(最新入手のDVD;アーノンクールとウイーンフイルの「後宮」(1989))
12-4-2、ニコラウス・アーノンクール指揮、ヘルマン夫妻演出による歌劇「後宮からの逃走」K.384、1989年、ウイーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団、アン・デア・ウイーン劇場、

−チューリヒ歌劇場でのアーノンクールのCD録音後、4年後のDVDであり、その先鋭さがいささか心配であったが、ウイーン歌劇場管弦楽団と合唱団を振っていることとライブ進行のせいか、彼の基本的なスタンスはほぼ同じであろうが、余り極端に走らずに、一般受けするような映像であった。コンスタンツエのウインスカとオスミンの元気の良さが目に付き、トルコ風に徹した衣裳などが美しく、水準以上の映像であると思われた−

(最新入手のDVD;アーノンクールとウイーンフイルの「後宮」(1989))
12-4-2、ニコラウス・アーノンクール指揮、ヘルマン夫妻演出による歌劇「後宮からの逃走」K.384、1989年、ウイーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団、アン・デア・ウイーン劇場、
(配役)ベルモンテ;Kurt Streit、ペドリオ;Wilfried Gahmlich、コンスタンツエ;Aga Winska、ブロンテ;Elzbieta Szmytka、オスミン;Artur Kohn、太守セリム;Hilmar Thate、
(2011年11月24日;新宿タワーレコードにてDVD購入 Unitel Classica 00440 073 4540)

      ごく最近になってアーノンクールによる輸入盤の「後宮」のDVDを偶然に入手することができた。彼のチューリッヒ歌劇場のあの衝撃のCDで、私は個人的には大きなショックを受けた記憶があるが、今回新たに入手したDVDは、それよりわずか5年後の1989年にウイーン国立歌劇場管弦楽団と合唱団を指揮してアン・デア・ウイーン劇場で収録されたもので、古いテープで残されたものを最近DVD化したものであろう。今回は当初のCDを聞き直した上で、彼の強烈な個性を改めて再確認したいと考えていた。



       アン・デア・ウイーン劇場の装飾の多い舞台が写されて、登場人物たちの名前が紹介されていたが、拍手とともにアーノンクールが颯爽と登場し、序曲が始まった。特に低い音の太鼓と鋭いピッコロの音が目立ち速いテンポで序曲が始まっていたが、途中で幕が上がり、オーケストラピットから一人のメガネの男が舞台に這い上がって、地図で確かめていた。序曲がアンダンテに入ると、男は靴を脱ぎ溜まった砂を捨てていた。砂漠を長く歩いてきたらしい。舞台は頑丈な扉を持った高い塀が邪魔をしており、再び曲がアレグロになると男は、様子を探っていたが、頑丈な戸締まりに途方が暮れたよう。やがて第一曲の序奏が聞こえてくると男は座り込み、「コンスタンツエ」と大声で呼びかけて、「ここでやっとあなたに会えるのか」と祈るように歌っていた。



          どうやって入ったら良いのかと呟いていると、高い塀の上のイチジクの木から男が現れて「かわいい娘だったら沢山キスしてやろう」と機嫌良くラララと歌いながら出てきた。ベルモンテが突然に「ここはセリムの屋敷か」と大声で質問をすると、無礼だとばかりに腹を立てたか、オスミンは返事もせずにラララと歌って無視していた。そして降りてきたオスミンと怒ったベルモンテが二重唱で次第にケンカとなり、やがてペドリオのことを聞くとオスミンも本気で激しく怒りだした。そしてペドリオを巡って激しいケンカの二重唱となり、オスミンは尋ねてきたベルモンテを追い返してしまった。二人ともやや一本調子で笑いのない生真面目な始まりになっていた。




          続いてごつい男風のペドリオが塀の上から顔を出すと、オスミンは「お前のようなニヤケ男は大嫌いだ」と歌い出し、ペドリオを手荒く扱いながら「女たらしには騙されないぞ」と歌っていた。門から姿を現したトルコスタイルの娘を相手に歌われる新演出だった。やがて、最後にはテンポを変えて「まずは首切り、首吊り、串刺しだ」などと喚いて毒ついていた。オスミンが立ち去りペドリオがぼやいていると、そこへベルモンテが現れて声を掛けた。二人は劇的に再会し、抱き合って喜んでいた。別れた3人は無事であり、セリム大守に奴隷として引き取られ元気であると話す。コンスタンツエが太守のお気に入りと聞いて顔色を変えたが、コンスタンツエの名が出ると、ベルモンテは「何と厚く胸が高鳴るのだろう」と歌い出し、オーケストラのスタッカートが胸の高鳴りを示すように伴奏して「僕の心は愛にときめいている」と不安げに高まる気持ちを歌っていた。



  ペドリオが太守の帰還だと告げると、門が開かれ、門の内外や塀の上から人々が顔を出し、行進曲が始まったが、その前の行進曲5aは省略されていた。5bの前奏が速いテンポで鋭くトルコ風に始まり、近衛兵の合唱が直ぐに続いて、セリム一行は到着し、セリムはカゴから降りた。四重唱から再び合唱が歌われて一行が邸内に到着すると、トルコ人の小姓に人払いを命じ、門の前でセリムとコンスタンツエの話が始まった。



セリムはコンスタンツエに「そんなに何故悲しむのか。お前が心を開くのを待ち構えている」と口説いていた。
          トルコ風の衣裳を着せられて悲嘆に暮れるコンスタンツエが、セリムに答えるように始めはアダージョで「私は恋をして幸せだった」と歌っていたが、すぐにアレグロに入って「それは束の間の幸せだった」と歌い、後半にはコロラチュアを交えて歌う嘆きのアリアで大拍手を浴びていた。

         コンスタンツエを見守っていた太守が「明日は良い返事を、これが最後だぞ」と厳しく言って「あの姿や態度が、私の心を惹き付けるのだ」とぼやいていた。そこへペドリオとベルモンテが登場し、ベルモンテがイタリアの建築家として紹介され、太守に後宮への出入りを許された。二人は飛び上がって大喜びしていたが、門から入ろうとするとオスミンが待ち伏せしており、「怪しい外国人は駄目だ」と納得せず口論になっていた。そこで三人による面白い三重唱が始まり、オーケストラ伴奏がきびきびして心地よく、二人に一人の対決でノロマのオスミンが二人にかわされて、宮殿への侵入を許してしまい、幕となっていたが舞台はそのまま続いていた。



 幕が開くと、ここは初めての宮殿の中。舞台の左手には出入りする階段があり、中央は渦巻き状の壁に囲われて奥に一室あり、中央と右手からも出入りが可能となっていた。中央の壁にもたれて居眠りをしていたブロンテに、オスミンがキスをしようと近づくと、ピシャリとブロンテにたしなめられ、言い争いの後でリート「すみれ」に似た歯切れの良い美しいアリアを歌い出した。「優しさとお世辞があれば」と伸びのある声でコケットリーなアリアとなっていた。そして「大声と命令は駄目だ」とブロンテが歌ってから、オスミンが「ここはトルコで、お前は奴隷だ」と言いだした。「ペドリオを諦めろ」と命令するが、自由を主張して拒絶するブロンテとの長い口論の末に、激しいケンカの二重唱になった。しかし、惚れたオスミンは弱く、最後には「悪魔だ」と言わせるほど鋭い小柄な可愛いいブロンテとの二人の二重唱は面白く見応えがあり、オスミンはすごすごと退場していた。



 そこへセリムの小姓がベッドメーキングしコンスタンツエを連れてきた。一人になった彼女は悲しげな弦の前奏に続いて「ここへ来て、私の心はすっかり変わってしまった」とレチタティーヴォを歌ってから「哀しみが私の運命になった」とアリアを歌い出した。アーノンクールは実にゆっくりとしたテンポで進めており、彼女は心からの悲しみと苦悩を歌い上げていた。
 セリムがそこへ登場し、沈んでいるコンスタンツエに近づき、ナイフを床に置き、「今日こそ私を愛さねばならない」と口説きだし、抱きしめようとしたが、彼女は必死ではね付け、「尊敬出来ても、愛することは出来ない」と答え、「さもなければ死を」と抵抗していた。セリムは遂に腹を立て、立ち去りながら荒々しい声で「死ではない。拷問だ。」と叫んだ。



  するとオーケストラの華麗な前奏が始まり、フルート、オーボエ、ヴァイオリン、チェロの四重奏のオブリガートにしては長い前奏に続いて、コンスタンツエは「ありとあらゆる責め苦があろうとも」と激しく抵抗するアリアが始まった。アーノンクールはこのオーケストラ伴奏を意識的に工夫しなが伴奏しており、特に四重奏で3度出てくるアド・リビトウム(随意に)の部分を、CDと同様に実にゆっくりと歌って驚かせた。また、ここではウインスカの声量があり伸びのある声に見事なコロラチュアが重なり、死をも辞さぬ勢いでドラマテイックに歌っており、大変な拍手を浴びていた。思い切って振られたセリムは、布団の上に倒れ込み、彼女はどうしてこんなに勇気があるのか、激しく抵抗するのか、何か策略はないかと深く自答しながら立ち去っていた。



   ブロンテがいつの間にか登場し、余りにも一途なコンスタンツエを心配していると、ペドリオが現れてブロンテに声を掛け、「ベルモンテが来た」と告げた。彼女は躍り上がって喜び、「直ぐにコンスタンツエに伝えよう」とフルート協奏曲K.314のフィナーレのロンド主題に似た軽快なアリアを歌い出した。でも彼女は「オスミンをどうするの」と尋ねるので、ペドリオは眠り薬の小瓶を見せて、ブロンテを安心させて、「夜の12時にハシゴを持って迎えに来る」と約束をしていた。逃げる決心をしたペドリオが、「やるなら今だ」と言いながら、大小の酒瓶を持ち出して、「いざ戦いだ」と歌いながら、そして震える手で「怖くないぞ」と自分を励ましながら、ワインの大瓶に眠り薬を注いで準備していた。
          そこへ騒がしいぞとオスミンが様子を見に来て、ペドリオがご機嫌で酒を飲んでいるのを発見した。ペドリオの勧めに乗って、いつの間にかオスミンは大きなキプロス・ワインを見つけ、マホメットさまも休んでいると誘われて、その気でバッカス万歳のアリアに発展していた。そしてオスミンが酔っぱらって仕舞う楽しい二重唱になっていた。十分に酔っ払ってしまった重いオスミンを壁の裏側に突き落として見えなくし、ペドリオが退場したので、客席から大笑いの拍手を浴びていた。



           ベルモンテが現れてアイネクライネの第二楽章の冒頭に似た前奏が始まって、コンスタンツエにやっと会える喜びを歌い出した。「再会の喜びに涙が溢れる」と歌い「別れがどんなにつらいものか」としみじみ歌っていると、勢いのある前奏とともにコンスタンツエが姿を現し「ああベルモンテ、私の命」と駆け寄ってきて、二人は抱き合って喜びを噛みしめながら、フィナーレの再会の四重唱を歌い始めていた。
          そこへブロンテとペドリオも駆けつけて来て四人の再会の喜びの四重唱が続いていた。4人の歌や表情や衣裳が良く、アレグロの歓喜あふれる劇的な四重唱が続いていたが、中間部でテンポがアンダンテに変わり、男二人の女たちの貞操を疑う歌と女二人のためらいの歌が続いてた。しかし、ブロンテがペドリオに激しい平手打ちを食わせると、アレグロ・アッサイになり、男二人は納得してこの話はお終いになり、全ての疑いが晴れた。やがてアンダンテイーノになり男二人の平謝りの四重唱に変わってから、最後に再びアレグロの明るい再会の喜びが歌われ、全員による「愛の万歳」となって第二幕が終了していた。ライブでも休憩となり、DVDも第一面はこれで終了していた。



          第三幕はベルモンテが大きなハシゴを抱えて登場し、待っていたペドリオと一緒に運んで、大きな音を立てて大笑い。二階にハシゴをかけて一息ついたところで、木管の美しいオブリガートが始まって、脱出をもくろむベルモンテが二階の様子を探りながら「私は愛の強さを信じている」と歌い出し、コンスタンツエへの愛を誓い、愛こそこの危険を救ってくれると願うように歌っていた。このアリアは、長大な技巧的なアリアでコロラチューラの技巧を要求しており、ベルモンテは木管のオブリガートを奏でるオーケストラを相手にしっかりと歌っていた。凄い拍手に続いてペドリオのギター伴奏のセレナーデが続き、この歌は短いくせに4番まであり、見ている方は速く逃げなくてはとイライラしていた。



          長いハシゴから、始めにコンスタンツエが降りてきて一組は逃げ出したが、案の定、ブロンテのところにハシゴを架けたところで、セリムの小姓が一大事とばかりに床に寝ていたオスミンをたたき起こしてしまった。ブロンテとペドリオが逃げ出したところで、目を覚ましたオスミンに見つかってしまい、大声を上げられてさあ大変。結局は衛兵どもに囲まれて四人とも掴まってしまい、オスミンの前に引き出されてしまった。勝ち誇ったように吠えるオスミンのアリアでは、「俺はこうなる時を待っていた」と喜びの余り十分な低音を響かせて歌われ、凄い拍手を浴びていた。オスミンが歌っている間に小姓がセリムを呼びに行った。



          オスミンの満足げな高笑いを聞きながら、セリムが「この騒ぎは何だ」と怒りながら顔を出した。セリムは捉えられた4人を一瞥し、コンスタンツエを憎々しげに見つめていた。彼女が「私の愛する人です。彼の命だけは助けて」というと怒りだした。ベルモンテが「裕福な貴族です。金を請求してくれ」と言ううちに、彼の父がセリムの仇敵ロスタードスであることが分かって、セリムは気違いのように笑い出した。「憎き敵の息子を捕らえることが出来た」と大喜びし、「あの男がしたようにしてやる」とののしりながらオスミンを連れて立ち去った。



           何という運命か。残されたコンスタンツエとベルモンテは、絶体絶命の死を覚悟したレチタティーヴォに始まり、「僕のために君は死ぬ」と二人の二重唱が、絶望的な表情の弦の前奏で始まり、続いて「私のためにあなたが死んでいく」と二人がかばい合う二重唱は感動的で「天使のような心だ」と歌わせて最高の場面を作っていたが、逮捕されていたのに二人は手だけ縛られて、自由な姿で歌っていた。



        再び現れたセリムは、死の覚悟を決めた二人に対し、厳しい表情で罪を申し渡すかと思ったら、「二人で自由に帰れ」とあっさり告げた。セリムの全く思いがけぬ意外な寛大な赦しに全員が驚いた。セリムは「帰って父親に良く伝えるのだ。お前はわしの懐の中にいた」と言い、「しかし、悪徳を悪徳をもって償うよりも、善行によって報いる方が、わしにとって遙かに大きな満足だとな」。ペドリオがたまりかねて「私たち二人も許して下さい」と大声を上げるとセリムはブロンテとペドリオの二人も許された。そして、四人は深く感動し、明るい表情で感謝の気持ちをヴォードヴィールで、ベルモンテ、コンスタツエ、ペドリオの順に、一人づつ丁寧に歌っていた。



        最後にブロンテが歌って一言オスミンに別れを告げると、我慢をしていたオスミンが遂に爆発し、これまで何回も口癖のように歌っていた「お前らは、首切りに、首吊りに、串刺しだ」と大声を上げ、セリムに「心を尽くしても応えぬものは、追い返すしかない」とたしなめられていた。この場面は、歌わない主役セリムのセリフが多く、存在感が全体を支配していた。最後にトルコ風の伴奏により衛兵や侍女たちの大合唱があって、セリムの穏やかな表情のクローズアップが続き、「太守に栄光あれ」の合唱で終幕となっていた。




          全体を通じてアーノンクールとウイーンフイルによるオーケストラの音が序曲から生き生きとして聞こえ、第5曲の合唱の小太鼓の耳慣れない音でトルコ風が強調されたり、第11曲のコンスタンツエのアリアや第17曲のベルモンテのアリアの前では、木管のオブリガートが彼特有のテンポで前奏されていた。最後の合唱でもピリオド風のトルコ音楽の響きが耳につき、このオペラは最初から最後までアーノンクールの勢いのある生きの良い指揮が一貫して響いていた。しかも演出は、ヘルマン夫妻の簡潔にして直線を多用したモダンな設定であり、トルコ風に徹した衣裳も美しかった。トルコ衣裳の小姓や召使いに小道具を運ばせたり、進行役をさせていたのが目に付いた。映像は概して暗い画面が多く、ハイビジョンカメラではない古いものなので、折角の美しい舞台が、上手く写真で撮られているかどうかが心配であった。




          このオペラはアリアの省略があったり、リブレットが原作より大幅にカットされるのが通常であるが、省略は5aの行進曲1曲のみで、セリフは特にセリムの語りなど、通常よりも多く感じたが、日本語字幕がないことが残念であった。笑いの少ない生真面目な舞台のように思ったが、これはベルモンテとコンスタンツエの両演技者の性格的な問題であろうと思われた。音楽は良いが、舞台がもっと明るく楽しい「後宮」であって欲しかったが、ふざけすぎる演出よりも良いと思われた。

           歌手たちが良くクローズアップされ、歌も演技もまずまずで、欠点の少ない映像でもあり、全体としては矢張り優れたものと言えよう。コンスタンツエのウインスカは3つのアリアを無難に歌い、コロラチューラの部分は堂々と立派にこなしていた。ベルモンテのストレイトは声は良いが地味な感じで損をしているタイプ。反面、オスミンは体格も風貌も役柄に向いており、笑いの場面を一手に引き受けていた。ペドリオのガームリッヒは、アーノンクールのCDでも歌っていた唯一の人で、歌が上手であるばかりかむしろ演技派にも見えた器用な人。ブロンテ役は声が良く伸び元気が良くて、なかなかの好演だった。太守セリムは難しい役であるが、大声を出したり感情的になったりして、幕切れで威厳ある高尚な決断をする落ち着いた人物には見えず、物足りない気がした。

最後にアーノンクールのCDを初めて聞いたときに大きな衝撃を受けた記憶があるので、このDVDを見てから改めてこのCDを聞き直して見た。彼のチューリヒ歌劇場との古い録音では、テンポの極端に早い部分と遅い部分が目立つこと、強弱の極端な変化があり、この曲ではトルコ風の楽器の強調が目立っていた。また11曲のコンスタンツエのアリアの様に、アド・リビトウム(随意に)の部分を、独自に変化をつけるなど、「イドメネオ」「後宮」「魔笛」と続いた彼の録音は、ピリオド奏法を武器にして、伝統的な演奏に対して挑戦するような先鋭的な音楽に聞こえて衝撃を受けたものであった。4年後の今回の演奏では、彼はウイーンの伝統的な世界に迎えられており、ウイーンフイルとウイーン歌劇場合唱団を振っているので、大きな環境の変化があるが、 彼の基本的なスタンスはほぼ同じであろうと思われる。それは、CDほど極端ではないが、DVDでも同じような響きが感じられており、オーケストラの違いやライブでの演奏により、よりまろやかになり一般受けするような変化が見られている。
         一般に、スタジオ録音のCDとライブ収録のDVDとは、オーケストラや歌手陣などによっていろいろ変化するものであるが、やはり指揮者のスタンスが変わるように思われる。CDでは音だけの世界であるから、研ぎ澄まされたような緊密な音の世界を追求するように思われる。しかし、ライブの場合には、一曲一曲進行するので、その間に一呼吸置いたり、拍手に邪魔されたり、歌手に合わせたりして、その間に緊密度が緩むようであり、アーノンクールの場合もそのような感じがした。

          参考のため、CDとDVDとの出演者その他のデータの比較を行ってみたが、出演者ではペドリオだけが共通であった。CDを改めて聞き直して、CDの歌手陣は実に伸び伸びと歌っているように感じた。


表−1、CDとDVDとの比較
CD(1985/2〜3月) DVD(1989/5月)
歌劇場 Zurich OP HauseTheater an der Wien
OPO&CHO Zurich OPO&CHOWiener StaatsOPO&CHO
ConducterN.Harnonkourt N.Harnonkourt
Stage Ursel&Karl Herrmann
Selim Wolfgang Reichmann Hilmar Thate
Belmonte Peter Schreier Kurt Streit
Konstanze Yvonne Kenny Aga Winska
Blonte Lillian Watson Elzbieta Szmytka
Pedrillo Wilfried Gamlich Wilfried Gamlich
Osmin Matti Salminen Artur Korn


(以上)(2012/04/24)


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