(最新購入のDVD;モスコウ・ヴィルテイオージによるアンサンブル)
12-2-1、モスコウ・ヴィルテイオージ室内楽団によるオーボエ協奏曲ハ長調K.314(285d)、交響曲第24番変ロ長調K.182(173dB)、デイヴェルテイメント変ロ長調K.137(125b)のアレグロ楽章、
(演奏者)指揮者;Vladimir Spivakov、オーボエ;Aleexey Utkin、1991年、Jose Maria Rodero市民劇場収録ライブ、スペイン、

−ヴァイオリニスト・スピヴァコフが指揮するモスコウ・ヴィルテイオージ室内楽団は、珍しく女性が一人もいない黒ずくめの団体で、そのエネルギッシュなスタイルが目に見えていたが、優れたオーボエ奏者のソロがあって実に華やかな協奏曲の演奏であった。また短いシンフォニーは、ファンファーレ風の響きが心地よく、この楽団の実力のほどを聴かせていたが、画像と音響の水準が低くて魅力に乏しかった−

(最新購入のDVD;モスコウ・ヴィルテイオージによるアンサンブル)
12-2-1、モスコウ・ヴィルテイオージ室内楽団によるオーボエ協奏曲ハ長調K.314(285d)、交響曲第24番変ロ長調K.182(173dB)、デイヴェルテイメント変ロ長調K.137(125b)、
(演奏者)指揮者;Vladimir Spivakov、オーボエ;Aleexey Utkin、1991年、Jose Maria Rodero市民劇場収録ライブ、スペイン、
(2011年10月28日、新宿タワーレコード、Imperial DVD Classic SOPI-YSD-D1025)

   2月号の 第一曲目のモスコウ・ヴィルテイオージ室内楽団のコンサートは、ヴァイオリニストであり指揮も行うスピヴァコフにより、バッハのヴァイオリン協奏曲2曲、並びにモーツァルトの2曲の協奏曲と交響曲が演奏されたものであった。このDVDシリーズは、Imperial DVD Classicというドイツレーベルで著名なソリストや演奏者による有名作品の古い演奏の再発シリーズであった。このシリーズでこれまで入手したグルダのピアノ・ソナタ集(11-11-1)や、グラーフ指揮モーツァルテウム管弦楽団のモーツァルト・コンサート(11-12-1)は、いずれも映像も録音も古かったけれど、演奏は素晴らしいものがあった。そのため今回のモスコウの室内楽団は、ロシアの著名な室内楽団でこのHPでは初出として期待は大きかったが、スペインの地方の市民劇場での1991年の収録ライブのせいか、画面が暗い上に画像が低レベルであり音声も分離が良くなく、一見した最初の印象は期待に反していた。しかし、演奏されたモーツァルトの曲目は、オーボエ協奏曲ハ長調K.314(285d)と余り聴かれない交響曲第24番変ロ長調K.182(173dB)のほかに、アンコールとして、デイヴェルテイメント変ロ長調K.137(125b)のアレグロ楽章が演奏されており、決して演奏は悪くないので、改めて弦楽器・管楽器ソリスト2004(音楽之友社)で調べてみた。



         ヴァイオリニスト・スピヴァコフ(1944〜)は、世代的にはクレーメルと同時代のソビエトを代表するヴァイオリニスト・指揮者であり、ソ連崩壊後もモスクワに残って活躍していた方なので、余り知らされていなかったようである。彼は1979年にラヴィニア音楽祭でシカゴ交響楽団を指揮して成功を収めているが、同年にモスクワでその名のヴィルトゥオーゾ室内管弦楽団を創設し、しばしば、「弾き振り」のスタイルでコンサートやCD録音に務めてきた。83年にバシュメットとともに来日しており、レパートリーは、モーツアルトを始めとして、バッハ、ヴィヴァルデイなどが多いようである。この分野は今やピリオド楽器や奏法の草刈り場になっているので、現在では、いささか古いスタイルのヴィブラートをきかした演奏を好んでいるように見えた。この室内楽団はコントラバスが一台であり、第一・第二ヴァイオリンが多く女性がいない黒ずくめの団体であって、そのエネルギッシュなスタイルが目に見えていた。

          DVDでは二曲のバッハのヴァイオリン協奏曲、二つのヴァイオリンのためのBWV1043と第1番の協奏曲BWV1041をスピヴァコフの弾き振りで行われていた。恐らく休憩の後であろうが、オーボエ協奏曲ハ長調 K.314(285d)は、この日の3曲目として始まっていた。この曲はご存じのとおり、モーツァルトがマンハイム・パリ旅行中に、フルート協奏曲ニ長調(第二番)K.314として作曲されたものとされてきたが、20世紀初めの研究の結果、オーボエ協奏曲の形が原曲であるとされてきた。ところが、1971年になってこの曲のハ長調のスケッチが発見されたことによって、今日では、このオーボエ原曲説が確証されている。
                第一楽章は協奏曲風のソナタ形式で書かれており、アレグロ・アペルトとされていた。アペルト(aperto)とは、「はっきりした」と言う意味合いであり、この楽章は、まさに明るく溌剌とした威勢のよい楽章になっている。オーケストラで第一主題・第二主題が呈示された後、オーボエのソロが両主題を呈示し発展させていくスタイルであった。オーケストラは、このような室内楽団向きの弦5部と2本のオーボエとホルンの構成であった。曲は第一主題が颯爽と軽やかにオーボエと第一ヴァイオリンで示されてから直ぐに、第二主題が第一ヴァイオリンにより静かに表情をつけて呈示され、終わりには元気の良い結びの音形で提示部が終わっていた。スピヴァコフは指揮棒を使い、オーケストラの勢いを手の振り方や表情で操作するような仕草で、軽やかに進めていた。



          そこでウトキンの独奏オーボエがいきなり装飾をつけながら颯爽と登場するが、第一ヴァイオリンが美しく主題を提示している間、オーボエは高いハ音を4小節に渡って歌い続けていた。そしてそのまま独奏オーボエが16分音符の速いパッセージを奏して曲の主導権を握り、新しい第三の主題を提示し、何度も変奏し、発展させていた。残念ながらオーボエ奏者ウトキンの名前は、先の本には見当たらなかったが、この人のオーボエは、明るく伸びがあり、華やかさがあった。やがて曲は一段落してから、第二主題がオーボエのソロにより提示され、次から次へと早いパッセージの経過部を経て、オーケストラの元気の良い終結句で、展開部に入っていた。


          短い展開部は第三の主題を独奏オーボエが何回か力強く繰り返していたが、ウトキンは早いパッセージの技巧を勢いよく示しており、まさにオーボエが独壇場であった。再現部では第一主題はヴァイオリンで再現され、第二主題は独奏オーボエで豊かに再現される型どおりのものであったが、独奏オーボエが絶えず主題を変奏しながら形を変えて活躍しており、軽快に一気にカデンツアまで到達していた。カデンツアはウトキンのオリジナルか、二つの主題をそれぞれ変形しながらオーボエの特徴を高らかに示すもので、技巧を駆使しながら簡潔に上手くまとめていた。

         第二楽章はアンダンテ・マ・ノン、トロッポの小さなソナタ形式で書かれた叙情的な優美な楽章。弦楽器のユニゾンで優雅に第一主題が流れ出すが、それを受けてオーボエが美しく後半の主題を提示し美しく展開していた。第二主題は第一ヴァイオリンに独奏オーボエが掛け合って、実に優雅な響きをもたらし、第一ヴァイオリンと交互に歌い合っていた。独奏オーボエによる短い中間部を過ぎてから再現部に再び移行していたが、ここでは第一主題はトウッテイの前半部のみでオーボエに渡され、直ちに第二主題に入り趣を変えていた。ここでも短いカデンツアが用意されており、終わりは冒頭の主題により荘重にして優雅に締めくくられていた。



       フィナーレは、ロンドと書かれたアレグレットの楽章で、飛び切り明るいロンド主題が独奏オーボエで高らかに提示された。トウッテイで軽快に反復されると、オーボエとホルンに先導されて、独奏オーボエが新しい主題を次から次へと提示して、十六分音符の華やかなパッセージが続き軽快に流れていく。まさに独奏者冥利に尽きるとでも言えそうな華やかさを持って快調に疾走していた。フェルマータの後、再び冒頭のロンド主題が現れて、全体を繰り返すように進んでいた。この主題は、オペラ「後宮」のブロンテのアリアに転用されているが、この主題は結びのカデンツアの前・後にも再帰され、実に軽快に明るく締めくくられていた。
         大変な拍手で演奏を終了したが、指揮者と独奏者は互いに握手を繰り返して観客に応え、挨拶をしていた。この演奏は、地味ではあるが、独奏者のレベルの高さと室内楽団の熟達振りを思わせたハイレベルな演奏であったと言えよう。



この室内コンサートの締めの曲は、交響曲変ロ長調(第24番)K.182(173dA)であり、1773年にザルツブルグで作曲された非常に軽快なイタリア序曲風の短いシンフォニーで、メヌエットを除いた三楽章の構成であった。有名な第25番の交響曲ト短調K.183(173dB)の1曲前に作曲された曲であり、両曲は全く曲のスタイルが異なっていた。この曲はオーボエ2、ホルン2、弦5部の構成で、第一楽章は提示部の反復がない簡潔なソナタ形式となっておりファンファーレ風の響きが心地よい。第2楽章のアンダンテでは、オーボエがフルートに持ち替えられて演奏される優雅で美しいセレナーデ。このDVDの冒頭のテーマ・ミュージックとして使われていた。フィナーレは急速なアレグロで短いロンド形式でジーク舞曲のように一気に仕上げられていた。幾つかのイタリア風の短いシンフォニーの中では第32番ト長調K.318などと並んで素晴らしい曲の一つであろう。



         指揮者のスピヴァコフが入場をして挨拶をしてから、直ぐに第一楽章がアレグロ・スピリトーソの言葉通りに元気よく始まった。第一主題は三和音で下降するユニゾンで開始されるファンファーレ風の速いテンポの主題で、途中からシンコペーションのリズムで軽快に推移していた。短い休止で明快に区切られた第二主題は温和しい主題で弦楽器のみで提示されて行くが、提示部の繰り返しがない。10小節ほどの経過部を経て、再び元気よく最初の主題が再現されて明るくスピーデイに一気にこの楽章を終えていた。こういう元気の良いファンファーレ的なアレグロ楽章は、ブッフォ的な軽快な素材が組み合わされており、小規模なこの室内楽団の演奏には向いていると感心しながら聴いていた。



         続く第二楽章は、本来はフルートと弦とピッチカートで美しく始まるお得意のアンダンテイーノ・グラツイオーソの楽章であったが、この室内楽団は2本のオーボエと2本のホルンで演奏しており、これを象徴するようにこのDVDで冒頭の演奏者や曲目紹介でオーデイオや曲目を選択する場面のテーマ音楽として使われていた。短い曲であるが、形式的にはフランス風のロンドであろうか。オーボエと弦の合奏で低弦のピッチカート伴奏でゆったりとセレナード風に始まり、A-B-A-B-AとAの部分を繰り返して型通り進んでから、Bの部分では弦が先行しオーボエが答えてAに戻っていた。後半のBの部分では最後に現れる2オーボエと2ホルンの合奏のファンファーレがフルートを使った演奏よりも実に際だって響き美しく印象的だった。
比較の意味で聴いたホグウッドの演奏はフルートを用いており、フルートのまろやかな甘い響きに対し、オーボエでは幾分鋭い感じで響き、甲乙つけがたいが、協奏曲を演奏したオーボエ奏者が加わっており、今回の演奏になったのだろうか。

フィナーレはアレグロのロンド主題が三度繰り返される8分の3拍子のジーク舞曲で、これもA-B-A-B-Aの形式か。第一楽章の冒頭と同じように、強いユニゾンの走りと弱い部分との対立が目立つ曲で、ホルンとオーボエが良く響き狩の音楽を思わせていた。10分足らずで駆け抜けるように終了する序曲風の軽快な曲であったが、スピヴァコフの演奏は軽快で楽しいものであった。



          大変な拍手で迎えられたスピヴァコフは、周りの楽員と握手をして会釈して引きあげ二度ほど繰り返していたが、三度目には盛り上がる拍手に応えて、口頭でアンコールの曲名を伝えていた。それはデイヴェルテイメント変ロ長調K.137(125b)の第ニ楽章のアレグロ・モルトであった。この曲は第一曲のK.136と同様に弦5部の構成による軽快なアレグロであり、演奏は浮き立つように軽やかな軽快で楽しいものであった。二つのヴァイオリンが掛け合うようにして進行するこの楽章は、沸き立つような生気に満ちた溌剌とした楽章であったが、弦楽合奏が一気に駆け抜けるように進行して爽やかな味わいを見せていた。コンサート・マスターは、冒頭の二つのヴァイオリン協奏曲でソリストの一人として演奏し、リーダシップを取っていたのが目についた。

          演奏を見て残念に思うことは、もう少し画像が明るく鮮明であって欲しかったし、肝心の音声も鮮明さに欠け、特に5.1CHでは全く聴くに耐えぬ代物であった。技術的な水準は高いものがあったので、もっと良い状態で聴いてみたいと思った。指揮者兼ヴァイオリニストのスピヴァコフはこのHP初出であったが、記憶に留めておきたい演奏家の一人であると思った。

(以上)(2012/02/07)


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