(最新DVD紹介;スイス・イタリア放送交響楽団の協奏曲シリーズK.466その他)
12-12-2、ピーター・マーク指揮、スイス・イタリア放送交響楽団とマリア・テイポのピアノによるピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466、1992年スイス、ルガーノ、SSR/RSLにて収録、およびダニエル・バレンボイムの弾き振りによるピアノ協奏曲第23番イ長調K.488、
シーメンス・ヴィラ、1988、ベルリン、

−ピーター・マークは、好きな曲しか振らないタイプの指揮者のようであるが、このピアノ協奏曲第20番は、落ち着いたゆっくりしたテンポで格調高く進み、マリア・テイポのオーソドックスなピアノも生き生きとしており、素晴らしい溌剌とした演奏を楽しむことが出来た。一方のバレンボイムの第23番は、終始彼のペースで進み、独奏ピアノと弦楽器や木管楽器とのアンサンブルが実に美しい演奏で、とりわけ第二楽章が美しかった−

(最新DVD紹介;スイス・イタリア放送交響楽団の協奏曲シリーズK.466その他)
12-12-2、ピーター・マーク指揮、スイス・イタリア放送交響楽団とマリア・テイポのピアノによるピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466、1992年スイス、ルガーノ、SSR/RSLにて収録、およびダニエル・バレンボイムの弾き振りによるピアノ協奏曲第23番イ長調K.488、
シーメンス・ヴィラ、1988、ベルリン、
(2011/12/12新宿タワーレコード、Great Concertos、10DVDSet、RTSI/SWISS-TV、および2012年06月11日、新宿タワーレコードにて、Metropolitan Munich BD1枚に収録)

        12月号の協奏曲については、初めにスイス・イタリア語放送交響楽団の10DVDセットの一枚に含まれていたもので、お馴染みのピーター・マーク指揮によるコンサートから、女流のマリア・テイポのピアノによるピアノ協奏曲第20番に短調K466をお届けしたい。第2曲目にはバレンボイムの弾き振りによるピアノ協奏曲第23番イ長調K.488をお送りする。この曲は後期ピアノ協奏曲シリーズ8曲のうちこの曲のみがアップ洩れしていたのに気がついて、新しくBD化された映像でアップを行うものである。



指揮者ピーター・マーク(1919〜2001)については、このHPを始めた頃、追悼録を書いたので良く記憶しているが、私には古くからLPやCDを通じて、モーツァルトの知られざる小品などを教えてくれた指揮者であった。若い頃から数多く来日していたようであるが、考えてみれば指揮をする姿は今回のDVDが初めてのようである。このオーケストラはスイスにあるので、お馴染みの場所のようであるが、このコンサートでは、DVDの曲順で第一曲がハイドンの交響曲第103番変ホ長調「太鼓連打」、第二曲がロッシーニの「イタリアのトルコ人」序曲、そして第三曲がモーツァルトのピアノ協奏曲となっていた。収録年は1992年であるので、当時73歳であり、まだまだお元気の様子に見えていた。

一方のイタリアの古きピアニストマリア・テイポは、このHPでは二度目の登場で、前回は「モーツァルト・イン・ザルツブルグ」というDVDで、 グラーフ指揮でピアノ協奏曲第21番ハ長調を弾いていた。オーケストラはモーツァルテウムであり、恐らくは1991年頃の映像(11-12-1)であった。彼女の経歴は省略するが、アメリカで活躍していたときに、「ナポリの女ホロヴィッツ」の異名を取り、力強さを備えたヴィルトゥオーゾとして知られていた。前回もそうであったが、今回も堂々たる女傑振りの風貌であり、ピアノも力強く明快であって、指揮者のピーター・マークと対等に渡り合っているように見えていた。



        二人が拍手の中で入場してきて挨拶をし、それぞれの席に着き、ピーター・マークが身構えるようにして指揮を始めると、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466の第一楽章が始まった。弦の喘ぐような低いシンコペーションのリズムを持った第一主題が開始されると、マークは落ち着いたテンポで歯切れ良いリズムでオーケストラを進める。やがて副主題で出てくるオーボエやフルートが実に美しく響き出しこれに弦が答えてゆっくりと進行し、オーケストラの提示部が終了していた。するとマリア・テイポの独奏ピアノが静かに始まり、次第にはっきりしたピアノを響かせてからオーケストラも加わって進み出した。続く副主題でもオーボエにピアノが応え、落ち着いたピアノがオーケストラとも良く馴染んで素晴らしい。独奏ピアノが初めて提示する第二主題も実に美しく開始され、続いて軽やかな技巧的なパッセージを繰り返し、ピアノが縦横に活躍し始めた。マリア・テイポのピアノの響きはオーソドックスなもので、一音一音確かめるように際立てて弾く癖があるタイプであり、この曲にはとても合っているという感じに聞こえていた。
           展開部に入るとピアノの導入部の主題が繰り返され、次第にピアノがうねるように逞しく主題を繰り返し、再現部では途中から参加した独奏ピアノがいつの間にか先頭に立って堂々と進んでいた。カデンツアはベートーヴェンの聞き慣れたものを弾いており、ピアノの音が輝やいて聞こえていた。ピーター・マークのゆっくりした歯切れ良いオーケストラの進め方とピアノが良く合った堂々たる楽章であった。





            ロマンスと名付けられた第二楽章は、美しく優雅な主題が独奏ピアノで開始され、マリア・テイポは、ゆっくりとしたテンポであるが芯のある音でしっかりと弾きはじめていた。主題は直ぐにオーケストラに渡されるが、いつの間にか再びピアノに戻されていた。弦の単純な伴奏でソロピアノで提示される第二主題は、実に美しい。テイポは女性らしく柔らかな音で、丁寧に慈しむように弾いていた。美しい独奏ピアノがひとしきり続いて、再び第一主題がピアノからオーケストラに移されてから、フルオーケストラで始まる爆発的な中間部では、独奏ピアノが息つくひまもないように鍵盤上を駆けめぐり、映像では技巧の見せ場になっていたが、テイポにとっては落ち着いた表情で弾きまくり、繰り返されていた。嵐が過ぎ去ると再び静かにロマンスの第一主題がが再現されるが、テイポは装飾音も付けずに淡々として自分のペースで弾いていた。聴くたびに、陶然とした気分にさせられ、何か自分に免疫力が付加されるような美しい楽章であった。





             フィナーレでは独奏ピアノによるロンド風の主題で始まるが、直ぐに激しくテンポが速いフルオーケストラに渡され、躍動するように急速に発展してから新しい主題がピアノに現れるが、直ぐにロンド風の主題に戻っていた。そこで独奏ピアノが、第二主題と思われる歯切れの良い活発な主題を提示し、ピアノ・オーケストラ・ピアノ・木管・ピアノと言った具合に絶えず主役が変わり、目まぐるしく変化しながら疾走してアインガングで休息していた。テイポは目新しいことはせずに、オーケストラが冒頭の主題を提示して再現部に突入していた。再現部では、独奏ピアノが主導権を取り戻すと、第一・第二主題が、ピアノ・オケ・ピアノ・木管と言うように、疾走して一気に駆け抜けていた。終わりのカデンツアは、テイポは聞き慣れた短いカデンツアを弾いていた。テイポは、さすが終始堂々として最後まで主導権を持っており、終わると指揮者のピーター・マークやコンサート・マスターと握手を重ねて、にこやかに快演出来たことを喜んでいた。観衆の声と拍手に何回か呼び出され、素晴らしいコンサートの終演であった。






ピーター・マークは、好きな曲しか振らないタイプの指揮者のようであるが、このコンサートで指揮していたハイドンの交響曲やロッシーニの序曲は、余り興味がわかず残念であった。それに引き替え、このピアノ協奏曲は、マリア・テイポの出来映えが良かったこともあり、終始、テンポも良く生き生きとした演奏を楽しむことが出来た。

           第2曲目にはバレンボイムの弾き振りによるピアノ協奏曲第23番イ長調K.488をお送りする。この曲はバレンボイムの後期ピアノ協奏曲シリーズ8曲の中でこの曲のみがアップロード洩れしていたのに気がついたので、新しく全8曲を一枚のBDデイスクで発売された新映像でアップを行うものである。この8曲のシリーズは 、いずれもベルリンのシーメンス・ヴィラの宮殿で撮影されているが、収録年と映像監督は放送が音源の時は明確されていなかったが、新しい資料では次表のようになっており、この企画は驚くことに演出家のポネルが映像の先鞭をつけたとされている。

バレンボイムの協奏曲の収録年月と担当Director
Nov.1986K.467Jean-Pierre Ponnelle
Feb.1988K.491、K.595、Klass Rusticus
Feb.1988K.466、K.503、George Moorse
Jan.1989K.492、K.488、K.537、George Moorse



この日のピアノ協奏曲第23番イ長調K.488の第一楽章はソナタ形式で書かれており、オーケストラの提示部が順番に第一主題、第二主題と提示してから独奏ピアノが登場する標準的な協奏的ソナタ形式であったので、バレンボイムは座って両手を振りながら落ち着いて指揮を開始していた。甘いまろやかな第一主題が第一ヴァイオリンで流れ出すと直ぐにフルートとクラリネットにより反復されて美しく発展していくので、この曲はトランペットとテインパニーを欠き、オーボエの代わりに柔らかい響のクラリネットが入っている曲だと直ぐに気がついた。よく見るとクラリネットはライスターが吹いており、コントラバスは3台の中規模のベルリンフイルが、宮殿の大きな一室でリラックスして演奏していた。続いて呟くように弦が歌い出す第二主題が始まるが、バレンボイムはオーケストラの弦の美しい立ち上がりやクラリネットやフルートの美しい響きを確かめるようにひとしきり指揮をしながら、オーケストラの提示部を終えていた。



            独奏ピアノが第一主題を高らかに颯爽と弾き出し変奏しながら繰り返し、そのまま経過的な早いパッセージを連ねながら弾き流してから、第二主題も独奏ピアノが提示していた。バレンボイムは、実に美しいコロコロと転げるようなパッセージを連ねて行き、ピアノにオーケストラが絡みつくように追従したり木管群と合奏したりして、見事なアンサンブルが示され提示部を終えていた。続く展開部では新しい主題が弦で始まり、独奏ピアノが引き継いだ後、ピアノと木管の競い合いが暫く続いた後に早いピアノのパッセージが現れピアノが目まぐるしく活躍していた。再現部ではオーケストラで第一主題が始まり、直ぐに独奏ピアノが変奏しながら引き継いで、早いパッセージを連ねて行き、第二主題もそのままピアノが再現して一気に進んでいた。カデンツは聞き覚えのある新全集に備え付けのものを一気に弾いていた。



  独奏ピアノで秘かに始まる第二楽章のアダージョは、シチリアーノのリズムに乗って、メランコリックな主題がピアノでゆっくりと進んでから、この主題に応えるかのように第二ヴァイオリンの分散和音をベースに、フルートがそしてクラリネットが新しい旋律を歌い出し、ピアノがゆっくりと変奏しながら静かにフォローしていく。バレンボイムの一音一音、確かめるように弾くピアノの音が実に爽やかで印象的であった。フルートとクラリネットがテンポを変えて合奏しながら主題提示する中間部でも、続くピアノと木管との掛け合いが美しく進行し、聴くものをいつも陶然とさせていた。再びピアノが冒頭の主題を再現し変奏しながら、次第に高みに到達していくが、この変奏の妙には何度聴いても感心させられる。最終部でのピッチカートの伴奏でピアノがゆっくりと歌い上げる場面は実に美しく、バレンボイムのピアノとオーケストラとの一体感をまざまざと示していた。短いが実に美しい夢のようなシチリアーノの楽章であった。



            フィナーレは馴染み深いロンド主題が独奏ピアノで軽快に飛び出し、明るく輝くようなアレグロでオーケストラと木管とが交互に進む。この楽章は何度聴いてもこのロンド主題に挟まる魅力的な副主題が4種類ほど沢山あって、全体の構成が変化して良く分からない。恐らく変則的なロンド形式なのであろう。しかしながら全楽章を通じて、4度ぐらい現れるロンド主題を挟んで、これらの主題が出るたびに入れ替わり煌めくように美しく進行し、ピアノとオーケストラと木管とが交互に、或いは競い合うように三つ巴となって軽快に進行して盛り上がりを見せていた。そして、バレンボイムのピアノの早いパッセージがいつも先導して連続し、鍵盤の上を走り回る技巧の冴えを見せながら、華やかに力強く楽章を進めていた。カデンツアの見せ場が省略されるなど、充実した終結部を持ち、華やかに一気にこの楽章を綴じていた。

             この映像は観衆がいないスタジオ収録なので、残念ながら拍手が無く、ライブの映像で素晴らしい幕切れなのに、拍子抜けしてしまう感じがした。最近収録して既にアップロードしているブッフビンダーのウイーンフイルとの弾き振りの映像は、彼らの本拠地の楽友協会ホールのライブだったので、観衆の拍手や声がライブらしさを浮き彫りにしており、時代の違いを強く感じさせた。
今回のBDに収録した映像は、写真でお分かりのように、当時、35ミリフイルムで収録されていたオリジナルテープを新たに利用して1080iのデジタルハイビジョン(16:9)の映像と非圧縮のPCMステレオ音声をHD規格に収録したものであり、8本のソフト255分の映像が1枚のBDデイスクに入っているので、画質や音声のレベルが格段に向上しているほか、小型軽量化されて取り扱いも楽になっていた。

(以上)(2012/12/15)


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