(懐かしいS-VHSを見る;コープマンの交響曲連続演奏会、第九集、最終回)
12-4-3、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲(第12番)ト長調K.110(75b)、2、ト長調(第37番)K.444(425a)、3、ニ長調(第31番)K.297(300a)「パリ」、4、ト長調(第15番)K.124、5、ニ長調(第35番)K.385「ハフナー」、 第九回連続演奏会、1991年11月16日、東京芸術劇場大ホール、日本公演、NHK、

−第一・第二ヴァイオリンが4人づつでコントラバスが一人という古楽器編成で、第九集では二管編成の最大規模の二つの交響曲を初めて聴くことが出来たが、テインパニーとトランペットの音が鋭く大きすぎ、弦楽器の薄さが非常に気になり、残念ながら豊かなゆとりのある響きが得られなかった−

(懐かしいS-VHSを見る;コープマンの交響曲連続演奏会、第九集、最終回)
12-4-3、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲(第12番)ト長調K.110(75b)、2、ト長調(第37番)K.444(425a)、3、ニ長調(第31番)K.297(300a)「パリ」、4、ト長調(第15番)K.124、5、ニ長調(第35番)K.385「ハフナー」、 第九回連続演奏会、1991年11月16日、東京芸術劇場大ホール、日本公演、NHK、
(1993年02月14日、NHKによる放送をS-VHSテープに3倍速で収録)

     4月号の第3曲目は、長く続けてきた懐かしいS-VHSを見るシリーズで、トン・コープマンの交響曲連続演奏会の第九集であるが、これでいよいよ最終回を向かえる。今回は1991年11月16日に東京芸術劇場大ホールで収録されたものであり、以下に示す5曲が並んでいた。この第九集の映像の目印は二人のファゴット奏者が、全5曲に揃って参加していたことであろうか。
(曲目)1、交響曲(第12番)ト長調K.110(75b)、2、ト長調(第37番)K.444(425a)、3、ニ長調(第31番)K.297(300a)「パリ」、4、ト長調(第15番)K.124)、5、ニ長調(第35番)K.385「ハフナー」、
      このうち2曲目の交響曲ト長調(第37番)K.444(425a)は、モーツアルトが作曲したのは第一楽章の序奏だけであり、後はミヒャエル・ハイドンが作曲したという作品である。また、1771年に作曲された第12番K.110および1772年に作曲された第15番K.124の2曲の初期のシンフォニーと、後期の有名曲、第31番K.297「パリ」交響曲および第35番K.385「ハフナー」とが組み合わされた編成となっていた。



        この日の第一曲目の交響曲(第12番)ト長調K.110(75b)は、1771年にザルツブルグで作曲された6曲のうちの1曲であり、幸いポーランドのクラフクに自筆譜が残っており真偽や成立時期についての問題は全くない曲である。第二楽章ではホルンとオーボエに変わってフルートとファゴットが用いられており、オーボエとフルートの持ち替えは当時の慣例であるが、ファゴットはどうしたのであろうか。コープマンは当初からファゴットを加えて演奏していた。
  第一楽章の第一主題は一度聞くと頭に入る伸び伸びとしたスケール感を持った勢いのあ る主題であり、絶えず3拍子の8分音符のリズムで小刻みな低減の伴奏で軽快に進行し、それが途絶えてから、オーボエの二重唱で歌謡的な第二主題が始まる。しかし、良く聞くと同じモチーブの旋律であり、趣を変えてから再び8分音符のリズムになり、コーダを経て提示部が完了していた。コープマンはこの軽快な提示部を颯爽と繰り返し、わずか20小節余りの短い弦楽器だけの新しい主題の展開部で安らぎを得てから、再現部へと突入し、冒頭の威勢の良い主題が再現されていた。この楽章の雰囲気はオペラのシンフォニアのようなムードを持ち、モーツァルトらしい爽やかなアレグロであった。



      第二楽章は、歌謡的な楽想による穏やかなソナタ形式のアンダンテ楽章。歌うように第一主題と第二主題とが続いていたが、後半にフルートとファゴットが突然にメロデイを出して驚かせていた。提示部を繰り返した後に8小節の短い展開部が入ってから、再現部となり、再び穏やかな楽想が続いてゆっくりと終結していた。
            第三楽章はメヌエット楽章であるが、メヌエットにしては珍しく各楽器が独立した声部を受け持ち、部分的にフレーズを一歩ずらして模倣する対位法的な進行がなされて、多声的にまとめられていた。弦楽器だけのおとなしいトリオが繰り返されてから、曲は始めのメヌエットに戻っていたが、弦楽器によるカノン風のメヌエットが珍しく、時にはオーボエやホルンの相槌が入って楽しいメヌエットになっていた。
        フィナーレはアレグロでロンド風の終曲であった。始めにガヴォット風のリズムを持つ活発なロンド主題が飛び出して丁寧に繰り返されてから、明るい副主題が示されてロンド主題で結ばれ、続いてスラーの第二エピソード、さらにスタッカートの第三のエピソードが示されそれぞれ繰り返されてから、最後にロンド主題が現れ、展開されてから全体が結ばれていた。快活なシンフォニーのフィナーレに相応しい生き生きとした楽章であった。



    このコンサートの二曲目は、交響曲ト長調(第37番)K.444(425a)とされているが、これはケッヒェルの第一版時の名称である。1907年に序奏のみがモーツァルトの作品で、交響曲本体はミヒャエル・ハイドンの作品であることが判明した。また、タイソンの研究によると、序奏が作曲されたのは1783年リンツではなく、用紙研究から1984年2月から4月にかけて使用された用紙に書かれているという。この時期にモーツァルトは交響曲を多数必要としており、この曲以外にもミヒャエル・ハイドンの交響曲が用いられたようである。

     序奏の長さは20小節とされているが、残念ながら新全集には含まれていない。序奏はユニゾンの和音が大きく跳躍しながら荘厳に始まり、繰り返されてからゆっくりと厚みのある音を響かせながら進行し、直ぐに速いテンポのアレグロ楽章に移行していた。第一主題が颯爽と進行してから、穏やかな第二主題に入りオーボエが主題を引き継いで華やかに進行し、力強く提示部の盛り上がりをみせていた。展開部では新しい主題で変化を見せてから再現部に移行していたが、モーツァルトとは少し違う音作りの楽章であった。
     第二楽章は物静かなアンダンテ楽章で、弦楽合奏で主題提示の後、独奏フルートが活躍してから、続いて二つのファゴットが主題を引き継いでいた。再び最初に戻って弦楽合奏の後、今度は一本のオーボエが協奏曲のように歌い出し、結びは全奏で静かに終結していた。モーツァルトにはない楽想のように聞こえた。フィナーレは速いテンポのロンド楽章か。ホルンを伴奏にした速いテンポの踊るような主題が活躍し、次から次へと早い主題が引き継いで進行し、何回か盛り上がりを見せてから一気に収束していた。
     譜面もなく、ホグウッド全集で聴いてはいたが印象には残っていなかった。映像では初めて聴いた曲であり、序奏部も「リンツ」「プラーハ」「第39番」と連続して作られた重厚な序奏のような堂々とした覇気や貫禄が見当たらず、余り印象に残らない序奏部であり、残念であった。小規模な古楽器演奏にも原因があるかもしれない。

     このコンサートの第三曲目は、ニ長調のパリ交響曲K.297(300a)、モーツァルトの父親宛の手紙の中で、この曲が聴衆にうけた喜びの声が生き生きと伝わってくる話が残されている。この曲の特徴は、かなりの規模を持つ3楽章制であること、反復記号を持たない充実したソナタ形式であること、クラリネットを加えた完全な二管編成を採用していることが挙げられ、パリの大規模なオーケストラを対象にして充実した交響曲を作曲しようとしたモーツァルトの意気込みが感ぜられる曲である。



      第一楽章は反復記号がないソナタ形式。全楽器のフォルテのユニゾンでニの音を続ける壮大な動機で開始される。続いてヴァイオリンだけの弱音で対照的なフレーズが飛び出しこれが第一主題を作って繰り返され、軽快なテンポで推移部に入っていくが、ここでも魅力的な動機が次々に現れて気分を盛り上げていた。やがてニ音の冒頭動機に続いて弦楽器による軽快なパッセージの第二主題が始まり、クラリネットとファゴットが重奏でこれに答えてから、バスのピッチカートを背景に弦楽器が実に軽快で美しいパッセージを繰り返して行き、軽快なテンポでフルオーケストラになって盛り上がり一気に提示部を終結していた。この第二主題の後半のピッチカートの軽快な部分が、モーツアルトが「最初のアレグロの中ほどで客に気に入るに違いないパッセージを用意した」と手紙に書いている部分であろうか。
      展開部ではここでもニ音の冒頭動機が繰り返されて始まるが、直ぐに趣を変えヴァイオリンによる楽しげな動機が飛び出し、カノン風に美しく軽快に進むが、曲の途中で大拍手をうけたのはこの部分だろうかと思わせる部分もあった。やがて再現部に入り、冒頭の第一主題が現れ、力強く軽快に歯切れ良く進んでから続いて第二主題が繰り返され、あの美しいピッチカート部分も再現されて、一気に盛り上がりを見せていた。久しぶりで聴いた元気のある力強い交響曲であった。



        第二楽章は、6/8拍子の初演版で演奏されていたが、このアンダンテの第一主題は実に情緒豊かな旋律で、弦楽器の美しい流れの中でフルートやオーボエやホルンなどにも出番があった。続く第二主題も荘重な弦楽合奏の後にフルートやオーボエの優美な応答があり、洗練された豊かなアンダンテであった。展開部はなく、再現部で再び第一主題、第二主題と型通りに進む第二楽章であった。モーツアルトの手紙には、ル・グロに気に入られず、初演後3/4拍子の新たなアンダンテを創作している。
         フィナーレでは、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンとの完全な弱音でデリケートな二重奏で開始され、八小節後に全オーケストラによる開放的なフォルテのユニゾンで爆発し、軽快なアレグロで進行する。モーツアルトの手紙では、客はフィナーレでも、最初の8小節のみはピアノで書いて客をびっくりさせようとしたが、それが大当たりで、フォルテの部分では拍手が沸いたと報じていた。コープマンは、このモーツアルトの意図する効果を確かめるように、強弱を対比させながら速いテンポでこの楽章を進めて、一気に盛り上がりを見せて収束させていた。この演奏のフィナーレは、最初のピアノとその後のフォルテを対比して強調した古楽器風な新しい演奏であろうと思われる。





  このコンサートの第四曲目は、交響曲ト長調(第15番)K.124)であり、再び弦楽器とオーボエ、ファゴット、ホルンの小規模な編成に戻っていた。1772年2回目のイタリア旅行からザルツブルグに戻ってきて、三度目のイタリア旅行に出かける間に書かれた8曲のシンフォニーの最初の曲と考えられており、4楽章構成である。
   第一楽章は強奏するユニゾンで開始される三拍子の颯爽としたアレグロ主題の後に、スタッカートの第二主題がオーボエと弦の対話で現れて、勢いよく盛り上がって提示部を終えていた。コープマンは提示部を繰り返していたが、繰り返しではオーボエは自由に装飾されていた。第一主題を変奏したような40小節近い長い展開部の後、再現部は型通りに再現されて収束していたが、切れの良いアレグロ楽章であった。

 第二楽章は、弦楽器のみでためらうように第一主題が現れるアンダンテ楽章であるが、続く第二主題はオーボエと弦楽器が交互にフレーズを歌って変化を見せながら進行し提示部を終えていた。展開部は省略され、第一主題がそのまま再現されて変奏が加えられてから優しく第二主題が再現されて、穏やかに終結していた。
メヌエット楽章は第一楽章に似た元気良く力強い主題でリズムを刻んでいたが、トリオでは弦楽器のみとなり、対照的に長いフレーズのレガートな主題となっていた。フィナーレは小走りするような元気の良いロンド主題が飛び出して繰り返され、ABACAと二つのエピソードを挟んで威勢良く進行するプレストであった。
パリ交響曲を聴いた後にこの初期のシンフォニーを聴くと、非常にシンプルに聞こえるが、コープマンは少しも手を抜かずに、終始、活力あるピリオド演奏に徹しているように見え、好みはあろうが、とても好感が持てた。





           このコンサートのフィナーレは、交響曲ニ長調(第35番)K.385「ハフナー」であり、「パリ」交響曲と同様に最大編成のクラリネットを含む二管編成で演奏されていた。この曲はザルツブルグからの要請で当初セレナーデとして作曲された後、ウイーンに送り返してもらって、交響曲として新たに改作されたもので、その際にフルートとクラリネットが加えられたているが、第二楽章のように当初のままの編成もある。


           第一楽章は繰り返し記号のないソナタ形式で、冒頭の第一主題は、ユニゾンで鋭くアクセントづけられた二オクターブの跳躍する部分と行進曲調のリズムからなる部分で出来ており、実に華やかに力強いファンファーレで始まり、その勢いで行進曲調に軽快に進むアレグロ・コン・スピリットで進行する。続いて冒頭部分の跳躍が繰り返されるが、行進曲のリズムに乗って第一主題が変化に富んだ姿を見せて、その対旋律が次から次へと調子よく現れ、特にヴァイオリン二部がカノン風に絡み合って進行したりしていたが、明快な第二主題の形が現れないままに激しく上昇と下降を繰り返しながら、勢いよく盛り上がり提示部を終了していた。
          展開部では短調のイメージになり冒頭主題がカノン風に展開され最後にヴァイオリン二部が互いに模倣しながら次第に下降していくと突然に再現部となり、あの冒頭主題が立ち上がっていた。これはモーツァルトが交響曲で初めて見せた激しい充実したオーケストレーションではなかろうか。コープマンは全力で全体を鼓舞するように指揮をしていたが、コントラバス1本の小規模なオーケストラでは力強さに限度が見られたが、古楽器なりに強弱、緩急の変化は見事なものがあった。





   第二楽章は繰り返し記号のあるソナタ形式で、恐らく当初のセレナードのままのフルート、クラリネット、テインパニ、トランペットを欠いた編成であった。第二ヴァイオリンがスタッカートで刻む16部音符の分散和音を伴奏に、第一ヴァイオリンが、非常にゆっくりしたテンポで優美に進める第一主題が美しく、続いてオーボエやファゴットとの対話も実に和やかであった。第一ヴァイオリンがチッチッチとさざめくような第二主題もゆっくりと進み、穏やかなアンダンテを醸し出す。コープマンはこの提示部を指示通りに繰り返していたが、繰り返しではヴァイオリンも木管も自由度に溢れていた。短い展開部では雰囲気を変えぬように弦楽器と管楽器の推移的な合奏に続いて、再現部は再び優雅な第一ヴァイオリンの旋律が続き、ウイーン風の明るく優美なアンダンテ楽章であった。
      第三楽章はフルオーケストラの堂々たる力強いメヌエットであり、テインパニーやトランペットが加わって、ぶ厚い厚みのある音で堂々と行進するように進行していた。コープマンはテンポを早く取っており、勢いのある上昇する分散和音と下降する逆付点のリズムが組み合わさって豊かな響きを見せるメヌエットであった。トリオでは弦楽器の優雅な合奏にオーボエやファゴットが加わって滑らかに優雅に進行し、対照的な響きを見せていた。耳当たりの良い壮麗で堂々とした存在感のある素晴らしいメヌエットであった。





         フィナーレのロンド主題は、「後宮」の第19番のオスミンの「勝どきのアリア」に似た弦のユニゾンで始まるプレストで、小気味よいテンポで急速に進行してから、激しくフルオーケストラの和音が展開されていく。この嵐のような激しさと力強さとを持った急速な展開は、後期のシンフォニーのフィナーレの特徴であり、コープマンも柔軟に対応しており、交響曲としての充実ぶりを十分に見せつけた響きであった。副主題も軽快に推移する似たような忙しい主題であって、颯爽と進行してABABACAの形で進み、最後の副主題Cも前の副主題Bの展開されたようなもので勢いよく再び冒頭のロンド主題に駆け戻り、力強いコーダで結ばれていた。

 

          素晴らしい歓声と拍手が続き、コープマンは熱狂した観客に対し、まず後ろ側の管楽器群を起立させて拍手を受けてから正面に戻り、弦楽器群も起立させてオーケストラ全体で拍手を受け、コンサートマスターと何回も握手を繰り返す子供のような仕草で観衆に答えていた。
これが最終の第九回目のコンサートで全曲の演奏が終了したことになるが、誠に残念ながら、第4集と第5集の公演が録画漏れになり10曲程度がこのコープマンの全集から欠けることとなった。しかし、後日の断片的な再放送の収録により、交響曲の第40番ト短調K.550と第41番ハ長調K.551「ジュピター」については、別途HV収録で6-6-3として収録されており、また、交響曲第25番ト短調と第7番ト長調K.45についても、別途HV収録で8-12-1として収録されていた。さらに、交響曲第23番ニ長調K.181については、ザルツブルグのモーツアルテウム管弦楽団を用いたモーツァルト週間の録画が収録されており、3-9-1として全集とは無関係にアップロードされていた。以上で2011年10月より半年以上にわたって続けたコープマンの交響曲全集のアップを完了する。

(以上)(2012/05/17)


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