(懐かしいS-VHSを見る;コープマン交響曲連続演奏会、第六集、4曲)
12-2-4、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲イ長調(第14番)K.114、2、変ホ長調(第19番)K.132、3、ト長調(第17番)K.129、4、ヘ長調(第18番)K.130、 第六回連続演奏会、1991年6月5日、東京芸術劇場大ホール、日本公演、NHK、

−コープマンのこの第六集のコンサートは、いずれもイタリア旅行帰りのザルツブルグで作曲された4曲が集中していたせいか、明るい爽やかな感じがする少年期の作品らしい活気に満ちた作品が多く、それがこの小規模な古楽器演奏にとても向いていたように思った。コープマンは、中間と末尾に反復記号があるソナタ形式では、概して中間の反復は丁寧に行っていたが、中には緩徐楽章などでは、一切の反復を省略したり、旧版の第2楽章をメヌエットの後ろに加えてデイヴェルテイメントのように演奏したり、曲の変化に応じて柔軟に対応して演奏していることが分かった−

(懐かしいS-VHSを見る;コープマン交響曲連続演奏会、第六集、4曲)
12-2-4、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、 (曲目)1、交響曲イ長調(第14番)K.114、2、変ホ長調(第19番)K.132、3、ト長調(第17番)K.129、4、ヘ長調(第18番)K.130、 第六回連続演奏会、1991年6月5日、東京芸術劇場大ホール、日本公演、NHK、
(1993年02月14日、NHKによる放送をS-VHSテープに3倍速で収録)

       2月号の第四曲目は懐かしいS-VHSを見るシリーズとして、コープマンの交響曲連続演奏会の第六集をお届けする。今回は、1991年6月5日、東京芸術劇場大ホールで収録された4曲のシンフォニーであり、曲目は1、交響曲イ長調(第14番)K.114、2、変ホ長調(第19番)K.132、3、ト長調(第17番)K.129、4、ヘ長調(第18番)K.130、となっている。これらのうちト長調(第17番)K.129を除く3曲がこのHPでは初出の初映像であり、その意味でこのコンサートは極めて重要である。コープマンの曲目選定がどのように決めているのか良く分からないが、今回の4曲は1771年と72年の作品に集中しており、3楽章1曲、4楽章3曲となっている。また、楽器編成は2Fl・2Hn、2Ob・4Hn、2Ob・2Hn、2Fl・4Hnとばらばらであるのが珍しく、まるで編成の変化を楽しむようなコンサートのように思われた。この第六集の映像の区別は、第一ヴァイオリンの後列の二人の女性のスーツの色が左が薄緑、右が青なので、他の日のコンサートとは一見して識別が出来る。



最初に演奏された曲は、交響曲イ長調(第14番)K.114であり、この曲だけが1771年にザルツブルグで作曲されている。この曲は自筆譜に日付が記載されており、1771年12月30日であるが、12月15日に第二回イタリア旅行から帰って、翌日には尊敬していたシュラッテンバッハ大司教が亡くなるという暮れの時期に作曲されている。なお、モーツァルトは、翌年10月に3度目のイタリア旅行に出かけるが、この間にこの曲を第一曲目として、立て続けに8曲のシンフォニーを作曲しており、この日のコンサートは、4曲ともこの間に書かれた曲となっている。
イ長調第14番K.114は、4楽章の構成であり、メヌエット以外は全てソナタ形式となっていた。また、楽器構成は、弦五部のほかはフルート2、ホルン2の小編成であり、第二楽章はオーボエ2の持ち替えの構成となっている。



第一楽章はアレグロ・モデラートの中間と末尾に反復記号のあるソナタ形式で書かれている。第一・第二ヴァイオリンが弱奏で歌い出すように第一主題を奏で始めて提示し終わると、すかさずトウッテイで力強く繰り返され、ホルンがファンファーレを行って、フルートと第一ヴァイオリンのまろやかな三重唱が続く面白い第一主題が続いていた。やがて第二主題は、弦三部による各パートの掛け合いで進み、フェルマータの後、トウッテイで力強く盛り上がって活発に進み提示部を終えていた。コープマンはフルートのまろやかな響きを意識しながら軽快に進めており、繰り返しを行ってからも軽やかにこの親しみやすい第一・第二主題を丁寧に反復していた。
展開部では、フルートがまず新しい主題を歌い出し、ヴィオラが引き継いでからホルンが歌い出し、再びフルートが歌ってから弦が主導権を握って、トウッテイで盛り上がりを見せてから再現部へと突入していた。再現部ではコープマンは譜面通りに型通りに第一・第二主題を再現していたが、このシンフォニーは譜面を見ながら三・四度繰り返して聴くとすっかり頭に入る馴染み易い旋律に溢れており、楽しい作業であった。



第二楽章はアンダンテで短い楽章であるが、一応、反復記号が中間と末尾にあるソナタ形式になっていたが、コープマンは珍しく両方の反復を省略した簡潔な演奏を行っていた。ホルンが休みフルートの替わりにこの楽章に限って2本のオーボエが用いられ、当時は同じ奏者の持ち替えであったろうが、このオーケストラではオーボエ奏者が隣に座って吹いていた。冒頭の第一主題は第一ヴァイオリンの旋律を第二ヴァイオリンが伴奏するスタイルでゆっくりと三拍子で歌うように流れる叙情的な楽章であった。主題が繰り返されてから短い第二主題に進んでいたが、終始第一ヴァイオリンによって主導され、オーボエは伴奏程度に使われていた。展開部は新しい主題が第一ヴァイオリンにより提示され繰り返されていたが、再現部では第一主題だけが再現されて静かに終結していた。


第三楽章はメヌエット。フルートとホルンが加わって全合奏で上昇音形の活気に満ちた堂々たる風格のメヌエットであった。トリオは弦五部だけの構成で第一ヴァイオリンが哀調を込めた素朴な主題を提示して、前段との対比を明確にしていた。
フィナーレはモルト・アレグロの中間と末尾に反復記号があるソナタ形式で書かれており、トウッテイの主和音で始まる荒々しい活気のある第一主題が飛び出し、続いて素朴で民謡調の第二主題が流麗に流れる二つの主題の対立により提示部が作られていた。コープマンは速いテンポで強弱・緩急をきわだせながら進行させて、提示部の繰り返しを行っていた。速いテンポの弦の進行の中で囀るように響くフルートのフレーズが快かった。展開部は第一ヴァイオリンが弱音で主題を示す穏やかなもので、再現部に入って再び新鮮で活気に満ちた主題が登場し、一気にこのシンフォニーを収束させていた。


第二曲目となるこの曲は、交響曲変ホ長調(第19番)K.132であり、1772年7月の作曲とされ、4楽章の構成であるが、4つのホルンと2オーボエの楽器編成であるのが特徴である。また、第二楽章にアンダンテ・グラツイオーソの初期稿があり、新全集にも記載されていた。第一楽章が繰り返し記号のないソナタ形式であり、序曲風であるところからザスローが、新解釈を出している曲であるが、ここでは触れない。
第一楽章はアレグロで反復記号がないソナタ形式。変ホ長調の特性か、第一主題の出だしは堂々とした風格があり、続いて二組の4本のホルンが弦のシンコペーションに対抗するように、主題を刻むように進行していた。ホルンの持続音に続いて第一ヴァイオリンに現れる第二主題も爽やかな軽さが満ちているが、ここでも4本のホルンが主題を刻むように現れて盛り上がってから提示部を終えていた。展開部は弦主体のトリルの新しい主題がひとしきり続き、ここでも後半は4本のホルンが弦に変わって活躍し、再現部となっていた。再現部はいわば型通りの進行をしていたが、4本のホルンが存在感を示した第一楽章であった。

第二楽章はアンダンテで8分の3拍子の緩徐楽章。書き直したせいか繰り返しを含んだソナタ形式の150小節余りの大きな楽章となっていたが、コープマンは第一楽章とのバランスを考慮したか、繰り返しを省略してあっさりと演奏していた。第二ヴァイオリンとヴィオラが刻む細かなリズムに乗って第一ヴァイオリンが主題がゆったりと歌い出す第一主題は優雅そのものであり、ザスローによってグレゴリア聖歌の「クレド」と関連づけられた主題である。この伸びやかな主題はその後展開部と再現部の始めに繰り返し現れていたが、コープマンは第一ヴァイオリンを良く歌わせて美しさを示していた。
メヌエットではリズミカルな舞曲的な主題が第一ヴァイオリンに現れるが、常に一小節遅れて第二ヴァイオリンが模倣し、対位法的に進行していた。後半には4本のホルンが存在感を示していた。トリオは弦五部でカノン風の古風な音色を示していた。

コープマンは元の第二楽章アンダンテイーノ・グラチオーソをメヌエットの後にここで演奏していたので驚いた。この曲は、56小節しかなく新作の三分の一程度の長さしかないが、ソナタ形式で書かれており、コープマンは中間部の繰り返しを省略せずに演奏していた。第一ヴァイオリンが美しい主題を提示していくが、ホルンとオーボエの和音が重なってとても美しい。オーボエがリズミックに先導し、弦が小さなリズムを刻む第二主題も面白い。2つのオーボエが和音を刻む展開部が意表を突き、再現部は型通り再現されていたが、コープマンがこの曲を無視せずに取り入れただけの価値のあるアンダンテ楽章であったと思われた。
フィナーレはコントルダンス風の鮮明なリズムを持ったロンド・フィナーレであり、繰り返し記号が10カ所もある複雑な楽章であって、冒頭の勢いのある明るいリズム主題Aは、3つの副主題BCDを挟んで実に4回もリフレインされ、記号で示せばA-A'-B-B'-A-C-C'-A-D-D'-Aのようになっていた。コープマンは中間の2つのAの繰り返しを省略して演奏しており、スピード感を持ってこの楽章を一気に仕上げていた。


コープマンは新旧の第二楽章を加えて、あたかもデイヴェルテイメントのように5楽章構成で軽快にこの曲を演奏していたが、比較的単調なシンフォニーの連続演奏の中にあって、面白い趣向であると評価したい。念のためホグウッドがこの曲をどのように演奏しているかチェックしたところ、彼はフィナーレの後に追加曲として、新全集通りの順番で演奏していた。

第三曲目は、交響曲第17番ト長調K.129であり、第16番ハ長調K.128と同じ1772年5月にザルツブルグで作曲されている。いずれも三楽章構成のイタリア風のシンフォニーであり、いずれも弦5部と2オーボエ、2ホルンの構成であった。この曲は実に優雅な親しみやすい第二楽章を持っているので、前曲よりも演奏機会が多いであろう。


       この曲の第一楽章のアレグロは、活気に満ちたテンポの速い序曲風の曲であり、中間と末尾に反復記号を持つソナタ形式で書かれていた。この曲の第一主題の特徴は、弦の持続低音に支えられて第一・第二ヴァイオリンが、16分音符と付点8分音符(逆付点)リズムからなるモチーブが提示されて颯爽と進行していくが、続く第二主題にもこのモチーブから始まる主題が使われており、明るく盛り上がって提示部を終えていた。コープマンはここで繰り返しを行っていたが、展開部でもこのモチーブが第一ヴァイオリンで現れた後、各声部でカノン風に展開されていた。再現部でも第一・第二主題がほぼ型通りに軽快に進行し、コープマンは一気呵成にこの楽章を結んでいた。



                 第二楽章は、その昔NHKのFM放送の何かの番組のテーマ音楽になっていた曲であろうか、どこかで聴いた思わず口ずさみたくなるアンダンテであるが、簡潔なソナタ形式で書かれていた。始めに、第一ヴァイオリンの合奏が歌う美しい旋律を、総奏で繰り返して行き、そのままなだらかに第二主題に繋がれて提示部を終えていた。コープマンは丁寧に提示部を繰り返していたが、ハイドン風の実に美しい曲であった。弦だけの8小節の短い気分を変えるだけの展開部の後に、再び同じ形で再現される歌謡的な曲であった。コープマンは身体全体でゆっくりと丁寧に演奏しており、古楽器の良さが滲み出ていた。


        フィナーレはユニゾンで始まるテンポの速い勢いのあるアレグロで、まるでファンファーレのように響く軽快な序曲風の終曲であった。短い第二主題部もこの主題の一部のように思われた。展開部は56小節もあり、冒頭の主題が何度も顔を出す充実したものであり、再現部でも同じ主題が素材になって元気よく進行する「狩の音楽」であった。コープマンの忙しそうな指揮ぶりと、終わった後の明るい爽やかな表情が印象的で、素晴らしい序曲風のシンフォニーであった。

本日の第四曲目は、交響曲ヘ長調(第18番)K.130 であり、これも前曲と同様に1772年5月にザルツブルグで書かれたもので、規模においては今までにない長大な4楽章構成であり、楽器編成もフルート2、ホルン4本のC2とF2の珍しい編成であった。舞台を注意深く見ていると、これまで演奏していた2本のオーボエが抜け、二人のフルートと新たに二人のホルンが加わっていた。


第一楽章はアレグロで中間と末尾に反復記号のあるソナタ形式。第一主題は弱奏の第一・第二ヴァイオリンが主題軽やかなフレーズで始まり、その後総奏で主題が繰り返されていくが、主題の発展に前半ではフルートが、後半では4つのホルンが活躍していた。第二主題も2つのヴァイオリンで開始され、低減のピッチカートが加わって全体が提示された後、総奏で力強く進行して提示部が終了していた。コープマンは繰り返しを行っていたが、展開部では冒頭の主題が弦楽器のみで変形して提示され、その後総奏で力強く主題が展開されて、再現部へと移行していた。

第二楽章はアンダンテイーノ・グラツイオーソで、冒頭から低減のピッチカートが伴奏する緩徐楽章。短いが2つの繰り返しを持ったソナタ形式で書かれていた。弦五部により弱音で開始され、10小節で柔らかな主題をゆっくりと提示してから総奏で力強く繰り返して進んでから第二主題に移行するが、ここでは後半で聞こえるトリオが賑やかに響いていた。展開部は冒頭主題の変奏でフルートが活躍していたが、再現部では再び低減のピッチカートで弱奏で開始されていたが、後半はフルートと4つのホルンが賑やかであった。末尾に独立したコーダがあり、堂々と結ばれていた。


第三楽章のメヌエット楽章では、第二ヴァイオリンないしヴィオラが第一ヴァイオリンに対しオステイナート風に絶えず繰り返しており、一風変わったメヌエットになっていた。トリオでは第一ヴァイオリンとフルートがメロデイラインを形成しており、ひとしきり柔らかい静かな音調を形成した後、メヌエットが反覆されていた。
         フィナーレはモルト・アレグロで中央と端末に繰り返しを持つソナタ形式で書かれていた。精力的な第一主題がファンファーレ風に響いてこの終曲が輝かしく発展し、第二主題も2つの異なった主題が現れて4つのホルンが力強く支えながら提示部が進行していた。展開部においても新しい主題が顔を出しており、約200小節にわたる長大で力強いフィナーレがとなっていた。

       モーツァルトの数多い交響曲の中で、オーボエを含まずフルートだけを用いているのはわずか4曲だけ「K.130、K.134、K.199(161b)、K.543」であり、一方、4本のホルンを用いた例もわずか4曲だけ「K.130、K.132、K.183(173dB)、K.318」であり、いずれもこの曲が最初の例となっている。そのせいかこの曲は、これまで書かれてきた曲と趣が違うところがあり、それぞれの楽章で指摘できそうであるが、それだけに意欲的に書かれた曲であると思われる。

コープマンはこの第六集のコンサートを通じて、いずれもイタリア旅行帰りのザルツブルグで作曲された4曲が集中していたせいか、明るい爽やかな感じがする少年期の作品らしい活気に満ちた作品が多く、それがこの小規模な古楽器演奏にとても向いていたように思った。中間と末尾に反復記号があるソナタ形式では、概して中間の反復は丁寧に行っていたが、中には第2曲目の交響曲変ホ長調(第19番)K.132の第2楽章では、一切の反復を省略したり、旧版の第2楽章を途中で加えてデイヴェルテイメントのように演奏したり、曲の変化に応じて柔軟に対応して演奏していることが分かった。いずれも全体のバランスを考えた適切な対応であったと思われる。

(以上)(2012/02/22)


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