懐かしいレーザーデイスクによるオペラ、エストマンの「偽りの女庭師」K.196)
12-3-4、アーノルド・エストマン指揮、イエーラン・イエルヴェフェルト演出によるドロットニングホルム宮廷劇場によるオペラ「偽の女庭師」K.196、1988年、スエーデン、

−これまで何回も見てきたこのエストマンの映像を、今回は他と比較する形で入念に見てきたが、終わりには三組のカップルが盛大に祝福されており、これまでの記憶以上に、第一・二幕で、ツアグロゼクの映像と同様に、単純化するためにかなり大胆にアリアをカットした映像であった。そのためか喜劇としての分かりやすさを前面に出した活気のある舞台が続いていたし、音楽的にも古楽器の良さを生かした優れたものであったが、エストマン特有の曲によっては極端にテンポが早すぎる部分が残念であった。この歌劇場も10年来オペラを続けており、優れた歌手たちが育ってきたと評価しておきたい−

(懐かしいレーザーデイスクによるオペラ、エストマンの「偽りの女庭師」K.196)
12-3-4、アーノルド・エストマン指揮、イエーラン・イエルヴェフェルト演出によるドロットニングホルム宮廷劇場によるオペラ「偽の女庭師」K.196、1988年、スエーデン、
(配役)市長ドン・キアーゼ;スチュアート・ケイル、ヴィオランテ(サンドリーナ);ブリット=マリー・アルーン、ベルフィオーレ伯爵;リチャード・クロフト、アルミンダ;エヴァ・ピラット、騎士ラミーロ;アンニカ・スコグルンド、セルペッタ;アン・クリステイーネ・ビール、ナルド(ロベルト);ペッテリー・サロマー、
(1991年2月10日、PHILIPS 日本フォノグラム PHLP-10016〜7)

12-3-3で紹介したツアグロゼク指揮ジョルドイユ演出の「偽の女庭師」が、アリアの省略や入れ替えが多く、日本語字幕がなかったので、それらを確認するために、日本語字幕のあるレーザーデイスクの古いエストマンの映像と、急遽、見較べることになった。エストマンはCDで、全曲盤を録音したりして、リブレットに忠実な演奏をすると思い込んでいたが、実際にこのオペラを見てみると、ここでは思い切った喜劇的な舞台に作られており、矢張り不要で冗長なアリアはここでも、かなり大幅に削除されていた。
これまでこのオペラは、このエストマンのものを含めて6種類見てきたことになるが、省略がないのはカンブルラン盤だけであり、アーノンクール盤も2曲の省略があったほか、その他の4種類はそれぞれ7〜9曲未満の省略が記録されている。このオペラのアップロードは、このエストマンの映像で完結するので、6種類のオペラを総括する際に、どの曲が省略され易いかを十分に検討したいと思っている。



この木造の劇場は、各幕で開始の合図を大きな木槌の音で行うが、けたたましい合図の音とともにエストマンが入場し、序曲が直ちに始まっていたが、そのテンポが速いこと。軽快に飛ぶように進むが、古楽器の弦が心地よく響いていた。アンダンテではゆっくり進み一安心しているうちに、幕が開いて軽快な序章の音楽に合わせて大勢の人たちが踊っており、「今日は何と楽しい日」と合唱で明るく歌っていた。



           途中からソロになり、それぞれがソロで恋の悩みを紹介する。ラミーロは市長の姪のアルミンダが好きだがこれは片思いのよう。市長は女庭師のサンドリーナに恋をしており、サンドリーナは愛するベルフィオーレ伯爵を探すため身を隠しているが、市長に言い寄られて困っていた。彼女の従者のナルドはセルペッタが好きだがこれはどうやら片思い、セルペッタは市長の愛人で彼に夢中であり、彼のサンドリーナへの浮気に嫉妬していた。これらの登場人物たちの合唱が繰り返され、歌と踊りに忙しかったが、この広いお屋敷の主の市長がこの劇の主人公。恋に忙しいばかりでなく、タクトを握って従業員の指揮と音楽の指揮のため動き回っていた。



     この日は長官の姪アルミンダとベルフィオーレ伯爵とが長官邸で結婚式を挙げる日で、めでたい嬉しい日であったが、第ニ曲の騎士ラミーロのアリアはカットされ、第二幕の方に移されており、市長がサンドリーナと二人になり、早速、口説こうとした。セルペッタが邪魔ををしてうるさいが、市長はアレグロ・マエストーソの長い序奏を伴うアリアで堂々と愛の喜びをフルートとオーボエにたとえて歌っていた。続くプレストでは、オーケストラの編成が変わり、愛の苦しみをヴィオラや太鼓やテインパニーにたとえて歌い、面白いコンチェルタントなアリアになっていた。この曲のオブリガートは前代未聞の面白さで、若きモーツァルトの自慢の曲であったろう。一方、舞台では第四曲のサンドリーナのアリアと続く第5曲のナルドのアリアは、省略されていた。



              場面が変わって応接間、アルミンダが貴族のスタイルで現れ、市長が伯爵の到着が遅いと怒っていた。そこへ伯爵が召使いに案内されて登場。入り口を間違えて大笑い。アルミンダに近づいて美しいと言うが、傍にいたセルペッタにもよろめきそうになり、再び大笑い。アルミンダは少しおかしな伯爵を心配そうに見て、変わりやすい男心を懲らしめるため、「浮気をしたら往復ビンタよ」と警戒して第7番のアリアを歌って伯爵に言い渡していた。これに対して伯爵の「自分の由緒ある家系」を自慢しながら歌う第8番の有名なアリアは残念ながら省略されていた。しかし、市長は姪のアルミンダの相手には、少し変わっているが、まずまずと言った表情であった。



 一方、セルペッタは、ナルドが自分を見ているのが嬉しくて、「私の夫になる人は、愛情に満ちた人が良い」と第9a番のカヴァテイーナを歌い出した。それを聞いていたナルドは、「夫が欲しい」と歌うセルペッタを見て、同じ旋律の第9b番のアリアを歌いながら「この男が、お前の夫に相応しい」と近寄ったので、セルペッタは気まぐれにも怒り出し、ナルドをはねつけて困らせていた。続いてセルペッタは、なおも近寄ってくるナルドを相手に、コケットリーな調子の早い第10番のアリアで、「男は自分を見さえすれば、走り寄ってくる」と自慢そうに歌って、大きな拍手を浴びていた。



           そこへヴァイオリンの序奏の付いたピッチカート伴奏の美しい音楽に乗ってサンドリーナが庭園に現れ、愛する人に会えぬ孤独な自分を嘆く美しい第11番の「キジバトのアリア」を歌っていた。そこへアルミンダと伯爵が散歩しながら登場し、アルミンダがサンドリーナに声を掛け、自分は幸せだ、今日の自分の結婚の相手はベルフィオーレ伯爵だというので、サンドリーナは驚いた。そして真っ青になり倒れ込み、気を失ってしまったのでさあ大変。アルミンダが大声を上げて助けを呼ぶと、伯爵が駆けつけてサンドリーナを見て驚いて大声を上げ、第一幕のフィナーレが始まった。

          伯爵は倒れている彼女が昔の恋人ヴィオランテであることを発見し、自分の目を疑った。サンドリーナも助けてくれた人がベルフィオーレ伯爵であることが分かって、さあ大変。サンドリーナが大声を挙げたので、アルミンダもラミロも駆けつけるが、二人とも何が何だか分からないので大騒ぎ。そこへ市長がカゴに乗って駆けつけたが、やはり黙り込んだ皆の様子がどうしてなのか分からない。私一人置き去りにしてとカンカンになって怒っていると、セルペッタが伯爵とサンドリーナの二人が抱き合っていると知らせるが、ナルドが市長にそこへ行かせまいとして大混乱。サンドリーナが、私はヴィオランテでないと伯爵に怒るが、二人は矢張りかっての恋人同士、互いに座り込んだところに、全員が駆けつけて二人を囲んであわやという場面になった。アルミンダが「不実もの」と伯爵を責めて大変な騒ぎであったが、伯爵も上手く説明ができず、サンドリーナも沈黙を守り、どうしょうもない。音楽はやがて速いテンポのアレグロに入り、全員が合唱しながら、もつれ合った関係がどう納まるのか、問題を提起したまま、混乱の中で第一幕は終了した。



       第二幕は再び市長邸の応接室で、サンドリーナに合ってから様子がおかしくなった伯爵に対し、アルミンダは伯爵の突然の裏切りを怒って激しい第13番のアリアを歌い出していた。そして現れた伯爵に対し、アリアの後半では手にした棒を振り上げて「罰してやりたい」と伯爵を責めていた。一方、セルペッタはナルドが自分に関心があるのを知り、ナルドがナイフで自殺しようとしてみせたのをからかって、ナルドに「騎士風に私を口説いて見せて」言いだした。ナルドはおどけながら、始めにイタリア風に思いを告げ、続いてフランス風に「マダーマ」と語りかけ、最後の英国風に口説くがセルペッタは知らん顔。この第14番のナルドのアリアはゼスチャーたっぷりで面白く、関心を見せないセルペッタに対し、ナルドは「おかしな女だ」と腹を立てて大拍手を浴びていた。



          サンドリーナは、伯爵が刺した自分をほっておいてアルミンダと結婚しようとしていると嘆き、伯爵はヴィオランテと名乗らずに身分を隠すサンドリーナを不思議に思い、市長は目をかけているサンドリーナに手を出す伯爵を怒る場面が続いていたが、最後にラミーロが得意げに市長に手紙を手渡していた。それはミラノから届いたベルフィオーレ伯爵の逮捕状であり、オネステイ侯爵令嬢の殺害犯としてラゴネロ市の市長に対し裁判を求めた文書であった。伯爵が殺人犯?戸惑う市長は大事なアルミンダの身の上を思い「結婚は一時中止だ」と言いだし、伯爵を契約違反だと怒っていた。



ラミーロは自分にも運が向いてきたと「小鳥は逃げて自由になると自然に戻ってくる」と逃げた小鳥を案じた美しいアリアを歌っていた。これは本来は第2番で歌う筈の「逃げた小鳥」のアリアであった。
カツラを付けて裁判官の服装で机に座る市長の前に、伯爵とアルミンダが揃って顔を出したので、いきなり市長が「裁判だ」と宣言し伯爵に尋問を始めた。



伯爵の名は?身分は?に次いで、オネステイ侯爵令嬢を知っているか?彼女は生きているか?の問いに、ハッキリ分からぬ伯爵が口ごもり疑われ始めた。態度もおろおろし、殺人犯だと疑われて万事窮したところに、横からサンドリーナが助け船。市長の裁判官の前で「私が弁護します。ヴィオランテは死んでいない。怪我しただけで、私がヴィオランテです」と答え、「今では伯爵を許しています」と申し出た。市長はサンドリーナがヴィオランテであることに驚いて、これで裁判は休会となった。



残された伯爵はヴィオランテと感謝して呼び掛けると、サンドリーナは「先ほどは貴方を助けるために言ったのよ」と相手にせず、嫉妬の余り「どうぞ、アルミンダの元へ」と素っ気ない。この様子によろめき伯爵は、為す術がなく倒れ込み「行かないで」と歌っている長いレチタテイーボの間に嵐のような場面が押し寄せていた。そして「私はどこへ行く。アルミンダよ。ヴィオランテよ、死をお望みなら刺すがいい」と第19番の長いアリアを歌うばかりだった。ここで、手紙と裁判の場面を連続させたことで、第15番の伯爵のアリア、第16番のサンドリーナのアリア、第17番の市長のアリア、第18番のラミーロのアリア(第2番に差し替え)と4曲のアリアが進行を明快にするため、省略されていた。



   サンドリーナがアルミンダに追われて悲鳴を上げながら連れ去られたと、情報通のセルペッタが急いで駆け込んできて、舞台は大騒ぎとなった。どうやらオオカミなどの獣がいる山奥に連れ去ったらしい。ナルドが市長に知らせに行ったので、セルペッタは一人になり、思わせぶりに「この世で楽しく生きるには」とサンドリーナに夢中になっている市長を恨んで「今の男には通用しない」とアリアを歌っていた。続いてサンドリーナは、連れ込まれた森の中の大きな洞穴の暗闇の中でただ一人になり、怖さの余り「神よ、助けて」と半狂乱になってアリアを歌い倒れてしまった。続くカヴァテイーナでは、「誰かが来る。神よ、逃げるにも力がない」と洞穴の暗い中で一人恐れおののいて倒れていた。そしてひたすら神にお助け下さいと祈っていた。



          フィナーレになってサンドリーナを探しに全員が洞穴に来て、七重唱が始まり暗闇の中で恋人を探し始めた。これはあたかも恋人同志が暗闇の中で相手を探し求めて一時の幸せを歌うようなものであったが、暗闇の中の出来事なので神様も間違えてしまう。伯爵とナルドに続いて、アルミンダと市長が駆けつけ、セルペッタが現れて、隠れていたサンドリーナと男女6人になった。そこで市長がアルミンダをサンドリーナと間違え、伯爵がセルペッタをサンドリーナと間違え、ナルドはサンドリーナをセルペッタと間違えて、お互いに暗闇で恋人気分になっていた。ところがラミロが駆けつけて、従者の持つ松明をかざしてみると、相手が全く違うことに驚いて皆が一気に正気に戻された。





           テンポが変わって、アルミンダが伯爵を「裏切り者」扱いにして怒りをぶつけると、市長がピストルを突きつけ、ラミロが剣を抜いて伯爵に迫ろうとしていたが、伯爵はサンドリーナの美しい歌声を聴いてギリシャの竪琴を手にしてのぼせ上がって虚ろな状態になっていた。そしてサンドリーナと二人で狂気に陥ったように二重唱を歌って愛の夢を語り合い、正気を失って二人で踊り出していた。これでは全員も二人の相手になれず、この狂気に全員が当てられたまま混乱状態になり、ただ呆れて見守るばかりで全員で合唱しながら混乱の終幕となっていた。





             第三幕では幕が上がると大きなベッドがあり、どうやら市長が高いびきで寝込んでいる様子だった。そこへナルドが進入してきたが、狂った伯爵がナルドを追いかけ、そこに矢張り狂気のヴィオランテが迷い込んできてナルドにすがりついていた。驚いたナルドは、まだ狂気が続いているサンドリーナと伯爵の二人を連れ出して、二人に空の星を見よと勧め「太陽と月が喧嘩をすれば、星同志が困って揺れるんだ」というアリアを歌い出した。二人はナルドに従って空を見ているうちに、太陽と月の二重唱になり次第に狂気が去り、二人は目が覚めてきたようだった。









             やっと目を覚ました市長が、寝床に入ってきたセルペッタといちゃついていると、そこへ現れたアルミンダから伯爵を何とかしてとせがまれ、またラミーロからはアルミンダを早く何とかしてくれと責められていた。困った市長は、ややこしくなったので、二人にこれ以上俺を煩わすなと第25番のアリアを歌って、二人を結びつけようとしたが失敗。アルミンダはラミーロにこれ以上愛することは出来ないと告げたので、ラミーロは「むごい女だ。でも私の気持ちは変わらない」と絶望的な第26番のアリアを歌って、遠くに行って死にたいと呟いていた。



            場面が変わって、弦とピッチカートの美しい前奏が聞こえて、伯爵とサンドリーナはようやく深い眠りから目が覚めてきた。伯爵はヴィオランテであることを認めて「愛しい人よ」と声を掛け近づくが、目覚めた彼女はまだ嫉妬深く警戒していた。そして二重唱になってもヴィオランテは頑なに伯爵を退けていた。しかし、伯爵が反対に「分かれよう」と強く突き放すと、ヴィオランテの態度が少しづつ変わり始め、音楽のテンポが変わり出すと、愛し合っていた二人はやっと後ろ向きで歩み寄り始めた。そして最後には、近づいた二人はソッとキスを交わしてしまい、もつれた二人の愛は、思い出したように遂に満たされて、最後は美しい二重唱になっていた。



            二人の愛の二重唱が終わると、アルミンダがやっと伯爵を諦めたか、ラミロに優しい素振りを見せており、セルペッタも市長に「私もあの方さえよければ」と言って、今や伯爵夫妻の従者として、ヒゲを剃り紳士姿のナルドの方に近づいていった。そこへサンドリーナが着替えてヴィオランテの姿になって「私は許婚に優しい復讐を沢山したかったから」と語って伯爵を仰ぎ見ていた。そこで市長は結婚したいものは勝手にすればよい、「俺も別のサンドリーナを見つけるさ」と呟いて、三組のカップルが誕生し、長い恋のもつれの物語は終わりとなっていた。音楽は賑やかなフィナーレとなり、ヴィオランテと伯爵を囲むように皆が集まって「庭師の娘、万歳」となり、ヴィオランテと伯爵を中心に全員の祝福を浴び、賑やかな威勢の良い全員合唱のハッピーエンドの中でオペラは終わりとなった。



            これまで何回も見てきたこのエストマンの映像を、今回は他と比較する形で入念に見てきたが、これまでの記憶以上に、第一幕、第二幕で、ストーリーを単純化するため、かなり大胆にカットした映像であった。そのため、全体が非常に分かりやすくなっていたが、さすが第一幕と第二幕のフィナーレは、リブレット本来が抽象化されているせいか、映像化に苦労をした結果が反映されていたように思われた。考えてみれば、どうやらこの映像が、年代的にはこのオペラの最初のものであり、恐らく他の演出者たちに、多くのヒントを与えたものと思われる。しかし、この問題は他の全ての映像にも共通の問題であり、今後もリブレットをどう解釈するか、演出者を悩ませることになろう。

            このオペラは、構造的には単純な三組の男女の恋のもつれの物語なのであるが、三組のカップルがハッピーエンドに上手く結ばれるかどうかが、どうやら最近の演出者の解釈のしどころになっているようであり、今回のエストマンの舞台では、第三幕がリブレット通りに構成されて、見事に三組のカップルの誕生の姿が描かれていた。このような結びとなることが、伝統的な解釈であり、一番安心して見ておれる舞台であって、音楽的にも楽しく浸ることができるのであるが、全6組のこれまで見てきた映像には、作成年代によって、はっきりした傾向が見られるようである。

これらの結果は、いずれこのオペラの総括編において詳しく検討結果を述べたいと思うが、全6組のオペラのうち3組が1988〜89年の1991年の没後200年のモーツァルト・イヤー前に制作されており、またその他の3組は2006年の生誕250年のモーツァルト・イヤーに制作されていた。始めの3組のオペラ(古い順にエストマン、ポマー・ミールケ、カンブルラン)はいずれも、三組のハッピーエンドで終わっており、2006年の3組(アーノンクール、ボールトン、ツアグロゼク)は、共通して現代的な演出であり、最後の結びが音楽はハッピーエンドなのであるが、結ばれたカップルが一組のもの、二組のもの、三組のものなど、それぞれの進行状況と第三幕のありようによって変化していることが分かった。今回のエストマンの映像の比較の対象になったツアグロゼクの映像は、伯爵とヴィオランテだけの一組のように見うけられたほか、一・二幕のアリアの省略も共通なものとそうでないものの出入りが散見された。

このエストマンの映像は、彼のモーツァルト・オペラ制作の後半期に属するものであり、喜劇としての分かりやすさを前面に出した活気のある舞台が続いていた。音楽的にも古楽器の良さを生かした優れたものであったが、エストマン特有の曲によっては極端にテンポが早すぎる納得できない部分が見られた。ローカルなこの歌劇場にも10年来オペラを続けていると、優れた歌手が育ってきており、この映像では、伯爵役のリチャード・クロフトだけがアメリカから来た新鋭テノールであった。サンドリーナのブリット=マリー・アルーンは、ベルイマンの「魔笛」の第1の侍女を振り出しに、フィガロなどでも活躍してきたスエーデンのソプラノであり、また、セルペッタのクリステイーネ・ビールはケルビーノ、フィオルデリージ、スザンナ、イリアなどで大活躍してきたこの劇場のエースである。ナルドのペッテリ・サロマーもレポレロやフィガロを歌ってきたフィンランドのバスであった。これらの馴染みになった歌手たちが舞台にいると、それだけでも安心して楽しくオペラを見ていれる存在となっていたように思われた。

(以上)(2012/03/16)


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