(懐かしいS-VHSより;20周年記念「若い芽」のガラコンから)
12-12-4、20周年記念「若い芽」のガラ・コンサート、沼尻竜典、十束尚弘指揮、NHK交響楽団によるピアノと管弦楽のためのロンドニ長調K.382、フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299から、および2台のピアノのための協奏曲変ホ長調K.365から、
1995年1月16日、サントリー・ホール、
(出演者)ピアノ;清水和音、フルート;佐久間由美子、ハープ;吉野直子、第一ピアノ;花房晴美、第二ピアノ;海老彰子、

−第一曲のコンサート・ロンドは、全く繰り返しがないので、アダージョを除いて淡々としたペースの早いテンポで進み、今の若い人の演奏はこんなものかと思わせる余り味わいのない素っ気ない演奏であった。第二曲はフルートが、終始、余力を持って自在に動き回るのに対し、ハープが受け身の動きをしていたが、若いソリストたちの意気込みが感じられ、美しい立派な名人芸の演奏であった。第三曲は二人のトップ・ピアニストたちの息の合った演奏で、柔軟でありながら繊細さを持ち合わせる素晴らしい伸びやかなピアノであり、第一楽章の演奏が含まれていないのが非常に残念であった−

(懐かしいS-VHSから;20周年記念「若い芽」のガラコンから)
12-12-4、20周年記念「若い芽」のガラ・コンサート、沼尻竜典、十束尚弘指揮、NHK交響楽団によるピアノと管弦楽のためのロンドニ長調K.382、フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299から、および2台のピアノのための協奏曲変ホ長調K.365から、
1995年1月16日、サントリー・ホール、
(出演者)ピアノ;清水和音、フルート;佐久間由美子、ハープ;吉野直子、第一ピアノ;花房晴美、第二ピアノ;海老彰子、
(1995/2/11、NHK教育テレビの放送をS-VHS3倍速(154.2)にて収録、)

      かねて三つの協奏曲が収録されているソフトが気になり始め、ソフトの総括をすることが求められているので、ヒマな折に一気にアップロードしようと考えていたが、今のご時世では考えられない「若い芽」のコンサートというNHKのお正月番組の、しかも20周年記念という出演者が14人という大きなガラ・コンサートであった。テープを見返すと、日本を現在代表するソリストたちの約17年前の1995年の若い姿が映っており、しかもとても見応えがあって、これは是非、早急にアップロードしなければならないと思い立った。しかし、ガラ・コンサートなので、第一曲のコンサート・ロンドK.382以外は、すべて全曲演奏ではなく、このHPには必ずしも馴染まない演奏であったかも知れないが、兎に角、今となれば貴重な映像であると思われたので、気ままに沢山の写真を入れて、アップロードすることにした。

      「若い芽」コンサートは、選ばれた新進気鋭の若手ソリストがNHK交響楽団と協演する機会が与えられるコンサートで、1975年(昭和50年)の新年の番組として始められ、毎年の慣例のコンサートとして定着してきた。選ばれるソリストたちは、最新の海外・国内国際コンクールなどで、上位に入賞した実績のある方々から選ばれているようであった。今回は放送20周年記念コンサートとして実施され、これまで出演した68人の中から14人が選ばれて演奏を競う「若い芽」OBたちによる特別なガラ・コンサートであった。
        以下に第一部として、このコンサートの曲目とソリストたちをまとめて紹介し、コンサートの様子を写真でご紹介しておこう。また、後半には、第二部としてモーツァルトの3曲に対し、簡単に感想をまとめてことにしたい。
      この「若い芽」の方々の演奏するコンサートを見聞きしながら、日本のクラシック音楽界は、オペラなどの一部を除き、世界と変わらない水準に達していると改めて感じさせたが、その水準に引き上げてくれたのは、この「若い芽」に登場してくれた100人弱の気鋭のソリストたちのお陰であると、考えながら演奏を聴いていた。


第一部;演奏曲目と演奏者略歴と演奏風景、

第1曲、モーツァルト;ピアノと管弦楽のためのロンドニ長調K.382、

ピアニスト;清水和音、1982年(第8回)20歳でロン・ティボー・コンクールで第1位になり、翌年に初登場。




第2曲、バッハ;二つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV.1043、

第一ヴァイオリン;千住真理子、1975年 (第1回)天才少女として12歳で初登場、
第二ヴァイオリン;小林美恵、(1990年(第16回)1990年の ロン・ティボー・コンクールで優勝し、直ぐに出演。






第3曲、モーツァルト;フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299から第一楽章、

フルート;佐久間由美子、1988年(第14回)1983年パリ音楽院在学中にランパル国際コンクールで優勝している。
ハープ;吉野直子、1986年(第12回)1985年イスラエルで開かれた国際ハープ・コンクールで最年少で優勝した。





第4曲、ブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調から第一楽章、

ヴァイオリン;渡辺玲子、1982年(第8回)1981年日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で15歳で最年少優勝した。
チェロ;向山佳絵子、1992年(第18回)16歳で日本音楽コンクールで優勝、1990年カサド国際チェロ・コンクールで第一位に入賞した。






第5曲、ベートーヴェンのヴァイオリンとチェロとピアノのための三重協奏曲から第三楽章、

ヴァイオリン;加藤知子、1984年(第10回)1978年日本音楽コンクールで優勝、1982年チャイコフスキー・コンクールで第2位に入賞した。
チェロ;山崎伸子、1977年(第3回)1975年日本音楽コンクールで第1位に入賞した。
ピアノ;小山実稚恵、1983年(第9回)1982年チャイコフスキー・コンクールで第3位入賞し、1985年ショパンコンクールで第4位に入賞した。




第6曲、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲変ホ長調K.365から第二・第三楽章、

第一ピアノ;花房晴美、1977年(第3回)パリ音楽院で研鑽し、ヨーロッパの数々のコンクールで上位入賞を果たす。
第二ピアノ;海老彰子、1976年(第2回)パリ音楽院で研鑽し、1975年ロン・ティボー・コンクールで第2位になり、翌年に初登場。



、第二部、モーツアルトの各曲の演奏内容の紹介、

第1曲、モーツァルト;ピアノと管弦楽のためのロンドニ長調K.382、    沼尻竜典指揮、ピアニスト;清水和音、

 この曲の指揮者は沼尻竜典指揮であり、彼は1991年(第17回)の若い芽のコンサートに出演していた。彼の経歴を調べてみると、彼は1990年のブザンソン国際指揮者コンクールに優勝して、翌年にこのコンサートに出演していた。
       このコンサート・ロンドニ長調K.382は、コントラバスが2台の中規模なオーケストラで演奏されていたが、2トランペットとテインパニーのない小編成のオーケストラのように見えた。スコアでは、ロンド風な愛らしい主題が‖:8小節:‖:8小節:‖の二部形式で提示された後、7つの変奏が行われる変奏曲形式の曲であるが、第5変奏まである繰り返し部分は全て省略され、簡素な形で極めてあっさりと演奏されていた。




      曲の主題提示はオーケストラで開始されるが、沼尻は少し早めのテンポで軽やかなスタッカートでロンド風な味わいを見せていたが、繰り返しがないのであっさりと進み、直ぐに独奏ピアノだけによる第一変奏が淡々と弾かれていたが、ここでもスタッカートの軽快なピアノが目立っていた。続いて第二変奏は、オーケストラがロンド主題を提示した後、独奏ピアノが前半も後半も三連符を用いて変奏し、清水和音のクリアなピアノが響きだしていた。第三変奏は弦楽器が伴奏をし、前半も後半も独奏ピアノが早い分散和音を弾いていたが、清水のピアノは軽快であり、お終いにロンド主題の後半をオーケストラが演奏して、この曲のロンドとしての性格を表していた。
               続く第四変奏はニ短調に変わりピアノ独奏で装飾的に変奏されて、原主題とかなり変わった展開がなされていたが、清水のピアノは淡々として進んでいた。第五変奏は独奏ピアノの細かなトリルが右手と左手に現れるもので、フルートとオーボエが主題を奏したり伴奏をしたり変化をつけていた。第六変奏は一転してアダージョとなり、独奏ピアノがゆっくりと装飾音を目立たせながら甘えるように変奏をするもので、清水はここでは感情を込めてピアノの音を美しく際立たせるように弾いており、後半ではさらに綿密に込め細かく弾いていた。




       最後の第七変奏は、拍子も速度もアレグロに変わり前半はオーケストラが軽快なテンポで変奏し、後半は主題を木管が、独奏ピアノが分散和音を弾いて変奏されていたが、清水は淡々としたペースに戻っていた。最後にはフルオーケストラのコーダとなってからカデンツアとなっていたが、カデンツアは新全集に掲載されている自作のものを弾いており、ピアノによる技巧がひとしきり示されて速いテンポで終息していた。繰り返しがないので、最初から最後まで、アダージョをを除いて淡々としたペースで進み、若い人の演奏はこんなものかと思わせる余り面白みのない演奏であった。
清水和音は、演奏後に司会の須磨佳津江の質問に、第8回の時のことはオーケストラに合わせられなくて困ったことを良く覚えていると語り、演奏後の感想はいつも最悪だと思っていると語っていた。一方の沼尻は、第17回の出演であったが、本番のことは全く覚えていないほど緊張していたと語り、本番前に緊張するのは、昔も今も変わらないと、二人は異口同音に語っていた。


第3曲、モーツァルト;フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299から第一楽章、

指揮者;沼尻竜典、ソリスト;フルート;佐久間由美子、ハープ;吉野直子

前半のこの曲までが沼尻竜典の指揮であり、鮮やかな赤と青に区別された衣装を身につけたフルートの佐久間由美子とハープの吉野直子が登場して来た。残念ながら、今回は第一楽章だけであったが、データベースによるとこの二人は1997年の2年後に読売日響の伴奏で全楽章の収録(まだ未アップである)が行われており、二人の相性の良さは今回の演奏で確認されていたのかも知れない。





このフルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299(297c)の第一楽章は、オーケストラのトウッテイにより堂々と第一主題が賑やかに始まるが、やがてメロデイラインがオーボエから弦へと渡され管が相づちを打つなど華やかな経過部を経て進行していくが、N響はさすが弦も管もしっかりしており素晴らしかった。やがて、ホルンにより先導する第二主題が弦楽器によりピッチカートの伴奏で軽やかに登場していたが、この主題は、ホルン、オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラなどに出番が配分されて進んでおり、華やいだコーダを経て盛り上がってオーケストラによる提示部が終わっていたが、このオーケストラ内部の掛け合いが他の曲より変化に富み、譜面を見ていると実に面白く感じた。


        やがて独奏フルートとハープが合奏で登場してから、フルートが主旋律をハープが分散和音を弾きながら二つの独奏楽器が第一主題を弾き始めるが、フルートが絶えずリードしハープが追いかけるような控えめな姿で進んでいた。フルートは滑らかで潤いがあって美しく、ハープはキラキラと輝いて聞こえていた。続いてフルートがハープを従えて新しい技巧的な美しいパッセージを連ねて発展させた後に、美しい落ち着いた第二主題がピッチカートの伴奏を伴いながら二つのソロ楽器の合奏で始まった。この主題を奏する二つの楽器の音色の違いが際立っており、これにオーケストラが加わって、独奏と合奏が入り乱れる素晴らしいパッセージが続いてから展開部へと突入していた。
         展開部では新しい主題がフルートとハープの順に力強く提示され、二つの楽器が互いに激しく絡み合って、フルートのトリルが鋭く響く力強い展開がなされてから、再現部へと移行していたが、この展開部は二人の演奏に迫力があり、二つの楽器とオーケストラのしのぎ合いが素晴らしい効果を挙げていた。再現部でもフルートのメロデイラインにハープのアルペッジョで推移しており、終わりのカデンツアでは、ハープの分散和音に乗ってフルートが技巧を尽くしており、同時にハープにも見せ場があって、二つの特徴ある楽器を際立たせていた。聴き慣れたカデンツアのように聞こえたが、新全集には収録されていなかった。

          全体を通じて、映像ではやはり佐久間由美子のフルートが、終始、余力を持って自在に動き回るに対し、吉野直子のハープが受け身の動きをしているように見えていたが、楽器による動きの違いが目に見えていたように思う。しかし、聴感上は何も問題はなく、美しい立派な名人たちによる演奏だったと思う。なお、吉野直子には、このHPで「アダージョとロンド」ハ短調K.617 ハープとフルートと弦楽器の五重奏の演奏(9-12-4)の演奏があるが、この時も二人は仲良くコンビを組んでいた。 最後に司会者から質問を受けていたが、吉野さんは参加した第14回のコンサートは高校3年生の時で、プロのオーケストラと協演することもテレビに出ることも初めてで大変であったが、無我夢中で怖さを知らず楽しかったと言っていた。また、佐久間さんは当時19歳で失敗するとこの業界でやっていけなくなるから必死であったと語っていた。

第6曲、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲変ホ長調K.365から第二・第三楽章、
指揮者;十束尚宏、第一ピアノ;花房晴美、第二ピアノ;海老彰子、

     第4曲目からは指揮者は十束尚宏に変わって演奏されていたが、オーケストラはよく見るとコントラバスが2台のほか、ホルン2、オーボエ2、ファゴット2の布陣のオーケストラで、第二楽章は悲しげに始まるオーボエのメロデイで弦と一緒になって開始されていた。



         やがて、花房の第一ピアノがトリルで伴奏している間をぬって、海老の第二ピアノがこの主題を実にゆっくりと美しく提示していた。続いて第一ピアノも参加して二台のピアノによりこの主題が装飾されたり、対和風に現れたりしながら並行的にゆっくりと進み、ここの二つのピアノのスタッカートで弾かれるところが柔らかなピアノでで実に美しかった。特に後半に二つのオーボエと2台のピアノとが一体になって息を飲むように弾かれる部分の前後が、実に美しいと思われた。短いオーケストラで始まる中間部のエピソードでは、二台のピアノのそれぞれにオーボエの悲しげなソロが加わって素朴な響きのする味わいのある面白い変化を見せていた。第三部では第一部よりも前半は縮小されていたが、後半の自由な展開の部分はむしろ拡大されており、二人の息の合ったピアノが良く揃ってとても美しく、ここでもオーボエの伴奏が魅力的で、あたかも協奏曲のような雰囲気すら感じさせる楽章であった。



              フィナーレは二つのエピソードを持つ明るいロンド形式であり、ピアノの活躍が著しい標準的なロンド形式の楽章であった。速いテンポの活気のあるロンド主題がまずオーケストラで静かに軽やかに提示され、続いてフォルテで元気よく繰り返されてフェルマータの後、第一ピアノが新しい主題をテンポ良く弾きだし、続いて第二ピアノが追いかけるようにオクターブ下で登場してきた。それからは、早いテンポで二つのソロピアノがぶつかり合うように激しい勢いで進行し、いつの間にかオーケストラも加わって、三つ巴の競演をし張り合うようにドンドンと進んでいた。第一のエピソードでは、付点のリズムの行進曲風な感じでオーケストラと二台のピアノが絡みあっており、ごく自然にピアノソロからロンド主題に戻っていた。第二のエピソードではトレモロ音形と三連符の旋律が二台のピアノでパートを変えながら絡みあって進むもので、二人の負けじとばかりに弾き進む熱のこもるった競演が快く響いて、再びピアノソロでロンド主題に戻っていた。コーダの後の最後のカデンツアもモーツアルトのものが弾かれ、ロンド主題の変奏に始まり、後半は二人のダイナミックな合奏が展開され、規模の大きい技巧的な楽章はテンポ良く終結していた。


           さすが日本を代表するトップ・ピアニストの演奏だと感じさせる二人の息の会った演奏で、柔軟でありながら繊細さを持ち合わせる素晴らしいピアノであり、第一楽章の演奏が含まれていないのが非常に残念であった。ここでも二人のピアニストに質問が寄せられていたが、ほぼ同じ時期にパリ音楽院で留学していたが、家が離れていたので深いお付き合いはなかったと話しておられた。海老さんはこのHPでは、アルゲリッチと2台のピアノのためのソナタニ長調を08年ヴェルヴィエ音楽祭で弾いており(10-12-1)、デユオには馴染んでおられるようであったが、ピアニストは、本来、孤独なので、デユオの世界は楽しいという。花房さんは数年前から妹さんと始められたばかりのようであったが、お二人ともデユオは練習が大変であるが、合わせることは非常に楽しいと語っていた。

(以上)(2012/12/01)


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