(最新DVDによるオペラ;ツァグロゼクによる「偽の女庭師」)
12-3-3、ローター・ツァグロゼク指揮、ジャン・ジョルドイユ演出、シュトゥットガルト州立劇場公演の「偽の女庭師」K.196、州立管弦楽団、2006年公演、

−通常の演奏なら三組の恋人たちが喜びを露わにして、全員合唱の華やかなフィナーレのオペラになるはずであるが、この映像では音楽は賑やかなのであるが、祝福された恋人たちは伯爵とヴィオランテだけのようであった。これには、演出者の「この恋の物語は、そんな単純なものではない」という解釈によるのかもしれない。この映像は、矢張り第三幕の変更とフィナーレのあり方をどう捉えるかによって、全体の評価が異なってくる。しかし、これだけ省略や変更が多いと、リブレットに忠実で伝統的な演出を期待する私の考え方には合わない映像であった。−

(最新DVDによるオペラ;ツァグロゼクによる「偽の女庭師」)
12-3-3、ローター・ツァグロゼク指揮、ジャン・ジョルドイユ演出、シュトゥットガルト州立劇場公演の「偽の女庭師」K.196、州立管弦楽団、2006年公演、
(配役)市長ドン・キアーゼ;ダニエル・オールマン、ヴィオランテ(サンドリーナ);アレクサンドラ・ラインブレヒト、ベルフィオーレ伯爵;ノーマン・シャンクレ、アルミンダ;チェリア・コステア、騎士ラミーロ;ヘレーネ・シュナイダーマン、セルペッタ;イレーナ・ベスバロヴァイテ、ナルド;ルドルフ・ローゼン、
(2011年5月14日、銀座山野楽器店にてDVD購入 ARTHAUS-101253)

 三月号の第三曲目は、最新DVDによるオペラで、ローター・ツァグロゼク指揮の「偽の女庭師」K.196をお届けする。ツァグロゼク指揮、ジャン・ジョルドイユ演出、シュトゥットガルト州立劇場のオペラ公演は、このHPでは初出であるが、この「偽の女庭師」は、モーツァルト・イヤーの2006年の公演であり、昨年5月に購入したものの、5大オペラの優先アップのお陰で、後回しにされてきたDVDである。
  ツアグロゼクにはオペラ劇場の女性歌手を連れて来日し、N響を振った公演が映像(4-1-1)で残されているが、この番組からもモーツァルトを得意とする指揮者であると見なされていた。今回の映像は、ジョルドイユ演出であるが、衣裳は当時の貴族趣味的なものであった。しかし、舞台は最初から最後まで、右の写真のように同じ設定で現代風であり、必要な歌手だけが登場するいわば演奏会形式によるオペラと余り変わらない舞台であった。一見したところ、アリアの省略や入れ替えが多くあり、日本語字幕がないので、それを確認するために、リブレット通りの他の映像と比較してチェックする必要性を感じていた。そのため、冒頭で述べたとおり、もし時間的に余裕があれば、12-3-4として、まだ残されているエストマン指揮のドロットニングホルムの「偽の女庭師」のLDも同時に見て、違いが分かるように同時にアップしておきたいと考えている。

 開幕前のざわついた劇場内の様子が写されているうちに、ツアグロゼグが元気よく入場し、真っ暗になって、さあ開始と言うときに、舞台が一部明るくなって、いきなり寸劇が始まった。アヴェックの女性がキスをしようとなったところに、突然、飛び込んできた男性に、いきなり殴る蹴るの乱暴がなされて女性が倒されて寸劇が終わり、直ちに序曲が颯爽と開始されていた。どうやらベルフィオーレ伯爵とヴィオランテ(今は女庭師に偽装しているサンドリーナ)の昔の二人の隠された出来事を暗示していた。序曲は非常に軽快なアレグロで進んでから、美しいアンダンテに入りゆっくりと進行していたが、舞台が明るくなり、広い舞台の壁面には、登場人物たち7人が衣裳を着けて個室のボックスに待ち受けており、どれが伯爵で花嫁がどこにいるかなどと、観客は固唾をのんで見守っていた。


  イントロドゥチオーネとされる序奏が明るく始まって、伯爵と花嫁を除く5人が「何と嬉しい婚約の日」と勢いよく歌い出す合唱が続いていたが、一人だけ花作り女のサンドリーナが、黙々と壁に花を飾っていた。やがて騎士ラミーロが恋人を奪われる悩みを訴え、市長のドン・キアーゼはサンドリーナに夢中であり、サンドリーナはそれを困惑しており、ナルドはセルペッタに片思いをし、セルペッタは市長の浮気を怒っているというそれぞれの事情を一人づつ歌っていた。市長が今日は姪のアルミンダの「婚約をする日だ」と宣言をし、ラミーロを宥めていると、そこへ彼女が現れたのでラミーロは決然として、アリアを歌い出した。「小鳥は臆病だから、カゴから逃げても戻ってくる」と歌っていたが、繰り返しがあり、やや冗長な感じ。舞台はアリアに関係する歌手だけが現れて、お互いの人間関係だけをクローズアップするもので、余計な小道具なしの演奏会形式のような形で最初から進んでいた。

         続いて市長がサンドリーナと二人になって口説こうとしていたが、セルペッタが嫉妬心をむき出しに後ろに現れたのでいらいら。愛の喜びをフルートとオーボエにたとえて美しく歌い、愛の苦しみをヴィオラや太鼓やテインパニーにたとえて、面白いコンチェルタントなアリアを歌っていた。楽器名を挙げるごとにオーケストラのそれぞれの楽器が反応する協奏的な面白い序奏があり、やはりこれは前代未聞の楽しい曲だであったと思った。続く第4曲のサンドリーナのアリアはダイアログにされ、サンドリーナは、ここを立ち去りたいと口に出すが、事情を知っている召使いのナルドに諌めらていた。続いてナルドのアリアは、セルペッタへの片思いに悩んでおり、「わがままな女心を捕まえるにはどうしたら良いだろう」と嘆きながら歌っていた。

   伯爵にまだ会っていないアルミンダは伯父の市長に「伯爵ってどんな人」と聞いていると、馬車が到着したという報せがあり、伯爵が右の花道から現れた。思わぬ黒人の伯爵で、着いたばかりと言うのに迎えに出た三人に、いきなり家系の自慢をして三人と会場を驚かせ、続いて刀を抜いて伯爵の威厳を示していた。この家系の自慢のアリアは第8曲目のアリアをここで移し替えて歌ったものであった。


          そしてアルミンダを見て直ぐ彼女の美しさを賛美するアリアを歌いだしていたが、これは口先だけの心のこもったものには見えず、どうなるかと心配していた。これに対しアルミンダは、やや軽薄そうな伯爵に対し警戒を隠さずに、第7曲目の変わりやすい男心をたしなめて、初対面にも拘わらず「浮気をしたら私は復讐をするわ」と手渡された鞭を持って、手厳しく伯爵を脅すように歌っていた。続くセルペッタとナルドの第9曲目の二重唱は、省略されたようだった。

                続いてセルペッタは、コケットリーな調子の早いアリアで、言い寄ってくるナルドに対し「男は自分を美しいと言うが、自分の好きな男は振り向いてもくれない」と当たり散らしていた。そこへヴァイオリンの序奏の付いたピッチカート伴奏の美しい音楽に乗ってサンドリーナが現れ、愛する人に会えぬ孤独な自分を嘆く美しいアリアを歌っていた。「優しいキジバトは鳴いて恋心を訴える」という美しいアリアであった。そこへアルミンダが来て、今日の自分の結婚の相手はベルフィオーレ伯爵だというので、サンドリーナは驚いて真っ青になり、倒れ込んで気を失ってしまった。アルミンダが大声を上げて助けを呼ぶと、伯爵が駆けつけて第一幕のフィナーレが始まった。
         伯爵は倒れている彼女がヴィオランテであることを発見し、自分の目を疑った。サンドリーナも助けてくれた人が伯爵であることが分かって、さあ大変。二重唱になっていたが、サンドリーナが声を挙げたのでアルミンダもラミロも駆けつけるが、二人とも何が何だか分からないので大騒ぎで四重唱になった。そこへ市長が駆けつけたが、やはり何故皆の様子がおかしいのか分からない。私一人置き去りにしてとカンカンになって怒っていると、セルペッタが伯爵とサンドリーナの二人が抱き合っていると市長に知らせるが、ナルドが嘘だと言い、市長に力ずくで行かせまいとして大混乱。サンドリーナが、私はヴィオランテでないと伯爵に怒るが、二人は矢張り恋人同士、互いに背を向け合って座り込んだところに、全員が駆けつけて二人を囲んであわやという場面になっていた。


          そこでアルミンダが「不実もの」とナイフで伯爵を責めつけて大変な騒ぎであったが、ラミーロがナイフを取り上げた。そして全員が二人を囲んでそれぞれ二人を責め建てていたが、さまざまな感情を歌うブッファ特有の大混乱の七重唱となって、混乱の中で第一幕は終了した。

          第二幕は再び大広間で、伯爵が登場しヴィオランテであることを認めないサンドリーナを不思議に思っていると、アルミンダが現れて、伯爵が急にサンドリーナに気が移ったのを知って、「好きだったのに憎い」とばかりにアリアを歌って伯爵を責めたてていた。ナイフを突きつけて歌う激しいアルミンダのアリアであった。 そこへラミーロが市長の姿を見て手紙を持って登場し、ミラノの親戚からだと市長に手渡した。それはミラノの当局から届いたラゴネロ市長に対し裁判を求めた文書であり「ベルフィオーレ伯爵がオネステイ侯爵令嬢ヴィオランテの殺害犯としての逮捕状」であった。伯爵が殺人犯?戸惑う市長は、理由が分からないので婚約は延期だとして退席してしまった。


  続いてセルペッタは、ナルドが自分に関心があるのを知って、気があるなら騎士風にレデイの私を口説いて見せてと言われ、ナルドは始めにイタリア風に思いを告げ、続いてフランス風に「マダーマ」と語りかけ、最後の英国風に口説くアリアを上手に歌って拍手を浴びていたが、セルペッタは知らん顔。おかしな女だと腹を立ててしまった。


   そこで裁判官の服装で現れた市長の前に伯爵が顔を出したので、いきなり裁判が始まった。伯爵の名は?身分は?に次いで、オネステイ侯爵令嬢は知っているか?彼女は生きているか?の問いに、ハッキリ分からぬ伯爵がしどろもどろで口ごもっていた。すると後ろの陰からサンドリーナが「ヴィオランテは生きています。怪我をしただけです。私がヴィオランテです」と答え、私は伯爵を許しますと申し出た。余りにも突然の裁判劇で、市長は姪の結婚もサンドリーナへの思いもパーとなり、アルミンダも途方に暮れていた。


         残された伯爵はヴィオランテと呼び掛けると、サンドリーナは「先ほどは貴方を助けるために言ったのよ」と相手にせず、嫉妬の余り「どうぞ、アルミンダの元へ」と素っ気ない。この様子に困った伯爵は為す術がなく「アルミンダよ、ヴィオランテよ、死をお望みなら喜んで死んでいこう」と第19番のレチタテイーヴォを悲しげに歌っていた。そこへセルペッタが急いで駆け込んできて、サンドリーナが逃げたと知らせて大騒ぎとなった。市長が心配して探しに行ったのでセルペッタは嫉妬で腹を立て「この世を楽しく生きるには、利口で何ごとにも無関心でなければならない」と市長を恨んで長い第20番のアリアを歌うばかりだった。ここで第二幕に入ってからアリアの入れ替えや省略があり、第15番の伯爵のアリア、第16番のサンドリーナのアリア、第18番のラミーロのアリアが省略されていた。
 

         場面が変わって逃げ出したサンドリーナは、大きな洞穴の暗闇の中でただ一人になって、怖さの余り「神よ、助けて」と半狂乱になってアリアを歌い、最後には力つき倒れてしまった。続くカヴァテイーナでは、物音がするのに気がついて「誰かが来る。神よ、逃げるにも力がない」と洞穴の暗い中で一人恐れおののいて倒れていた。


         続けてフィナーレに入って、サンドリーナを探しに全員が順番に洞穴に来て、七重唱が始まり暗闇の中でヘッドライトを頭につけて、それぞれが恋人を探し始めた。しかし暗闇の中では、思うように相手が見つからない様子だった。始めにセルペッタが伯爵を市長と間違えて互いの恋人と思い、市長とアルミンダがお互いに逃げられそうな恋人と思い、ナルドとサンドリーナも暗闇で恋人気分になっていた。ところが一人外れたラミロが部屋を明るくしてみると、相手が全く違うことに驚いて皆が一気に正気に戻された。


        アルミンダがヴィオランテと一緒になっていた伯爵を蹴飛ばして怒りをぶつけると、ラミロと市長が剣とピストルで伯爵に決闘を申し込もうとしていたが、伯爵はヴィオランテの美しい歌を聴いてのぼせ上がって虚ろな状態になっていた。そしてヴィオランテと二人で狂気に陥ったように愛の夢を語り合い、踊り出したりして正気を失って倒れ込んでしまっていた。一同はこの二人を呆れて見守るばかりの混乱状態になり、この狂気に全員が当てられたまま終幕し、二人は倒れ込んだままの姿であった。

         いよいよ第三幕に突入していたが、舞台は二人が倒れたままの状態が続き、弦とピッチカートの美しい前奏が聞こえて、伯爵とヴィオランテはようやく深い眠りから目が覚め、少しずつ動き出していた。伯爵は目覚めると傍にヴィオランテがいるので驚いて「愛しい人よ」と声を掛け近づくが、彼女はまだ嫉妬深く伯爵を警戒して、「市長の姪御さんのところに行ったら?」と言っていた。何と焦れったいことか。その様子を5人が良く見ていた。音楽が少し変わると、伯爵も真剣になってヴィオランテに迫るが、ここから二重唱になって彼女は行かねばならいと答えていた。伯爵も別れようと言い返していたが、どうしてかお互いの足が進まない。音楽が再び変わって踊り出すように始まり出すと、伯爵は「尊敬の印に手にキスをさせてくれ」と歩み寄っても彼女は逃げていた。再び音楽が変わると、二人は後ろ向きであったがやっと互いに少しづつ近寄りだし、背中合わせになって手を握ってしまった。好き合った二人は手を固く握りしめると、もう大丈夫。お互いを確認し、二人は向き合ってやっと抱き合ってからソッと手を繋いで引きあげていった。随分時間が掛かったが、愛はいつも最後には勝つものであった。

          この二人の様子を皆が覗き見しており、二人の愛の二重唱が終わって退席すると、市長はまずラミーロからアルミンダを何とかしろ責められ、またアルミンダから伯爵を戻してくれと責められていた。そして「二人は一緒になってよく話し合い、二人ともこれ以上俺を煩わすな」と第25番のアリアを歌って、二人を結びつけようとしたが失敗であり、そこへ座り込んでしまった。
           アルミンダはラミーロにこれ以上愛することは出来ないと告げたので、ラミーロは「むごい女だ」と言ってアルミンダを平手打ちし、絶望的なアリア「でも私の気持ちは変わらない」と歌って、遠くに行って死にたいと呟いていた。しかし、殴られたアルミンダは、初めてラミーロの男らしい態度と強い自分への愛を感じて気が変わったようだった。


      そこへナルドが牧師のようなスタイルで登場し「皆さん、幸いにも気違いのようだった人が、やっと元に戻ったようだ。気が確かになったら、穏やかに結婚をし楽しく過ごすだろう」と宣言をした。すると市長は「何を言う。裏切るのか」と言っていたが、アルミンダとラミーロは「何たる幸せ。私たちを助けてくれるのね」と口を揃えていた。セルペッタも「それは良いこと。私も助かるわ」と反応した。伯爵が「これが私の可愛い花嫁、ヴィオランテです」と言うと、ヴィオランテは「私を疑ってないのね。私と私の召使いのロベルトは名前と立場を変えました。」と語り出した。アルミンダがヴィオランテに私が悪かったと謝り「伯父さんが良ければラミーロと...」と言い出すと、セルペッタも「もし宜しければ、私も...」と言い出していた。



          すると市長は起ち上がり、そこで「結婚したいものは勝手にすればよい」と宣言して、「俺もまたサンドリーナを探したい」と呟いて、長い恋のもつれの物語は終わりとなっていた。
          音楽は賑やかな合唱のフィナーレが始まっており、ヴィオランテと伯爵を中心にして、一同は自分のボックスの中で大声を出して「庭師の娘、万歳」と歌っており、続けて「愛と貞節が勝利を得た」と賑やかな威勢の良い全員合唱の中でオペラは終わりとなった。この第三幕は大幅に変更があったのでチェックすると、第24番のナルドのアリアが略されて最後の牧師姿の語りとなっていた。そのため、第三幕は第27番の伯爵とヴィオランテのレチタテイーヴォと二重唱で始まって、第25番の市長のアリア、第26番のラミーロのアリアと続き、ナルドの牧師の一幕と市長の退散があって、第28番のフィナーレの合唱と続いていた。

           通常のこのオペラであれば、伯爵とヴィオランテ、ラミーロとアルミンダ、ナルドとセルペッタの三組の恋人たちが喜びを露わにして、全員合唱の華やかなフィナーレとなるはずであるが、ふと気がつくと、この映像では音楽は賑やかなのであるが、明確に結ばれたのは伯爵とヴィオランテだけのようであった。映像ではボックス内の7人の合唱だけでは様にならず、フィナーレの舞台でなく、指揮者やオーケストラの姿を写し出していた。ここで考えてみると、ナルドの宣言で、アルミンダもセルペッタも、リブレットのように、それに応ずる声は出していたが、みなボックス内にいて行動が伴わず、従ってその喜びも、直接舞台に、表れてこないように思った。

        

    このオペラは、本来は単純な恋のもつれの物語なのであるが、ストーリーが分かりづらく、その原因はアリアの言葉が抽象的で曖昧なために、さまざまな解釈が出来ることにあった。この第三幕の進行をリブレットと大幅に入れ替えて、あえて三組の恋人たちのストレートなハッピーエンドにしなかったのは、「この恋の物語は、そんな単純なものではないですよ」という演出者の解釈があり、曖昧な終わり方で済ませたような気がした。さらに勘ぐれば、私はこの物語には後日談があり、それがどのような結果をもたらすかは、観客に勝手に解釈を委ねているように理解した。





          第一幕から最後に至るまで、一枚のDVDに収めるためか、アリアの省略と改変が多く、日本語字幕でないため非常に戸惑った。第一幕の第4、8、9番、第二幕の第15、16、18番の6曲もの省略があり、第三幕においても第24番の省略に加えて、リブレットの姿を変えてしまう変更があり、ハッピーエンドの形で音楽が出来ているのに、結末はそうはなっていない、こんな勝手な変更が許されて良いものかと問題を感じさせた。

この映像の演出面では、衣裳は古さを感じさせるが、舞台の設定は現代であり、最初から最後までほぼ同じで、壁面に出演者が出入りするボックスがある舞台であった。歌手たちはこのボックスから必要な人が出てきて歌ったり演技したりしていたが、小道具などはナイフとか鞭とか小物しか使わずにもっぱら、恋人たちの人間関係のやりとりを重視してクローズアップで表情を捕らえる新しい方式であり、ある意味で演奏会形式の延長線にあるように思われた。ハイビジョンの普及とともに、人間関係重視とクローズアップによる表情の豊かさを追求する画面作りが、最近、増加している。
オペラの理解を深めるため、序曲の前に寸劇が行われていたのは、適切であったと思うし、各幕が切れ目なく演奏されていたのは、簡素な舞台のせいもあるが、適切であったと思う。

ツアグロゼクの音楽面は、序曲から颯爽としており、テンポの感覚が自分に合っており、各アリアの序奏やオブリガートなども非常に魅力的であった。ただし、音楽的には重要な第15番の伯爵のアリアや第18番のラミーロのアリア、第24番のアリアなどが省略されているのは演出への妥協と考え、極めて残念であった。 シュトゥットガルト州立歌劇場やその出演者たちは、このHPでは初めてであり、指揮者以外は知らなかったが、ヴィオランテが矢張り魅力的だったことと、市長もセルペッタもナルドも役どころを良く捉えた動きをしていた。伯爵、ラミーロ、アルミンダは、私には魅力に乏しかった。

この映像は、矢張り第三幕の変更とフィナーレのあり方をどう捉えるかによって、この映像全体の評価が異なってくる。しかし、これだけ省略や変更が多いと、リブレットに忠実で伝統的な演出を期待する私の考え方には合わない映像であった。

(以上)(2012/03/11)


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