、パミーナを呼んでそこでは別れの三重唱が始まっていた。別れがつらいと歌う二人に、何事も神々のご意思だと歌うザラストロのそれぞれの気持ちを歌う見事な美しい三重唱になっていた。





            一方、パパゲーノはタミーノを探してうろついていたが、「下がれ」と脅されて行き場がなくふて腐れていたが、ふとしたことでワインにありつくことが出来てご機嫌であった。思いついて「銀の鈴」を回すとグロッケンシュピールが明るく鳴り出して、パパゲーノは、「俺は若い娘が欲しいな」と有名なアリアを歌い出した。調子に乗って歌ってるうちに、ワインの酔いが廻ってきたせいか、若い女の子と戯れるような夢と現実とがごっちゃになって、見るものを楽しませ、お客さんを喜ばす明るく愛嬌のあるアリアとなっていた。
           そこへ「私だよ、お兄さん」と例の宇宙服の婆さんが現れ、握手をしなければパンと水だけの世界になってしまうと脅しはじめ、しつこく握手を求めるので腹を決めて手を出すと、あら不思議や、婆さんが宇宙服を脱ぐと若いパパゲーナが現れた。パパゲーナと名を呼んで追いかけようとしたが、弁者たちに遮られもう一息のところで逃げられてしまった。



          フィナーレに入って、大きな部屋の一室で、三人の童子たちが地球儀を見ながら「朝の訪れを告げる太陽が輝く」と明るく歌い出していたが、彼らは様子がおかしいパミーナを見つけて近づいた。パミーナは母から渡された短剣を持ち、悲しみの余り自殺しそうな様子でふらふらしていたので、三人はタミーノに会わせてあげるとご機嫌を取り、隙を見てナイフを取り上げた。そして少年たちが導いてパミーナを安心させ、一緒にタミーノを探しに出かけようと出発した。



          場面が変わって隣の部屋では、二人の式服を着た案内人がタミーノを導いて「この道を来たるもの、火、水、大気、そして大地で清められる」とコラール旋律で歌って説明していた。タミーノがこれに勇敢に応えて前に進もうとしていると、そこへパミーナの声が遠くから聞こえてきた。タミーノは彼女との会話が許され、一緒に行くことを許された。二人はここで「私のタミーノ」「私のパミーナ」と互いに劇的な再会をしてから、ピッチカートの伴奏に乗って、二人の愛と魔笛の力で試練の道を克服しようと決意していた。この間に、二人の案内人たちは、隣の部屋で、火や水の試練のための準備に忙しいように見えた。





   隣の部屋の用意が出来て、パミーナが火の付いたライターを手にし、タミーノが笛を吹きながら、隣室に入り危険物が山積している部屋を注意深く通り抜け、二人は初めに「火の試練」をクリアした。笛の音はゆっくりしたテンポで何と装飾がつけられていたが、実感がこもった美しい演奏であった。出口では大勢の人が心配そうに見守っていた。



          二人は元気で戻ると、続いて隣の部屋に移動したが、スクリーンには二人が車に乗り込むところが写され、大勢の人がスクリーンを見守っていた。車は走り出して水中に飛び込み、二人は水中に放り出されて水の中を泳いでいる姿が写されていた。大変な試練であり、初めて見た新しい「魔笛」の現代版の「水の試練」であった。二人が戻って二重唱で報告をし、大勢の人たちにより勝利が宣言され、大合唱によって勝利を祝福されていたが、二人はその場で倒れてしまい、通常なら、そのまま祝福されて神殿へと迎えられる姿が見られなかった。



         一方、隣の部屋では、場面が変わって、一目見た若くて可愛いパパゲーナを探して、パパゲーノが暗闇の中を駆け回り、どうしても見つからずに草臥れた姿で「優しい小鳩よ」とパンを吹きながら歌っていた。遂に諦めて首吊りでもしようかと思っていたら、首吊りのロープがあり、ロープが上から下りてきた。歌いながら1、2、3、と数えてから首を吊ろうとしても誰も助けてくれない。三つ数えても駄目で、遂に諦めて思い切って首を吊ろうと決心したときに、三人の童子が現れて、銀の鈴を鳴らせという。
          忘れていたとばかりに、パパゲーノが喜んで勢い込んで鈴を鳴らすと、可愛いいパパゲーナが器械の中から姿を見せていた。そしてパパゲーノが振り返ると、二人は劇的な「パ、パ、パ、」の再会となった。この演出では、小さいパパゲーノも小さいパパゲーナも言葉だけで姿は見せずに簡素な形で喜びを表現し、観客の笑いを誘っていた。









             暗闇の中で夜の女王の一行がモノスタトスの案内で、ザラストロに復讐しようと建物の中に忍び込んで来た。しかし、それを警戒し待ち構えていた二人の案内人が、先ほどの「火の試練」の部屋の方におびき寄せ、モノスタトスがライターに火をつけて部屋に入ると、部屋中が大爆発を起こし、夜の女王はじめモノスタトス一行は壊滅してしまった。案内人が部屋の扉を閉めると、隣の部屋では大勢の人が集まってきていた。



          その中にはタミーノとパミーナも寝台に載せられて大勢の中に到着していた。それを見てザラストロは皆の前で「太陽の光が夜の世界を追放した」と勝利の宣言を行い、集まった一同による勝利の祝福の大合唱が始まっていた。





           ザラストロが中央で「イシスとオシリスの神に感謝を」と歌いながら、タミーノと握手をすると、彼は起き上がっていた。パミーナも寝台から起ち上がり、そこで二人は初めて顔を見合わせてにっこりし、揃ってザラストロの前で起ち上がった。大合唱が始まり、二人が元気な様子に、全員が揃って二人を祝福していた。

           テンポが変わってコーダに入り、「強いものが勝ち、美と叡智には王冠が飾られると」歌われて、大勢が見守る中で、賑やかな大団円となっていた。最後に若い王子と王女が二人で手を重ねながら顔を見合わせていると、幕がゆっくりと下りてきて、最初の序曲の場面に戻り、二人はゆっくりとキスをしたところで画面は真っ暗になり、この「魔笛」の微笑ましい終了の場面となっていた。
  この冒頭の場面に戻ったところで、この二人の愛のキッスが、この超モダンな「魔笛」のテーマであることが分かった。人間の愛は、時代を超えても、モーツァルトの時代と離れても、永遠であると言うことをクシェイとアーノンクールは言いたかったに違いない。これが分かれば、途中に気になる変な場面が沢山あったが、どうでも良いと思うようになった。







音楽はいろいろなところでアーノンクールでなければ聴かれない演奏があったが、それなりに意味があって演奏されたものと思われた。全体的には、昔のCD録音は音だけの世界なので、伝統に対し彼の緩急・強弱の自在さが挑戦的に聞こえていたが、ピリオド奏法に慣れた今の私の耳には、CDほど極端でなく、また始まった程度の変化として許容できる範囲、或いは音楽の流れに対しては抹消の問題のように思われた。

DVDに付属したボーナス映像では、この演出のプレミア時の聴衆の反応は、超モダンのせいかブーイングが多かったようであるが、DVDの解説書を見ると、アーノンクールとクシェイが新味を出そうとした意欲が感じられた。アーノンクールはモーツァルトのメッセージは時代を超越しており、われわれは現代の聴衆のために演奏するので、メッセージのキイを見つけなければならない。この「魔笛」のキイは「愛」だと、明快に語っていた。クシェイに対しては、彼のアプローチは、新鮮で偏見がないと互いに良く理解し合っている印象であった。

  今回のクシェイ演出の成功は回転舞台を使ったモダンな建物の部屋の自在な変化であろう。これによって岩山から豪華な部屋になったり、砂漠から宮殿の一室になったり、舞台変化が説明不要で自在に設定できたことであろうか。分からないことが多い舞台であったが、新しさ、新鮮さに溢れた舞台であった。

    出演者たちでは、久しぶりに見たザラストロのサルミネン(1945〜)が十分な貫禄を見せていたが、やや声に衰えが来ているように思われた。パミーナのクライターが、アーノンクールと一緒に来日してレクイエムを歌っていた記憶があるが、やや神経質そうなパミーナであったが、歌は立派であった。夜の女王のモスクは、CDのモーツァルト・アリア集で馴染んでいた人であるが、このHP初出でアーノンクールの音の出し方に合わせて立派にこなしていたと思う。パパゲーノ役もタミーノ役も初めてであったが、これから期待される人たちだろうと思われる。

(以上)(2012/05/23)


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